著者
佐藤 良明
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.287-309, 2017-07-31

「キング・オブ・ロックンロール」として君臨する間エルヴィス・プレスリーは, ポップ音楽業界だけでなく, アメリカ史を通して国民国家を分断してきた溝を二重に跳び越える文化英雄だった。南部の貧農の子が目映い世界のスターになったというだけでなく, それを「ヒルビリーの伊達男」に, 即ちサム・フィリップスのいわゆる「真正な黒人のサウンドと黒人の感触をもつ白人」になることをもって達成したのである。どうしてそんなことが可能だったのか。ポップ・ミュージックは, イメージの生産と購入を特徴とする新しい経済の中心部分をなすが, 1950年代後半の時期にエルヴィスの声と身体は, 何百万ものティーンエイジャーの心を動かして都市の黒人文化への渇望をかき立てた。顕著に黒人的な音楽スタイルを身にまとった彼は, これをカントリー音楽において展開してきた熱情的で一途な歌唱とブレンドした。彼が引き起こしたロカビリーの熱狂を日本のポップ市場に引き入れようとする初期の試みは, 社会的・歴史的な事情から成功したとは言えない。しかし, 日本にロックビートが浸透する1960年代後半には, 内向きの歌謡曲に新しいジャンルが登場する。森進一, 青江三奈らの歌唱は, 日本の伝統的な芸能力学を, エルヴィスの3連符の震えを含むR&Bの音楽的イディオムと接合するものであった。後に「演歌」と呼ばれるもののルーツを分析する中で我々は, エルヴィスが与えた文化横断的なインパクトの大きさを改めて目撃するだろう。My lecture is an invitation to see Elvis Presley as a trickster who, during his reign as king of rock 'n' roll, doubly crossed the gaps embedded not only in music industry but more profoundly in the nation itself throughout its history. Not only did the poor Southern boy become the flashy international hero but he did so by becoming a "hillbilly cat" or, in Sam Phillip's words, "a white boy with authentic Negro sound and Negro feel." How was that possible ? We look at pop music as an essential part of the new economy that featured production and purchasing of images. In the late 1950s Elvis's voice and body stirred the desire of millions of teenagers to transgress into the urban black culture. We examine how Elvis's singing came to assume the conspicuously black styles and how he blended it with the passionate, sincere singing developed in country music. The attempts to graft the rockabilly craze to the contemporary Japanese pop market was only partially successful for social and historical reasons. However, in the latter half of the1960s as Japan became more exposed to the rock beat, a new domestic-oriented genre emerges. The performances of Mori Shin'ichi and Aoë Mina combine traditional Japanese body dynamics with musical idioms of R&B including Elvis's vibration in triplets. By tracing the roots of what was later to be called Enka, we will once again witness the tremendous crosscultural impact Elvis made on the inhabitants of this planet.
著者
谷 泰弘 澤山 翔 山口 幸男 佐藤 康治
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.503-504, 2008

研削砥石をユーザニーズに合わせて製造されているために多種少量生産となっている。これを効率よく生産するテイラーメイドマニュファクチャリングに関して検討を行っている。まずは結合度を最終工程で変化させることに関して試みた。
著者
谷 泰弘 金 泰元 澤山 翔 蔦中 孝丞 山口 幸男 佐藤 康治
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.76, no.762, pp.453-458, 2010
参考文献数
5

