著者
岡田 裕之 清水 良幸 吉川 悦次 江田 英雄 尾内 康臣
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.167-175, 2015-07-15 (Released:2017-04-03)
参考文献数
23

高周波領域非可聴音を含む音楽の刺激で若中年者と健常高齢者にハイパーソニック・エフェクトが発現するか,PET (Positron Emission Tomography)による脳イメージング,脳波(Electroencephalogram:EEG)計測を用いて検証した.対象は平均年齢36.8 歳SD±7.7 歳(27 歳~48 歳),男性3 名,女性5 名,合計8名の若中年者健常ボランティアと平均年齢 77.6 歳SD±4.1 歳(72 歳~88 歳),男性5 名,女性10 名,合計15 名の健常高齢者である.高周波領域非可聴音刺激は脳幹を刺激し,後頭葉のα波を増大させたことから,ハイパーソニック・エフェクトは若年者だけてなく高齢者においても発現することが分かった.
著者
吉川 恒夫
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.63-67, 1984-02-29 (Released:2010-08-25)
参考文献数
5
被引用文献数
21 21

手先効果器の位置や姿勢を制御する際の, ロボットアームの操作能力の定量的な測度があれば, ロボットの設計, 制御, および仕事のプランニングに有益であろう.我々は以前の論文でそのような1つの測度を提案し, 可操作度と呼ぶことにした.本論文ではこの測度のいくつかの性質を考察する.また, この測度の観点から種々の型式のロボットアームやロボットフィンガーを検討する.
著者
吉川 肇子 中村 美枝子 杉浦 淳吉
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.50-59, 2021-06-25 (Released:2021-06-30)
参考文献数
12

本論文では,シミュレーション&ゲーミングを使ったオンライン授業の例を紹介する.紹介するのは主にThiagiの手法(Thiagarajan 2005)によるものである.1つは,オンライン授業においてゲームを実施した事例である.もう1つは,授業のレポート課題に対話性を導入したものである.COVID-19の流行により,日本の大学は多くの授業をオンラインで実施せざるを得なくなった.COVID-19流行以前には,著者らは対面で実施するようなゲームを教育目的で導入していた.本来対面で行うゲームをオンライン授業に転用するにあたっては工夫が必要であった.結果として,Cisco Webex Meetingシステムを使ったオンライン授業において,対面のゲームを,対話性を維持しつつ,オンラインで実施することができた.また,講義の中でゲームを使うのではなく,レポート課題をゲームのようにすることで対話性を維持するように試みた.1年の実施経験を経て,物理的に対面していなくても,対話性を維持しつつ,授業を実施することは可能であるという結論に至った.本稿の中では,実施によって明らかになったこれらの実践の長所や短所についても述べる.
著者
吉川 肇子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.45-54, 1989-08-20 (Released:2010-02-26)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

ポジティヴな評価の印象 (好印象) よりも, ネガティヴな評価の印象 (悪印象) の方が, 持続しやすく, 覆しにくいことを明らかにした。あわせて, 帰属の違いを変数として導入し, 印象変化との関連を検討した。被験者は95名の男女大学生であり, 刺激人物の行動を記述した文章を与えて, はじめの印象を形成させた。10分間のディストラクション課題をはさんで, はじめの印象と反対の情報を与え, 印象の変化を分析した。さらに1週間後, 印象評定のみを行い, 印象の持続を調べた。帰属の違いは, はじめに与える刺激文中で操作した。仮説は次の通りである: 1) 悪印象は好印象よりも覆しにくい。2) 悪印象は好印象よりも持続しやすい。3) 悪印象であれ, 好印象であれ, 状況帰属されるよりも傾性帰属される方が, 印象は残りやすい。実験の結果, 仮説1), 2) ともに支持された。帰属の操作は有効でなかったために, 仮説3) は検証できなかった。さらに, 活動性の次元の印象の変化の分析から, 印象の残りやすさには, 何を最頻的と考えるかということが決め手となるという, 各次元共通のメカニズムが働いていることが示唆された。
著者
三河 正彦 吉川 雅博 辻村 健 田中 和世
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第25回ファジィ システム シンポジウム
巻号頁・発行日
pp.97, 2009 (Released:2009-12-15)

