著者
西村 圭二 北村 淳 山﨑 敦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ca0925, 2012

【はじめに】 我々は先行研究において,不良姿勢者に対し頭頂から尾側方向へ軸圧を加え,圧に抗する軸圧抵抗エクササイズ(以下EX)を行うことで姿勢アライメントの正中化が得られ,軸圧なしに上方へ伸び上がるだけのエクササイズでは頭頸部のアライメント修正が不十分であることを報告した。そこで今回は,頭部前方位姿勢に対しセルフエクササイズとして頭頸部と体幹のリンクを考慮したリラクセーション(以下RX)とEXを施行したところ,姿勢変化を認めたので報告する。【方法】 健常成人8名(平均31.0±5.4歳)を対象に,RXとEX前後の両脚,片脚立位の姿勢撮影を行った。撮影肢位は,耳垂,肩峰,オトガイ結節,第5中足骨底にマーカーを付けた矢状面における立位とした。まずRXを実施した。肢位は,ロール状にしたバスタオルを2本使用し,1本は第1胸椎棘突起から尾骨部まで縦方向に沿わせ,もう1本は横方向にし外後頭隆起を乗せた背臥位とした。この肢位で顎を引き,さらに頸部後面をやや伸張するように外後頭隆起下のバスタオルを頭側方向へ少し引き上げた。この状態で3分間の脱力を促した。RX後にEXを実施した。EX肢位は股膝を90°屈曲した端座位とした。EXは頭頂と会陰部を通り上半身を左右2等分する位置に幅9mmのゴムの輪を装着し,頭頂から尾側方向へ圧を加え張力に対し頭側へ伸び上がる運動とした。この時,後頭部に接するゴムの圧に抗するように顎を引くことも意識させた。圧を認識しやすいように直径50mm,幅70mmのパッドをゴムと頭頂の間に設置した。ゴムの長さは座高の1/2程度とした。EXはセルフにて15回実施し15回目のみ伸び上がった状態のままで5回深呼吸をするように促した。セット間に1分間休憩し,2セット実施した。撮影画像より,通常,RX後,EX後の両脚,片脚立位を比較し,第5中足骨底を通る垂直線を基準に各マーカーの距離をパソコン上で求めた。さらに頭部前方位の変化を算出するために,頸椎屈曲角度と頭蓋角度(耳垂とオトガイ結節を結ぶ線と垂直線とのなす角)を各々計測し,値の減少をもってアライメントは正中に近付いたと判断した。統計処理は反復測定分散分析を行い,多重比較検定にはDunnett法を用い危険率5%未満とした。【説明と同意】 厚生労働省が定める「医療,介護関係事業における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン」に基づき,対象者に本研究の趣旨を書面にて十分に説明し同意を得た。【結果】 両脚立位は,通常と比較しRX後,EX後のすべてのマーカーで垂直線との距離が減少した。耳垂は通常2.9±2.0cm,RX後1.7±1.0cm,EX後1.7±1.1cm,オトガイ結節は通常10.5±3.4cm,RX後8.7±2.9cm,EX後9.4±2.4cmと有意な値を示した(p<0.05)。頸椎屈曲角は通常18.1±4.1°,RX後15.0±5.2°,EX後14.9±5.3°と有意に減少した(p<0.05)。頭蓋角は減少したが有意差はなかった。片脚立位でも耳垂は通常3.4±1.9cm,RX後2.1±2.1cm,EX後2.0±1.9cm,オトガイ結節は通常11.9±1.8cm,RX後9.9±3.0cm,EX後10.4±1.8cmと有意な減少を示した(p<0.05)。頸椎屈曲角は通常19.5±2.6°,RX後16.1±3.6°,EX後16.2±4.8°(p<0.05)と有意に減少したが,頭蓋角に有意差はなかった。【考察】 RXとEX施行により,頭部前方位が減少し立位アライメントが正中に近付く傾向を示した。頭部前方位は上位頸椎伸展と下位頸椎屈曲,胸椎後彎の増強により生じる。そのため,頭頸部と体幹をリンクさせたアプローチが必要である。バスタオルを用いて頭頸部は頭部前方位と逆方向へ,脊柱は彎曲を減少させる方向へ各々誘導し持続的に脱力させることで,各関節および筋の柔軟性が得られその肢位への適応が可能になったと考える。EXでは,ゴムを用いることで張力による鉛直下方向への圧刺激が加わるので,頭側へ伸び上がるための正しい運動方向と後頭部に接するゴムの圧を意識することで頭部前方位と逆方向の後上方への運動方向の認識が容易となる。頭側へ伸び上がることで腹横筋の活動を生じることが報告されており,運動方向から頸部前面筋の活動も示唆される。したがって,理想とされる重心線から逸脱した各分節が垂直線に近付くように作用するため,垂直線との距離および角度の減少が得られ,頭部前方位および立位アライメント改善に繋がったと考える。【理学療法学研究としての意義】 不良姿勢での作業や加齢変化などで,脊柱後彎や頭部前方位を呈することを臨床上見受ける。姿勢へのアプローチは症状緩和だけでなく予防としても重要である。良姿勢を獲得するためには,自己の感覚で正しい姿勢や運動を容易に理解できる必要がある。本研究は身近なバスタオルとゴムを用いるため正しい方法の指導により対象者が容易に運動を再現できるものである。よって,本研究の有効性を示すことで,再現性が高く効果的なEXを多くの対象者に提供できると考える。
著者
北村 歳男 武田 浩志
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.670-672, 2013-09-25
参考文献数
2

