著者
吉田 昌義
出版者
信州短期大学
雑誌
信州短期大学研究紀要 (ISSN:09182780)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.7-12, 2001-12-25

米国における同時多発テロ事件の発生が世界を震憾させた。ブッシュ米大統領は本件を「新たな戦争」(New War)と定義し、テロリズムヘの徹底抗戦を宣言した。同大統領が今回のテロ事件を「新たな戦争」と決めつけた意義は、一定のルールに則った20世紀的な国と国との戦争の概念を越えた21世紀的な戦争が始まったというところにある。「一国に対する攻撃は全世界に対する攻撃」であると断じ、直ちに戦闘態勢を整えた。日本も「遅ればせながら」(at the eleventh hour)対応策を講じようとしている。"An attack on one is an attack on all" というブッシュ大統領の演説のフレーズから即興的に借りて彼の演説中に取り入れたという小泉総理の国会答弁を聞くに及び、余りにも不用意な発言に限りない落胆の念を禁じ得なかった筆者である。総理のワシントンでの演説は、従来の憲法解釈を根底から覆す意味内容を包含しており、憲法で禁止しているといわれる「集団的自衛権の行使」を容認するものである。今回の同時多発テロ事件をめぐり日本の国際貢献活動を拘束してきた日本国憲法と国連憲章の矛盾を指摘し、国連加盟国日本の取るべき道は国際法優位の立場を踏まえながら、日本が超憲法的な対応策を採るべき時にきていることを強調した。「時は日本を待ってくれない」、それが日本を取り巻く今日の国際情勢である。
著者
吉田 和人 山田 耕司 玉城 将 内藤 久士 加賀 勝
出版者
Japan Society of Physical Education, Health and Sport Sciences
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.227-236, 2014
被引用文献数
4

The rotation speed of the ball spin has been considered a key factor in winning table tennis matches. This study quantified the rotation speed (rotations per second: rps) of service balls delivered by quarter-finalists in the 2009 World Table Tennis Championships. Ball services were recorded during the quarter-finals of both the men's and women's singles, involving 4 matches and 8 players per gender, using a high-speed video camera (1000 fps) for calculation of the rotation speed, and a standard video camera (30 fps) for distinguishing players and aces (including those touched by the receiver). Eventually, the rotation speeds of 329 services were calculated, and these ranged from 13.7 to 62.5 rps. For men, 50-60 rps was the most frequent (40.0%) range of the rotation speeds, while for women, the corresponding range was 40-50 rps (43.8%); the average (±SD) rotation speed was significantly greater for men than for women (46.0±9.0 vs. 39.2±9.3 rps, p<0.001). The fastest rotation speed was 62.5 rps for both genders. Chinese men produced a slower rotation speed than did other men (43.5±8.9 vs. 51.0±6.8 rps, p<0.001). For women, however, the rotation speed was similar between Chinese players and the others (39.9±10.2 vs. 38.5±8.2 rps). The rotation speeds of aces were scattered over a wide range of 37.0-58.8 rps for men and 27.8-62.5 rps for women, implying a weak association between aces and fast rotation. These pioneering data may help clarify some of the technical and tactical aspects of table tennis, and can be used to develop training and game strategies for successful performance.<br>
著者
吉田 佐治子 薮中 征代
雑誌
摂南大学教育学研究 = Bulletin of Educational Research of Setsunan University
巻号頁・発行日
no.11, pp.33-46, 2015-01

小学校1・2年生を対象に,幼児期における家庭での絵本の読み聞かせの状況,現在の読書に対する態度等を調査した。その結果は以下の通りであった。すなわち,幼児期に絵本の読み聞かせをしてもらったこどもは,絵本の読み聞かせが好きであり,現在も読み聞かせてもらっており,自分でも絵本を読んでいた。現在,絵本以外の本についても読んでもらっており,自分でも読んでいた。さらには,幼児期に絵本の読み聞かせをしてもらったこどもは,現在,本を読むことが好きであると答えており,読書量も多かった。以上のことから,幼児期の絵本の読み聞かせは,就学後の読書に影響を与えていることが示された。
著者
松瀬 イネス倶子 武田 カチア美知枝 上村 清 吉田 政弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.117-122, 1997
参考文献数
6
被引用文献数
5 8