本研究の目的は,図書館に設置され,図書館利用者と自然言語で会話し,分かりやすい情報提供が可能な図書館司書ロボットを構築することである.本ロボットは,視聴覚センサ等の知覚情報による図書館内の利用者の行動予測に基づく適切な受け付け行動,自然言語対話エンジンによる利用者からの質問や要望に対し適切な受け答え,利用者に理解しやすい情報案内が可能な機能を備える.本システムの特徴は,睡眠や覚醒等の意識状態を表現できる意識モデルを備えることである.複数の知覚センサを備え,知覚情報処理が並列に実行される図書館司書ロボットシステムでは,利用者の検出により覚醒し,その応対に必要な処理を優先して実行するが,利用者がいない時には知覚情報処理の優先順位が下がり,つまり表面的にはロボットが睡眠しているように見え,内部的には覚醒時に蓄積した知覚情報を処理し,実時間処理では得られない長期間蓄積した知覚情報から有益な情報を抽出,記憶する機能を備える.
著者
吉川 裕之 岩坂 剛 八重樫 伸生 関谷 宗英 藤井 多久磨 金澤 浩二 神田 忠仁 星合 昊 平井 康夫 永田 知里
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

CINの癌への進展に関与する因子を解明するため、CINI/II症例のコホート研究を行っている。CIN IIIへの進展例が急増しており、平成16年度中の解析が期待できる。登録数は900例に達し、平成16年6月30日に登録を終了した。今回、厳しく適格規準を設定し、509例において中間解析を行った。進展しやすい因子は、単変量解析では、年齢(30歳代),CIN grade(I), HLA DR1302,sexual partners(多)、HPV16/18/33/52/58感染が有意な因子として抽出された。有意にならなかったがその傾向のあるものとしてCMV IgG陽性,Chlamydia IgG陽性があった。観察を続けることで有意になる可能性がある。HPVはHPV16/18/33/52/58では有意に進展に関連があった。多変量解析ではCIN grade(p<0.05), sexual partners(p<0.05), DR1302(p<0.05), HPV16/18/33/52/58(p<0.05)だけが有意な因子として残った。DR1302が進展に対してprotectiveに働くことをコホート研究で立証したのは、本研究が初めてである。消退しにくい(継続しやすい)因子は、単変量解析では、年齢(>30歳),CIN grade(I),HPV16/18/33/52/58,CMV IgG(陽性),Chlamydia IgG(陽性),smoking(喫煙),marital status(既婚),sexual partner number(>4)が有意なものとして抽出され、多変量解析では年齢(p<0.01)、HPV16/18/33/52/58(p<0.01)、sexual partners(p<0.01)、CIN grade(p=0.06marginal)が残った。
著者
吉川 麗子 五十嵐 中 後藤 励 諏訪 清美
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.422-432, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
10

