著者
山岸 美希 板倉 嘉哉
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.299-305, 2007-02

映画「風の谷のナウシカ」に登場する架空の乗り物であるメーヴェの飛行可能性を検討するために,実機を忠実に再現する模型を製作し,風洞試験によりメーヴェの空気力学的特性を明らかにした.また,風洞試験結果に基づいて,飛行に必要な基本的な性能および安定性の評価をおこなった.その結果,メーヴェは飛行を実現するのに十分な性能を有するが,現在の機体形状のままでは縦揺れの安定性を確保することができず,飛行の実現は困難であることがわかった.Mowe is a fictional flying vehicle appeared in the animated cartoon "Nausicaa of the Valley of Wind". The airframe configuration of Mowe is very unique without vertical and horizontal tail, and its main wing is only equipped with flaperon as a pitch and roll control surface. However, to realize a tail-less plane such as the Mowe, detailed consideration about the aerodynamic configuration is needed from a viewpoint of aeronautical engineering. In this paper, in order to obtain aeronautical characteristics, aerodynamic forces and moments acting on the scale model with deflectable flaperon were measured experimentally by using wind tunnel at Chiba University. And we also estimated aerodynamic performance and stability based on a result from wind tunnel testing and considered realization of the flight.
著者
等々力 節子 亀谷 宏美 内藤 成弘 木村 啓太郎 根井 大介 萩原 昌司 柿原 芳輝 美濃部 彩子 篠田 有希 水野 亮子 松倉 潮 川本 伸一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.25-29, 2013-01-15 (Released:2013-02-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

食品中放射性セシウムの一般食品の新基準値である100Bq/kg程度の大麦玄麦を焙煎し,標準的な方法で調製した麦茶について放射性セシウムの浸出割合を検討した.焙煎麦から浸出液への放射性セシウムの移行は,浸出時間120分で38 %程度であった.浸出液は焙煎麦に対し約30倍量の水で希釈され,さらに移行率も50%を超えないため,麦茶の放射性セシウム濃度は,1.83Bq/kg程度であり,100Bq/kg程度(138Bq/kg)の玄麦を原料として使っても,飲料の基準の10Bq/kgを大きく下回ることが予想される.
著者
戸倉 新樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.1006-1012, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
14

光アレルギー機序で発症する疾患には,1)光接触皮膚炎,2)薬剤性光線過敏症,3)日光蕁麻疹,4)慢性光線性皮膚炎(CAD)がある.光接触皮膚炎,薬剤性光線過敏症は抗原となる光感受性物質が明らかであり,その他は明確でない疾患となる.光接触皮膚炎は,抗原が皮膚に塗られて,紫外線が当たって発症し,薬剤性光線過敏症は抗原が薬剤という形で経口投与されて,紫外線が当たって発症する.光接触皮膚炎の原因には,ケトプロフェン,スプロフェンやサンスクリーン薬がある.診断は光貼布試験が決め手となる.薬剤性光線過敏症の原因には,ニューキノロン,ピロキシカム,降圧利尿薬,チリソロール,メチクランをはじめとして多くの薬剤がある.日光蕁麻疹は日光照射により膨疹が生ずる疾患である.CADは,外因性光抗原を原因としない自己免疫性光線過敏症と呼ぶべき疾患で,時にHIV陽性者,ATL患者に発症する.
著者
中井 万知子 藤倉 恵一 橋詰 秋子 福山 樹里 神崎 正英
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.209-217, 2016-06-01 (Released:2016-07-01)
参考文献数
4

