著者
坂本 信介 畔柳 聴 右京 里那 小林 郁雄 家入 誠二
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.99-105, 2019 (Released:2019-11-13)
参考文献数
17

牧場への野生動物の侵入をカメラトラップ法で調べる際に,カメラの設置位置や設置時期によって結果が大きく変わるかを調べるため,同一牧場内の様々な施設の内外に 1 年にわたり自動撮影カメラを 9 台設置し,飼養形態や利用方式が異なる施設ごとにまた季節ごとに野生哺乳類の出現状況を比較した.哺乳類の撮影頻度は施設間で大きく異なっており,相対的に乳牛舎内,肥育牛舎外,繁殖牛舎外では,食肉類の撮影頻度が高い傾向にあった.また,肥育牛舎,繁殖牛舎,倉庫では,動物の撮影頻度のうちわけが施設の内外で大きく異なっていた.イエネズミとノネズミのどちらもが施設外で撮影されたため,イエネズミの施設内外の移動と施設外での両者の直接的・間接的接触が懸念された.また各動物の出現頻度には季節性が見られた.以上の結果から,牧場内でカメラトラップ法を用いる際には,撮影地点や設置時期の選定が調査結果に影響を及ぼすと考えられる.
著者
笹森 新 山口 一弘 坂本 雄児
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.34, no.31, pp.5-8, 2010-07-23
被引用文献数
1

計算機合成ホログラム(CGH)は,理想的な三次元ディスプレイとして期待される技術である.CGHによってリアリティの高い三次元ディスプレイを実現するためにはレンダリング技術の確立が必要であるが,これに関しては研究が不十分である.特に,光が透明な物体を透過する際に生じる屈折現象を表現する手法は確立されていない.そこで,本稿ではこの屈折現象を考慮した計算法を提案する.提案手法は,コンピュータグラフィックスにおいて屈折などの光学現象を表現する方法として利用されるレイトレーシング法を,CGHに適応したものである.この手法を用いてホログラムを作成,光学像再生を行い,提案手法が屈折現象を伴う物体の表示に有効であることを確認した.
著者
坂本 治也
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
pp.NPR-D-18-00021, (Released:2019-10-17)
参考文献数
34

市民社会の発展を促す法制度は,誰によって,どのような理由・動機で,推進されるのか.この点を明らかにする研究は,これまでのところ十分な蓄積がなされていない.とりわけ,法制度の制定・変更に決定的な影響力を有する議員の分析が欠如している.本稿では,現代日本のケースを題材に「NPO政策の推進に関与する国会議員はどのような特徴を有するのか.なぜNPO政策を推進するのか」を,合理的選択論の理論枠組みと国会議員データを用いた定量的分析によって明らかにした.分析の結果,明らかとなるのは,以下の事実である.NPO政策は「票になりにくい政策」であるが,同時にニッチな政策であるがゆえに,「昇進」のための業績誇示の成果を得やすい政策の1つである.それゆえ,選挙に強く「再選」動機が弱い議員ほど,また当選回数が多く「昇進」動機が強い議員ほど,NPO政策の推進に関与しやすい傾向がある.また,中道左派・リベラルな政党や派閥への所属や比例区選出議員かどうかもNPO政策の推進態度と関連している.
著者
牛垣 雄矢 久保 薫 坂本 律樹 関根 大器 近井 駿介 原田 怜於 松井 彩桜
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.285-306, 2020 (Released:2020-11-10)
参考文献数
34

アクアラインの通行料引下げの結果,高速バスによる東京都心部や川崎・横浜方面への通勤者が増加し,その中にはパーク&ライドを行う人も多い.東京大都市圏郊外としては相対的に地価も安いため,木更津市の人口は増加し,中心市街地から離れた郊外住宅地がその受け皿となっている.市や県など行政の協力・連携のもと,イオンモールなどのショッピングセンターが立地し,周辺ではチェーン店等が集積した.これにより木更津市の買物環境と商業中心性は向上したが,中心市街地の個人商店は厳しい状況にあり,スーパーやドラッグストアが少なく生活必需品が購入しづらい状況にある.その中でイオンによって無料送迎バスが運営され,高齢者の重要な移動手段となっている.木更津市の人口分布や商業は自家用車の利用を前提とした構造となり,イオンとの関わりや更なる高齢化が進展する中で,住民に対する買い物の機会や移動手段の確保が課題となっている.
著者
劔 卓夫 奥村 謙 大西 史峻 金子 祥三 根岸 耕大 林 克英 岡松 秀治 田中 靖章 坂本 知浩 古山 准二郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.113-123, 2021-10-01 (Released:2021-10-10)
参考文献数
20