目的 本研究では,一般成人を対象に,以下の2つを目的とした。1.「周囲に非喫煙者がいる状況での喫煙」に関して喫煙者と非喫煙者の認識とその差異を明らかにすること。2.喫煙と受動喫煙の健康影響に関する知識を提供することにより,喫煙者・非喫煙者それぞれ,行動を起こす意思に何らかの変化が生じるか否かを調べることである。方法 20歳から69歳までの喫煙者・非喫煙者を,喫煙と受動喫煙の健康影響に関する情報を提供する群(提示あり群)と,提供しない群(提示なし群)にランダムに割付けた。Webによるオンライン調査にて,喫煙ルールが明確でない飲食店という状況を設定し,喫煙に関する意識や行動への意思,また一般の飲食店での認識について回答を得た。提示なし群での喫煙者と非喫煙者の認識は記述統計量を算出した。喫煙者・非喫煙者それぞれの提示あり群と提示なし群の比較においては,順序尺度の変数には対応のないt検定,名義尺度の変数にはχ2検定を用いた。また,喫煙者の喫煙行動に影響を与える因子を特定するために,多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 全体として2,157人(喫煙者1,084人,非喫煙者1,073人)から回答を得た。設定した飲食店の環境で,タバコを吸うと回答した喫煙者の24.8%は吸う前に吸っても良いか「聞く」と回答し,吸っても良いか聞かれたことがある非喫煙者は2.8%であった。設定した飲食店の環境で,タバコを「吸おうと思う」と回答した喫煙者は提示あり群16.4%,提示なし群22.8%と有意な差を示した。「吸わない」と回答した人の中で最も多かった理由は,両群ともに「席に灰皿が置いてない」であった。非喫煙者では,吸う前に吸っても良いかと聞かれた場合,「吸わないように頼む」は提示あり群37.4%,提示なし群27.6%であった。多重ロジスティック回帰分析を行った結果,ニコチン依存度,世帯年収,妊娠の状況,家庭での喫煙状況,年代,資料提示有無の項目が喫煙者の喫煙行動と関連性が示された。結論 本調査により,非喫煙者の多くが喫煙されることを望まないにもかかわらず,その意思を喫煙者に伝えていないことが明らかとなった。一方で喫煙者の喫煙意思は,非喫煙者の喫煙者への意思表示や,灰皿の配置などの喫煙を許容する飲食店内の状況に影響される可能性が示された。また,喫煙および受動喫煙に関する情報提供が,喫煙者と非喫煙者の喫煙に関する行動への意思に影響を与える一因である可能性が示唆された。
著者
内山 高 熊井 久雄 吉川 周作 輿水 達司
出版者
山梨県環境科学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は山中湖で採取した湖底堆積物(YA-1,2コア)のテフラ層序を基に,過去数万年にわたる富士山の火山活動史・噴火史を解明することを目的に行った.また併せて,微化石分析を行い,噴火活動の影響についても明らかにした.山中湖コアYA-1,2中のテフラについて,その特徴を明らかにし,陸上部に分布するテフラとの比較を行った.その結果,陸上部のテフラと概ね対応がついたが,一部未確認のテフラがあることが明らかになった.広域火山灰として,YA-1コア深度約7.4mでKg(約3000年前)に,YA-1コア深度約11.8mとYA-2コア深度約6mでK-Ah8(約7000年前)に対比可能なテフラを見出した.また,炭素14年代として,YA-1コア深度3.4mで1,535年前(暦年補正値,以下同),深度11.5mで約7,015年前,深度14.4mで約12,000年前,またYA-2コアでは深度約13mで約8,990から8,600年前の年代を得た.この結果より,YA-1コア深度約0.8mのスコリア層は宝永スコリアに対比される.火山噴火の影響を明らかにするために,山中湖湖心において採取したYA-1コアを用いて,花粉化石と植物珪酸体等の微化石分析を行った.花粉分析の結果から,木本類への火山噴火の顕著な影響は読み取れなかったが,草本類花粉化石や胞子がみられない層準は降下スコリア等のテフラが多数挟在し,その間の堆積物も上下に比べると粗粒シルトや極細粒砂分が多くなることから,テフラの噴出により林床植物や草原性植物は影響を受け,裸地が広がり,浸食が大きくなったものと推定される.本研究により,テフラ層序を基に,富士火山の過去数万年にわたる噴火史が明らかになった.また,微化石分析により火山噴火の影響を評価することができた.これらの成果は火山防災ハザードマップの作成等防災上の基礎資料として貢献するものと考える.
著者
吉川 文隆 矢野 昭彦 内田 幸宏 藤田 健二 川添 強 佐田 裕之
出版者
The Japan Institute of Marine Engineering
雑誌
Marine engineering : journal of the Japan Institution of Marine Engineering = マリンエンジニアリング : 日本マリンエンジニアリング学会誌 (ISSN:13461427)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.123-129, 2008-03-01
参考文献数
7
被引用文献数
1

