著者
竹永 章生 伊藤 真吾 露木 英男
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.705-713, 1987-11-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

貯蔵中におけるきな粉の脂質の酸化防止に対する脱酸素剤の効果について検討するため,丸大豆からきな粉を調製し,これを試料として,脱酸素剤とともにガスバリヤー性の高いフィルム(KON/PE)に封入し(脱酸素剤区),25℃, 5℃, -25℃に150日間貯蔵し,きな粉TLの酸化指数および脂質組成の経時的変化について実験を行った.さらに,対照区として,含気包装した場合についても同様の実験を行い,比較・検討した.(1) 含気包装の対照区の場合,きな粉TLの酸化指数の経時的変化は,各貯蔵温度で,AV, POV, COVの増加,逆にIVの減少がみられ,この傾向は,貯蔵温度の高いほど顕著であった.一方,脱酸素剤区の場合では,25℃貯蔵の場合にPOVが経時的増加を示したが,その他の指数には大きな変化は認められず,さらに5℃, -25℃ではほとんど変化は示さなかった.(2) TLの脂質組成の経時的変化についてみると,対照区の25℃, 5℃貯蔵の場合,CL組成比の減少,逆にNL組成比の相対的増加が認められたが,脱酸素剤区の各貯蔵の場合および対照区の-25℃貯蔵の場合では,上記のような変化はほとんど認められなかった.(3) NLおよびCLの脂質組成の貯蔵に伴う変化については,対照区では,NL中のTG組成比の減少,逆にFFA, DG組成比の相対的増加,またCL中のPC, PE組成比の減少,逆に他の複合脂質組成比の相対的増加が認められた.一方,脱酸素剤区でも対照区の場合と同様の傾向が認められたが,その変化は小さいものであった.(4) TL, NLおよびCLの脂肪酸組成の変化についてみると,対照区でポリエン酸組成比の経時的減少,逆に飽和酸組成比の相対的増加の傾向が認められた.一方,脱酸素剤区では,脂肪酸組成には大きな経時的変化は認められなかった.
著者
塚本 健司 伊藤 裕和 林 志鋒 稲垣 修司 斎加 啓三 森 昌昭
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-13, 2003-05-25
参考文献数
12
被引用文献数
4

チャボ、シャモ、オナガドリ等の貴重な日本鶏を観賞用・品評会用に、手塩にかけて育てている愛鶏家が全国各地に多く存在する。また、地場産業活性化の一環として都道府県が開発した高級鶏肉用地鶏を、飼育し始めた養鶏家が近年増加する傾向にある。これまで鶏病研究会ではウズラ、キジ、七面鳥、ホロホロ鳥、烏骨鶏、アヒル、ガチョウ、バリケンについて、疾病と衛生対策の解説をまとめてきた。しかし、飼養規模は小さくても、飼養戸数が比較的多い愛玩鶏や地鶏の衛生対策についてはまとめられていない。そこで、鶏病研究会専門委員会では、2001年8~11月にかけて都道府県の養鶏試験場・種鶏場等、地鶏農家および愛鶏家を対象にして、愛玩鶏・地鶏の飼育や衛生対策の実態についてアンケート調査を実施した。また、鶏種によってワクチン抗体応答に違いがあるかについて調べた。本解説では、これらの情報と資料を基に、愛玩鶏・地鶏の衛生対策とその取組み方についてまとめた。
著者
嘉村 知華 伊藤 憲一
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.90, 2009 (Released:2009-12-01)