日本図書館協会(JLA)と国立国会図書館(NDL)が,日本十進分類法(NDC)をLinked Data化するために,2015年4月から2016年3月まで実施した共同研究の成果を報告する。NDCは,JLAが編集発行するわが国の標準分類法である。研究では,NDCの新訂8版と新訂9版を対象とし,JLAが機械可読形式化したMRDFを基に,Linked Data形式のデジタルデータを試行的に作成した。想定利用者のニーズが情報システムでの利用にあることを踏まえて作成方針案を策定したうえで,NDCの概念的な階層関係を基にした分類項目間の階層構造モデルの構築,記述語彙の選定,ラベルの構造化,補助表による分類項目の合成,相関索引等からの分類項目の機械生成等を行った。また,Linked Dataとして外部データとのつながりを生むために,国立国会図書館件名標目表へのリンクを含めた。今後は共同研究の成果に基づき,JLAにおいて提供や利用に関する調査・検討を行う予定である。
著者
坪井 良介 各務 裕太 山口 大輔 倉光 君郎
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.22, 2018-06-26

型推論は,構文パターンから型を推論する方法で,型アノテーションなしで静的型付けを実現する.ただし,構文パターンからの型推論はアルゴリズムが複雑になりがちですべての言語に採用しにくい問題がある.本発表は,よりお手軽に型推論を実現するため,名前からの型推論を提案する.まず,実際のソース・コードを解析し,型と名前の法則性を調べる.それに基づき,名前からの型を推論するシステムと言語設計を定義した.我々は,これらのアイディアを関数型スクリプト言語konoha 5λに実装し,その使いやすさを検証し報告する.
著者
河村 攻 澤田 武 原 威史 兒玉 達樹 真田 治人 島崎 正晃 麦倉 光哉 西田 泰之 大原 裕康 松下 和彦
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.1019-1022, 2002-06-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
9

症例は45歳の男性で,肛門からアルコール濃度35%の焼酎を注入したところ下.血を生じ,当院へ入院した.大腸鏡検査では,肛門からS状結腸下部まで連続性に潰瘍,びらん,発赤,浮腫が見られた.病変部と健常粘膜との境界は明瞭であった.組織像では表層にちかづくほど粘膜の著しい壊死,脱落が見られ,腺管構造の破壊,血管の破綻による出血,滲出が見られた.アルコール注腸による直腸結腸炎は極めてまれであり貴重な症例である.
著者
木谷 照夫 水木 満佐央 田川 進一 倉垣 弘彦
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

慢性疲労症候群(CFS)は、その特異な病態から近年強い注目を集め、社会的にも関心の深い疾患である。本疾患の病因については様々な説が提唱されているが未だ明らかでない。我々は細胞のエネルギー供給の代謝系において極めて重要な役割をはたしているカルニチンを測定したところ、血中の遊離カルニチンは正常ながら、アシルカルニチン値が大部分の症例で有意に低下していることを見い出した。尿中排泄増加はなく、ミトコンドリアにおける脂肪酸酸化を中心とした代謝系の何らかの異常が想定され、疲労を中心としたCFSの症状との関連が示唆された。また、カルニチン正常,アシルカルニチン低下という病態は現在までに数例の先天性異常例以外には知られておらず、検査法としての診断的意義も大きい。ともあれCFSでは生体代謝に関して生化学的に異常が見られたのは本物質が初めてである。これまでCFSで臨床検査異常や生化学的代謝物質の異常が見られないことより心因的機能的病態とする見解も少なくなかったが、我々の成績は器質的病変であることを強く示唆し、世界に大きなインパクトを与えた。本研究は、CFSにおけるアシルカルニチン減少のメカニズムを明らかにすることをめざすとともに、細胞レベルでのアシルカルニチンの作用やその代謝について下記の点について検討したものである。1)サイトカインとアシルカルニチンとの関連についてア)インターフェロンとの関連イ)TNFとの関連2)内在性アシルカルニチンの生理的意義についてア)絶食による変化イ)絶食後再節食による変化ウ)糖負荷による変化エ)糖負荷にともなうアシルカルニチンの動的変化の解析3)細胞内アシルカルニチンの測定4)治療の試み
著者
笹倉 秀夫
出版者
早稲田大学法学会
雑誌
早稻田法學 (ISSN:03890546)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.225-254, 2018-07-30
著者
山梨 裕美 小倉 匡俊 森村 成樹 林 美里 友永 雅己
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.73-84, 2016-06-25 (Released:2016-12-27)
参考文献数
73

