- 著者
-
岡村 菊夫
鷲見 幸彦
遠藤 英俊
徳田 治彦
志賀 幸夫
三浦 久幸
野尻 佳克
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.5, pp.557-563, 2005-09-25 (Released:2011-03-02)
- 参考文献数
- 33
- 被引用文献数
-
4
6
目的: 水分を多く摂取することで脳梗塞や心筋梗塞を予防できるか否か, これまでの報告を系統的にレビューする. 方法: PubMed 上で dehydration, hydration, water intake, fluid intake, cerebral infarction, cerebrovascular disease, apoplexy, myocardial infarction, angina pectoris, ischemic heart disease, blood viscosity, hemorheology を組み合わせた条件で文献検索し, 6名が論文を評価, 取捨選択した. 結果: 検索された611論文のうち22論文を選択した. 前向き無作為化試験が1つ, 前向きの非無作為化試験が4つ, コホート研究あるいは症例対照研究が8つ, 後ろ向きの記述研究が9つ存在し, 以下の点が明らかとなった. 脱水は血液粘稠度を上昇させ, 脳梗塞や心筋梗塞を惹起する原因の一つである. 血液粘稠度上昇には, 脱水以外にも重要な複数の要因が関連する. 夜間の水分補給は血液粘稠度を下げるが, 脳梗塞を予防するという証拠はない. コップ5杯以上の水を飲む人は, 2杯以下しか飲まない人より心筋梗塞の発症が低いとする報告が1つ存在した. 結論: 脳梗塞や心筋梗塞の主な原因は動脈硬化, 動脈硬化性粥腫であり, 予防には生活習慣の是正が根本的に重要である. 水分を多く摂取すると脳梗塞を予防するという直接的な証拠はなかった. 水分摂取と脳梗塞・心筋梗塞の頻度に関してはさらなる研究が必要であり, 高齢者のQoLを向上させる適切な水分摂取法を検討していく必要がある.