In order to reduce the costs in wheel manufacturing and on usage of the wheels, we investigated the method of adjusting the sharpness of grinding wheels by using heat treatment and UV treatment. At first it was confirmed that heat treatment of phenol resin grinding wheels for aluminum in a furnace enabled to improve the grindability of stainless steel and to prevent swarf loading. Next it was made clear that surface treatment of grinding wheels by using UV irradiation and hot air blowing had the similar effect with the heat treatment in a furnace. These treatments reduced the force ratio in surface grinding. In these cases the affected layer was limited to the wheel surface though heat treatment in a furnace affected the whole wheel. The thickness of the layer varied with the UV irradiation time. At last we applied this technique to other resinbond wheels and the same effect was obtained for the wheels with polyester bond. However heat treatment did not improve the grindability of epoxy bond wheels with high heat resistance. In such case UV treatment was an effective method to activate flow-out of swarf.
著者
野呂 志津子 山口 智子 佐藤 奈津美 猪股 里美 成田 全 松江 聖乃 川崎 くみ子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.59-63, 2013-08-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本研究は,ボックスシーツのずれやしわの発生状況を従来のシーツ (以下,基準シーツ) と比較検証することにより,ボックスシーツのほうがしわやずれが少なく使用していくことができるかを明らかにすることを目的とした.健康成人女性22名 (平均年齢24.0±3.0歳) を対象に,ずれ測定部位に印をつけたボックスシーツと基準シーツを用い,60分臥床と30分ヘッドアップを行い,おのおのずれとしわを測定した.結果,両シーツともベッドに対し横方向にくらべ,縦方向のずれが大きく,シーツ中央のしわは他のエリアよりも有意に多かった (p <0.05).ヘッドアップ時はシーツ下方より上方のしわが有意に多く (p <0.05),上方より下方のずれが有意に多かった (p <0.05).臥床時のしわはシーツ中央と下方でボックスシーツが有意に少なかった (p <0.05).以上より,頭側が袋状になりベッドメーキング時足元を適度な力で牽引できるボックスシーツは基準シーツにくらべ,外観上しわが少なく,ずれは同様であり,患者が療養生活を行ううえでボックスシーツも活用できると確認できた.
著者
白浜 龍興 大庭 健一 岸本 幸次 山田 省一 佐藤 亮五 中野 真 加藤 雅士 古川 一雄 長谷川 和子 村越 明子 箱崎 幸也 真方 良彦 中川 克也
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.881-890_1, 1988

著者らは昭和53年より厳しい環境の下で行われる,いわゆるレンジャー訓練の前後に上部消化管内視鏡検査を施行し,上部消化管に急性病変が認められることを経験している.9年間のレンジャー訓練生421名中,胃潰瘍36例(8.5%),十二指腸潰瘍25例(5.9%),胃十二指腸潰瘍5例(1.2%)を認めた,これらのうち急性胃潰瘍41例(5例は十二指腸潰瘍と併存)について検討した.単発30例(73.2%),多発11例(26.8%)で62病変であった.62病変のうち胃角小彎に29病変(46.8%)が認められた.内視鏡的経過観察をみると治癒に8週以上を要した治癒遷延例は6例(14.5%)で胃角小彎の潰瘍が4例,胃角部と胃体部の多発性潰瘍1例,胃角部から胃体部の帯状潰瘍が1例であった.この6例中4例が再発(同部位再発,再発誘因は演習)し,うち2例が慢性潰瘍化したと考えられた.
著者
安廣 重伸 佐藤 俊彦 田中 啓充 上野 亜紀 鶴岡 浩司 西江 謙一郎 柚上 千春 江戸 優裕
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab0709, 2012

