著者
田中 統治 藤田 晃之 根津 朋実 井上 正允
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

最終年度に当たる18年度は、才能教育とリーダー育成の両面において大きな教育効果が期待される文化祭の行事をカリキュラムとして単元開発することを試みた。まず、文化祭の運営を通じたリーダー育成の機能を明確にするため、各参加団体の企画と運営を担った在校生の「デコ責(デコレーション責任者)」に対して集団面接を行い、彼らが獲得している能力要素を検討した。次に、とくに起案力と調整力について職種や分野による有用性の違いを確認するため、卒業生(平均年齢45.3歳)に対し集団面接を実施した。これらの調査結果をもとに18年度の文化祭ではその単元を改善する形で試行してみた。すなわち、学級別による高2生の参加形態を「組」別に再編し、選択性と専門性をより高めて、そのカリキュラムとしての評価を教員への質問紙調査によって実施した。教員からの評価によれば、先を見通す力、事務処理能力、および問題処理能力の発揮において「組」の間で大きな差異が生じていた。そして、この差異を生み出す要因として、とくに信頼関係を築く上でリーダーの必須条件である「丁寧な合意形成」の重要性が確認された。3年間に及ぶ本研究の成果として、中高一貫校における才能教育とリーダー育成に向けたカリキュラム開発の条件が次のように導き出された。すなわち、(1)生徒の自主的な活動が展開されるように学習環境を整えるとともに、(2)リーダー経験の機会を豊富にして、より多様な役割を経験させ、(3)仲間との間で粘り強く合意の形成を求めて活動する経験内容を充実することなどが必要である。
著者
権藤 智之
出版者
首都大学東京
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

中国で萌芽期にある木造住宅生産の調査を行った。まず、中国の木造住宅生産の現状について木造建築技術応用研究報告(2013年)を翻訳し、推定される木造建築建設量や住民の意識を整理した。次に、木造建築教育施設3施設に対してインタビューを行い、1施設では木造建築を専門とした教育が行われていることを明らかにした。最後に、中国で木造住宅施工経験のある施工会社4社に対するインタビューを行い、中国の2社からは注文住宅を主とする住宅生産の特徴や技能者教育に対するカナダからの支援、日本の2社からは部品調達や技能者教育等での課題を明らかにした。
著者
田中 福人
出版者
清心女子高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

○研究目的生物がもつ概日時計は多くの場合約24時間周期であり、光や温度などの環境サイクルへ同調することで正確に24時間の周期を保っている。動物の場合、光波長も概日時計を調節する能力を決める重要な因子であるとして研究が進んでいるが、植物では研究があまり進んでいない。よって本研究では、カタバミ科が概日時計の制御の下で行う就眠運動に対し、特に影響を与える光波長を明らかにすることを研究目的とした。○研究方法まず、温度を20度で一定にしたインキュベータ内に野外から採取したムラサキカタバミとイモカタバミを静量した。その後、赤・青・緑の波長の異なる3色のLED蛍光灯を用いてそれぞれ光を照射し、就眠運動の様子を観察した。用いたLED蛍光灯の波長は、赤色光が615~635nm、青色光が464~475nm、緑色光が520~535nmであり、与える光周期は(1)明期:暗期=12:12、(2)明期:暗期=3:3、(3)明期:暗期=1.5:1.5の3パターンとした。観察には赤外線Webカメラを用い、カメラを通じてパソコン上に写した画像を常時記録した。撮影終了後、10分おきに葉の開閉状況を調べ、各時間帯に葉が開いている割合を百分率で表し、光周期と合わせてグラフを作成した。○研究成果ムラサキカタバミとイモカタバミの両方において、(1)~(3)のいずれの光周期の場合であっても、光周期に同調して就眠運動を行う様子が観察できたが、暗期に光照射してから就眠運動が行われるまでの時間を各光波長で比較したところ、青色光が照射後約40分、緑色光が約50分、赤色光が約90分後であった。就眠運動は葉枕細胞内の容積変化によって引き起こされると考えられているので、この容積変化については青色光の効果が最も大きく、赤色光の効果が最も小さいことが明らかになった。
著者
中島 伸介 張 建偉
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,精度および詳細度の高いブロガー分析手法の開発を行った.さらに,情報発信者および情報受信者としてのブロガー分析に基づく,信頼性の高い情報の判定技術,トレンド情報の抽出技術,情報発信者のプロファイリング技術とこれに基づく情報推薦技術の開発に取り組んだ.成果としては,研究協力を頂いている企業において,本研究の成果の一部を実サービスにて活用していただくなど,技術の実用化という意味でも成果を上げている.特に,流行トレンドの早期発見方式に関する研究では,難関国際会議での論文採択や推薦論文としての学会論文誌への採択を受けると共に,国内研究会発表にて3度受賞するなど,学会においても高く評価された.
著者
金田 由紀子
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