Propeller shaft diameter of ferries becomes larger in conjunction with requirements of higher vessel's speed and CPPs (controllable pitch propellers) . Thus, it may lead into a tendency to reduce the life duration of stem tube bearing under seawater lubrication. Wear of the propeller shaft sleeve, i.e. bronze alloy, is typically greater than that of the rubber bearings, with triangularly shaped craters appearing on the sleeve surface.<BR>In this paper, we describe the investigation of used sleeve sample taken from an actual vessel, as well as the wear characteristics of bronze alloys conducted under the corrosive wear condition which is equivalent to actual ferry service. The results indicated that corrosive wear was the main cause of sleeve wear. Comparing between the amount of wear in seawater and the one in distilled water, the influence of corrosion on sleeve wear was found to be substantial. Additionally, the craters are considered to be formed by the action of erosion corrosion
著者
吉川 裕之
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.243-248, 2009-12-24 (Released:2010-07-03)
参考文献数
13
被引用文献数
4 4

本邦では子宮頸癌は20代,30代の若年層で急増しており,罹患のピークは35-39歳にある.世界的には,子宮頚癌は罹患数・死亡数において女性の癌で第2位を占めている.子宮頸癌はHPVワクチンにより一次予防が可能である.HPV16とHPV18のウイルス様粒子をワクチンとして用いる.現在,HPV16/18の2価ワクチン(Cervarix)とHPV16/18にHPV6/11を加えた4価ワクチン(Gardasil)がある.これらのワクチンの接種で自然免疫の数十倍も高い中和抗体価が得られ,感染をブロックする.臨床試験でワクチンは子宮頸部の前がん病変であるCIN2/3やAISの発生をほぼ100%ブロックした.重篤な副作用はきわめて少なく,その効果は10年以上持続すると予想されている.HPVワクチンはすでに世界110か国以上で承認され,26か国では思春期女子に公費負担で接種している.多くの若い女性が命を失うこと,助かった場合でも生殖機能を失うことはすこぶる重大である.HPVワクチンにより近い将来において,子宮頸癌が征圧されることを期待したい.
著者
吉川 茂 矢向 正人 芦川 紀子
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

ガウディによれば、サクラダファミリア大聖堂の全体は1つの巨大な楽器として構想されていた。鐘の音楽と協会における礼拝との間での音響的なバランスをとるべく鐘楼の下部構造は一種のマフラー(消音器)になっている。生誕の門の左側(外から見て)の塔(ツインタワーの形をしている)に着目して、そのほぼ下半分の基本構造を1/25縮尺模型で再現し、上部に音源(「鐘」の代用)を置いて音の伝搬特性について実験した。音源スピーカーから14〜96kHzの広帯域信号を入力し、音響レベルを測定したところ、身廊部では約35dBの減衰があり、隣の塔ではさらに約10dBの減衰が見られた。上部構造からの放射に適合する鐘は細長い形をしたチューブラベル・タイプである。ピッチを決める主要な振動モードは(1,4)であり、両端では円形断面を保ちながら左右の5本(G5,A5,B5,C6,D6にチューニングされている)のベルに関する実験から確認した。ただし、ピッチがいくつかの部分音の寄与によって決まるのではなく、たった1つの振動スペクトルによって決まるので複数本のチューブラベルを組み合わせるときの効果は期待できない。生誕の門のファッサードにおける彫刻群「天使の合唱隊」などから予想される音楽的シーンは「復活祭の鐘の音と合唱の声」とか「エオルスの琴の音を伴奏とする妖精たちの合唱」などである。一方、塔、チューブラベル、螺旋階段などは完結性を意味するポジティブな円環であるとともに「樹木」のように閉ざされることのない「有魂」の「器官」を象徴している。サグラダファミリア大聖堂は鐘および合唱の音楽と合体することによって初めて「母なる自然の創造力と養育力(ゲーテの言う自然の治癒力)」を体現でき、「ガウディの聖堂」にふさわしくなると推測できる。
著者
中谷 裕美子 岡野 司 大沼 学 吉川 堯 齊藤 雄太 田中 暁子 福田 真 中田 勝士 國吉 沙和子 長嶺 隆
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.71-74, 2013 (Released:2013-09-19)
参考文献数
16
被引用文献数
4 5