16歳野球の投球よる広背筋筋腹の皮下断裂を経験した.投球中に肩甲骨外側に痛みと腫瘤が出現し,大円筋断裂との鑑別において検査の工夫が必要であった.MRIでは筋の範囲が大きいため情報が少なく,むしろ筋腹断裂の特定には電気刺激による腫瘤の反応やエコーが有効であった.エコーは特に治療の経過判定にも有効であった.治療は保存療法で患部圧迫により断裂離開部が縮小したことで1カ月間圧迫治療を行った.組織修復と滑走が良好であることをエコーで確認の後2カ月半後にスポーツに復帰した.
著者
若菜 翔哉 北村 拓也 神田 賢 佐藤 成登志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.245-249, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
35

〔目的〕健常な若年女性と高齢者女性を対象に,超音波画像診断装置により体幹筋と大腰筋の筋厚と筋輝度を比較し,量的および質的変化を明らかにすること.〔対象と方法〕対象は若年女性20名(若年群)と高齢者女性20名(高齢群)とした.対象とした筋は外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋,腰部多裂筋,大腰筋とし,それぞれの筋厚と筋輝度を測定した.〔結果〕筋厚は,高齢群が外腹斜筋,内腹斜筋,大腰筋において若年群より有意に低値だったが,腹横筋と腰部多裂筋では有意差を認めなかった.筋輝度は,高齢群が外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋,腰部多裂筋,大腰筋で若年群より有意に高値を示した.〔結語〕高齢群の外腹斜筋,内腹斜筋,大腰筋で量的および質的低下が生じており,腹横筋,腰部多裂筋では質的低下のみ生じる可能性が示唆された.
著者
北村 李軒
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.21-27, 1978-03-05 (Released:2012-11-27)
参考文献数
24

In order to detect cases of Exertional Hemoglobinuria among Japanese Martial Art trainees, urine specimens obtained from 114 student members of Martial Art clubs (Kendo, Judo, Karate and Aikido) were examined.Exertional Hemoglobinuria was found in 15 out of 60 Kendo trainees and 3 out of 16 Aikido trainees respectively.Among these 18 cases of hemoglobinuria, however, only 3 cases presented macroskopic hematuria and the remaining 15 showed normal coloured urine.Thus, it must be emphasized that in Japan Martial Art training, especially Kendo exersise, is one of the main precipitating factors of Exertional Hemoglobinuria, and that there are often latent forms of the disease in which gross hematuria is not present.In considering the hemolytic mechanism occurring in Kendo exercise, I assume that the special action called “Fumikomi” operates as a mechanical trauma on the soles of the feet, although there must be other unknown factors for the development of this condition.
著者
小川 千代子 日野 祥智 益田 宏明 秋山 淳子 石橋 映里 小形 美樹 菅 真城 北村 麻紀 君塚 仁彦 西川 康男 船越 幸夫
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.54-65, 2020

