著者
田中 孝平 片山 翔 大倉 和貴 岡村 正嗣 縄田 佳志 中西 信人 篠原 史都
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.273-280, 2021-12-15 (Released:2022-01-15)
参考文献数
52
被引用文献数
1 1

重症患者において骨格筋は身体機能に重要な役割を果たし,骨格筋の評価は重要である.骨格筋の評価にはComputed Tomography(CT),超音波検査,生体電気インピーダンス法(BIA法:Bioelectrical Impedance Analysis),バイオマーカーなどが用いられる.CTは正確な骨格筋量の評価が可能であり,第3腰椎レベルでの骨格筋量評価がゴールドスタンダードである.CTでの評価は放射線被曝の影響やCT室への移動を伴い,後方視的に骨格筋量の評価が行われることが多い.一方,超音波や体組成計は非侵襲的で,ベッドサイドで骨格筋量の経時的な測定が可能であるが,正確な測定には知識や技術を要する.重症患者は水分バランスの変動が大きく体組成計での測定では浮腫に注意する必要がある.さらに近年では骨格筋量評価のためのさまざまなバイオマーカーも報告されている.適切な骨格筋評価を本邦でも普及させることで,重症患者の社会復帰につながる栄養やリハビリテーションへの介入が期待される.
著者
板橋 知子 佐々木 淳 倉持 好 御領 政信
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.549-553, 2011-07 (Released:2012-12-03)

オカメインコにおける甚急性型オウム嘴羽病(PBFD)の作出を目的として、PBFDウイルス(PBFDV)接種実験を行った.PBFDV抗体フリーのオカメインコの幼雛(1~7日齢)5羽にウイルス乳剤を筋肉内接種し、接積後1、3、4、6、10週に剖検、全身諸臓器の病理組織学的検索を行った.また、剖検時に採取した組織を用いて、PCR法による病因学的検索を行った.接種後3週以降の症例でPBFDVの感染が成立していることが確認されたが、発症時期や病理組織学的検索結果は甚急性型PBFDよりも急性型PBFDの特徴と一致した.これらのことから、孵化間もないオカメインコ幼雛がPBFDVに感染しても急性型PBFDを発症し、甚急性型の実験的再現は難しいことが明らかになった.
著者
大倉 韻
出版者
首都大学東京・都立大学社会学研究会
雑誌
社会学論考
巻号頁・発行日
no.32, pp.109-134, 2011-10

現代日本のアダルトゲーム(ポルノゲーム)はただ性行為を消費するだけではなく、感動的な物語や登場キャラクターへの恋愛感情をも消費対象とするような独特の進化を遂げている。それを消費するオタクたちは概して現実の恋愛や性行為に対する意欲を欠くため、しばしば「虚構に逃避している」と批判されてきた。だが実際には彼らは逃避しているのではなく、恋愛に関して独自の価値観を持っているようであった。そこでアダルトゲーム消費者にインタビューを行ったところ、次のような知見が得られた。(1)中学高校時代を「一般人」として過ごした者は恋愛の実現に意欲的な傾向があり、「オタク」として過ごした者は意欲的ではなかった。(2) 前者は友人や先輩などから恋愛に関する情報を多く得ており、後者にそのような経験はなかった。Berger and Luckmann の「第二次的社会化」の概念を用いれば、人は「意味ある他者」と恋愛に関する情報交換をすることで恋愛の実現を自明とみなす価値観を内面化していくと考えられる(「恋愛への社会化」) 。前者はその主観的必然性が強化されるものの後者は強化されず、よって「多くのオタクは一般人と比較して恋愛の実現にあまり動機づけられていないため、虚構の恋愛描写で十分満足できる」という可能性があることが見出された。
著者
津崎 実 入野 俊夫 堀川 順生 宮崎 謙一 牧 勝弘 竹島 千尋 大串 健吾 加藤 宏明 倉片 憲治 松井 淑恵
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-05-31

本研究は加齢による「聴力」の変化について知覚・生理現象観察と計算モデルを構築を目的とした。従来ほとんど関心を集めていなかった加齢性ピッチ・シフト現象について,十分な数の幅広い年齢層の聴取者を用いて,その現象が確実に生じることを突きとめ,さらに同じ聴取者に対する聴力検査,耳音響放射検査,脳波の周波数追随反応との相関分析を実施した。並行実施した非線形圧縮特性,聴神経の位相固定性などへの加齢による変容の基礎検討を通して,ピッチ・シフトはこれらの要因の変容によっては説明困難であること示し,新規の聴覚モデルの提案に至った。
著者
倉沢 康大 平田 和彦
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.A31-A44, 2021 (Released:2021-08-17)
参考文献数
52

津軽海峡における海鳥の密度とその季節変化を明らかにするために,2006-2010年に津軽海峡で,函館(北海道)と大間(青森県)を結ぶ旅客フェリーからの海上センサスを行なった.周年にわたる計151回の調査の結果,11科51種の海鳥が記録された.渡り途中のミズナギドリ科(ハシボソミズナギドリ,ハイイロミズナギドリ)やアカエリヒレアシシギが飛来する4-5月に海鳥の密度が最も高かった.11-12月には種数が最も多くなり,越冬地への南下中と考えられるカモメ科やウミスズメ科が多く記録された.本研究により,津軽海峡は沿岸性から外洋性まで多様な海鳥が生息し,種によって本海域を利用する時期や密度が異なることが分かった.
著者
倉田 稔
出版者
小樽商科大学
雑誌
商学討究 (ISSN:04748638)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-31, 2002-07-25