左脚ペーシング(LBBP)は,His束下流の刺激伝導系を直接捕捉しようとする新しい心室ペーシング法である.LBBPはHis束ペーシングより成功率が高く,心機能やQRS幅はHis束ペーシングとほぼ同等で,閾値上昇を認めないことが報告されている.われわれは房室ブロック30例に対してLBBPを試みたが,全例で左脚エリア心室中隔心筋内へのリード留置に成功した.心室ペーシング後のQRS幅は128±15ms(平均値±標準偏差),ペーシング閾値は0.6±0.2V/0.4ms,心室波高値は11.0±7.2mVで,刺激電極に7例(23%)で左脚電位が認められた.合併症は認められず,平均観察期間6±3ヵ月においてリード脱落,リード位置変更,0.5V以上の閾値上昇はなかった.LBBPはペーシング誘発心筋症の予防のみならず,左脚ブロックを有する両室ペーシング適応症例に対する心機能改善効果も検討されており,今後さらに普及することが期待される.
著者
片野 修 佐久間 徹 岩崎 順 喜多 明 尾崎 真澄 坂本 浩 山崎 裕治 阿部 夏丸 新見 克也 上垣 雅史
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.147-152, 2010-05-30 (Released:2018-02-01)
参考文献数
20
被引用文献数
6

The channel catfish, Ictalurus punctatus, is an invasive alien species introduced from North America. We investigated the present status of the fish in Japan and found that it is widely distributed in the Abukuma, Tone, and Yahagi River systems, as well as in Lake Shimokotori. In 2008 and 2009, several channel catfish were also caught in Lake Hinuma and the Miya and Seta Rivers. We concluded that the distribution of channel catfish has rapidly expanded within natural rivers during the past several years. To avoid severe damage imposed by channel catfish to the river ecosystems and inland fisheries of Japan, risk assessments and examinations of the ecological characteristics and methods of capture of this fish species are urgently required.
著者
坂本 理
出版者
日本ソーシャルワーク学会
雑誌
ソーシャルワーク学会誌 (ISSN:18843654)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.51-56, 2012

日本の児童相談所の児童福祉司(SW)の人員配置は,欧米諸国や韓国などと比べ,非常に劣悪なものである.欧米や韓国では虐待についてはSW一人当たり20件前後のケースを担当するが,日本では虐待だけでもその数倍,他の相談と合わせれば,100件以上ものケースを担当することは珍しいことではない.では,児相のSWの1人当たりの担当ケース数が多すぎると,実際どのようなことが現場で起きるのであろうか.筆者はある都市部の児相において,虐待専属のSWとして100ケース以上を担当した経験をもつ.その際,どういった状態に陥ったのか,これまでどこでも報告していない.今回,100件もの虐待ケースを担当した場合,(1)何人の子どもや保護者と実際に会って面接できたのか,(2)それはどの程度の回数であったか,の2点を中心に報告し,虐待を受けた子どもたちに対して,あってはならないレベルの支援体制しか取れていない,この国の現状の一端を報告したい.
著者
清水 祐一郎 土斐崎 龍一 坂本 真樹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.41-52, 2014-01-05 (Released:2014-01-07)
参考文献数
23
被引用文献数
13 6

In Japanese, onomatopoeia (i.e., imitative or mimetic words) is frequently used in daily life conversation to express one's intuitive and sensitive feelings. Many onomatopoeic expressions are very similar to each other and their meanings seem to be vague and ambiguous so that it is hard to catch minute semantic differences among onomatopoeic expressions. However, we use onomatopoeia, even novel onomatopoeia, to express our subjective, intuitive and sensitive feelings in daily language use. Therefore, estimating information conveyed by onomatopoeia is inevitable in constructing a human-like intelligent communication system. In this study, we propose a system to estimate information conveyed by onomatopoeia based on Japanese sound symbolism. The existence of synesthetic associations between sounds and sensory experiences (sound symbolism) has been demonstrated over the decades. It is also known that the sensory-sound correspondence can be found not only in words referring to visual shapes, but also in those referring to tactile sensations. So our system quantifies images of inputted onomatopoeia using 43 adjective pair scales related to visual and tactile sensations. Our method hypothesizes that the impression created by an onomatopoeic expression could be predicted by the phonological characteristics of its constituent phonemes. To collect phonemic image data, we conducted a psychological experiment where 78 participants were asked to evaluate the impressions of 312 onomatopoeic expressions, which cover all kinds of Japanese phonemes, against 43 pairs of adjectives in seven-points SD scales. We applied the phonemic image data to our model, and calculated the impression values of each phoneme by making use of a mathematical quantification theory class I. This system estimates rich information conveyed by not only conventional but also newly created onomatopoeic expressions and differentiates among a variety of onomatopoeic expressions, which are frequently similar to each other. We conducted another psychological experiment in order to confirm the effectiveness of our system. Results showed that our system succeeded in evaluating information conveyed by onomatopoeia.
著者
坂本 真士 影山 隆之
出版者
日本精神衛生学会
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.62-72, 2005-12-10 (Released:2011-03-02)
参考文献数
53
被引用文献数
2