<p> 記録管理学体系化に関する研究は、2016年度から3年計画でスタートし、2018年度は3年目の最終年度にあたる。2016年度、2017年度の研究成果を踏まえ、2018年度には記録管理学の体系を導き出すことを目指して研究を行った。2018年度は、4回の研究会を開催するとともに、各メンバーによる個別担当の研究を行い、それを取りまとめるための記録管理学体系化の方向性を模索した。各メンバーは各自が記録管理における関心のあるテーマの考察レポートを作成し、これらを研究代表者である小川千代子が、2017年度の記録管理学体系化プロジェクト研究報告(学会誌「レコード・マネジメント」)で描いたところの体系化予想項目の中に関係づけ、その時の成果である記録管理学体系の3層構造に肉付けを行った。</p>
著者
成田 美紀 北村 明彦 武見 ゆかり 横山 友里 森田 明美 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.171-182, 2020-03-15 (Released:2020-04-01)
参考文献数
40

目的 日本人高齢者の食品摂取の多様性指標の一つに,食品摂取多様性スコアがある。高齢者を対象とした研究では,身体機能や生活機能,転倒リスク,サルコペニア等との健康アウトカムと食品摂取の多様性の関連が報告されているが,多様な食品摂取による各種栄養素の多寡や食事の特徴について十分検討されていなかった。本報は,高齢者における食品摂取多様性スコアと栄養素等摂取量,食品群別摂取量および主食・主菜・副菜を組み合わせた食事日数との関連を明らかにすることを目的とした。方法 東京都板橋区在住で65~84歳の高齢者182人を対象とした。食品摂取の多様性指標は,熊谷らの食品摂取多様性スコア(DVS)を使用し,0~3点を低群,4~6点を中群,7~10点を高群に分類した。並行して,3日間の自記式食事記録を行い,1日当たりの栄養素等摂取量,食品群別摂取量および主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日数(以下,バランスのとれた食事日数)を求めた。性,年齢,エネルギーを調整した一般線形モデルによりDVS区分と各食事関連指標との関連について検討した。また,各栄養素の推定平均必要量(EAR)を下回る者の割合を算出し,多重ロジスティック回帰分析によりDVS区分の栄養素別不足リスクを推定した。結果 DVS高群に比し低群ではバランスのとれた食事日数が有意に低値を示した(DVS低群1.4(1.2-1.6)日,中群1.8(1.6-1.9)日,高群1.9(1.7-2.1)日,傾向性P=0.001)。DVS高群に比しDVS低群ではエネルギー,たんぱく質・脂質のエネルギー比率,総たんぱく質,食物繊維,カリウム,マグネシウム,リン,ビタミンK,ビタミンB12の摂取量が有意に低値を示し,炭水化物・穀類のエネルギー比率,炭水化物摂取量は有意に高値を示した。ビタミンCのEARを下回るオッズ比はDVS高群に比し低群で有意に高値を示し,マグネシウム,亜鉛,ビタミンB6のEARを下回るオッズ比DVS中群で有意に高値を示した。結論 DVSが高いことは,たんぱく質および微量栄養素のより多い摂取と有意な関連があり,主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を行う機会が多いことが明らかになった。DVSは高齢期に望ましい多様な食品や栄養素の摂取につながる食事の評価指標となり得ると考えられる。
著者
金田 正徳 北村 清一郎 松岡 憲二 中村 辰三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.203-211, 1989-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7