【はじめに】 脳卒中片麻痺患者にとって、日常生活で下肢装具の果たしている役割は大きい。今回、右片麻痺、重度感覚障害を有し、長期経過の中で反張膝を呈した症例に対し下肢装具の重要性を検討したので報告する。【症例】 40代後半主婦。H8年3月高血圧性脳出血(左被殻部)右片麻痺発症にてA病院入院。4月血腫除去術施行。同年5月、リハ目的でB病院入院。Br.stage 上下肢 II、右半身表在・深部共に重度鈍麻~脱失。右上下肢低緊張 Barthel index(以下BI)60点 車イス移乗、駆動 要少介助 歩行困難。 H10年1月、自宅退院。Br.stage 上肢 III 下肢 IV 感覚著変なし。動作時の右足内反底屈緊張強く、右下肢荷重時膝ロッキング(伸展0°)。Shoe horn装着一本杖歩行 屋内軽介助~監視にて可、屋外要介助、BI 80点。自宅退院後は当院外来リハ継続し、可能な家事を行い、活動的。屋内杖なし歩行まで可能となる。在宅生活おける活動性向上に伴い立位動作機会増。日常、装具は軽量で固定力の少ないRie-strapを汎用され、外出時のみShoe horn使用。【経過】 H15年頃より歩行時の右膝外側スラスト、膝ロッキングによる右立脚期の不安定性が目立ちはじめる。退院時より14kg体重増加。固定力強い装具提案するも本人拒否。右靴に外側フレア設置にて対応。H18年頃より転倒増。右反張膝15°に達し、装具再検討。H19年5月、反張膝矯正ベルト付きSemi Long Leg Brace(以下LLB)を作製。ズボン内側縫い目にファスナー設け、常用を促した。日常屋内活動では、LLB用いずRie-strap使用継続。徐々に右下肢支持性不安定となりH20年12月右下肢痛増強、歩行困難となる。BI 65点。H21年1月、LLBの必要性を説得し、日常使用開始。右下肢痛改善、BI 85点となる。【考察】 本症例は、重度右片麻痺、感覚障害、生理的関節の柔軟性、体重増加、そして家事遂行に伴う活動量の多さが長期的経過の中で反張膝を生じさせたと思われる。今回、自力脱着可能で常用的な反張膝のコントロールのための装具選定、導入に時間を要した。臨床場面では障害程度による将来的な関節変形等が予測される場合でも装具の必要性認識の乖離がPTと患者で存在することが度々ある。最終的には転倒増加や痛みの出現により装具必要性の本人理解を得、ADLレベルの維持につながったが、長期的視点で身体機能の変化を捉え、適応装具の提案と必要性を患者に伝わるよう理解を求める努力は重要である。
著者
高井 裕司 伊藤 糾次
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.723-726, 1984-08-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
9

透過電子顕微鏡法による断面構造の観察は,薄膜積層構造のみでなく,エピタキシャル成長層やイオン注入層の結晶構造の観察にも有力な手段である.本稿では,断面観察に必要な断面試料の作製手順,ならびに観察例として,多結晶Si/SiO2構造,Siイオンを注入したSi結晶に発生した欠陥の分布等を示した.
著者
伊藤 葉子 鶴田 敦子 片岡 洋子 高野 俊 宮下 理恵子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.9, 2009

