著者
余郷 嘉明 鄭 懐穎 長谷川 政美 杉本 智恵 田中 新立 本庄 健男 小林 伸好 太田 信隆 北村 唯一
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.19-34, 2003 (Released:2003-11-19)
参考文献数
57
被引用文献数
3 4

JC ウイルス (JCV) DNA の系統解析によりアイヌの起源を解明することを目的として, 北海道の3地域(浦河, 白老, 旭川)に住むアイヌ30名から尿を採取した。尿から検出された JCV DNA (n = 13) は5つのゲノム型 (MY-b, MY-x, MX, EU-a/Arc, EU-c) に分類された。MY-b, EU-a/Arc, EU-cは過去に近隣の人類集団から検出されたが, MY-xとMXは今回初めてアイヌから検出された。得られた知見から, (1) 東北アジアから渡来した複数の人類集団が現代アイヌを築いたこと, (2) ヨーロッパ人に近縁の東北シベリア先住民の祖先集団が現代アイヌの中核を形成したこと, (3) 縄文人を形成した集団や新規な東北アジア系集団も現代アイヌの形成に寄与したことが示唆された。
著者
寺澤 孝文 吉田 哲也 太田 信夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.510-522, 2008-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
2

本研究は, 一般の学習内容の習得プロセスに潜在記憶が関わっている可能性に着目した。特に, 潜在記憶研究で報告されている, わずかな学習の繰り返しの効果が長期に保持される事実から, 一般的な学習の効果が長期にわたって積み重なっていくことを予測し, その予測の検証を目指した。具体的には, 習得に時間がかかり, 何度勉強してもなかなか憶えられないと感じる英単語学習について, 高校生を対象に8ヵ月にわたる長期学習実験を実施した。実験では, 1000を超える英単語の一つ一つについて, 学習とテストがいつ生起するのか, また, 学習とテストのインターバルがほぼ等しくなるよう学習スケジュールをあらかじめ制御する新しい方法論が導入された。学習者はコンピュータを使った単語カード的な学習を自宅で継続した。膨大な反応データを集計, 分析した結果, 自覚できないレベルで, 学習の効果が積み重なっていく様子が明確に描き出された。考察では, この事実と潜在記憶の関係性が指摘され, 新たに導入されたスケジューリング原理の有効性が確認された他, 本研究の教育的意義が示された。
著者
中林 孝和 太田 信廣
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.441-448, 2010-01-30 (Released:2010-11-09)
参考文献数
36

生体試料の分析において,蛍光寿命を用いてイメージングを行う方法が注目を集めている.蛍光強度は蛍光分子の濃度,励起光強度および光学系に依存するのに対し,蛍光寿命の値はこれらの実験条件に依存しないために,蛍光強度測定に比べて定量性を大きく増加させることができる.本稿では,蛍光寿命の特徴について概説した後,我々が製作した蛍光寿命イメージングシステムを用いた緑色蛍光タンパク質が発現した生細胞の測定結果について紹介する.
著者
望月 明義 伊藤 哲也 会田 仁 山本 和治 浅川 潔 太田 信行
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.141-144, 2016-12-22 (Released:2017-06-09)
参考文献数
10

長野県安曇野市の犀川で越冬する水鳥のうち,眼球突出を示した個体が2010年から5年間観察された。環形動物門ヒル綱に属するTheromyzon sp. がコハクチョウの腫大した眼部から採集されたが,血液が充満し,状態不良のため種は同定できなかった。水鳥がねぐらとする池において,ミズドリビル(T. tessulatum)の生息が確認されたことから,水鳥の眼球突出は本種ヒルの寄生によるものと考えられた。
著者
吉澤 隆志 太田 信夫 藤沢 しげ子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.249-253, 2008 (Released:2008-06-11)
参考文献数
12
被引用文献数
8 6