竹之内と濱添の取穴法に基づいて刺入した次〓穴への刺入針と第2後仙骨孔の位置関係, および体表より触知し得る上後腸骨棘や仙骨角を指標とした後仙骨孔の体表投影位置を解剖学的に検討した。得られた結果は次の如くである。1.. 竹之内と濱添の取穴法による次〓穴への刺入針は, 第2後仙骨孔の下方あるいは下外方に集中した。2. 第1~第4後仙骨孔は, 内外方向には後正中線と上後腸骨棘間のほぼ中間に位置した。3. 吻尾方向には, 第1後仙骨孔は上後腸骨棘とほぼ同じ高さに位置し, 第2から第4後仙骨孔は上後腸骨棘と仙骨角間の吻尾方向距離をほぼ4等分する3点に一致した。
著者
北村 匡平
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.77-96, 2016-01-31 (Released:2017-10-06)
参考文献数
43

The aim of this paper is to align Kyo Machiko's performance style as a vamp actress with the history of Japanese cinema, and explore postwar public consciousness and desire through her star persona. The voluptuous Kyo Machiko made her film debut in 1949 and went on to become one of the leading actresses of the postwar generation. Her rise to stardom was closely related to many of her roles that embodied social phenomenon amid a trend for kasutori culture, in the sexually liberated climate following the Second World War. In contrast to the intense characters on screen, she portrayed herself as modest and graceful, which enabled her to convey multiple messages within the context of her fame. She depicted a dual-star persona as a result of the contrast between her vamp characters in films and her modest, feminine personality in fan magazines; accordingly, she gained fame as a star across generations. Through the 1950s, she appeared in works by some of the greatest Japanese filmmakers, which catapulted her to international stardom. She was sometimes referred to as "the Grand Prix actress." Following the success of Akira Kurosawa's Rashomon (1950), a growing tendency to promote Japanese cinema overseas emerged, eliciting the gaze of Orientalism from Western spectators. International stardom led to an even more complicated gaze on Kyo Machiko's body. Star/Celebrity studies have developed certain methodological frameworks since Richard Dyer's Stars. From a theoretical perspective, this paper focuses on the film star Kyo Machiko as a cultural text, and analyzes how fans or critics viewed both her cinematic persona, performing acts of violence on screen, and her own persona, which represented traditional Japanese imagery in fan magazines. This research concludes that Kyo Machiko's cinematic body became a national body and functioned as an esthetic vehicle, reflecting both the desire of a trans/national identity and the desire to localize her star image for Japanese spectators.
著者
北村 紗衣
出版者
一般財団法人 日本英文学会
雑誌
英文学研究 支部統合号 (ISSN:18837115)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.149-167, 2011-01-20 (Released:2017-06-16)

