著者
持田 有希 野中 聡 津布久 健一 高野 智央 大塚 智 草野 麻里 恩田 浩一 樋口 佳子 岩部 昌平
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.A1107, 2005
被引用文献数
1

【はじめに】近年,高齢化する精神科の長期入院患者において,加齢や活動量の減少による身体能力の低下や転倒の発生状況に関する報告が散見される。我々は,第39回日本理学療法士学会学術大会において,当院の精神科入院患者の約3割が転倒経験者であり,転倒は高齢患者に多いことを報告した。精神科入院患者における身体能力や運動療法実施の効果に関する報告は散見されるが,精神科入院患者と同年代の健常者や一般病棟入院患者の身体能力を比較した報告はみられない。そこで今回,我々は精神科入院患者の身体能力を測定し内部疾患患者や同年代の健常者との比較を行い,若干の知見を得たので報告する。<BR>【方法】対象は当院精神科入院患者のうち病棟内を独歩している者で,平成15年4月から9月までの6ヵ月間における転倒の有無を診療録より後方視的に調査できた24例のうち,本研究の目的の説明に対して同意が得られた9例(全例男性,平均年齢60.4±9.4歳,診断名:統合失調症)とした。一般病棟入院患者(一般入院患者)における対象例は,当院に内部障害で入院し,理学療法を施行し病棟内を独歩している4例(男性3例,年齢79.0±10.1歳)とした。また健常者の対象群には複数の先行研究による同年代の健常者のデータを用いた。評価項目は,年齢,等尺性膝伸展筋力(下肢筋力),握力,10m最大歩行速度(歩行速度),開眼片脚立位保持時間(片脚立位時間)とした。なお両病棟における対象例が少ないため,統計手法は用いずに個々の症例について比較を行った。<BR>【結果】精神科入院患者9例中2例に転倒歴があり,いずれも年齢は70代であった。精神科入院患者と健常者との比較では下肢筋力,握力,歩行速度といった比較的短時間に筋力を発揮する項目において精神科入院患者の値が健常者の値を大きく下回っていたが,片脚立位時間では健常値に近似した値を示した。精神科入院患者の転倒例と一般入院患者との比較では握力,歩行速度,片脚立位時間において精神科入院患者が一般入院患者の最大値よりも高値を示した。<BR>【考察】本研究では,精神科入院患者については十分な同意が得られず測定に至らない症例が多く,一般入院患者については独歩症例が少なく十分な検討には至らなかった。しかし精神科入院患者は転倒の有無に関係なく全ての年代において健常者よりも身体能力的に劣っており,精神科入院患者の転倒例は一般入院患者と比べて評価結果が比較的良好にも関わらず転倒していた。本研究では症例数も少ないことから転倒例の身体特性は明らかにならなかったものの精神科入院患者には同年代の健常者に比べて身体能力が低い者の存在が認められ,精神科入院患者に対する理学療法の必要性が示唆されたものと思われた。
著者
横山 芳春 七山 太 安藤 寿男 大塚 一広
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.7-17, 2003-09-20 (Released:2017-10-03)
参考文献数
30