母子分離は心身の健全な発達を妨げることが知られてきた。特に大型類人猿など、成育期間が長く幼少期の母子の結びつきが強い動物種においては影響が大きい。実際に人工保育されたチンパンジーは交尾や子育て行動が適切に発現できない、社会行動が変容するなど一生を通じた影響がみられる。そのため動物福祉・保全の観点から、不必要な人工保育は避けるべきである。またたとえ人工保育をおこなったとしても、できる限り早く群れに戻すことが必要であり、そうした事例が蓄積されている。しかしエンターテイメントショーには母子分離や人工保育を助長しやすい問題点が存在し、さらに動物の正しい理解が伝わらない問題点が指摘されている。今後、科学的な知見をもとにしたチンパンジーに適した飼育管理を推進するためには、人工保育やその後の群れ復帰などに関する基準の議論や施設間が連携して問題解決にあたれるような体制づくりなどが重要である。
著者
澤邉 京子 佐々木 年則 星野 啓太 伊澤 晴彦 倉橋 弘 主藤 千枝子 棚林 清 堀田 昭豊 山田 章雄 小林 睦生
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第58回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.18, 2006 (Released:2006-06-07)

2004年京都府丹波町での鳥インフルエンザ発生時に採集されたクロバエ類の消化管から高率にH5N1亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスを検出、分離したことを昨年の本大会で報告した。その後、人為的にウイルスをクロバエに摂食させ、ハエ体内でどの程度の期間ウイルスが維持されるかを検討したので報告する。オオクロバエの羽化後14日の雌成虫に、H5N1亜型低病原性インフルエンザウイルス(A/duck/Hyogo/35/01)培養液を脱脂綿に滲み込ませ3時間摂食させた。その後、餌用寒天培地の入った三角フラスコ内に個別にクロバエを入れ一定期間維持した。経時的にクロバエを冷凍殺虫し、表面をMEM培養液で洗浄後、消化管(そ嚢、腸管)を摘出した。フラスコ内壁に付着した排泄物ならびに吐出物をMEM培養液で洗い回収し、虫体洗浄液と混和した。ウイルス液を滲み込ませた脱脂綿も同様に一定期間保管した。1 そ嚢、2 腸管、3 フラスコ内壁・虫体洗浄液、4 脱脂綿のそれぞれをMEM培養液で破砕、あるいは攪拌してウイルス乳剤を調整し、ウイルス遺伝子検出とウイルス分離に供した。ウイルス遺伝子はRT-PCRおよびnested PCRで確認し、感染性ウイルスは発育鶏卵接種後HA試験およびFluA+B(BD社)で分離の成否を判定した。同時にMDCK細胞培養を用いてウイルス力価を測定した。その結果、オオクロバエ摂食後14日までのほとんどの検体からウイルス遺伝子は検出され、感染性ウイルスはオオクロバエの体内で少なくとも24時間生存することが示唆された。オオクロバエは1日に数kmは容易に移動することから、その距離内にある近隣の鶏舎などにウイルス活性が保持された状態のウイルスがオオクロバエによって運ばれる可能性は高く、本ウイルスの伝播、拡散にオオクロバエなどのハエ類が貢献することは十分に考えられる。
著者
佐倉 統
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.168-178, 2016-05-30 (Released:2023-09-11)
参考文献数
28

In response to the severe accident in Fukushima Daiichi Nuclear Power Plants, some STS researchers prioritize criticizing the discourse and attitudes of radioactivity experts. This phenomenon could be due to the academic and social approach of STS to criticize paternalistic authoritarianism and scholar biases in science and technology to invite non-experts to govern S&T. Even though this approach is necessary in ordinary times, it leaves a negative impact in crisis situations. Particularly, in case of the Fukushima accident, heavy criticization towards radioactivity experts would degrade the reliability of proper scientific knowledge and lead to confusion about the evaluation of radiation health risks. Tackling this issue, I propose a Double Interpreter Model between local people and experts, and a Two-front War against Anti-intellectualism and Expert Paternalism. Together, these frameworks (suggesting that in complex modern society, the enemy of our enemy is not always our friends) could inspire further communication between reliable experts and local people.
著者
有賀 秀子 高橋 セツ子 倉持 泰子 浦島 匡 筒井 静子
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.253-260, 1988-03-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