セアカゴケグモは1995年9月に大阪府の高石市で発見され, 大阪湾沿岸地帯, 三重県四日市市などでも生息が確認された。また1996年3月上旬の現地調査ではセアカゴケグモの越冬が確認され, 春夏秋冬のいずれの調査において成成虫, 若虫, 卵嚢のいずれもが採集できた。採集したクモと卵嚢は研究室に持ち帰り, 25℃, 60% RH, 14時間照明で, 50ml容量のガラス瓶内で, ショウジョウバエを餌とし, 個別飼育を行った。その内, 卵嚢より脱出した若虫を用いて, セアカゴケグモが寒冷期に, 冬期と同様の低温条件下の飼育によって生存できるかどうかを検討した。その結果, 5℃においては最長47日間生存し, 10℃及び15℃ではそれぞれ175及び270日生存した。この間の発育零点は15℃前後であった。セアカゴケグモを含むゴケグモ類が日本に分布していなかった主因は気温によるものと推定されているが, 飼育実験の結果, セアカゴケグモは日本に定着し, さらにより広範囲に広がる可能性があることが示唆された。
著者
伊藤 直人 吉田 彩夏 森 晃爾
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-12, 2020-01-20 (Released:2020-01-25)
参考文献数
10

目的:特定業務従事者健康診断は,業務内容に関わらず定期健康診断と同じ検査項目であり,特殊健康診断との役割も不明確である.このため,特定業務従事者健康診断の対象業務の妥当性について課題が提示されているが,法制度が複雑でありその解釈は容易ではない.そこで,特定業務従事者健康診断の実施対象となる業務とその基準に関する変遷を明らかにする.方法:特定業務従事者健康診断の歴史に関連する法令,通達,文献,書籍の内容を調査した.結果:特定業務従事者健康診断の対象業務は,差し当たり特別な衛生管理をしなければならない有害物を取り扱う業務として昭和22(1947)年に旧労働安全衛生規則第48条で定められ,対象業務の定量的基準は当面妥当と考えられる基準値として昭和23(1948)年の通達によって示され,その後大きく変更されていない.その結果,多くの特定業務従事者健康診断の実施基準の多くは,許容濃度を超えていた.結語:特定業務従事者健康診断の対象業務及びその基準は,約70年間ほとんど変更されていない.社会環境の変化や有害業務の管理手法の向上を鑑み,特殊健康診断と特定業務従事者健康診断の目的や役割を再整理し,特定業務従事者健康診断のあり方を改めて考える必要がある.
著者
岡田 富広 坂井 友実 吉田 紀明 木村 里美
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.601-607, 2005-08-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

【目的】病的共同運動を認める顔面神経麻痺1症例を対象に、非同期的な鍼通電 (100Hz間欠波交互通電) を行い、その有効性について検討した。また、周波数別の鍼通電による変化についても検討した。【方法】鍼治療は表情筋に対する100Hz間欠波交互通電で、EMGを中心とした評価 (EMG振幅、EMG残存持続時間) と顔面神経麻痺スコア、Visual Analogue Scale (VAS) 、Electroneuronography (ENog) による評価とし、治療前後および経時的な変化を観察した。【結果】EMG所見においてEMG振幅に変化は認められなかったが、EMG残存持続時間は治療後および経時的に短縮した。また、VAS、顔面神経麻痺スコア、ENoGはそれぞれ改善した。周波数別の鍼通電によるEMG残存持続時間の変化は、1Hz通電で不変、30Hz通電で延長、100Hz通電で短縮した。【結論】100Hz間欠波交互通電はEMG残存持続時間を短縮させるとともに.病的共同運動の自覚症状を軽減させた。また、顔面神経麻痺スコア、ENoG値も改善することができた。
著者
吉田 耕一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.113-122, 2016-05-01 (Released:2016-05-01)