In J.M. Coetzee's Waiting for the Barbarians, the barbarian girl, one of the main characters, suddenly begins to menstruate during the journey to the territory of her people, the barbarians. This scene of menstruation might seem irrelevant to the rest of the novel, which deals with the conflict between the Empire and the barbarians. Few critics have mentioned the menstruation in this novel, although Waiting for the Barbarians has been the subject of considerable commentary. However, if it is irrelevant to the novel's plot, why does Coetzee go out of his way to describe menstruation, even though literature seldom mentions it? In fact, some haunting images in Waiting for the Barbarians, such as children and blood, are closely linked to menstruation. This paper discusses how menstruation, a phenomenon that has many layers of meaning, works in this novel, focusing mainly on its physiological and symbolic meanings. On the physiological level of meaning, menstruation in Waiting for the Barbarians means that the barbarian girl is not pregnant; and it serves as a kind of foreshadowing of her clear break with the Magistrate, an officer of the Empire and the novel's narrator. After the Magistrate has sex with the barbarian girl, for a quick moment he dreams of making a family with her; but her menstruation shows that it is impossible for them to have children together. She leaves him and returns to her people just after menstruating. On the symbolic level of meaning, the barbarian girl's menstruation means that the "flow," which the Empire's control blocked, returns at the "margin," or the boundary, where the Empire's power intertwines with that of the barbarians. Under the Empire's control, blood is described as stagnant and clotted, and natural phenomena's flow is also disrupted. The flow, however, is visualized as menstruation when the barbarian girl reaches the boundary between the Empire and the barbarians' territory. Menstruation, the physiological phenomenon of blood leaking from a woman's body at its margin, symbolises boundary-crossing and overlaps with the act of geographic boundary-crossing, the barbarian girl's and the Magistrate's transition from the Empire to the barbarians' territory. Although both the Magistrate and the barbarian girl become boundary-crossers by being involved in geographic boundary-crossing and menstruation, the barbarian girl achieves greater fluidity than the Magistrate. This is because fluidity, a dangerous attribute, is traditionally ascribed to women in literature. In Waiting for the Barbarians, menstruation is used to symbolise the contrast between the Empire as a patriarchal, solid order and the margin where the Empire and the barbarians encounter each other, creating fluidity. It also symbolises the contrast between the woman who can achieve great fluidity, and the man who cannot escape from the Empire's solid order. Menstruation, which is fluid and cyclic, also symbolises the cycle of nature, especially reproduction, which the Empire hinders. In Waiting for the Barbarians, the Magistrate thinks that the Empire does not respect nature's cycle and that it deprives its people and its land of fertility. As Julia Kristeva points out in "Women's Time," the time of history is linear and often is ascribed to men, but the time of nature is cyclic and often is ascribed to women. The Magistrate feels antipathy toward the time of history of the Empire, and he hopes that the barbarian girl, who achieves great fluidity through menstruation, will have children and regain nature's cycle.
著者
菊池 徹 北村 泰一 Toru KIKUCHI Taiichi KITAMURA
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.625-660, 1960-01

(1)第1次越冬隊に使用させていただいた犬ぞりは,その準備と訓練に多大の努力を払って下さった加納一郎氏,北海道大学の犬飼哲夫教授,芳賀良一講師など,北大極地研究グループの人達に負う処が極めて大であった.厚く御礼申し上げる.(2)南極や北極で,外国隊の使用した犬はすべてハスキー種(又はその同属)であるが,日本隊は,1910~12年の白瀬隊の時もそうであった様に,今回も樺太犬を使用した.(3)越冬した樺太犬は,越冬初期に19頭(内雌1頭)であったが,越冬中に3頭をなくし,8頭の仔犬が産まれたので,その末期には24頭(雌1頭,仔犬8頭を合む)であった.この内,15頭の雄成犬が,第2次越冬隊を待ったまま昭和基地に残った.(4)IIの項では,昭和基地の犬小屋,犬の食糧(第1表),犬の体重変化(第2表),仔犬の出産及び8月に行なった訓練(第3表)について書いた.(5)IIIの項では,始めにそりその他の用具についてふれ,続いて,パッダ島並びにその南の上陸地点への偵察行(8月28日~9月4日),ボツンヌーテン行(10月16日~11月11日)及びオラフ行(11月25日~12月10日)の3つの旅行をあげ、それぞれ第4表,第5表,第6表にその概要を記した.(6)犬ぞり旅行を,数字で説明する一つの試みとして,Wt=(4rtfgaWdN)/V(荷重の法則)なる式を仮定し,3つの旅行について,その分析を行なった.第7表,第8表,第9表に示す通りである.(7)15顛の犬達が,オングル島に残らざるを得なかったのは,実現はしなかった第2次越冬隊を送り込む事に最大の努力がはらわれ,犬達は新しい隊の来るのを待っていたのである事実を明記した.(8)最後に犬達の冥福を心から祈って,この拙い報告書を彼等の霊に棒げる.
著者
松田 大志 北村 葵 樋口 浩和
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業研究 (ISSN:18828434)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-7, 2019 (Released:2020-03-07)
参考文献数
22