【はじめに、目的】 臨床場面において、足底板やテーピング等を用いて腓骨の操作をすることで、下肢の前額面上の運動をコントロールする場面を経験する。これに関する先行研究では、上島ら(2007)は入谷式足底板での外果挙上が、歩行時の骨盤の外方加速度を減少させたと報告し、腓骨の挙上が近位脛腓関節を介して脛骨を内上方に向って押し上げる力になった事をその要因として挙げている。このことから、腓骨の挙上または下制は、脛骨を介して膝関節の内外反運動に影響を及ぼす事が考えられる。そこで本研究では、膝の内反ストレスによって進行する(Andriacchi ら2004)とされる変形性膝関節症(以下膝OA)の症例を対象に、レントゲン画像を用いて脛骨に対する腓骨の高位と膝関節のアライメントの関係性について検討を行ったので報告する。【方法】 対象は2009年8月から2011年10月に当院で内側型膝OAに対し、片側人工膝関全置換術(以下TKA)を施行した症例のうち、レントゲン画像の使用に同意を得る事の出来た20名(40肢、男性5名、女性15名、平均年齢75±7.1歳)とした。対象者のTKA施行に際して医師の処方の下、術前検査の目的で放射線技師により撮影されたレントゲン画像(膝関節正面像・側面像・下肢全長の正面像)を用いて、以下の項目を計測した。計測項目は、腓骨下制量・腓骨長・Femoro-Tibial Angle(以下FTA)・Femoral Condyle-Femoral Shaft angle(以下FC-FS)・Tibial Plateau-Tibial Shaft angle(以下TP-TS)・Femoral Condyle-Tibial Plateau angle(以下FC-TP)・Posterior Proximar Tibial Angle(以下PPTA)とし、1mm及び1度単位で計測した。尚、腓骨下制量は、腓骨長軸に対して腓骨頭の外側隆起部及び脛骨高原最外側部からの垂直線をひき、成された2つの交点の距離として定義し計測した。そして、体格の影響を排除する目的で、腓骨下制量を腓骨長で除し、更に百分率で表すことで、腓骨下制率を算出して分析に使用した。統計学的分析にはFTA・FC-FS・TP-TS・FC-TP・PPTAの各々における左右差と腓骨下制率に関係があるかを対応のあるt検定を用いて検討した。尚、各項目において左右差がなかった対象者は群間比較からは排除して分析した。また、各膝関節アライメントと腓骨下制率に関係があるかをPearsonの積率相関係数を用いて検討した。有意水準は危険率5%(p<0.05)で判定した。【説明と同意】 対象者には本研究の主旨を説明し、レントゲン画像の使用に書面にて同意を得た。【結果】 計測の結果、腓骨下制量は28.1±4.2mm・腓骨下制率は8.7±1.2%であった。膝関節アライメントの指標として挙げた、FTAは181.4±3.9度・FC-FSは83.6±3.2度・TP-TSは94.5±3.5度・FC-TPは3.9±2.1度・PPTAは81.3±4.8度であった。膝関節アライメントの左右差と腓骨下制率の関係については、FTAの左右差による分類において有意な群間差を認め、FTAの大きい側の腓骨下制率は大きいことが分かった(p<0.01・n=19:1名は左右差なし)。FC-FS・TP-TS・FC-TP・PPTAの左右差による分類ではと腓骨下制率に群間差は認められなかった。膝関節アライメントと腓骨下制率との関係については、FC-FS・TP-TS・FC-TP・PPTAの全項目において有意な相関を認めなかった。【考察】 本研究の結果、左右の比較においてはFTAと腓骨の高位に関係が認められた。上島ら(2007)の研究を踏まえると、FTAの増大により腓骨が下制させられるのではなく、腓骨を上位で維持できなくなる事で、歩行時の膝関節外方化の是正が困難となり、内反ストレスが増大することで、FTAが増大すると考える。即ち、腓骨の挙上によって膝関節の内方化、腓骨の下制によって膝関節の外方化を促せる可能性があると考える。このことから、FTAなどの骨形態の変化がない場合でも、膝関節の内外反ストレスをコントロールする目的で腓骨の高位を操作することは効果が期待できると考えている。【理学療法学研究としての意義】 本研究により腓骨の高位とFTAに関係が認められ、腓骨の挙上は歩行時の膝関節の外反運動を生じさせ、下制は内反運動を生じさせると推察された。膝関節のアライメントを評価・治療する際、腓骨の高位を把握する事は重要であり、特に今回対象とした膝OAにおいては臨床的に有用と考える。
著者
佐藤 栄子 細金 佳子 佐藤 加代美 尾見 朝子 片桐 善陽
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.88, 2007