<B>目的</B><BR>家庭科の女子のみ履修に抗して、家庭科の男女共学の実践に取り組んだ「源流」は京都府(1963年1校開始、1974年全面共修実施)の教師達であった。本研究では、ほぼ同時代(1970年代)に長野県の高校において、同じく自主編成の教育課程として男女共学家庭科の実現を導いた元家庭科教師たち5人のライフヒストリー研究に取り組む。元家庭科教師たちのライフヒストリーから、それぞれの人となりとその活動を明らかにしながら、なぜ各自が男女共学家庭科の実現に取り組んだのか、どのように男女共学実現を果たしていったのかを考察していく。また、その授業づくりにはどのような特徴がみられるのかを検討する。<BR><B>方法</B><BR>1960-70年代に長野県において男女共学家庭科の実現に関与した元家庭科教師5名に対して、一人約2時間のインタビュー調査を実施し、スクリプトを作成し、分析・考察を行った。この方法を用いることで、教師の価値観や動機および周囲の状況に対する理解が、その教師の実践にどのような影響を及ぼしたかを探求することが可能になる。加えて、同種の集団(ここでは、男女共学に取り組んだ教師たち)に属する複数のライフヒストリーは、互いに補い合うことができることから、個人史を超えて、社会状況の中での考察を可能にするものである。<BR><B>分析・考察</B><BR> <B>1</B> 当時の家庭科教育への疑問<BR>(1) 元家庭科教師たちは、その成長過程における家庭・社会環境の複合的な影響により、精神的な自立・自律心や、批判的に思考できる力を育くんでいった。これには、戦前からの伝統的性別役割観に基づいた女性の進路・進学の閉塞性への反発や、戦中・戦後の激動を中国で過ごした際の、差別と被差別の双方をみた経験に基づく、平等への志向が根底にあった。<BR>(2) この批判的思考力が、女子だけの家庭科履修や生徒たちの生活現実から遊離した当時の家庭科の教育内容への疑問につながっていった。<BR><B>2</B> 教師たちの学び合いと授業づくり<BR>(1) 元教師たちは、自主的な学習会や地域および全県的な研究会で出会い、個々に有してきた上記の疑問を、互いの学び合いの中で、単なる疑問から授業の創造の段階へと移行させ、自主編成の指導資料を作成するまでに至った。<BR>(2) 元教師たちの授業づくりには、大きく二つの特徴がみられた。一つは、女性への道徳教育の色合いが濃い、理論を有しない非科学的な家庭科の教育内容からの脱皮と、生徒の生活現実から出発し生活に帰結する家庭科の授業の創造である。<BR>(3) 個々の元教師たちの実践を支えたのは、家庭科を学びたいという男子学生の存在と、実際に男女共学を授業のなかで進める中で感じた手応えであった。<BR><B>3</B> 元教師達の根底にある教育観等<BR>(1) 男女共学家庭科の実現は、教師は教科書に書かれている知識・技術の伝達者であるという考え方から、教師が授業の創り手であるという考え方の転換だと捉えられる。<BR>(2) 家庭科の男女共学実現のための元教師たちの活動は、戦後の民主的な家庭を目指した男女平等実現への運動という側面と、家庭科が科学的理論体系を備えた教科となるための教科論の探求という側面を持っていると考えられる。<BR>
著者
大石 了三 江頭 伸昭 伊藤 善規 江頭 伸昭 伊藤 善規
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ポリエン系抗真菌薬のアムホテリシンBは、腎細胞膜のコレステロールに結合してポアを形成し、細胞内へのNa^+流入ならびに、小胞体およびミトコンドリア由来のCa^<2+>上昇を引き起こすことで、腎細胞にネクローシスを引き起こすことが明らかとなった。加えて、アムホテリシンBによる腎細胞内のCa^<2+>上昇およびミトコンドリア機能障害には、MAPキナーゼの活性化が重要な役割を担っていることが明らかとなった。
著者
伊藤 満敏 大原 絵里 小林 篤 山崎 彬 梶 亮太 山口 誠之 石崎 和彦 奈良 悦子 大坪 研一
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.576-582, 2011-12-15
参考文献数
31
被引用文献数
2 7

有色素米8品種(赤米4種,紫黒米4種)と対照のコシヒカリについて,抗酸化能(活性酸素吸収能(ORAC)およびDPPHラジカル消去能)の測定,ならびにフォーリン-チオカルト法を用いた総ポリフェノール含量の測定を行った.有色素米の抗酸化能は総ORACが58.0-169.4 &mu;mol TE/g-dry weight,DPPHラジカル消去能が10.8-52.2 &mu;mol TE/g-dry weightの範囲であり,いずれも「コシヒカリ」の24.9および2.5 &mu;mol TE/g-dry weightに比べて著しく高かった.総ポリフェノール含量とH-ORACおよびDPPHラジカル消去能には高い正の相関(<I>r</I>=0.984および<I>r</I>=0.948,<I>p</I><0.01)があり,H-ORACとDPPHラジカル消去能との相関性も高かった(<I>r</I>=0.946,<I>p</I><0.01).また赤米からはプロアントシアニジンが,紫黒米からはアントシアニンが検出され,これらポリフェノール成分含量と抗酸化能との相関も高かった.5品種の有色素米において,収穫年の違いにより抗酸化能およびポリフェノール含量は増減したが,品種間の大小関係への影響は少なかった.以上の結果より,有色素米が抗酸化能の供給源として有用であり,その主要な抗酸化成分はポリフェノールであることが示唆された.
著者
梅村 和弘 菅原 和夫 伊藤 巌
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.836-840, 1989-09-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
19