本研究の目的は,学習意欲が定期試験成績に及ぼす効果を調べるものである。対象は,当学院理学療法学科2年生,昼間コース学生41名および夜間コース学生40名とする。ここで,学習意欲要因としては,外発的動機づけ・内発的動機づけ・健康度(特に精神的健康度)・対人関係・学院への適応度の5つを挙げた。次に,これらの学習意欲が定期試験成績に及ぼす効果について調べた。結果としては,夜間コース学生において学院への適応度と定期試験成績との間に正の関係が見られた。よって,今後の学生指導としては,担任を中心として学生がクラスや学院に馴染めるような配慮を積極的に行っていく必要があると考える。加えて,授業方法の工夫も考慮していきたいと考える。
著者
三尾 稔 杉本 良男 高田 峰夫 八木 祐子 外川 昌彦 森本 泉 小牧 幸代 押川 文子 高田 峰夫 八木 祐子 井坂 理穂 太田 信宏 外川 昌彦 森本 泉 小牧 幸代 中島 岳志 中谷 哲弥 池亀 彩 小磯 千尋 金谷 美和 中谷 純江 松尾 瑞穂
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

文化人類学とその関連分野の研究者が、南アジアのさまざまな規模の20都市でのべ50回以上のフィールド調査を実施し、91本の論文や27回の学会発表などでその結果を発表した。これまで不足していた南アジアの都市の民族誌の積み重ねは、将来の研究の推進の基礎となる。また、(1)南アジアの伝統的都市の形成には聖性やそれと密接に関係する王権が非常に重要な機能を果たしてきたこと、(2)伝統的な都市の性格が消費社会化のなかで消滅し、都市社会の伝統的な社会関係が変質していること、(3)これに対処するネイバーフッドの再構築のなかで再び宗教が大きな役割を果たしていること、などが明らかとなった。
著者
太田 信子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.320-325, 2019-09-30 (Released:2020-10-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

展望記憶は未来の出来事を意図し, 自発的に想起する。二重経路モデルによると展望記憶の想起には自動的想起と意図的想起があり, 課題形式, 想起の形式, 動機づけやメタ記憶が関連する。課題形式はある出来事を手がかりに想起する事象ベース課題と時間経過や時刻を手がかりに想起する時間ベース課題, 想起の形式は何かすることがあったのに気づく存在想起と何をするのかに気づく内容想起である。自動的想起では手がかりが展望記憶活動に含まれるため想起が容易である。意図的想起では方略的モニタリングによる手がかりの認識が必要である。自験例に対して, この 2 つの想起過程の獲得のための訓練を行った。記憶低下例は符号化および方略的モニタリングが可能となった。遂行機能低下例の動機づけは不十分であったが, 方略的モニタリングが一部可能となった。これらの一定の改善から, 展望記憶訓練の可能性が示唆された。
著者
高瀬 圭 太田 信 森本 玲 清治 和将 佐藤 文俊 芳賀 洋一 山内 清 佐藤 美帆
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

3DCTデータを基に、実際のカテーテル手技訓練の実用に耐える副腎内静脈分枝を含んだ実物大副腎静脈血管モデルが作成された。バイポーラーラジオ波焼灼針では、10-25mmの副腎腺腫は、3通りの穿刺パターンにて完全焼灼可能であることと、脂肪組織介在下での周辺臓器安全性が示された。IVR臨床治療を施行し、主要評価項目である血中および蓄尿中アルドステロンを正常化が得られ、研究当初の臨床応用目標が達成された。モデル解析にて医療経済的にも有利であるとの結果を得た。
著者
太田 信夫 加藤 正 向後 博 布田 由之 望月 一男 永田 善郎 河路 渡
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.183-188, 1976

日常診療において, 腰痛患者に接することは多く, 腰椎レントゲン上, 移行椎を見る事もまた多い。古くより両者の因果関係が多く論じられて来ているが, 今回少数ではあるが, 腰痛者, 非腰痛者の腰椎レントゲン写真を比較検討し, 腰痛と移行椎がはたして, かかわりあいを持つものかどうか改めて統計的考察を試てみたいと思う。
著者
太田 信夫
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.3_3-3_11, 1995-08-31 (Released:2008-10-03)
参考文献数
21