_I_ はじめに 当病棟は脳血管疾患などにより、片麻痺、四肢麻痺の患者が多数を占めている。上肢に麻痺がある場合、手掌部が屈曲、拘縮により湿潤し不潔になりやすく悪臭を伴いやすい。そこで、消臭、除湿、空気清浄化に効果があり、安全、安価で洗って再利用できるという利点を持つ木炭を用いて、消臭効果を試みた。_II_ 研究目的:木炭パックを使用することにより、麻痺側手掌の不快臭が軽減でき、有効性を知る。_III_ 研究方法1 対象患者 手指拘縮の患者男性2名 女性1名2 調査方法調査期間 平成19年2月18日~2月24日麻痺側の手掌内に木炭パックを握らない状態で入浴当日の入浴前後、入浴後の3日間を6段階臭気強度表示法を用いて職員5人が測定し平均値を出す。次に木炭パックを使用した状態で同様に調査を行う。_IV_ 結果A氏は、木炭パック未使用時の一番高かった数値は3.2であった。入浴直後は1.4、木炭パックを使用してから1、2日目は徐々に減り3日目は0までいった。B氏は、木炭パック未使用時の一番高かった数値0.4であった。入浴直後は0に減ったが、木炭パックを使用してから3日間ともに数値の変化が少なく、3日目は0.4となった。C氏は、木炭パック未使用時の一番高かった数値は3.6であった。入浴直後は0.2、木炭パックを使用してから1日目が0まで低下。しかし2日目は4.2と増加し、3日目には1.6となった。_V_ 考察今回、木炭を使用して、手掌内の不快臭を消臭できるかと研究を試みた。対象となった患者は全員、週2回の入浴のみであり、手掌内が汚れていない限り手洗いは行っていない。また、見た目の変化も少ないことから臭気における対策ができていなかった。入浴前の不快臭は強く、入浴により不快臭が減少し、時間、日数が経過とともに不快臭の数値が上昇するものと考えていた。結果、3人の対象患者の手掌内の不快臭の消臭効果は木炭パック使用前に比べて数値的に効果があったといえる。A氏B氏共に使用後の数値はほぼ無臭に近い少数点での平均値を出すことが出来た。C氏は研究途中の2日目に木炭パックが手掌内から外れていたため、数値がその日だけ異常に上昇していたことが予測できる。外れていると効果がないということであり、例え短時間でも外れていた場面で数値は上昇し、その後装着した翌日には数値は減少した。このことから、木炭パックの消臭効果は高いといえる。しかし、麻痺側の手掌内に木炭パックを装着するということは容易に出来ることではなく、今後は握らせ方の工夫が必要である。今回は臭いを6段階臭気強度表示法を使用し平均値を出すという方法で行ったため、臭覚の個人差は少なかった。木炭の消臭効果により数値的変動は少なく、おおむね不快臭は軽減できる結果が出た。 _VI_ 結論木炭には消臭の効果があり、その効果は麻痺手の不快臭の軽減にも有効である。麻痺側手掌だけではなく棟内のさまざまな臭いの消臭に木炭を活用することで、良い療養環境を提供していきたい。
著者
鈴木 雅寿 菅原 庸平 佐藤 美恵 森 俊文 杉原 敏昭 春日 正男
雑誌
情報処理学会研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.14(2006-MBL-036), pp.181-184, 2006-02-16

This paper describes an experimental verification of the lip-synchronization effect in the auditory compensation system for the elderly people. Because the aging effect to the human sensory mechanism the functionality of the elderly people's sensation is declined. The auditory sensation is also declined. Many of the elderly people have difficulty with a listening in the radio or TV program. Recent digital media technology can compensate such declined auditory functionality. The compensation mechanism regulates a speech speed. However in the television system there is well known problem that is called lip-synchronization problem. Our previous related work already evaluated the efficiency of the speech speed controlled compensation method for the broadcasting equipments but we also confirmed unnatural feelings with the lip-synchronization skew. So we intend to verify the lip-synchronization effect in the speech speed controlled compensation method by using a subjective assessment. In this assessment we used psychological index for evaluating the unnatural feelings corresponding to lip-synchronization skew. As a result of this assessment we can evaluate the unnatural feelings quantitatively also discuss the relationship between the lip-synchronization skew and the subjective impression.

1 0 0 0 OA 尚書欄外書

著者
佐藤, 一斎
出版者
巻号頁・発行日
vol.[3],
著者
小野 寛之 佐藤 雄己 大山 展弘 中原 良介 倉成 正恵 伊東 弘樹
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.7-12, 2016 (Released:2016-06-13)
参考文献数
8

Background: Because generic medicines reduce the financial burden on patients and medical insurance providers, they become more popular year after year.  However, there are still few reports that analyze the efficacy and safety of generic medicines, especially in terms of their characteristics and side effects.Methods: Paclitaxel is an antineoplastic frequently used with good results in the treatment of breast cancer, ovarian cancer, gastric cancer, and angiosarcoma, but fat solubility is high and various kinds of adverse events, such as myelosuppression and arthralgia, peripheral neuropathy, and alcohol hypersensitivity are known to develop.  We investigated the efficacy, characteristics, and the incidence of adverse events for the generic product of paclitaxel.Results: Differences were found for the generic version in terms of the characteristics and preparation time.Conclusion: The incidence of adverse events was not significant, suggesting that the generic version could be a reasonable substitute.
著者
平藤 雅彦 佐藤 洋一 南 勝
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.114, no.6, pp.357-363, 1999 (Released:2007-01-30)
参考文献数
9
被引用文献数
2 4