伊予灘海域で採取された下灘コアの層相および軟体動物化石群を検討した結果は, 以下の4つにまとめられる.1.下灘コアの層相およびこれに含まれる軟体動物化石の解析結果に基づき, DU-A〜Eの5つの堆積ユニットを識別した.このうち最下位のDU-Aを除く上位4ユニットには, 海成粘土層が発達する.2.下灘コア中に認められる軟体動物化石群は, 松島(1984)の区分した感潮域, 干潟, 内湾停滞域, 内湾泥底および沿岸砂泥底の5つの群集の構成種からなる.さらに土石流堆積物には複数の群集構成種が混合した化石群が認められる.3.堆積ユニットごとに見ると, DU-Bには感潮域化石群, DU-Cには感潮域化石群および干潟化石群が認められ, 縄文海進に伴って感潮域〜干潟が拡大したことを反映しているものと解釈される.DU-Dは内湾停滞域化石群が認められ, 水塊の交換に乏しい内湾の停滞水域下で堆積したものと考えられる.DU-Eには内湾泥底〜沿岸砂泥底化石群が認められ, 下位より潮通しの良い内湾環境下で堆積したものであろう.4.下灘沖において海水が侵入し, エスチュアリー〜干潟環境が成立, 感潮域群集の構成種が出現した年代は約12000〜11000年前以前であろう.約10000年前には急激な相対海水準上昇が生じたため, 感潮域群集および干潟群集が内湾停滞域群集へ急速に群集変化したのであろう.これは地震イベントに伴って, 下灘沖の地溝帯が急激に沈降したことによる可能性が高い.約10000年〜8000年前には, 内湾停滞域群集が発達する閉鎖的な内湾停滞域が形成され, 周囲の河川から流入した細粒物質が大きな堆積速度をもって沈積していた.約8000年前以降は内湾泥底〜沿岸砂泥底群集が生息する潮通しの良い内湾環境へと変化したが, これは地溝帯の埋積と同時に瀬戸内海の成立に伴ったものである可能性が示唆される.
著者
関一敏 大塚和夫編
出版者
弘文堂
巻号頁・発行日
2004
著者
大塚 敏之 高木 均 豊田 満夫 堀口 昇男 市川 武 佐藤 賢 高山 尚 大和田 進 徳峰 雅彦 堤 裕史 須納瀬 豊 新井 弘隆 下田 隆也 森 昌朋
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.517-522, 2000-11-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
11

マイクロ波やラジオ波を用いた凝固療法は肝癌に対する局所療法として広く行われるようになってきた.今回, 我々はマイクロ波やラジオ波による凝固効果を, イヌ及びブタを全身麻酔下に開腹した後肝臓にそれぞれの電極針を穿刺し通電することにより検討した.イヌを用いた実験では, 肉眼的にAZWELL社製マイクロ波, RITA社製ラジオ波及びBOSTON社製ラジオ波で凝固範囲が異なった.組織学的には, いずれも辺縁部に直後では出血を, 5日後では肉芽組織の形成が認められ明らかな差はなかった.ブタを用いた実験では, RITA社製ラジオ波のみの解析であるが, 組織学的に通電直後と6時間後では辺縁部に出血が見られ, 7日後では辺縁部に肉芽組織の形成が認められた.また, 通電時間による凝固範囲内の組織学的所見には差がなかった.したがって, 生体において, マイクロ波とラジオ波ともに良好な凝固効果が得られると考えられた.
著者
大塚 雄作 犬塚 美輪 高橋 登
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.228, 2021-03-30 (Released:2021-11-16)

修正 「Ⅰ.選考経過」の「2.選考委員」のリストに以下を追加。 金山元春
著者
芝本 武夫 田島 俊雄 大塚 健二
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.87-90, 1961

樹木の精油成分が木材腐朽菌の生育におよぼす影響をみるために,構造既知の数種の精油成分,今回はとくに七員環を有する物質を中心にして抗菌性試験を行なつた。<br> 抗試菌: <i>Coriolus versicolor, Coriolus consors, Tyromyces balsameus, Poria vaporaria, Fomitopsis•pinicola, Trametes sangineus</i><br> 培地:グルコース・ペプトソ寒天培地<br> 各種供試剤の木材腐朽菌に対する発育阻止濃度を要約すれば大体以下のようになる。<br> 0.001~0.01% β-thujaplicin, β-thujaplicin Na salt, β-thujaplicin Ca salt, β-thujaplicin Mg salt, β-thujaplicin Cu salt, β-thujaplicin Zn salt, β-thujaplicin acetate, α-thujaplicin, nootkatin Cu salt, thymol<br> 0.01~0.1% β-thujaplicin Fe salt, β-thujaplicin nitrate, α-thujaplicin Cu salt, thujic acid, nootkatin, p-methoxythymol, carvacrol<br> >0.1%, s-guaiazulene, s-guaiazulene-3-sulfonic acid Na salt, colchicine, cedrol, occidentalol
著者
芳中 一行 大塚 正弘 星野 昌人 菊池 憲治 河田 剛 滝 清隆
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 = Transactions of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.268-279, 2008-09-01
参考文献数
9