The paper explains implicit memory research to those not knowledgeable about implicit memory. First, I define implicit and explicit memory. Second, I describe phenomena of implicit memory known as priming. Different kinds of priming are discussed in the context of a multiple memory systems account of implicit memory. Third, I compare the strengths and the weaknesses of the memory systems approach and the processing approach to explain implicit memory. The need for a comprehensive theory of memory is discussed. Last, I discuss three important issues for future research: the role of consciousness in implicit and explicit retrieval, comparisons among memory systems and cognitive processing approaches, and procedual memory as a point of contact of body and mind.
著者
太田 信子 種村 純
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.339-346, 2013-09-30 (Released:2014-10-02)
参考文献数
10
被引用文献数
3

The Cambridge Prospective Memory Test (CAMPROMPT)原版を原著者らの許可を得て翻訳して,日本版を作成し,健常者242 名および脳損傷者57 名に実施した。その結果から,検査法の信頼性を検査者間信頼性,平行検査信頼性,内的整合性から検討した。検査者間信頼性について,1 名の評価者と4 名の採点者との一致率 (98.2%) および相関 (1 名はSpearmanʼs ρ=0.986,3 名はそれぞれSpearmanʼs ρ=1.000) から,採点方法の信頼性が高いことが示された。平行検査信頼性について,バージョン間の相関(Spearmanʼs ρ=0.537)から,成績はバージョンの影響を受けないことが示された。内的整合性について Cronbachʼs α は脳損傷群 0.849 と健常群 0.817 から,対象によらず一貫して展望記憶機能を評価することが示された。4 つの年齢別に標準値の作成により,標準化を行った。信頼性の検討を通じて,CAMPROMPT 日本版は,十分な信頼性を有する評価法であることが確認された。
著者
太田 信義
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.27-34, 2020

「人生100年時代」においては,現役引退後にも長いシニア時間が待っている。充実した後半生として,どう過ごしていくのか。今や,誰にとっても重要なテーマとなってきている。 本稿は,このテーマについて,これまでの仕事・研究人生を振り返りながら,その生き方・考え方をまとめたものである。現役時代を「ものづくり技術者」として打ち込んだ筆者は,引退後に大学院で社会科学研究に打ち込む。博士論文を仕上げ,単著書として出版した後も,研究を続けている。 冒頭のテーマに対して,筆者のたどり着いた答えは,「シニア時間を知的に楽しむ」である。「働・学・研」で学びとった知識と豊富な経験とを融合させ,頭脳を働かせ,創造性ある考え方で時代の変化に対処し,楽しんでいくこと,である。どう実践していけるか,継続していけるか。そして,どう楽しめるか。それは,次に待つ大きな課題でもある。
著者
太田 信介
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.215-220,a1, 1988

農村総合整備事業の中で農業集落排水施設の整備が行われるようになって15年が経過した。この間に, 農業用水の水質汚濁の原因に占める生活雑排水の割合は年々増加し, 昭和60年には全体の8割を占めるに至っている。これに対応して, 農業集落排水事業に対する実施要望も年々高まってきている。<BR>ここでは, 農業集落排水事業の概要, 特質, 実施状況, 今後の整備の方向等について行政的な観点から論じた。
著者
石橋 明 西山 芳夫 遠藤 幹男 河路 渡 加藤 正 布田 由之 望月 一男 太田 信夫
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.113-117, 1977 (Released:2017-02-13)

掌蹠膿疱症132例中14例に, 胸骨部の有痛性の整形外科的症状(胸骨体部柄部間関節症5例, 胸鎖関節炎4例, Tietze症候群4例)を見出した。整形外科的症状を伴う掌蹠膿疱症の症例は, 概して掌蹠以外の指趾, 手足背, 四肢, 体幹にも撒布診を認め, AndrewsのGeneralized pustular bacteridに一致する皮膚症状を示した。またしばしば慢性扁桃炎などの巣感染の急性増悪後に増悪し, 扁剔や抗生物質投与に反応した。従って皮膚症状のみならず, 整形外科的症状も巣感染(アレルギー)と関連性を有することが推察された。