全国の自治体(市区町村数1,741)に所属する保健師を対象に「老いと死の準備教育」に関する実態調査を実施した(有効回答率38.4%)。自治体における教育実施の必要性については61.7%があると回答していたが、実際に実施ありと回答した者は15.8%であった。今後の実施予定ありと回答した者も12.0%と低かった。実施上の問題として、実施方法が未確立とした者が89.7%と9割にものぼり、必要性を感じながらも具体的な根拠に基づく方法が未確立であるため、実施に至っていない実態が明らかとなった。本研究結果から、多死社会において、自治体レベルでの具体的なプログラムを早急に構築する必要性が明らかとなった。
著者
大島 薫
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

<説法>と称される一連の言説に<経釈>を位置付け、その構造を明らかにするとともに、法会における一連の所作として、学侶の研鑽を明らかにするために行われた<論義>と、これら<説法>における言説との関連性など見出した(福田晃編『唱導文学研究第四集』、三弥井書店、発表予定)。また<経釈>に限らず、<説法>における一連の言説として表白された<表白><施主段>についても伝本調査を行い、東寺観智院金剛蔵『十二巻本表白集』ほか、その本文を電子化するなど、それらの解読をすすめる準備を行った。さらに、「説法の上手」とうたわれ、「説法道」を確立したと伝えられる、安居院澄憲の<説法>を相対化するために、澄憲以前に、多くの「説法詞」を草したことで知られ、その「詞」の多くが伝存する寛信について、その著作に関する調査と解読をすすめた。結果、『類雑集』の成立ほか、勧修寺流の形成についても私見を得た(勧修寺聖教文書調査団における夏期報告会において口頭発表した)。また、澄憲草を中心とする、安居院流の「説法詞」を伝える文献に関して、真福寺・神奈川県立金沢文庫・叡山文庫・東寺観智院金剛蔵・勧修寺などで伝本調査を行った結果、「説法の上手」で知られた澄憲が、天台教学の研鑽をすすめるべく「宗要」の編纂を手がけたむねを伝える文献を発見するなど、これまでの澄憲理解を覆す新見をも得た。
著者
馬場 一美
出版者
昭和大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

NANOZRインプラントの開発を目指し,表面にHF処理(0,4,55%)を施し骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)に及ぼす影響と骨結合能について評価した.SEM像より,HF処理したNANOZRの表面は、55%でナノレベルの球状構造が顕著に認められた.蛍光二重染色では,発達した細胞骨格,細胞突起が認められ、細胞接着・増殖では,顕著な増加が認められた。骨形成関連遺伝子の発現でもAETiと比較し有意な上昇が観察された.ラット大腿骨埋入後の骨結合力は,55%でAETiと比較し有意に高い値となった.NANOZRはHF処理による表面改質によって、骨芽細胞の接着・増殖・分化並びに、骨結合力を促進させた。
著者
本間 道則
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

微細な配向パターンを有する液晶セルの駆動電圧特性および応答特性を実験およびコンピュータシミュレーションにより詳細に評価し,駆動電圧および応答特性の改善効果について考察した。その結果,しきい電圧は配向の歪みの増加とともに減少する傾向が明らかとなり,配向パターンの周期のような構造的な因子によってしきい電圧が制御できることが確認された。さらに,微細なパターン配向は応答特性の改善にも寄与し,応答時間および回復時間がそれぞれ70%および50%改善されることが明らかとなった。
著者
足立 浩平
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

