著者
大久保 朝憲
出版者
關西大學文學會
雑誌
關西大學文學論集 (ISSN:04214706)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.119-138, 2005-12
著者
久保 隆司
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.1-24, 2019

<p>本論は、近世初期の神道家・朱子学者の山崎闇斎が探究した「闇斎神学」を、闇斎が「神書」として重視した『日本書紀』(特に神代巻)の構造と解釈の観点から捉える試みである。井筒俊彦の「神秘哲学」概念を主な補助線として導入し、闇斎の構築した「天人唯一」の神学は普遍性を持つ神秘哲学の日本的展開であることを明らかにしたい。闇斎は普遍的真理の探究過程において、朱子学的「合理主義」の限界と葛藤し、超克することでその神学を形成したと考えられるが、具体的には、中世以来の神聖な行為としての『日本書紀』の体認的読解を、神秘哲学の構造上に取り込むことで、実践と哲学との統合を図ったとの解釈が可能となる。この観点から、闇斎神学の本質は、合理性を獲得した上で、神道的な学び・実践を通じて、その限界を超える意識の高みを目指すところにあることがわかってくる。本論では、闇斎神学とは、垂直段階的に構築された「神儒兼学」の統合体系であり、近世・近代における日本では稀有な神秘哲学体系であることの一端を考察する。</p>
著者
野口 清子 生田 由美 久保田 伸枝
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.243-247, 2001-07-15 (Released:2009-10-29)
参考文献数
15

調節痙攣は、著明な近視化とそれに伴う輻湊が起こり、学童期の小児にみられることがある。原因は諸説挙げられるが、下垂体腫瘍などの器質的疾患が合併していることもあるため、その除外診断が優先される。今回我々は、視力低下と複視を主訴に来院し、初診時に行った屈折検査のためのサイプレジン®点眼により、複視が劇的に消失した1症例を経験した。当初これらの原因は、調節痙攣と考え、器質的疾患を否定した上で、各種調節検査を経時的に行った。その結果、両眼視下の調節検査と片眼での静的調節検査では、両者の結果に矛盾がみられた。また、静的調節検査で測定毎の検査結果にばらつきがみられたこと、視力検査でもトリック法に反応するなどの心因性の視覚障害と思わせるような結果が得られたこと、欲求不満や環境の変化がみられたことから、心因による一過性の調節痙攣ではないかと思われた。サイプレジン®点眼により複視が劇的に消失したことも心因が関係しているのではないかと考えた。本症例のような原因不明の調節痙攣や内斜視をみた場合、今までの経過や経験を基に、安易に心因性と考え検査や治療に取り組むべきではなく、まず原因の精査と鑑別すべき疾患との鑑別診断をしっかりと行った上で、器質的に何も異常が認められない場合は現症について対処していくべきであると思われた。
著者
平井 克之 岡崎 麻紀子 奥津 佐恵子 久保 琢也 矢吹 命大 渡邉 優香
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.80-86, 2021-02-01 (Released:2021-02-01)

リサーチ・アドミニストレーター(URA)による研究力分析の効率化・高度化を進めるには,実務担当者間の連携が不可欠である。近年,データ分析の現場では,プログラミング技術を用いた分析手法が,広く利用されるようになってきた。分析作業の効率化と高度化を目的に,Code for Research Administration (C4RA)が発足した。本稿では,論文書誌情報や科研費を用いた研究力分析において,PythonやR等により作業の効率化を図った事例を紹介する。最後に,C4RAの今後の活動の方向性及びURAの普及定着への貢献の可能性を探る。
著者
桑江 朝比呂 三戸 勇吾 有川 太郎 石川 洋一 木所 英昭 澁谷 容子 志村 智也 清野 聡子 羽角 華奈子 茂木 博匡 山北 剛久 李 漢洙 金 洙列 久保田 真一 倉原 義之介 辻尾 大樹 二宮 順一 伴野 雅之 古市 尚基 安田 誠宏 森 信人 武若 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.1-17, 2021 (Released:2021-02-20)
参考文献数
67