朝日新聞フォトアーカイブは2010年に発足した。朝日新聞社が所蔵する明治時代以降の歴史的な写真(ネガ,紙焼き,ガラス乾板など)約2,000万枚をデジタル化する作業を進め,最新のデジタル写真と合わせて約240万枚をWeb上で公開している。デジタル化に当たっては,写真の裏面のメモなどを頼りに書誌を確認するのが難題で,手間と時間がかかる。写真の書誌情報(見出し,写真説明,撮影場所,撮影日)に補助キーワードなどを加えることで,利用者の写真検索を容易にしている。Webサイトは2014年に大幅改修し,検索のためのオプションや提示型の特集機能の充実を図った。朝日新聞フォトアーカイブに登録されている写真は,教科書・教材やテレビ番組,書籍・雑誌,企業の社史などに多方面で利用されている。動画の取り組みも強化している。著作権の保護期間が満了した写真の扱いは大きな課題だ。朝日新聞フォトアーカイブでは,古い写真を死蔵することなく広く活用してもらうために,積極的に公開している。その際,データ提供料として適正な利用料金を頂く方針で,利用規約を整備した。近現代史を生き生きと伝える貴重な歴史写真を多くの人に見てもらうことは,新聞社の役割の一つだと考えている。
著者
吉田 邦彦 遠藤 乾 辻 康夫 丸山 博 ゲーマン・ジェフリー ジョセフ 井上 勝生 上村 英明
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-07-19

第1に補償問題に関する研究はかなり進捗した。そのうちの1つめとして主力を注いだのは、先住民族研究の中のアイヌ民族に関するもので、2016年4月発足の市民会議(代表者は、分担者丸山)を本年度も鋭意続行し(2017年3月、6月、10月)、その報告書も公表した。関連して、海外の研究者との関連も密にし、コロラド大学でのアメリカ原住民研究者との意見交換(2017年5月)、アラスカ大学でのアラスカ原住民研究会議報告及び意見交換(2017年4月)(ニューメキシコ大学には前年度訪問(2017円1月))、北欧での北極圏会議の参加,ウメオ大学での北大交流会では、特にサーミ民族との比較研究に留意して意見交換をし、講演も行った(2017年6月、2018年2月)(オーストラリアのアボリジニー問題の比較研究は、前年度末(2017年3月)にオーストラリア国立大学で講義)。近時のホットな問題である遺骨返還について、ベルリン自由大学のシーア教授とも意見交換した(2017年7月)。補償問題の2つめは、済州島の悲劇に即して,ノースキャロライナ大学でのシンポを主催し、アメリカの補償責任との関係で、連邦議員とも意見交換した(2017年5月)。済州大学との提携での学生も交えたシンポも例年通り行っている(2017年8月)。さらにこの関連では、奴隷制に関わる補償論調査のためにアラバマ大学を初訪問し(2017年10月)、さらにチュレーン大学での補償問題のシンポで報告した(2018年3月)。第2に、移民問題との関係では、北大のサマーインスティチュートの一環で、UCLAのモトムラ教授、マイアミ大学のエイブラハム教授、トルコの中近東大学のカレ教授を北大に招聘してのシンポ及び講義・討論を実施した。さらにこの問題群を深めるのは、今後の課題である。関連して、メキシコ国境の環境問題についても調査する機会も得た(2018年1月)。
著者
吉田 一也
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.239-245, 2012 (Released:2012-06-13)
参考文献数
26
被引用文献数
4 3

〔目的〕キネシオテーピング®の理論と基本貼付法についてまとめた.伸縮性テープを皮膚に貼付することで体液の循環を改善させ,自然治癒力を高める効果が期待されるテーピング法である.人体の比較的浅層へのアプローチから膜組織の乱れを評価・調整し,筋膜を中心とした機能改善を目的とする.効果として,筋機能の改善,体液の循環改善,疼痛抑制,関節矯正,治療効果持続時間の延長等がある.テープ自体をほとんど伸張せずに貼るのが特徴である.またテープの伸張率を変えて貼付することによって,低伸張での貼付は表層の皮膚・筋膜・筋に対してアプローチでき,高伸張での貼付は深層の腱・靱帯および関節矯正等に応用できる.このような特徴的な貼付法は治療だけではなく,理学療法評価への応用も期待でき,理学療法士分野へのさらなる進出が期待される.
著者
吉田 和義
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.671-688, 2008-11-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
24
被引用文献数
3 1 1