新たな母数モデル「データ=共通因子×負荷+独自因子×独自分散の平方根+誤差」に基づく同時因子分析を考案して,最小二乗法および重みつき最小二乗法のアルゴリズムを開発して,シミュレーションによる挙動の確認・実データ解析による有用性の例証と,高階数近似とみなせる数学的性質の考究を行った.開発したアルゴリズムの特徴は,データ・フィッテングの形をとりながらも,負荷行列と独自分散の推定には,データ行列がなくても標本共分散さえ与えられれば十分である点にある.以上に加えて,共通・独自因子得点の不確定性のあり方の研究と,それの推定値の算定法の提案も行った.
著者
赤嶺 依子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

沖縄の老人福祉施設における高齢者の性に関わる問題についての対応を検討するための基礎資料を作成する事を最終目的として4つの研究課題に取り組んだ。その結果、保健学科学生を対象にした第1の研究では、男子学生、年齢の高い学生、看護コース学生、性体験のある学生の方がそうでない学生に比べ、高齢者の性に関する知識が多く、より積極的態度を示した。特別養護老人ホームのケアスタッフを対象にした第2の研究では、看護師は准看護師や介護士に比べ、高齢者の性に関する学習経験があるケアスタッフはそうでないスタッフに比べ、高齢者の性に対して肯定的イメージをもっていることが明らかになった。また、ケアスタッフにおける高齢者の性に関する知識、態度、イメージおよびそれらの相互関連を検討した第3の研究では、高齢者の性に関する学習経験がある者はない者に比べ、それに関する知識量が有意に多く、それに対する積極的態度を示し、肯定的イメージをもっていた。高齢者の性に関する知識量と積極的態度、知識量と肯定的イメージ、積極的態度と肯定的イメージの間にそれぞれ有意な関連性を認めた。最後に、高齢者の性に対する沖縄県老人福祉施設の認識と対応の実態調査の結果は、全国調査とほぼ同様であり、高齢者の性は肯定的に認識されていた。充実した性はQOL向上に役立つとし、性に関わる問題には高齢者の意思を尊重するなど理解ある対応が示された。しかし、性に関わる問題の発生率が全国に比べ若干高くなっている中にあって、高齢者の性の問題に対する教育や相談システムはまだ十分に整備されておらず、高齢者の性の問題に対しどのように取り組むべきか、具体的な検討をする段階にはまだ至っていないのが現状である。以上の結果から、高齢者看護および介護の専門教育現場においては性教育内容の検討と高齢者福祉施設においては高齢者の性の問題に対する相談システムの整備等検討していく必要性が示唆された。
著者
熊江 隆 荒川 はつ子
出版者
独立行政法人国立健康・栄養研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の学術的な特色・独創的な点として、生体内では抗酸化的な酵素や物質が相補的・複合的に作用していると考え、血清の総抗酸化能(TAA)の測定・評価方法に関して検討を行い、方法を確立した。また、貪食細胞の活性酸素種(ROS)の産生を比較可能とする測定方法を確立した。ラットを用い、肺胞洗浄液(BALF)中の抗酸化物質濃度等を測定し、BALF中のタンパク質濃度は急性的な酸化的ストレスの、またチオバルビツール酸反応物(TBAR)濃度は中長期的な酸化ストレスの良い指標となると考えられた。さらに、肺胞マクロファージ(AM)のROS産生能とAM培養上清中のサイトカイン(IL-1β、IFNγ、及びTNFα)濃度を測定し、強制あるいは自発的な運動負荷の違いによる影響を明らかにした。ヒトを対象とした実験として、市民ランナーのマラソン前後で測定を行った。マラソン後には好中球数が増加し、IL-6、IL-8、及びG-CSF濃度も著明に増加していた。これらのサイトカインが好中球の動員に関与していると考えられる。さらに、マラソン完走者の好中球機能及びCD11bとCD16の発現を測定したが、レース後に好中球機能は低下し、その機能低下はCD16の発現減少に伴うと推察された。好中球数の増加は、機能低下に対する補償的な反応とも考えられる。女子大学生の長距離選手を被験者とし、持久的な運動負荷が繰り返される夏期合宿において血清の抗酸化物質濃度とTAA及び血漿中サイトカインを測定した。TAAと血清中抗酸化物質等との相関関係を検討したが、TAAとTBARの間にのみ正の強い相関関係が認められた。サイトカインの変動より、合宿によって全身の炎症性の反応はむしろ抑えられ、Th2活性を抑制した可能性が考えられる。また、運動習慣による血清中抗酸化物質等への影響を地域在住の高齢者を対象に調査研究を行ったが、男性の運動習慣あり群ではTAAとTBARの間に正の相関関係が認められた。本研究で確立した血清TAAは酸化・抗酸化の状況を示す良い指標になると思われる。
著者
加藤 仁美 田代 英美 坂本 紘二 佐藤 誠
出版者
九州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