全身のセロトニン(5-HT)のおよそ90%は腸管に分布し,そのほとんどは腸クロム親和性(EC)細胞の顆粒内に局在している.EC細胞は小腸粘膜に散在するため5-HT遊離機序と細胞内カルシウム濃度の関連などその細胞内情報伝達系の基本的な点も不明である.本稿ではマウス小腸よりEC細胞が散在する陰窩標本の分離法と,その細胞内カルシウム動態解析法を紹介する.マウス回腸切片を摘出し筋層を剥離した後,コラゲナーゼ処理を行って粘膜組織を消化する.その後駒込ピペットで適度なピペッティングを加えて組織を分散させる.陰窩標本の分離法で重要なポイントはこのコラゲナーゼ処理とピペッティングの条件である.陰窩標本は長軸100 μm前後,短軸50 μm前後の長細い壷状をした数十個の細胞集団であるが他にも大小の上皮細胞塊,破壊細胞などが混在しているので,110 号(160 μm)と30 号(30 μm)のナイロンメッシュで分別して陰窩標本を集める.得られた陰窩標本を抗5-HT抗体を用いた蛍光抗体法で免疫染色して共焦点レーザー顕微鏡で観察すると,1個の陰窩標本に0~3個ほどのEC細胞が同定される.陰窩を構成する細胞の細胞内カルシウム動態解析には,蛍光顕微鏡画像解析装置を用いる.陰窩標本を底面が無蛍光ガラスになっている測定用チャンバーに接着物質(Cell-Tak)で接着固定し,蛍光カルシウム指示薬としてfura-2を用いて蛍光画像データを取る.用いた陰窩標本が後でわかるようにマーキングし,パラホルムアルデヒドで固定し,免疫染色してEC細胞を同定する.蛍光画像データからEC細胞での蛍光変化を再度解析することによりEC細胞での細胞内カルシウム動態が解析できる.本方法は他の消化管ホルモンを含有する様々な内分泌細胞にも応用可能と考えられる.
著者
佐藤謙次 細川智也 関口貴博 鈴木智
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
第49回日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
2014-04-29