今後の我が国の沿岸分野における気候変動対応で取り組むべき課題について,どのような内容に研究者が関心を抱いているのか検討された例はない.そこで,気候変動に関連する様々な学会に対してアンケートを実施した.その結果,「気温・海水温」,「生物多様性の減少」,「海面上昇」,「極端気象・気候」,「温室効果ガス」,「生態系サービスの劣化」,「台風・低気圧」,「水産物の減少」,「国土減少・海岸侵食」,そして,「漁業管理」が優先すべき課題の上位10キーワードとして選択された.すなわち,自然現象や人間活動への影響に関する課題解決の優先度が高く,緩和・適応策の優先度は低かった.これらのキーワードの選択理由について考察するとともに,我が国における現状と今後の課題や展望について,キーワードごとにとりまとめた.
著者
和田 光俊 久保田 壮一 尾身 朝子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.63-68, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
5
被引用文献数
3 4

JSTが提供している科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)は,日本の学協会が発行する学術論文誌等を公開するための電子ジャーナルサイトである。2006年2月末現在,269誌のジャーナルと90種の予稿集が公開され,登載論文数は約17.6万件である。総ページアクセス数は月間100万件を超え,毎月30万件以上の論文がダウンロードされている。J-STAGEへのアクセスの約7割は海外からであり,国別では120か国に及んでいる。また,論文へのアクセスの約6割は他サイトからのリンク経由であり,そのほとんどはPubMed等の文献データベースから論文本文へのリンクによるものである。過去に発行された論文へのニーズも高く,2005年度からは,主要なジャーナルを創刊号にまで遡(さかのぼ)って電子化して公開する電子アーカイブ事業が開始されている。
著者
大久保 耕嗣 浦上 弘 多村 憲
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.184-188, 1998-08-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
14

食塩水の電気分解で調製した強酸性水, および塩酸と次亜塩素酸ナトリウムで調製した酸性次亜塩素酸水の, 各種菌株に対する殺菌効果をin vitroで比較検討した.強酸性水, 酸性次亜塩素酸水ともに10秒以内に芽胞を形成する菌以外は死滅させた.また強酸性水または酸性次亜塩素酸水の原液, およびこれを注射用蒸留水で段階的に希釈した両液の殺菌能とpH, ORP, 残留塩素濃度の変化を調べたところ, 強酸性水と酸性次亜塩素酸水との間に差異が認められなかった.また塩酸水に次亜塩素酸ナトリウムを種々の濃度に添加し, 残留塩素濃度を段階的に変化させた場合のpH, ORPを測定した.その結果, 強酸性水が殺菌作用を示すのに必要な条件として提唱されているpH2.7以下, ORP+1100mV以上という性状は, 塩酸と次亜塩素酸ナトリウムで容易に作り出せることがわかった.この酸性次亜塩素酸水は調製が非常に簡単で, 調製に必要な費用も強酸性水に比べてきわめて安価であり, 今後の利用価値は高いと考えられた.
著者
久保田 徳仁
出版者
日本比較政治学会
雑誌
比較政治研究 (ISSN:21890552)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.19-40, 2017 (Released:2020-01-29)
参考文献数
55

国連などが実施する平和維持活動(PKO)は、PKOを受け入れる紛争当事国だけでなく、要員を提供する国(要員提供国)にも影響を及ぼすことが知られてきた。近年様々な議論が行われているが、計量分析を用いて理論の一般的妥当性を検証する研究は始まったばかりである。本稿の目的はクーデタに関する先行研究とPKO要員提供国に関する先行研究を組み合わせ、計量分析を通じてPKOの要員提供がクーデタに及ぼす影響を検証することにある。理論的な分析を通じ、PKOがもたらす4つの効果である、軍への資源配分の増大、国内任務能力向上、部隊の分散、シビリアンコントロール規範の受容、を取り上げ、クーデタの発生、成否との関係を整理する。そしてPKOの要員提供の4つの効果は政治体制ごとに異なることを示す。計量分析を通じて「国連PKOへの要員提供はクーデタの『成否』に影響を及ぼすが、政治体制ごとにその効果は異なり、特に民主主義国では要員提供に伴いクーデタの成功率が下がり、非民主主義国では要員提供に伴いクーデタの成功率が高まる」ことを示す。
著者
下畑 享良 久保 真人 饗場 郁子 服部 信孝 吉田 一人 海野 佳子 横山 和正 小川 崇 加世田 ゆみ子 小池 亮子 清水 優子 坪井 義夫 道勇 学 三澤 園子 宮地 隆史 戸田 達史 武田 篤 日本神経学会キャリア形成促進委員会
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001533, (Released:2021-01-26)
参考文献数
24
被引用文献数
1