京都大学内の温室で栽培しているレイシ6品種(‘Bengal’・‘Chakrapat’・‘Kwai May Pink’・‘Pot Po Heung[八宝香]’・‘Souey Tung[水東]’・‘Tai So[大造]’)を供試して果実品質を調べた.2014年および2015年に人工受粉をおこない,収量性を評価した.また,収穫した果実を種子の形態で3種類(正常・しいな・痕跡)に分けて品質を品種比較した.‘Pot Po Heung’で種子がしいなの果実の発生率がもっとも高く50%だった一方,‘Kwai May Pink’でもっとも低く10–20%だった.‘Chakrapat’では,種子がほとんどなく痕跡しかない果実が35–50%みられた.‘Bengal’で果皮の赤い着色がもっともよかった.種子が正常な果実では,‘Chakrapat’がもっとも大きく重さが平均で34–36gあり,ついで‘Bengal’で31–33gだった.‘Pot Po Heung’がもっとも小さく20g程度だった.しいなの果実では,‘Bengal’がもっとも大きく25g程度だった一方,‘Souey Tung’がもっとも小さく15g程度だった.種子が痕跡しかない‘Chakrapat’の果実は平均で13–15gだった.可食部の割合が‘Kwai May Pink’の果実でもっとも多く74–82%だった一方,‘Bengal’では可食部はもっとも少なく65–76%だった.‘Chakrapat’および‘Tai So’で果汁の糖度が低かった.‘Kwai May Pink’および‘Pot Po Heung’で果汁の酸含量が低かった.‘Kwai May Pink’の食味がもっとも優れ,ついで‘Bengal’が優れた.‘Chakrapat’および‘Tai So’は食味が果実によって大きくばらつき,劣るものもあった.種子がしいなや痕跡の果実でも,種子が正常な果実と食味は変わらなかった.‘Chakrapat’および‘Kwai May Pink’で収量性が高かった.‘Kwai May Pink’は果実の品質が優れ,どちらの年度も収量性が安定して高かった一方,‘Pot Po Heung’・‘Souey Tung’・‘Tai So’は品質が劣り収量性も低かった.
著者
長田 典子 北村 紗衣 湯澤 優美 斉藤 賢爾 門林 岳史 折田 明子 横山 太郎 木下 知威 森山 至貴 松田 英子
出版者
北村紗衣
巻号頁・発行日
2012-04-12

表象文化論学会第4回大会パネル「共感覚の地平 : 共感覚は『共有』できるか?」, 2009年7月5日, 京都造形大学, 京都
著者
北村 泰一
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1965

博士論文
著者
北村 明彦 清野 諭 谷口 優 横山 友里 天野 秀紀 西 真理子 野藤 悠 成田 美紀 池内 朋子 阿部 巧 藤原 佳典 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.134-145, 2020-02-15 (Released:2020-02-22)
参考文献数
27