雄牛が発情牛を識別する際の,視覚,嗅覚,聴覚の役割について検討した.1. 並べて繋留した発情牛と非発情牛の後方5mから雄牛を放し,雄牛がどちらの雌牛を選択するかを調査した.次に,両雌牛の後方数cmのところに寒冷紗の幕を張り,通気性はあるが,雄牛が直接視覚で雌牛を捉えられないようにし,同様の調査を行なった.その結果,寒冷紗の幕を張った場合でも,雄牛は雌牛に接近し,臭いをかぐなど若干の探索行動をした後,正確に発情牛を識別した.2. 並べて繋留した発情牛と非発情牛の頭部以外を透明ビニールシートでおおい,その後方から雄牛を放した,その結果,雄牛は両雌牛に興味を示し接近するものの,発情牛を識別することは不可能であった.3. パドック内の両端に置いた2台のテープレコーダーから,雄牛に発情牛と非発情牛(子牛に対する母牛の鳴き声)を同時に聞かせた.その結果,いずれの鳴き声にも興味を示し接近したが,発情牛の鳴き声に特に誘引されるということは見られなかった.以上の結果から,雄牛は遠方からは視覚,あるいは聴覚により雌牛の存在を知り接近するものの,発情牛の識別には嗅覚が重要な役割を担っているものと考えられた.
著者
鈴木 伸忠 伊藤 肇 坂井 上之 越智 茂博 梁川 範幸
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.474-482, 2020 (Released:2020-05-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1

We report on the construction of a system for managing prior information and injection condition used for contrast enhance CT examination using radiology information system (RIS). Contrast dose administration system using the RIS was possible to retrospectively investigate optimal injection conditions from the database. As the prior information, we designed the patientʼs profile information of the hospital information system (HIS) to reflect the patientʼs height, weight, and kidney function (eGFR, Cre), which is necessary information for contrast enhance CT examination, in the RIS. By adding E-Box (DICOM Gateway) to the injector, it became possible to reflect the amount of contrast agent used in patients and injection conditions at contrast enhance CT examination. The contrast agent use information is transmitted to RIS by using modality performed procedure step (MPPS). Database of injection condition at contrast enhance CT examination using the RIS, to determine the optimal injection conditions retrospectively. By utilizing the massive amount of clinical information stored in the RIS, the amount of contrast agent and injection condition at contrast enhance CT examination could be optimized. Reproducibility of the contrast effect can be secured. In the CE, evidence system linked with RIS, when considering the reproducibility at follow-up observation and comparative diagnosis in clinical practice, the contrast effect could be made constant. Contrast dose administration system using the RIS was useful.
著者
伊藤 豊
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.40-48, 1992
被引用文献数
2

ファクシミリ放送の標準方式について, パケット構成とフレーム行列, ファクシミリ信号の時系列構成と変調の諸元などについて, その選定理由を述べ, さらに伝送特性や有料方式, 放送局設備と受信機構成, メティア特性とサービスの形態などについて解説する.
著者
伊藤 大貴 川邊 淳子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<目的>消費行動をとる場合は,その過程で多くの意思決定を含んでいる。そこで本研究では,大学生と中学生を対象とし,筆箱の中身からニーズとウォンツの調査を実施し,その違いを明らかにすることを目的とした。<方法>調査対象は本学学生127人およびA中学校56人,調査時期は2016(平成28)年1月ならびに2017(平成29)年1月,調査方法は自記式質問紙法, 集計・分析方法はExcel2010を用いた。<結果>各文房具類の所有数ごとに「指定単価」をかけ,「授業中と授業以外でも使う」,「授業中に主に使用」,「授業以外で主に使用」および「入れているだけであまり使わない」で,所有数ごとに,その金額に頻度の割合「0.8」,「0.6」,「0.4」および「0.2」をそれぞれかけて小計を算出し,それらを合計して「使用頻度別に見る金額」を算出した。所有する文房具類の合計金額は,大学生は最高6,300円,最低310円であり,平均1,762円であった。一方中学生は,最高10,699円,最低1,140円,平均4,691円となり,すべてにおいて中学生が大学生を上回った。また,使用合計金額を所有合計金額で割った利用価値においては,利用率が大学生は20~60%が66.1%,61~80%が33.9%,一方中学生は,20~60%が57.1%,61~80%が42.9%となり,中学生の方が利用率は高い傾向にあった。所有文房具は,中学生の方がシャープペンシルなどにおいて,高額なもので数も豊富に有していたが,大学生は中学生よりも低額で精選されたものを所持する傾向にあることが分かった。
著者
伊藤 和寿
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.639-644, 2015-09-10 (Released:2015-09-25)
参考文献数
21
著者
小川 浩司 松崎 道男 宮下 裕子 本村 茂樹 伊藤 章 大久保 隆男 丸田 壱郎 児玉 文雄
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.398-410, 1987-05-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
12