都市の外延的拡大による都市化の進行は近年地方都市圏に於ても著しく、都市と農村の境界領域である都市周縁地域はドラスティックな環境変化が展開しており、都市圏の環境問題を扱う際の最重要地域と考える。本研究はこの都市周縁地域をマージナルエリアと定義し、福岡都市圏、熊本都市圏、久留米都市圏を対象に事例研究を行ない、次の成果を得た。(1)マージナルエリアはジンメルのマージナルマンに由来する造語であり、都市と農村の接点・境界にあり、異質な社会と文化の狭間にあって、両者の対立と共存、葛藤と同化のダイナミズムが展開している地域であり、そのダイナミックな相互作用を通して問題を克服し止揚していく責極性に意義がある。(2)近年、都市と農村の関係はこの境界性としてのマージナルエリアから、コアとマージンという一極集中構造に変容しつつあり、農林漁業の後退による広大なマージンの創出は、環境保全にとって危機的事態である。(3)伝統的な農村集落では、農業を営むことを通じて、生産基盤はもとよりその背後の自然環境から生活空間に至るまで、共同的かつ自律的に保全管理する構造が存在する。兼業化・混住化は〈集落保全〉と呼ぶこの全体構造の変容を余儀なくし、環境保全のための新たな主体の形成が要請されている。(4)3つの都市圏の相対的位置は一極集中の入れ子構造を浮き彫りにしており、マージナルエリアの責極的意義の回復と、周辺市町村の自立性の回復が求められている。(5)都市化をコントロールする現行法制はマージナルエリアのような重層的生活空間には不充分であり、住民の地域形成力を活用するような支援装置も考慮されてよいと思われる。(6)今後は、環境的・文化的ストックの把握と、それに基づいた環境保全と環境計画の指針を得て、事例研究から得られた知見を基礎とした政策課題の追求が必要である。環境をテーマとする研究には学際的な研究方法の確立と国際的視野も要請されていると思われる。
著者
植松 敬三 内田 希
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

アルミナセラミックスの加圧成形による製造を対象に、その破壊源形成に及ぼす製造時の基幹的因子の影響を解明することを目的に研究を行い、当初の目的を達成した。得られた結論は次のとおりである。原料粉体は粗大粒子を含み、それらは従来の粉砕処理では十分に除去できず、高性能アルミナセラミックスの破壊源となり得るものである。粉体粒子の液中での分散状態は、顆粒特質に著しい影響を及ぼし、その加圧成形体構造、従って破壊源形成および焼成時の材料変形とも密接に関係する。成形条件、特に雰囲気中の湿度は得られた焼結体の構造と特性に著しい影響を及ぼす。CIP処理は強度向上には有益だが、変形防止の点ではむしろ有害である。新規評価法により焼結体の機械加工傷の具体的構造を検討し、表面傷と破壊強度との関係が従来の破壊理論で整理され得ることを明らかにした。材質中の粒径と破壊源の寸法とは密接に関係し、粒径の減少により強度が増すのは、それにより破壊源が小さくなるためである。高強度材料開発で粗大傷の防止が最も重要である。本研究開発した新規評価法は、レーザー蛍光顕微鏡に基づく構造評価法、赤外線浸液透光技術、定量的な浸液透光偏光顕微鏡技術である。以上のとおり、本研究では最新の評価技術を用い、また必要に応じて新規評価法の開発を行い、それらを駆使することにより、セラミックス製造プロセスのすべての段階について厳しい検討を行い、製造に係わる種々の要因と、セラミックスの構造ならびに特性の関係を解明し、破壊源の形成原因を明らかにし、さらにそれらの防止法を提案できた。これらはセラミックスの進歩に大いに貢献しその社会的活用をいっそう促進する原動力になるものと考えられる。
著者
山本 眞理子 宮本 聡介
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