本稿では, 自殺に関する報道が, 自殺行動に及ぼす影響について文献的な検討を行った。レビューした対象は, 1. ニュース報道 (新聞やテレビなど) の影響 (報道の影響に関する研究, メタ分析, 報道の内容分析), 2. ニュース報道以外の情報源からの影響, 3. 介入研究であった。ニュース報道については, 海外の研究では報道によって自殺行動が続発する可能性が示された。メタ分析の結果から, 現実の自殺の報道はフィクションにおける自殺の記述よりも, また有名人 (タレントや有名政治家) の自殺報道はそうでない人の自殺報道よりも, それぞれ影響力が強いことが示された。日本における研究は数少ないが, 有名人の自殺報道については影響力が強いことが示された。報道の内容分析を見ると, 自殺の現状を正確に反映しているというよりも, ニュースバリューの高いものに報道が偏り, 自殺を単純化して報道していることが示された。ニュース報道以外の情報源からの影響については, 海外では自殺を描写したドラマが流された後に自殺が続発した例が報告されていた。日本ではそのような研究は見られなかった。介入研究については, 海外ではウィーンの地下鉄における自殺報道において, ガイドラインの作成とマスメディアの協力によって自殺件数が減少したことが報告された。最後に, レビューをふまえて今後の検討課題について展望した。日本においてはメディアの影響の検討が不十分であり, 学術的な検討が必要であること (例: 自殺者が増加した1998年前後における影響の検討), 報道の影響や介入の可能性を検討する基礎研究が必要であること, 予防への実践に関する研究も並行して進める必要があることを指摘した。
著者
坂本 佳鶴恵
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.89-100, 2000-06-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
32

本稿は、ポストモダン・フェミニズムの理論枠組みの特徴とその展開の可能性を具体的に論じたものである。ポストモダン・フェミニズムは、デリダなどのポストモダニズムの思想の影響を受けながら、反本質主義と差異の重視を特徴として、独自に展開した90 年代の新しいフェミニズムの流れである。具体的には、意味カテゴリーや表象の問題に、新しい観点の分析をおこなっている。日本もふくめて、先進諸国では、自由主義の立場からフェミニズムに対する疑問や、フェミニズムがうまく取り組めていないさまざまなマイノリティの問題が提起されているが、ポストモダン・フェミニズムは、そうした問題に対処するための枠組みを提供しようとしている。ポストモダン・フェミニズムは、日本では、たとえば、近年のミスコンテスト、売買春をめぐる論争に対して、新しい観点を提供しうる。まだ多くの課題を抱えているが、これからの展開が期待される。
著者
善教 将大 坂本 治也
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.74-89, 2013

本稿の目的は,日本維新の会への支持態度の特徴ならびにその背景にある有権者の論理を明らかにすることである。先行研究では,維新あるいは橋下への支持は,有権者の政治的・社会的疎外意識に基づく熱狂的なものであることが述べられてきた。これに対して本稿では有権者が抱く橋下イメージの違いという観点から,維新が支持される理由を説明する。実証分析の結果,明らかとなったのは次の3点である。第1に維新は多くの有権者に支持されているが,その支持強度は弱い。第2に政治的・社会的疎外意識等と維新支持に関連があるとはいえない。第3に橋下をリーダーシップの高い人物だと認識する人は維新を弱く支持し,保守的な人物だと認識する人は強く支持する傾向にある。つまり維新への支持が弱い理由は,彼のリーダーシップへの評価が弱い支持にしか結びつかないという点に求められる,というのが本稿の結論である。
著者
坂本 治也
出版者
関西大学経済・政治研究所
雑誌
セミナー年報 (ISSN:18822010)
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.97-107, 2020-03

第236回産業セミナー
著者
松村 耕平 尾形 正泰 小野 哲雄 加藤 淳 阪口 紗季 坂本 大介 杉本 雅則 角 康之 中村 裕美 西田 健志 樋口 啓太 安尾 萌 渡邉 拓貴
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2017-HCI-174, no.13, pp.1-8, 2017-08-16