医師のバーンアウトに関連する要因を明らかにし,今後の対策に活かすため,2019年10月,日本神経学会はバーンアウトに関するアンケートを脳神経内科医に対して行った.学会員8,402名の15.0%にあたる1,261名から回答を得た.日本版バーンアウト尺度の下位尺度の平均は,情緒的消耗感2.86/5点,脱人格化2.21/5点,個人的達成感の低下3.17/5点であった.また本邦の脳神経内科医のバーンアウトは,労働時間や患者数といった労働負荷ではなく,自身の仕事を有意義と感じられないことやケアと直接関係のない作業などと強く関連していた.これらを改善する対策を,個人,病院,学会,国家レベルで行う必要がある.
著者
石黒 初紀 阿部 加奈子 辰口 直子 蒋 麗華 久保田 紀久枝 渋川 祥子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.95-103, 2005-02-15
被引用文献数
1

一般には炭火で調理されたものがおいしいと評価されることは多いがその根拠は明らかにされていない.そこで, 伝熱量および放射の割合を同等にした数種の熱源で鶏肉を焙焼し, 官能検査, においの成分分析を行った.さらに, 試料を焙焼する熱源から発生する燃焼ガスの成分分析を行った.官能検査の結果, においと総合的評価は[炭火焼き]と[ガス網焼き]を比較すると, 有意差は認められなかったが[炭火焼き]が好まれる傾向がみられ, さらにその匂いの差は識別できるものであった.そこで, においについて機器測定を行った.その結果, エレクトロニック・ノーズによる分析結果からセンサーが測定できるにおい成分の量は[ガス直火焼き], [ガス網焼き], [ヒーター焼き]は同等であるが, [炭火焼き]は他の熱源のものより低いことがわかった.このため, 炭火加熱により生じたにおいに何らかの違いがあることが考えられた.また, GC-MSによる分析結果から, 官能検査により炭火加熱をした鶏肉の方が好まれた要因は, 香気成分組成において好ましくないにおいを持つ脂肪族アルデヒド類の割合が焼き網に比べ少なく, 香ばしい香りを有するピラジン類やピロール類の割合が多いためと考えられた.鶏肉の焙焼香の違いの原因は, 燃焼ガスにあるのではないかと考え, 燃焼ガスの測定を行った.その結果, 炭の燃焼ガスには, 焼き網よりも還元性の強い一酸化炭素や水素が多く含まれ, 酸素の含有量が少なかった.なお, この燃焼ガスの組成の違いと香気成分の生成との詳細な関連についてはさらなる検討が必要である.
著者
久保田 謙作 高橋 祐 高橋 隆男 南雲 一也 伊藤 正喜
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_227-I_232, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
4

消波ブロックの安定性については,海岸構造物を保全するうえで最も重要な要素のひとつであり,これまで水理模型実験など多くの研究が行われ,それにより求められた安定数算定式は設計手法として一般的に用いられるようになっている.一方,厳しい海象による海岸構造物の被災は留まることはなく,特に,最近の異常気象による被災は大きく,現地に応じた波浪対策設計が求められている.本研究では,被災した消波ブロックの詳細な現地調査を行い,既往の安定数算定式から算出された数値との比較評価により適用性を確認するとともに,近傍のナウファスデータを換算して波浪データに用いる手法を示している.これらについては,当海岸と同様な急勾配で岩礁を有する礫海岸での設計検討において大いに参考となるものと考えられる.
著者
伊藤 安雄 久保田 泰雄 上原 吉男
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:18849644)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.9-18, 1976-01-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
41

放送用映像特殊効果も,ニーズの社会哲学的,芸術的追求とディジタル技術などの進歩により,新しい時代を迎えている.系統だてて考えられることの少なかったこの分野を,最近5年間に開発されたものを中心に整理し,制作技術者の立場から,その背景,現状と思想を述べ,画像処理技術の新分野への発展の指針とする.