友人関係の進展に肯定的な期待を抱いているか否かによって,友人関係の広がりの速さや深さが違ってくることは想像に難くない.友人関係の発展に対する期待に顕著な文化差が存在すると,異文化間交流に重大な影響を及ぼすことにもなる.本研究の目的は,友人関係の進展に対して人々が持っているイメージ(メタ期待)の文化差を明らかにすることであった.3年間の補助金交付期間に,主に2種類の調査を実施した.調査の主たる目的は,自分とは面識はないが自分の友人と親しい関係にある他者に対してどのようなかかわり方を期待しているかを明らかにすることであった.第1の調査(学生食堂パラダイム)では,自分とは面識はないが自分の友人と親しい関係にある他者(Aさん)と学生食堂で偶然対面するという場面想定法をもちた.このときどのような振る舞いをするかを回答者に尋ねた.分析の結果,アメリカ人は日本人よりもその相手と親しい関係を作りたいと回答する一方,日本人はアメリカ人よりもその相手を避けようとする傾向が強いことが明らかにされた.第2の調査では自分の友人の友人とは親しい関係を作りたいというユニット志向と,友人の友人と自分とは別々の関係であると考える自律志向の概念を提出し,友人関係のメタ期待を測定する尺度を作成・検討した.分析の結果,友人関係志向には,ユニット志向,関係配慮,自律志向の3つのメタ期待が存在することが示唆された.このうちユニット志向は日本人よりもアメリカ人のほうが強いことが示された.以上の点から,友人関係のあり様に対する明確な日米差が存在することが示された.今後は,友人関係の維持および崩壊過程で,その関係にたいする振る舞い方の日米差を明らかにすることが期待される.
著者
長岡 鉄太郎 守尾 嘉晃 高橋 史行
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

PDGF、FGF、VEGFを抑制するTKIであるNintedanibの肺高血圧症(PH)治療薬としての有用性を検証した。ヒト肺動脈の血管内皮細胞と平滑筋細胞を用いて、内皮間葉転換(EndMT)と平滑筋細胞増殖に対するNintedanibの抑制効果と、PAHラットへの慢性投与の効果を確認した。Nintedanibは、平滑筋細胞の増殖とリン酸化ERK/AKTの発現を減少させ、内皮細胞のEndMT誘導を抑制した。PAHラットへの慢性投与により、肺血行動態と肺動脈中膜と内膜の増殖が改善した。以上より、NintedanibはEndMTと平滑筋増殖の抑制を介して新規PAH治療薬になり得ると考えた。
著者
戸川 達男
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

恒温動物の精密な体温調節が進化したのは、聴覚による周波数弁別機能が適応度に寄与し、聴覚が温度依存性を持つことによるという仮説を裏付けるため、絶対音感保持者の音感の体温依存性を調べることを計画した。音感の測定のため、レバーで周波数が可変できる音源(2台)を用い、7名(男性1名、女性6名)の絶対音感保持者を被検者とし、A音(440Hz)を決定させ、決定周波数を0.1Hzの精度で測り、測定直後の体温を耳式体温計で計測した。測定は最長2ヶ月間毎日2回行った。その結果、若干例において決定周波数が体温に依存する傾向が認められたが、体温の上昇時に周波数が低下する例(最大約4HZ/℃)が多かったものの、逆の傾向を示した例もあり、現時点ではまだ結果をまとめる段階に至っていない。短期間の体温の増減と決定周波数の変動には相関が見られることから、体温と音感には何らかの関係があることが示唆されている。被検者の中には5Hz(半音の約1/5)以下の誤差でA音を決定できる者がおり、周波数および体温の測定精度も十分であったが、大きな体温変動が見られなかったため、聴覚の温度依存性を裏付けるに十分なデータを得るには至らなかった。短時間では周波数決定の再現性が高いことから、計測精度は十分であるが、体温以外に周波数決定に影響を与えている要因がある可能性が高いので、その要因を特定することも今後の課題である。今後さらに例数を増すとともに、体温変化の大きい場合の観察を期待しており、十分なデータを得た時点で発表する予定である。
著者
河井 克之
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