【目的】膝前十字靱帯(ACL)再建術後再断裂の危険因子に関する報告は散見されており,低年齢やスポーツ活動レベルの高さが指摘されている。一方,ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツの再断裂率は高いとされており,コンタクトスポーツとノンコンタクトスポーツでは傾向が異なることが予測される。しかし,スポーツカテゴリーの違いが再断裂に及ぼす影響に関する報告は渉猟し得ない。本研究の目的はACL再建術後の再断裂の危険因子を明らかにすることである。【対象と方法】対象は当院において2005年から2010年に膝屈筋腱を用いた初回解剖学的二重束ACL再建術を受け2年以上経過観察可能であった949例(男性500例,女性449例:平均年齢26.5歳)とした。両側ACL損傷例,再再建例は除外した。診療記録より再断裂の有無を調査した。再断裂は担当医が理学所見,KT2000,MRI,関節鏡所見から総合的に判断した。性別,年齢(18歳以下・19歳以上),スポーツレベル(競技レベル・レクリエーションレベル),スポーツカテゴリー(コンタクトスポーツ・ノンコンタクトスポーツ)に分けて再断裂率を算出した。なお,練習回数が週4回以上を競技レベル,週3回以下をレクリエーションレベルとした。また,コンタクトスポーツは,フルコンタクトスポーツとリミテッドコンタクトスポーツを含んだものとした。統計学的解析は,再断裂率を項目ごとに両群間でχ2検定を用いて比較した。また,多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を用いて,再断裂の危険因子を抽出した。目的変数を再断裂の有無とし,説明変数を性別,年齢,スポーツレベル,スポーツカテゴリーとした。なお統計ソフトはR2.8.1を用い,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づいて行い,データの使用にあたり患者の同意を得た。個人情報保護のため得られたデータは匿名化し,個人情報が特定できないように配慮した。【結果】再断裂は949例中45例に認められ再断裂率は4.7%であった。性別(男性4.2%,女性5.3%)において男女間に有意差は認められなかった。年齢(18歳以下8.1%,19歳以上2.8%),スポーツレベル(競技レベル8.1%,レクリエーションレベル2.3%),スポーツカテゴリー(コンタクトスポーツ5.8%,ノンコンタクトスポーツ2.7%)において両群間に有意差が認められた(p<0.05)。多重ロジスティック回帰分析の結果,スポーツレベルとスポーツカテゴリーが危険因子として選択された(モデルχ2検定:p=0.000)。スポーツ活動レベルのオッズ比は3.4,スポーツカテゴリーのオッズ比は1.8であった。【考察】ACL初回損傷において女性は男性よりも2~8倍受傷リスクが高いことが知られているが,再断裂については男女間に有意差はなく危険因子としても抽出されなかった。したがってACL再建術後のスポーツ復帰に際しては男女ともに同等に注意を要すると思われた。2群間の比較において低年齢,競技レベル,コンタクトスポーツが有意に高い再断裂率を示したが,ロジスティック回帰分析による危険因子の抽出では,低年齢は選択されず,競技レベルとコンタクトスポーツが選択された。これはステップワイズ法により多重共線性をもつ低年齢が除外されたものと解釈できる。一方,スポーツレベルについては過去の報告と同様に危険因子として抽出され,競技レベルはレクリエーションレベルよりも3.4倍再断裂のリスクが高いことが明らかになった。さらにこれまで指摘されてこなかったスポーツカテゴリーにおいて,コンタクトスポーツが危険因子であることが新たに明らかになった。得られたオッズ比からコンタクトスポーツはノンコンタクトスポーツよりも1.8倍再断裂のリスクが高いことが分かった。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果から,競技レベルとコンタクトスポーツの選手がハイリスク群として抽出された。したがってこれらに対して集中的に再断裂予防策を講じることが効率的・実用的と考える。競技レベルはレクリエーションレベルより3.4倍,コンタクトスポーツはノンコンタクトスポーツよりも1.8倍再断裂のリスクが高いことを患者に対しても説明可能であり,術後理学療法を円滑に進める一助になると考える。とくにスポーツの種類により再断裂率が異なることを新たに証明できた意義は大きいと考える。
著者
佐藤 尊文 森本 真理 伊藤 桂一 野々村 和晃
出版者
秋田工業高等専門学校
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、(1)カメラで数式を読み取り3次元グラフを表示するソフトの開発、(2)空間図形認識能力を評価するような指標の構築、(3)3次元グラフに関連する授業コンテンツの開発と社会への発信、という3つの内容からなる。3次元グラフの板書は難しく、導入時の授業で図形をイメージすることができずに、苦手意識のまま克服できない学生が多い。3次元グラフ表示ソフトはいろいろあるが、それぞれ数式の入力方法が異なり、授業などに導入する際には、使い方の説明に多くの時間が取られる。本研究は、(1)~(3)によって、空間図形に対する学生の苦手意識を減らし、能動的学修を推進する教育コンテンツの研究開発を目的とするものである。(1)について、平成29年度は、前年度に引き続きWindowsをOSとする端末でのソフト開発を進めた。カメラで撮った画像からの数式抽出、取得した数式が表すグラフのAR(拡張現実感)技術による特定のマーカ―への表示、タップやドラッグでグラフをいろいろと変化させる機能などについて、改良作業を行なった。また、カメラで読取ができない場合に対応し、手書き入力機能の開発を行ない、十分な精度で手書き入力ができるようになった。(2)について、平成29年度は、前年度に構築した評価指標に基づくCBT(Computer-Based Testing)を作成し、(1)のソフトを未利用の学生に対してこのCBTを実施し、指標の再検討を行った。(3)について、平成29年度は、高専シンポジウムにおいて(1)のソフトのデモを行い、実際に使ってもらって好評を得た。最終年度には、(1)のソフトを用いた授業設計シートの作成およびe-learningなどの自主学習のために利用できるコンテンツの開発を予定している。
著者
星野 澄人 森谷 雅人 今井 直人 佐藤 茂樹 永楽 仁 片場 嘉明 小柳 泰久
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.393-397, 1997-02-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
17

胃石イレウスは比較的稀な疾患であり,術前診断が困難なことが多い.今回われわれは,胃石による小腸イレウスの1手術例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は63歳男性,数日前より嘔気,嘔吐を繰り返し,症状の増悪を認めたため近医受診し,上部消化管造影を施行したところ十二指腸下行脚に陰影欠損を認め,十二指腸腫瘍によるイレウスの疑いで当院紹介入院となった.上部消化管内視鏡を施行したところ,十二指腸下行脚には病変は認めず,鉗子孔からのガストログラフィンによる造影で,空腸に体位にて移動する陰影欠損を2カ所確認した.以上により,異物(胃石)イレウスと診断し自然排出を期待して保存的治療を試みたが9日間経過しても排出されず,外科的療法(胃壁切開)により,計5個の胃石を摘出した.摘出した胃石の成分分析よりタンニン98%の結果を得,柿の常食の嗜好もあることから,柿胃石によるイレウスと診断した.
著者
鈴木 英二 中挾 知延子 近藤 邦雄 佐藤 尚 島田 静雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.61-62, 1996-03-06
被引用文献数
2