論説
著者
大須賀 公一 石川 将人 青沼 仁志 李 聖林 小林 亮 佐倉 緑 杉本 靖博 石黒 章夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

本研究の「要」は,昆虫の脳(中心体)に薬剤を注入することによって脳機能と下部神経系との情報のやり取りを遮断する「ゾンビ化」であるので,研究期間の前半は,1)昆虫のゾンビ化手法の確立,2)ゾンビ化昆虫のゾンビ化程度の検証法確立,に注力した.同時に,それらのゾンビ化手法が確立した後のために,3)昆虫の適応的運動能力の発現メカニズムの同定手法理論の検討,4)高度な脳機能を持たない運動制御原理の考察,を行なった.以下,進捗状況を説明する.1)昆虫のゾンビ化手法の確立:コオロギの脳内の薬剤投与部位をより厳密に制御するため,頭部の3Dマップに埋め込むための「コオロギ標準脳の作成を進めており,約60%程度進捗した.また,ゾンビ化システム」の構築を完了した.2)ゾンビ化昆虫のゾンビ化程度の検証法確立:「ゾンビコオロギ」はどのような振る舞いがみられるのかを確認するために,二種類の運動解析装置を試作中であり,70%程度完成した.さらに多様な環境を再現できるような球状トレッドミルシステムも開発した.また,頭部のないコオロギの振る舞いや,各部神経接続を外科的に切断したコオロギの振る舞いを確認している.3)昆虫の適応的運動能力の発現メカニズムの同定手法理論の検討:ゾンビコオロギが完成するまでの基礎研究として,一般の昆虫が示す適応能力の中でも特に,a)歩行速度への適応,b)脚切断への適応,c)環境への適応という三つの適応的な振る舞いに着目し,これら能力を発現しうる制御メカニズムのミニマルモデルの構築を目的とした研究を行った.4)高度な脳機能を用いない運動制御原理の考察:ゾンビ化された昆虫と同じく高度な脳機能をもたない脚機構が,環境/身体間および身体内の脚間で調和のとれた運動を生成する制御モデルを構築した.
著者
倉田 敬子 松林 麻実子 武田 将季
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.119-127, 2017-05-01 (Released:2017-05-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

研究データ共有に関して,新しい研究のあり方のビジョン,国・地域を超えた標準的ルールの設定,国・地域としての推進策などが議論されている。しかし,研究におけるデータ共有を推進するための具体的な施策については,海外でも事例報告や現状調査がなされだしたところである。本稿では,日本の大学・研究機関における,研究データの管理,保管,公開の現状に関して行った質問紙調査の結果を報告する。494機関に対して,研究データのオープン化の現状認識,研究データに関するガイドラインおよび管理計画,研究データ公開のための機関としての整備状況などについて尋ねた。その結果,データ管理計画もデータ保管のための整備もほとんど進んでいないこと,研究不正行為への対応のためのガイドラインのみ対応がなされていることが明らかになった。
著者
斉藤 耕太 高辻 寛之 高倉 健 飯田 直樹 川口 正彦
出版者
一般社団法人エレクトロニクス実装学会
雑誌
エレクトロニクス実装学術講演大会講演論文集 第26回エレクトロニクス実装学術講演大会
巻号頁・発行日
pp.84-87, 2012 (Released:2014-07-17)

近年、携帯電話やデジタルカメラの記録メディアとして広く普及しているメモリーカードは大容量化に伴うデータ転送速度の高速化が進んでおり、EMIノイズの問題はより深刻になると予想される。そこで本研究では、高速メモリーカード回路のEMIノイズ発生メカニズムや対策方法を調査し、これを搭載した機器を用いて放射ノイズや自家中毒(無線通信回路への回り込み)に対する対策効果の確認を行った。
著者
朝倉 寛達 三科 ますみ 倉田 なおみ 伊藤 喬 雨宮 美智子
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.310-315, 2010 (Released:2012-03-09)
参考文献数
8

Epadel S®,a seamless capsule form of ethyl icosapentate (EPA-E),was made into a suspension in 20 ml of hot water (55°C) and stirred with a polystyrene (PS) disposable spoon.When left in the suspension,the surface of the spoon started to dissolve after 45 minutes,and was completely dissolved after 12 hours.We also investigated the dissolution of PS utensils in suspensions made from teprenone (Selbex®) capsules or powder,or gefarnate (Gefanil®) capsules.Up till now,there have been no reports of toxicity due to PS or the non-reactants and/or by-products produced in the PS production process.However,as the dissolution of spoons,cups or other common utensils made of PS in drug suspensions could cause concern among patients,caregivers,and medical staff,it is important to instruct them to avoid the use of such utensils when preparing drug suspensions.
著者
上村 清 倉井 華子 忽那 賢志
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.49-55, 2020-09-25 (Released:2021-09-25)
参考文献数
33

イノシシが引き起こす人獣共通感染症のうち,ウイルス病である日本脳炎,SFTS,狂犬病,E型肝炎,豚インフルエンザ,ニパウイルス感染症,細菌・リケッチア病である日本紅斑熱,寄生虫病である回虫症,旋毛虫症,猪オンコセルカ症,顎口虫症,肺吸虫症,有鉤条虫症,クリプトスポリジウム症について解説した.イノシシから感染する人獣共通感染症が多くあるので,ジビエ料理には衛生管理が欠かせない.