古代の乳製品といわれる生酥,熟酥,醍醐につき,「本草網目」(李時珍著)の記述を根拠としてその再現を試みた.製造は,(加熱濃縮)-(静置•凝固層分離)-(攪拌再加熱)-(静置固化)-(オイル溶離)の様式に従い行なった.凝固層分離により生酥を得,再加熱濃縮により熟酥を得た.熟酥を冷却固化し孔をうがって室温に放置し,自然に溶離したオイル状物質を醍醐と判断した.製造過程で得られた知見は以下に示す.生酥は,生乳を静かに攪拌しながら83~85°Cで120分程度加熱し,一夜静置後凝固層を集めることによって得た.その成分組成は固形分が約60%で,タンパク質含量対脂肪含量比は約1:4,芳香性のクリームよう食品であった.熟酥は,生酥を湯煎により20分程度加熱することにより得られ,鮮やかな黄色の半流動体で,ゼリー強度,粘性率ともにマヨネーズに比べはるかに大きいが,赤色辛みそより小さく,光沢のある脂肪性の食品であった.固形分含量は約80%を占め,タンパク質含量対脂肪含量比は1:5.5前後であった.熟酥は一夜静置し冷却固化した後,孔をうがっておくと,試料温度25°C以上で透明な明るい鮮やかな黄色のオイル状物質が孔の周縁に溶離してきた.このオイル状物質を「本草網目」の記述にもとづく醍醐であると判断した.本試験により得られた醍醐は,バターオイルよう食品で,製造様式からみて,モンゴルの乳製品シャルトスに類似した食品と考えられる.一方,酥については,生酥および熟酥はそれぞれ醍醐製造の第2段階および第3段階で得られる中間産物で,現代の乳製品中では,他にその類似品は見当らない.
著者
川端 厚子 登倉 尋實
出版者
大阪信愛女学院短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

夕刻から入床までの間携帯型電話を使用する際、そこから発生する電磁波は人体生理に相当影響することが判明した。すなわち、使用中並びに使用後、脳温度を反映する鼓膜温度を有意に上昇させ、さらにまた、松果体から分泌されるメラトニンホルモンを有意に減少させることが判った。さらに、電気敷き布団から発生する電磁波も唾液中の免疫グロブリンAを有意に減少させることも判った。以上のように、夕刻から入床前にかけて電磁波を発生する携帯電話の使用や電磁波を発生する布団を使用して睡眠をとることは電磁波の発生量が極めて微量であっても鼓膜温度の夕刻から夜間にかけての自然の下降を妨げ、メラトニンの分泌量を抑制し、さらには免疫系に1種である免疫グロブリンAに分泌量を抑制することが明らかになった。さらに物理実験で、電磁波は対象物を加温する性質を持つことを明らかにした。携帯電話の使用時、鼓膜温度が上昇することは、電磁波のこの性質を反映すると思われる。夕刻自然に脳温が下降する際、運動により脳温を上昇させると、夜間のメラトニン分泌量が抑制されるという文献を考慮すると、電磁波により脳温の下降が抑えられその結果としてメラトニンの分泌量が減少した考察されよう。さらに、携帯電話使用により入床前、また、睡眠中、中核温度に深い下降が妨げられたことは、深い睡眠を妨げることになるのみならず、免疫系の免疫グロブリンAの分泌も抑制された事実は健康の維持増進の視点からも問題は大きいと思料されよう。
著者
麦倉 佳奈 Eldrin DLR. Arguelles 鎌倉 史帆 大塚 泰介 佐藤 晋也
出版者
日本珪藻学会
雑誌
Diatom (ISSN:09119310)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.49-53, 2022 (Released:2022-10-26)
参考文献数
18