子どもの知覚環境は, 成長に伴って野外での遊び行動を通して発達すると考えられる. 本研究はアンケート調査と手描き地図調査を用いて, ニュータウン地区における子どもの知覚環境の発達プロセスを明らかにすることを目指した. 就学前児童から中学校第1学年までに対し調査を行った結果, 次の事実が明らかになった. ニュータウン地区の子どもの遊び行動は制約が多い. 手描き地図の分析によれば, 保育園の年長児ですでにルートマップが形成され始め, 小学校第4学年以降サーベイマップの割合が次第に増加することが明らかになった. また, 建物表現に注目すると, 立面的な表現から位置的な表現へ, 視点が転換され, 相貌的な知覚の傾向が弱まる. それでもサーベイマップを描く子どもは, 中学校第1学年においても約半数にとどまり, 広域の空間を知覚する機会が少ないため, ルートマップからサーベイマップへの移行がハート・ムーア (1976) の研究結果に比較して遅くなる傾向にあることが明らかになった.
著者
吉田 明弘 吉木 岳哉
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.228-237, 2008-05-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
28
被引用文献数
2 3

岩手県岩手山南東麓の春子谷地湿原において5地点のボーリングを行った. コア試料の14C年代測定およびテフラ分析, 花粉分析の結果から, この湿原周辺における約13,000年前以降の植生変遷および気候変化を検討した. この湿原は秋田駒柳沢テフラ (Ak-Y) の上に, 泥炭からなる湿原堆積物が堆積する. 湿原堆積物には, 下位より秋田駒堀切テフラ (Ak-HP), 十和田aテフラ (To-a), 岩手刈屋スコリア (Iw-KS) が挟在する. 湿原周辺では, 約13.4~13.0kaにはカバノキ属の森林とコナラ亜属を主体とする冷温帯性落葉広葉樹林が分布し, 冷涼な気候であった. 約13.0~10.5kaにはカバノキ属の森林から冷温帯性落葉広葉樹林となり, 次第に温暖化した. 約10.5~1.4kaにはコナラ亜属が優占する冷温帯性落葉広葉樹林となり, ほぼ現在と同様の温暖な気候になった. その後, 約1.4~0.2kaになるとスギ林が, 約0.2ka~現在にはアカマツ二次林やスギ植林が拡大した.
著者
吉田 智美 河村 美穂
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教育学部 = Journal of Saitama University. Faculty of Education (ISSN:18815146)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.123-134, 2009

The aim of this study is to explain the historical change of indoor shoes and their role in school life.Three points were used in researching about indoor shoes, because there have been no previous studies.(1) Explaining how the use of indoor shoes was influenced by the architecture of the school buildings from the Meiji era to the present, paying special attention to the school entrance.(2) Researching the use of indoor shoes using pictures of Saitama womens’ teacher’s school.(3) Taking a questionnaire for people above 50 about indoor shoes in their schooldays and explaining the role of the shoes.Japanese students have been removing their shoes at the school entrance for 130 years, from when the educational system started to the present.The custom of removing shoes at the school entrance, putting them into boxes, and changing into indoor shoes first appeared during the Taisho era. This custom originates from everyday life in Japan and was used as a teaching tool.
著者
大谷 由香 師 茂樹 小野嶋 祥雄 河上 麻由子 榎本 渉 吉田 慈順 野呂 靖 村上 明也 西谷 功
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「唐決」とよばれる日中間を往来した仏教の教義に関する書簡を中心とし、国や地域、文化を越えた仏教教義の問答内容と歴史的背景の分析を通じて、「仏教東漸」とは異なる東アジア仏教の相互交流の実態を明らかにする。本研究では、地域・時代・分野を別とする仏教学者と、対外交流史を専門とする歴史学者が共同研究を行う。これによって学術分野を超えた東アジア仏教史全体を俯瞰するための新たな視点の獲得を目指す。