白血病治癒の主要薬剤であるDaunorubicin (DNR) の代謝, 分布, 排泄を知るために, 白血病患者にDNR 40 mgを3分間で静注し, 血中濃度 (血漿中, 赤血球中濃度), 尿中排泄を高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いて測定した。 同時に3コンバートメントオープンモデルを用いて血中濃度の薬物動力学的解析を行ない, 以下のような結果を得た。1. DNRの血漿中, 赤血球中濃度のピーク値は5分後にあり, 各々228.00±204.00ng/ml, 237.00±111.00ng/gであった。 血中濃度曲線は, α, β, γの3相を呈した。 血漿DNRの半減期は, α相0.0351±0.0157 hr (約2分), β相1.83±2.01 hr, γ相15.8±8.4 hrであった。2. DNRの主要代謝物は, Daunorubicinol (DNR-OL) であり, その血漿中, 赤血球中濃度のピーク値は, 96.50±62.90 ng/ml, 205.00±115.00 ng/gであった。 2時間値で, DNRの血漿中濃度は20.00±15.80 ng/ml, DNR-OL 41.40±27.20 ng/mlで, 赤血球中濃度は40.00±19.50 ng/g, 40.20±13.60 ng/gであり, 2時間以後では, DNRよりDNR-OLの濃度が高値となることが示された。3. 3コンパートメントオープンモデルの解析結果では, DNRの体循環コンパートメントから組織コンパートメントIIおよびIIIに対する移行速度定数K12, K13は大きく, 逆に組織II, IIIから体循環コンパートメントへの移行速度定数K21, K31は小さく, DNRは速やかに組織に移行し, 組織に高濃度に保持され, 放出は緩やかであることが考えられた。 また, 体循環コンパートメント分布容量V1は, 組織コンパートメント分布容量V2+V3に比べ極めて小さく, 投与されたDNRの多くが組織に分布することが示唆された。4. 尿中排泄率は, 24時間においてDNR 6.33±2.93%, DNR-OL 5.30±2.48%で, 総排泄率は, 11.8±5.1%で尿中への排泄は少ないことが示された。
著者
伊藤 まり 相馬 啓子 小関 芳宏 池上 奈歩
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.186-189, 2010 (Released:2011-11-30)
参考文献数
14

他覚的耳鳴は身体内部に耳鳴となる明らかな音源がある場合で、他覚的耳鳴は筋性耳鳴、血管性(拍動性)耳鳴、その他に分けられる。血管性(拍動性)耳鳴は脈拍と一致しており、原因疾患として局所疾患と全身疾患に分けられ、全身疾患による拍動性耳鳴は循環動態の変化と関係があり、貧血や甲状腺機能亢進、beri-beri(ビタミンB1欠乏症)、褐色細胞腫、妊娠が挙げられる。全身疾患による拍動性耳鳴が他覚的に聴取されることは極めて稀である。今回、我々は子宮筋腫に伴う不正出血、貧血により、左他覚的拍動性耳鳴を引き起こし、子宮筋腫摘出術後、貧血の改善に伴い耳鳴が改善した症例を経験し、その耳鳴音を記録、解析し得たので報告する。