本研究の目的は、漢字1字単位の電子化漢字シソーラスを構築し、それを日本語文章の語句解析へ利用することである。従来の日本語電子化シソーラスは、名詞を中心に単語別に分類したものが多い。人間の大人の平均的な語彙数は約4万語であり、大量の新語が毎年生ずることを合わせて考えてみると、そのシソーラスのサイズは莫大なものとなる。そこで、我々は日本語の単語を構成する文字、特に漢字に注目した。漢字は表意文字であり、1字のみで最小の単語の役目を持っている。通常、文章で使われる漢字の総数はJIS第1水準で約3000字であり、これは英米語の基本単語数とほぼ一致する。同時に漢字は、日本語文章において仮名と組み合わせることによって、名詞・用言などの自立語を構成できる柔軟性がある。さらに、漢字には訓読みが与えられており、和語として日本語の語彙を広範に表現できる。その漢字の造語能力の高さが、大量の新語が生ずる原因ともなっているが、新しい漢字の発生とその利用の固定は滅多に起きず、安定した語の集合を保っている。この理由は、漢字の使い方に名詞・動詞・形容詞・副詞など、品詞別の用途に規則があるからである。漢字の有するこれらの特長を利用できれば、日本語文章の解析に役立つと我々は考えた。また、外国人への日本語教育、とりわけ漢字を教育する時の利用も考慮している。漢字1文字に複数の読み方が与えられており、それが外国人が漢字を学習するに当たって困難さを増している。読み方が解らないために、辞書を引くこともままならないという事態が発生する。そのため、漢字仮名混じり文から読みだけでも解れば、有用なものとなると我々は考えた。以下、第2章で今回構築した漢字シソーラスの概要を示し、第3章でそれを日本語文章の語句解析へ利用したものの一例を述べる。最後にまとめを第4章として示す。
著者
大谷 敏嘉 八尾 建史 佐藤 麻子 岩崎 直子 樋上 裕子 笠原 督 平田 幸正
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.739-746, 1987
被引用文献数
1

1980~1984年に東京女子医科大学糖尿病センター通院中の25歳未満発見NIDDM 97名 (男51名, 女46名, 発見年齢18.4+4.2歳 [mean±SD], 罹病期間7.1±6.4年) について, 糖尿病の遺伝歴と肥満および細小血管症との関係を検討した. 同期通院中の25歳未満発症IDDM 127名 (男60名, 女67名, 発症年齢11.8±5.9歳, 罹病期間10.5±7.2年) を対照とした.<BR>第一度近親に糖尿病を認める発端者は, NIDDM 49.0%, IDDM 11.9%であった (p<0.005). NIDDMで, 三世代にわたってNIDDMの遺伝を有し, 同胞のうち半数以上にNIDDMを認める発端者をMODY, MODY以外のNIDDMをNIDDYと規定したところ, 11.5%にMODYがみられ, 20歳未満発見発端者では19.2%, 20歳以上25歳未満発見発端者では2.3%にMODYを認めた (p<0.025).<BR>過去に肥満を認めたものは, NIDDM 30.9%, IDDM 3.9%であった (p<0.005). 肥満はMODYでは1人もなく, NIDDYでは34.9%にみられた.<BR>網膜症は, NIDDM 36.8%(単純22.1%, 増殖14.7%), IDDM 53.2%(単純43.7%, 増殖 9.5%) にみられた。MODYは41.7%(単純25.0%, 増殖16.7%), NIDDYは36.1%(単純21.7%, 増殖14.5%) に網膜症を認めた. 腎症は, NIDDM 14.7%, IDDM 10.3%にみられた. MODYは16.7%, NIDDYは14.5%に腎症を認めた. 若年発症NIDDMであってもIDDMと同様に重症細小血管症がみられ, また, MODYもNIDDYも細小血管症をおこしやすいものから, おこしにくいものまで幅広いheterogencityを有するものと推論した.