沙漠化の主要因の一つである塩害は,不適切な灌漑などの人為的要因と長期の乾湿繰り返しといった自然要因によって起こるため,地盤に及ぼす複雑な外的要因を考慮した対策が必要となる.本研究では,地盤の変形,地下水流れ,物質移動を同時に表現できるシミュレータの開発を行った.また,解析精度の向上を図るため,ライシメーターを用いた地盤からの蒸発量計測も行い,塩害抑制地盤の提案も行っている.
著者
平野 淳一
出版者
神戸大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究計画では、日本の市長選挙における対立構図の規定要因の解明を目標とした。分析の結果、現職優位に関する理論が日本の市長選挙における対立構図にも適用できることが明らかになった他、中央レベルでの政党間関係が市長選挙における対立構図に影響を与えていることも明らかになった。また、市町村合併が近年の市長選挙における対立構図の変容に大きな影響を及ぼしていることも示すことができた。
著者
曽我部 春香 森田 昌嗣
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、既存の河川標識が抱えている課題の整理を行い、考察・分析を行うことで河川標識が果たすべき役割を明確化した。そして、河川標識として適切な役割を果たし既存の河川標識が抱える課題を解決する河川標識の基本的なデザインルールの策定ができた。また、このデザインルールに則りケーススタディを実施することで、策定したデザインルールの実践における有効性の検証を行うことができた。また、デザインルールをベースに河川標識ガイドラインを作成したことで、河川管理者がガイドラインに従い多くの河川標識を設置することとなり、このような経緯で設置された標識の調査を行うことでガイドライン上の再整理を行うことができ、より実践の場で役に立つ河川標識ガイドラインの改訂版を発行することができた。
著者
中里 成章 鈴木 董 山本 英史 大木 康 桝屋 友子 板倉 聖哲 大石 高志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本プロジェクトは、ネットワークの態様と文化表象の生産の2点に着目して、東アジア、西アジア及び南アジアのエリートの比較研究を行い、アジアのエリート研究のための新しい視点を構築することを目的とした。また、画像による研究と文献による研究を結合し、アジア研究の新たらしいスタイルをつくることも目標に掲げた。研究成果の概要は次の通りである。1.新しい視点の構築。アジアの前近代社会の発展の中に近代性を見いだし、伝統と近代という二項対立的な枠組み自体を否定して、エリート研究の新しいモデルを構築しようとする方向。その逆に、近代化論を洗練し精緻にすることで、エリート研究の新たな展開を図ろうとする試み。また、下層エリートの文化生産の様態の研究を進め、それを媒介にしてエリート文化を民衆文化に接合し、両者の相互作用を明らかにしようとする問題提起。大略この3つの視点から方法上の試みが行われた。2.ネットワークの態様。さまざまな研究が行われたが、特に成果があったのは、系譜の比較史的研究であった。系譜に記録された親族ネットワークをめぐって、系譜編纂の主体、系譜の虚構性、記録形式の変化の歴史的意味、親族組織が系譜作成に先立つのか、その逆か、等々の視角から活発な討論があった。この成果は論文集『系譜の比較史』として近く刊行する予定である。3.文化表象の生産。オスマントルコやインドに見られる言語世界の多元的構造が、文化表象の生産にどのような意味をもったか。近代のアジアにおいて文化生産の基本的な制度的枠組みをなしていた検閲制度の実態はいかなるものであったか。また、デザインのような商品化された文化生産は、アジアではどのような歴史をもつのか等の問題に関する研究が行われた。検閲に関する成果は『東洋文化』86号の特集「日本の植民地支配と検閲体制」として既に刊行した。4.画像と文献の研究の結合。テキストに書かれた戯曲の場面を挿絵としてヴィジュアル化するときにいかなる問題が生じるか、等々のテーマに関する新鮮な研究が多数行われた。