沖縄島やんばる地域における広東住血線虫はクマネズミなどで寄生が確認されているものの,在来のケナガネズミなどにおける感染状況や病原性は不明であった。本症例はケナガネズミが広東住血線虫感染により死亡した初の報告事例であり,病原性が明らかとなった。これは人獣共通感染症である広東住血線虫症が,人のみならず野生動物にも悪影響を及ぼし,特に希少野生動物の多いやんばる地域においては大きな脅威となる可能性があることを示している。
著者
野村 泰伸 鈴木 康之 清野 健 付 春江 吉川 直也 佐古田 三郎
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.185-195, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本解説では,静止立位姿勢および定常二足歩行の間欠制御仮説と,それに関連する最近の研究を紹介する.特に,これらの運動を生成する神経制御が実現すべき運動の特徴として,(1)直立姿勢あるいは周期的歩行(歩行サイクル)の平衡状態からの偏差の時間的変動(運動揺らぎ)として表出する関節の柔軟性,および,(2)運動揺らぎの時間パターンが示すフラクタル性あるいはべき乗則に従う長期相関に注目する.さらに,直立姿勢の安定性に関して,(3)体性感覚情報の神経伝達時間に起因する時間遅れ誘因性不安定化(delay-induced instability)を回避する姿勢制御メカニズム,および,(4)対応する制御器のパラメータ変化に対する姿勢安定化メカニズムのロバスト性に関して議論する.運動計測データに表出する(1)およ(2)の特徴は,(3)と(4)に関わる姿勢の安定化メカニズムが機能した結果として生成されると考えられる.そこで,本稿では,安定性と柔軟性という一見相反する運動特性を実現する制御戦略の有力候補の一つである間欠制御仮説に関して議論する.
著者
吉川 賢太郎 撫井 賀代 福本 紘一 島田 豊治
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.161-164, 2004-06-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
13
被引用文献数
2

市販梅酒 (アルコール14%, 糖20%, エキス分30%含有) 100mlを毎日6カ月間継続飲用させた10人(43.5±15.2歳) を被験者とし, 梅酒飲用による健康人の血中脂と血圧に及ぼす効果についての予備的研究を行った。毎月1回, 身長, 体重, 血圧, 検尿 (尿蛋白質, 尿糖, ウロビリノーゲン, ケトン体) 測定を行った。原則として空腹時採血し, 血清総コレステロール, HDL-コレステロール, 血糖値, ヘモグロビンA1C, ヘモグロビン量, アルブミンを測定した。またBMI, 動脈硬化指数は計算によって求めた。その結果, HDL-コレステロールは飲用前値59.0mg/dlであったが, 飲用2カ月後から有意に増加し, 6カ月後に64.1mg/dlになった。また動脈硬化指数は飲用前値2.54で, 飲用2カ月後から有意に低下し, その後一定値を維持した。収縮期血圧は前値132.8mmHgであったが, 6カ月後に128.7mmHgと低下傾向を示した。拡張期血圧は飲用前値88.0mmHgであったが6カ月後に80.2mmHgと有意に低下した。血糖値は6カ月間に変化は認められず, ほぼ一定の87~89mg/dlを維持した。ヘモグロビンA1Cは血糖値と同様に有意の変化は認められず, 6カ月間ほぼ一定の4.8~4.9%であった。その他の検査に有意な変動は認められなかった。
著者
吉川 義之 前重 伯壮 植村 弥希子
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.2023-010, (Released:2023-06-15)