&nbsp;&nbsp;Fluorescent liquid penetrant test equipment, for testing welded parts of the evaporator for phosphate liquid waste generated by solvent waste treatment at Tokai Reprocessing Plant, was developed. It is composed of a CCD camera and UV light for observation, nozzles for fluorescent liquid, water for washing, and air for drying, and a positioning mechanism that can adjust the position of this equipment relative to the inspection object by three-axis operation, varying the insert length, bending angle and turn angle. Also, the equipment can be inserted by way of the nozzle for inspection, whose inside diameter is 60 mm, into the evaporator. It was confirmed that the standard faults, as defined in JIS, could be observed by the equipment. Then, a fluorescent liquid penetrant test of an evaporator that has treated phosphate liquid waste for 18 years with a heating temperature of about 105&deg;C was performed. The result of the test indicates the absence of faults in the evaporator.<br>
著者
武長 徹也 竹内 聡志 後藤 英之 吉田 雅人 西森 康浩 大塚 隆信 杉本 勝正 大藪 直子 土屋 篤志 多和田 兼章
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.1121-1123, 2009

<B>Background:</B> The purpose of the present study was to evaluate the clinical results of conservative treatment for rotator cuff tears.<BR><B>Methods:</B> 33 shoulders of 28 patients were evaluated and diagnosed as having rotator cuff tear with magnetic resonance image or ultrasonography in our institution. There were 13 male cases (17 shoulders), and 15 female cases (16 shoulders). The average age of the 33 shoulders at the time of the diagnosis was 70.9 years old (range 56 to 82 years) and their mean follow-up period was 37.5 months (range 12 to 106 months). With respect to tear size, 4 shoulders were categorized as massive tears, 5 were large tears, 14 were medium tears, 9 were small tears. There was 1 partial tear at the bursal side. The clinical results were evaluated by Japanese Orthopaedic Association shoulder scoring system (JOA score) and pre and post therapeutic active range of motion was also investigated.<BR><B>Results:</B> The average JOA score improved from 69.2 points at first exam to 84.0 points at the final follow-up. However, younger patients (less than 60 years old) showed deterioration. Improvement of active range of motion has been confirmed from 139 to 156 degrees in elevation, from 135 to 150 degrees in abduction, from 57 to 63 degrees in external rotation and from L2 to L1 level in internal rotation at the final follow up.<BR><B>Conclusion:</B> In most of the cases, clinical results of conservative treatment for rotator cuff tears were satisfactory except for younger and active patients.
著者
山本 博徳 緒方 晴彦 松本 主之 大宮 直木 大塚 和朗 渡辺 憲治 矢野 智則 松井 敏幸 樋口 和秀 中村 哲也 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.2685-2720, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
282
被引用文献数
13

カプセル内視鏡・バルーン内視鏡の開発・普及により,小腸領域においても内視鏡が疾患の診断・治療に重要な役割を果たすようになった.小腸内視鏡の適応として最も頻度が高いのは,いわゆる原因不明の消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding:OGIB)である.その他には小腸狭窄,腫瘍,炎症性腸疾患などにおいて小腸内視鏡の有用性が確認されている.小腸内視鏡の有用性が認識された今,臨床現場で安全かつ効率的に使用し,最大限の効果を得るためには一定の指針が必要となる.そこで,日本消化器内視鏡学会では,日本消化器病学会,日本消化管学会,日本カプセル内視鏡学会の協力を得て,現時点で得られるだけのエビデンスに基づく「小腸内視鏡診療ガイドライン」を作成した.しかし,まだ比較的新しい内視鏡手技であり,エビデンスが不十分な部分に関しては専門家のコンセンサスに基づき推奨度を決定した.本ガイドラインは小腸疾患診療のガイドラインとしての疾患中心のまとめではなく,小腸内視鏡というモダリティを中心としたガイドラインとして作成し,小腸内視鏡としては臨床現場の実情に即して小腸カプセル内視鏡とバルーン内視鏡に絞り,指針を作成した.
著者
大塚 悠 鈴木 宏易 赤川 泉
出版者
東海大学海洋学部
雑誌
海-自然と文化 = Journal of the School of Marine Science and Technology : 東海大学紀要海洋学部 (ISSN:13487620)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.11-22, 2009