We report the occurrence of Cymbella janischii in Ado River flowing into the Lake Biwa in 2022; this is the first report of this diatom from Kinki Area, Japan. Cymbella janischii has been known as an endemic species in the Pacific Northwest of North America. In Japan, however, it has become known as an invasive species. It is likely that it was introduced from the native locality into Kyushu in 2006 or shortly before, and has rapidly spread throughout Japanese rivers. In Ado River, it formed massive colonies on rocks by means of mucilage stalks secreted from one end of the cells, but the colony scattered only on the river bed. The cell had a dorsiventral outline, with an intricately shaped plastid. Fluorescence microscopy on living cells stained with SYBR Green and fluorescence-labeled lectin revealed that the position of the nucleus was appressed to the ventral side, and polysaccharide covered the entire frustule as well as the mucilage stalks. We also confirmed the identity of the species with the sequence of the 18S ribosomal RNA gene.
著者
片倉 浩理 畠中 陸郎 山下 直己 佐藤 寿彦 岩切 章太郎 尾崎 良智 長井 信二郎 岡崎 強 塙 健 松井 輝夫 美崎 幸平 桑原 正喜 松原 義人 船津 武志 池田 貞雄
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.281-284, 1999-05-25 (Released:2016-10-15)
参考文献数
14

症例は41歳, 男性。脇差しにより頸部正中刺創を受け, 近医で皮膚縫合を施行されたが, 頸部腫脹, 発声障害が進行するため, 受傷後約18時間後に当院を受診した。著明な皮下気腫を認め, 気管の損傷を疑い気管支鏡を施行した。第1気管軟骨輪に約2cm, 同レベルの膜様部に約1cmの損傷を認めた。同検査中再出血により緊急手術を施行した。出血は甲状腺左葉内の動脈性出血であり縫合止血した。食道の損傷はなかった。気管軟骨輪および膜様部の縫合を行った。術後経過は良好で退院したが, 肉芽形成の可能性もあり, 経過観察が必要である。
著者
平田 美紀 流郷 千幸 鈴木 美佐 古株 ひろみ 松倉 とよみ ヒラタ ミキ リュウゴ チユキ スズキ ミサ コカブ ヒロミ マツクラ トヨミ Hirata Miki Ryugo Chiyuki Suzuki Misa Kokabu Hiromi Matsukura Toyomi
雑誌
聖泉看護学研究 = Seisen journal of nursing studies
巻号頁・発行日
vol.2, pp.51-57, 2013-04

背景 子どもの権利条約において親からの分離の禁止"が謳われているが,子どもの採血場面では親が付き添う施設は少ない現状である.採血場面に親が付き添い親の助けを受けた子どもは,安心を得ることができ,親の支援を受けながら自分なりの方法で採血に立ち向かうことができる.しかし,これらはほとんどが幼児後期の子どもが対象であり,親の存在の意義が大きい幼児前期の子どもを対象とした研究は少ない.目的 幼児前期の子どもの採血場面に,母親が付き添った場合の子どもの対処行動を明らかにすることを目的とする.方法 幼児前期の子どもに,母親が付き添った場合の行動をビデオ撮影し,採血終了後,母親へ半構成的面接を行った.結果 採血前は【緊張を高める】,【周囲を確認する】,【抵抗する】,【誘導に従う】,【安心を求める】,【覚悟する】の6カテゴリーと10サブカテゴリー,採血中は【緊張の持続】,【苦痛を表現する】,【誘導に従う】,【終了を予測する】,【安心を求める】,【進行を確認する】の6カテゴリーと11サブカテゴリー,採血後は【終了を確認する】,【緊張がとける】,【満足感を得る】の3カテゴリーと7サブカテゴリーが抽出された.結論 母親が付き添った場合の幼児前期の子どもの対処行動は,採血の経過をイメージすることができないため,母親が主体的に身体的接触を持ち,具体的な対処行動を示すことで見通しを得ることができる.また母親からの賞賛は,子どもの採血に対する緊張感を早期に解くことができる.