創傷リハビリテーション(以下,創傷リハ)においてリハビリテーション専門職(以下,リハ専門職)が多く関わると考えられる糖尿病足病変と褥瘡に対する物理療法について紹介する.創傷リハでは創傷発生予防と創傷管理のリハビリテーションがあり,リハ専門職はその両方に関わることができる.物理療法も同様に,創傷発生予防と創傷管理の両方に関わることができる.創傷予防については電気刺激療法を実施し筋の収縮を促すことにより足底圧や坐骨部圧の分散が可能になる.創傷管理については,創部に電気刺激療法を実施することにより創縮小率が上昇することが確認されている.このように物理療法は創傷発生予防と創傷管理の両方に関わることができるため,積極的に実施していただきたい.今後,創傷領域に関わっていただけるリハ専門職が増えることを切に願っている.
著者
吉川 虎雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.691-702, 1984-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
32
被引用文献数
7 9

Landforms are shaped by tectonic movement and sculptured by denudational processes. Davis (1899) deduced landform development by denudational processes, postulating prolonged stillstand of a landmass following rapid uplift, but W. Penck (1924) emphasized that land forms were formed by tectonic and denudational processes proceeding concurrently at different rates. These two distinctive views of tectonics and denudation in geomorphology have been discussed many times, but actual conditions of these processes have rarely been assessed quantitatively. Schumm (1963) and Bloom (1978) estimated modern rates of uplift to be much greater than those of denudation, and supported to some extent the Davisian assumption of rapid uplift of a landmass, which allowed little denudational modification of the area during the period of uplift. Recent geomorphological study has achieved many excellent results concerning tectonic and denudational processes and their products, but landform development by concurrent tectonics and denudation has scarcely been investigated intensively. As a result of the author's estimate in Japan (Yoshikawa, 1974), modern rates of uplift are generally greater than those of denudation, but denudation rates are greater than or approximately equal to uplift rates in high mountains of Central Japan and on the Pacific slope of Southwest Japan; in these mountains both rates are usually of the order of 1mm/yr. These mountains have been rapidly uplifted and intensely denuded in the Quaternary. Landform development of these mountains, therefore, should be explained not by the Davisian scheme, but by the Penckian. When a landmass is uplifted at a constant rate, the area increases its relief with uplift, being sculptured by rivers. Denudation rates become greater and approach uplift rates. Ultimately both rates become equal, and steady-state landforms in dynamic equilibrium of uplift and denudation are accomplished, as far as the landmass is continuously uplifted at the constant rate (Plirano, 1972, 1976; Ohmori, 1978). Landform evolution by uplift and denudation, therefore, can be divided into the following three stages; (1) the developing stage that landforms approach steady state by concurrently proceeding uplift and denudation, (2) the culminating stage that steady-state landforms are maintained in dynamic equilibrium of uplift and denudation, and (3) the declining stage that landforms are reduced down to sea level by denudation when uplift ceases. Landform evolution passes through these three stages in different duration periods according to various rates of uplift and denudation as well as duration periods of uplift. Supported by the interpretation that erosion surfaces fragmentarily distributed in Japanese mountains are remnants of peneplains in previous cycles, the Davisian scheme of landform development has survived in Japan, where active uplift and intense denudation have proceeded concurrently in recent geologic time. It was, however, clarified in the upper drainage basin of the Waiapu River, northeastern North Island, New Zealand, that erosion surfaces in the hills, about 500 to 700m above sea level, were formed nearly at the present height probably by periglacial processes and fluvial transportation of debris in the last glacial age (Yoshikawa et at., in preparation). This suggests that there is a possibility that a considerable part of erosion surfaces in Japanese high mountains is also of the similar origin. Geomorphological study in tectonically active and intensely denuded regions, such as Japan, will produce invaluable information of landform evolution by concurrent tectonics and denudation. This will contribute to further development of geomorphology.