松島湾アマモ場におけるサンゴタツHippocampus mohnikeiの成魚の採集時間あたりの採集個体数(CPUE)は、2006年5〜7月は4.6-5.3で、8月に8.4に増加し、9月以降急減した。繁殖場のアマモが9月以降枯れていくために分散していると考えられる。大型の成魚は前年に産まれた個体、9〜11月にかけて採集された未成魚は、当歳魚であると推測される。成魚の雌雄の体長に有意差は見られなかった(雌、62.9±6.7mm SL;雄、66.2±8.9mm SL)。採集された全個体の性比は有意に雌に偏っており、月別では6、7月に有意に雌に偏っていた(雌/(雌+雄)6月、78.9;7月、81.3)。生殖腺の組織学的な観察では、卵巣と精巣は共に体腔背壁より伸展する生殖腺間膜によって垂下する左右一対の器官で、卵巣はのう状、精巣は管状であった。卵巣はロール状を呈する特徴的な卵巣薄板を有し、その内部には基部付近に卵原細胞が存在し、薄板の先端部に向かって卵母細胞が成長順に分布していた。精巣は肥厚した被膜で覆われ、内部には精小のうが存在していた。精巣被膜壁に沿って精原細胞が位置し、精巣内腔に向かって順次精母細胞が分布しており、内腔内には遊離した精細胞や精子が観察された。雄では5〜11月のすべての成魚で精子が観察された。卵巣では、5月末に採集された雌で既に成熟期卵母細胞が観察された。6月末にはさらに増加しており、8月末に最も成熟期卵母細胞の割合が高くなった。したがって、2006年の松島湾における本種の繁殖期は5〜9月までの5ヶ月続いていると示唆された。
著者
長谷川 正哉 金井 秀作 島谷 康司 大田尾 浩 小野 武也 沖 貞明 大塚 彰 田中 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101851, 2013