ACM CHI に採録された論文を読み合う勉強会,CHI 勉強会 2017 を開催した.勉強会では ACM CHI2017 に採録された 599 件の論文を参加者が分担して読み合う.これによって,参加者は先端の HCI 研究を概観することができる.本年度は,勉強会をスムースに実施し,また,参加者の支援を行うために支援システムを導入した.システムの分析から,CHI 勉強会がどのような特徴を持っているのか,そして今後どのようにデザインされていくべきなのか議論する.
著者
坂本 亮太
出版者
近畿大学民俗学研究所
雑誌
民俗文化 No.29 (2017. 10) (ISSN:09162461)
巻号頁・発行日
no.29, pp.341-371, 2017-10-31 (Released:2017-12-25)
著者
坂本 真里子 河野 一世 熊谷 まゆみ 赤野 裕文 畑江 敬子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.427-434, 2007-12-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
6

硬度の異なる3種の水,南アルプスの天然水,エビアン,コントレックスを用いて,かつお節だし,野菜スープ,牛肉のスープストックを調製した。総窒素,遊離アミノ酸,イノシン酸,グアニル酸,有機酸の分析および官能評価を行い,水の違いを比較した。かつお節だしでは用いた水の種類によって,遊離アミノ酸のパターンが異なっていた。官能評価では総合的な好ましさに有意の差は無かったが,エビアンと南アルプスの天然水が好まれる傾向にあった。野菜スープでは南アルプスの天然水に殆どの遊離アミノ酸が多く,次いでエビアンに多かった。官能評価ではこの両者が有意に好まれた。牛肉スープストックではコントレックスがアクを最も多く分離してスープは清澄であった。遊離アミノ酸合計量はエビアンに最も多く,ついでコントレックスであった。エビアンはイノシン酸,グアニル酸も有意に多かった。官能評価で最も好まれたのはエビアンであった。硬度の異なる水で3種の煮出し汁を調製すると,溶出成分に差があった。煮出し汁の好ましさは溶出成分だけでなく,水そのものの味も影響することから,溶出成分と水の味との兼ね合いで好ましさが決まるといえる。
著者
坂本 一仁
雑誌
研究報告セキュリティ心理学とトラスト(SPT) (ISSN:21888671)
巻号頁・発行日
vol.2021-SPT-43, no.20, pp.1-8, 2021-07-12

Apple 社は iPhone などのモバイル端末 OS である iOS14 からアプリトラッキング透明性 (App Tracking Transparency) を適用し,その一環として広告用識別子の IDFA (Identifier for Advertisers) の利用をユーザのオプトイン形式とした.アプリ事業者は IDFA を利用した複数事業者間での広告測定を行う場合,アプリユーザにトラッキングを許可してもらう必要がある.Apple 社の公式ドキュメントでは,トラッキングの許可を求める画面の前に追加の説明を表示してもよいとしているが,不要なデータアクセスに同意するようユーザを誘導したり,だましたり,強制したりするダークパターンは禁止している.本論文では,Apple のアプリ配信プラットフォームである App Store の日本の無料 Top100 アプリを調査し,IDFA 許可に関する画面においてダークパターンがどの程度存在するかを調査した.調査の結果,35 アプリで IDFA 許可に関する画面が確認され,31 アプリ(88.6%) で少なくとも 1 つのダークパターンが観測された.本論文の貢献として,これまでのダークパターン項目を横断的に整理し,IDFA のオプトイン化に伴うダークパターンの実態を早期に発見し,加えて新たな分類のダークパターンを定義した.
著者
伊藤 操子 植木 邦和 坂本 修一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.41-48, 1982-05-26 (Released:2009-12-17)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3 1

1) 鉄道敷において管理対象となる植生の概要を知るために, 国鉄沿線の問題雑草に関する全国的なアンケート調査を行うとともに, 大阪周辺の線路について優占草種とその分布に影響する人為的要因との関係を調査, 検討した。2) アンケート調査において問題雑草として最も回答の多かった種ススキであり, 北海道から鹿児島までほぼ全域でみとめられた。2~3位はイタドリ, クズで山形以南で広く問題視されており, さらにヨモギ属, セイタカアワダチソウ, ササ葉類, ヨシ, スギナも多かった。北海道における種類は本州以南とかなり異っていた。3) 大阪周辺についての車窓調査の結果, 発生量の多い大型草本は, ススキ, セイタカアワダチソウ, エノコログサ属, チガヤ及びクズであった。これらの発生量と線路側面の形態, 過去の草管理及び周囲の環境との間には関連性がみとめられた。すなわち, ススキ及びチガヤには市街地化の程度が進んだ地域において減少する傾向が, セイタカアワダチソウ及びクズには逆の傾向がみとめられた。クズは特に広い盛土法面に多かった。エノコログサ属の発生は, 明らかに刈取り下で非常に少く, 除草剤処理部分で多くなる傾向を示した。これに対してセイタカアワダチソウ及びチガヤは除草剤処理部分でやや少なかった。