目的 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施が進められる中,生活習慣病やフレイル関連の各因子が地域在住高齢者の自立喪失に及ぼす影響の強さ(ハザード比)と大きさ(寄与危険度割合)を明らかにする。方法 群馬県草津町において,2002~11年の高齢者健診を受診した65歳以上の男女計1,214人(男性520人,女性694人)を対象とし,平均8.1年(最大13.4年)追跡した。自立喪失は,介護保険情報による要介護発生または要介護発生前の死亡と定義した。生活習慣病因子として,高血圧,糖尿病,肥満,腎機能低下,喫煙,脳卒中・心臓病・がんの既往等を,機能的健康の関連因子として,フレイル区分,低体重,貧血,低アルブミン血症,認知機能低下を採り上げた。フレイル区分は,phenotypeモデルの5つの構成要素(体重減少,疲弊,活動量低下,歩行速度低値,握力低値)のうち3項目以上該当をフレイル,1~2項目該当をプレフレイルと定義した。Cox比例ハザードモデルを用いた回帰分析により,各要因保有群における自立喪失発生の多変量調整ハザード比(HR),集団寄与危険度割合(PAF)を算出した。結果 自立喪失発生者数は475人(要介護発生372人,要介護発生前死亡103人)であった。対象者全体でみると,自立喪失の多変量調整HRはフレイル,プレフレイル,認知機能低下,脳卒中既往,喫煙において1.3~2.2倍と有意に高値を示した。自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%,フレイルが12%と他の要因に比し高率であった。男性では自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%と最も大きく,次いで喫煙が11%であり,女性では,フレイル,プレフレイルがともに18%,腎機能低下が11%であった。前期高齢者では,フレイル,プレフレイルの他に脳卒中既往,貧血,低アルブミン,認知機能低下,喫煙,糖尿病における自立喪失の多変量調整HRが有意に高く,自立喪失のPAFは,プレフレイルが18%,フレイルが13%,喫煙が11%であった。結論 高齢者健診の受診者を対象とした検討の結果,自立喪失に寄与する割合が最も大きい要因はフレイル,プレフレイルであった。前期高齢期からフレイル予防,ならびに生活習慣病の予防・改善を図ることが集団全体の自立喪失の低減に寄与すると考えられた。
著者
北村 邦夫 Kunio KITAMURA 群馬県衛生環境部保健予防課母子保健係 Department of Environment and Health Gunma Prefecture
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 = Acta obstetrica et gynaecologica Japonica (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1001-1007, 1984-07-01

群馬県において昭和54年に出生した2,500g以下の低出生体重児の母と,その低出生体重児と地域や出生時期を極力マッチさせ出生体重が3,000~4,000gの正常児の母との間で症例一対照研究を行ない以下の結果を得た.1)低出生体重児には女児が多く,新生児期の死亡率は8.1%で,体重別にみた予後は1,500g未満の場合に悪い,2)低出生体重児に関与すると思われる妊娠前の危険因子としては年齢,体格,月経歴,既往歴等がある.3)社会医学的要因には職業,学歴,喫煙,睡眠時間,母子健康手帳の交付時期,健診回数等があげられる.4)妊娠中の危険因子としては,流早産徴候としての出血,腹痛や貧血,妊娠中毒症等が関与している.5)低出生体重児には多胎,骨盤位,前置胎盤,早期剥離などに伴うことが多い.A case-control study was made in Gunma Prefecture of 1,390 mothers of babies born weighing 2,500 grams or less and an equal number of mothers of 3,000-up to-4,000 gram babies matched by place and month of birth. A correlation was found between low birth weight babies and maternal age, stature, menstrual history and past history. The mother's occupation, educational career, smoking habits, amount of sleep each day, date of issue of the Mother's Handbook and the number of the periodical health examinations received can be listed as socio-medical factors. Bleeding and lower abdominal pain during pregnancy, anemia and toxemia of pregnancy are found as prenatal factors. Low-birth-weight babies are found to be correlated with multiple pregnancy, breech presentation, placenta previa and premature separation of the placenta, also.
著者
北村 達也 川村 よし子 Tatsuya Kitamura Yoshiko Kawamura
出版者
甲南大学
雑誌
甲南大学紀要. 知能情報学編 = Memoirs of Konan University. 甲南大学 編 (ISSN:18830161)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.25-33, 2017

日本語学習者を対象とした慣用表現の効率的な教育(学習)を実現するため,朝日新聞,毎日新聞,読売新聞の2014 年の記事データベースを対象にして出現頻度の高い慣用表現のリストを作成した.まず,宮地(1982)『慣用句の意味と用法』,森田(2010)『日本語の慣用表現』に掲載された慣用表現に異表記を追加し,6,378 個の慣用表現を得た.次に,3 紙の合計で約490 万文を対象として,慣用表現の出現頻度を計数した.そして,各紙における出現頻度上位100 位のうち,3紙すべてに共通して現れる慣用表現を求めた.これによって,新聞による偏りを排除し,使用頻度が高く学習者に有用な慣用表現リストが得られた.