【はじめに,目的】転倒予防や足部障害の発生予防,パフォーマンスの維持・向上には適切な靴選びが重要である.一般的な靴選びは,まず自覚する足長や靴のサイズに基づき靴を選び,着用感により最終的な判断を行うものと考える.しかし,加齢による足部形態の変化や過去の靴着用経験などから,着用者が自身の足長を正確に把握していない可能性が推測される.また,靴の選択基準はサイズや着用感以外にも,デザイン,着脱のしやすさ,変形や疼痛の有無など様々であることから,自覚している靴サイズと実際の着用サイズが異なる可能性が考えられる.そこで,本研究では地域在住の中高齢者を対象とし,自覚する靴サイズおよび実際に着用している靴サイズ,足長や足幅の実測値から抽出したJIS規格による靴の適正サイズを調査し,比較検討することを目的とした.【方法】独歩可能な中高齢者68名(男性20名,女性48名,平均年齢64.0±6.5歳)を対象とした.調査項目は左右の足長および足幅の実測値,足幅/足長の比率,実測値を基に抽出したJIS規格による左右別の適正サイズ,2Eや3Eなどで表わされる適正ウィズ,自覚する靴サイズ(以下,自覚サイズ),および現在着用中の靴の表示サイズ(以下,着用サイズ)とした.なお,各項目間の比較にはフリードマン検定およびScheffe法による多重比較を行い,統計学的有意水準は5%とした.また,自覚サイズと着用サイズの一致率,適正サイズと着用サイズの一致率,および適正サイズおよび適正ウィズの左右の一致率を求めた.【倫理的配慮、説明と同意】実験前に書面と口頭による実験概要の説明を行い,同意と署名を得た後に実験を実施した.なお,本研究は全てヘルシンキ宣言に基づいて実施した.【結果】左右足型の実測値は右足足長22.6cm (21.8-23.85),左足足長22.7cm (21.75-23.7),右足足幅9.5cm (9.0-9.9),左足足幅9.3cm (8.9-9.9)であり,足幅/足長比率は右足41.5%(39.8 -42.5),左足41.0%(39.5-42.6)であった.また, JIS規格により抽出した右足適正サイズは22.5cm (22.0-24.0),左足適正サイズ22.5cm (21.5-23.5)であったのに対し,自覚サイズは23.5cm(22.5-24.5),着用サイズは23.5cm (23.0-25.0)となった(結果は全て中央値および四分位範囲).着用サイズおよび自覚サイズと比較し左右適正サイズ(p<0.001),左右足長実測値は(p<0.001)は有意に小さい結果となった.次に各項目の一致率について,まず自覚サイズと着用サイズの一致率は37%であり,被験者の63%は自身で認識する足サイズとは異なる靴サイズを選択し着用していた.また同様に,右足適正サイズと着用サイズの一致率は7%,左足適正サイズと着用サイズの一致率は4%と極めて低い結果となった.なお,適正サイズの左右の一致率は52%であり,これに適正ウィズの結果をふまえた場合,左右の靴の一致率は4%に低下した.【考察】中高齢者が実際に着用している靴サイズおよび自覚する足のサイズは,JIS規格に基づく適正サイズや足長の実測値より大きいことが確認された.また,自覚サイズと着用サイズ,適正サイズと着用サイズの一致率が極めて低く,中高齢者では自身の足の大きさを自覚していないだけではなく,自覚する足サイズに基づく靴選びをしていないものと考えられた.中高齢者の靴の選択基準には装着感や着脱の容易さ,デザインなど複数の要因が関与することが過去に報告されており,本研究でもこれらが影響した可能性が示唆される.次に,実測値から抽出した左右の靴適正サイズの一致率が極めて低いことが確認された.これは,左右同一サイズの靴を購入した場合,いずれか一方の靴が足と適合しないことを意味している.先行研究により靴の固定性の低下が動作時の不安定性や靴内での足のすべりを増加させ運動パフォーマンスの低下を引き起こすことが報告されており,靴の不適合が中高齢者の転倒リスクを増加させる可能性が示唆された。これらの靴の不適合に対し,靴内部での補正や靴紐などによるウィズの調整,片足づつ販売する靴を選択するなどの対応が必要になるものと考える.また,本研究の被験者の多くが自身の足サイズについて適切に認識しておらず,正しい評価や知識に基づく靴選びが重要と考える.【理学療法学研究としての意義】適切な靴の選択は転倒予防や障害発生予防,パフォーマンスの維持・向上を考える際に重要である.また,インソールの処方時や内部障害者のフットケアなどの場面では適切な靴の着用が原則となる.そのため理学療法士は対象者の足型と靴のフィッティングについて理解を深め,適切な靴の着用について啓発していく必要がある.
著者
中島 昌弘 大塚 幸雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.107-112, 1965

血液凝固過程において,血小板が重要な役割を演ずることは周知の事実である.しかしそのざい,血小板が如何なる機序にまつて作用するやは現在なお充分には究明されていない.著者らはこの問題を形態学的な面から検索することを企て,多血小板血漿にカルシウムを再加して凝固を進展せしめ,経過を追つて血小板の微細構造を観察した.微細構造上著明な変化を示したのはgranulomer &alpha;およびミトコンドリアである.すなわち前者は初め膨大し,その数も増加し,後減少,消失する.ミトコンドリアも初め膨大し,後減少,消失する.かくて凝固の完結期には,血小板の多くは無構造様となる.右の事実からgranulomer &alpha;およびミトコンドリアに血小板凝血因子の生成或いは局在性が示唆されると思われる.凝固の終末段階になると凝塊中の血小板の膜が消失し,血小板としての形態が判別出来ないようになる。血餅退縮にかんする重要な問題の一つがこゝに伏在すると考えられる.なお血小板にトロンビンを作用させたさいにも, granulomer &alpha;およびミトニンドリアは前記したところと同様の変化を示すが,凝塊を作る血小板の膜は長く保全せられる.
著者
川上 佳夫 石川 由華 斉藤 まるみ 大塚 幹夫 中村 晃一郎 金子 史男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.816-817, 2007-09-01

要約 14歳,男児.1年前より右後頭部に脱毛斑が出現し,徐々に拡大,6か月前から排膿を認めた.近医で抗生剤内服による加療を受けたが改善がなかった.創部細菌培養は陰性であった.病変部を切開したところ,内腔は不良肉芽で覆われ,数本の毛髪が観察された.病理組織学的にリンパ球,好中球,形質細胞,異物巨細胞の浸潤からなる肉芽組織であり,pilonidal sinus(毛巣洞)と診断した.頭部に発症したpilonidal sinusの報告は自験例と本邦,海外の報告を含め5例あるが,そのうち4例が後頭部に発症しており,臥床時の摩擦などによる外的刺激が毛髪の穿孔機序に関与している可能性が示唆された.
著者
大塚 俊之 根本 正之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.107-114, 1997-08-30
被引用文献数
1

畜産や農業に伴う土壌の富栄養化が耕地水系に沿って分布する河川周辺雑草群落に及ぼす影響を明らかにすることを目的として, 茨城県新治郡の帆崎川において雑草群落の構造と土壌環境の調査を行なった。スギ植林地に近い上流部では土壌中の窒素および炭素含量は少なく, 植生はメヒシバやイヌタデなどの雑草が優占するものの, ツリフネソウなどの野草的な種も多く含んでおり多様性が高いことが特徴であった。これに対して水田地帯を流れる中流部では土壌中の窒素および炭素舎量は上流部の5倍以上あり, 好窒素的な一年草のミゾソバやカナムグラが寡占して多様性の低い群落が形成されていた。また下流部では護岸工事がなされており, 攪乱の強い中洲ではクサヨシが1種優占群落を形成していた。中流部付近にはシロザが純群落を作る豚糞堆積場があり, この土壌は中流部のさらに2倍程度の窒素と炭素を含み, C/N比が低かった。これらのことから豚糞堆積場からの有機物や水田に施用された化学肥料が, 降雨時に流出して土壌が富栄養化し中流部の群落の多様性を低下させたものと考えられた。従来から良く知られている都市河川と同じように, 農村地域集水域の河川植生の動態も農業や畜産の集約化に伴う人為的な影響を強く受けていることが示唆された。
著者
井上 英夫 井村 明弘 大塚 栄子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1214-1220, 1987-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
20
被引用文献数
21

糖部を保護した5-ヨード-2'-デオキシシチジン[3]とトリメチルシリルアセチレンとの縮合をPd触媒存在下行なうと,5-(トリメチルシリル)エチニル体[4a]が好収率で得られた。[4a]のN4-アセチル体[5a]は,CuI存在下DMF中加熱すると収率よく閉環体[6a]を与え,[6a]は脱保護により3-(β-D-2-デオキシリボフラノシル)ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2(3H)-オン[7a,dF*]を与えた。同様にして1-ヘキシンを用いることによりdF*の6-位ブチル置換体[7b]も合成することができた。dF*を含む部分的に自己相補的なオリゴデオキシリボヌクレオチドdGGGAAF*NTTCCC(N=T,C,AまたはG)は固相リン酸トリエステル法により合成した。4種のドデカマーの熱的安定性(Tm値)の測定結果から,このピロロピリミジン塩基(F*)はグアニン塩基と塩基対を形成することがわかり,F*・G対を含む二本鎖ドデカマーは比較としたC・G対を含む二本鎖ドデカマーと同様な熱的安定性を有することが明らかとなった。dF*の発蛍光性についても述べる。