著者
宮崎 匠
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

ジュネーヴ大学図書館などの研究施設を利用し、18世紀ジュネーヴの絵画論、およびそれとの影響関係が考えられる美術関連書を閲覧・調査した。その結果、同都市の美術理論に関しては、スイスの他の都市の絵画論以上に、フランスやイタリアの理論との関係が密接であることが判明したため、それら他地域の絵画論とジュネーヴの絵画論の特徴的理論の内容を比較分析した。これによりヨーロッパ美術理論史上におけるジュネーヴ絵画論の相対的な位置づけを明らかにした本研究の成果は、口頭での研究発表と外国語・日本語による論文の中で発信された。まずジュネーヴの画家J. E. リオタールが重点的に論じている、作品の「仕上げ」に関する理論を分析した結果、それがオランダの画家J. ファン・フイスムの作品に対する評価や、17世紀イタリアの画家F. アルバーニの自然描写に関する理論と密接に関係していることが明らかになった。またジュネーヴの美術愛好家F. トロンシャンの絵画論については、特に気候風土が作品様式に及ぼす影響に関する理論などは、当時のフランスで知られていた絵画論を発展的に受容しつつ形成された可能性が高いことを明らかにすることができた。他にヴェネツィアの美術愛好家F. アルガロッティの書簡を分析した結果、アルガロッティがリオタールやトロンシャンと同様にアルプス以北の画家の「仕上げ」を高く評価する傾向を持っていたこと、すなわちイタリアとジュネーヴの絵画論には近似する趣味の傾向が認められることが判明した。さらに同時代のフランスで出版された美術辞典などの資料との比較からは、リオタールが絵画論の中で高く評価するパステルに特有の鮮やかな発色などの特徴は、同時代のフランスの美術関係者たちにも利点として認識されていたこと、つまり流行の画材に関する隣国の趣味にも、ジュネーヴの絵画論は敏感に反応していたことを究明することができた。
著者
宮崎 まゆみ
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

奈良時代に中国より箏およびその音楽が伝来し、その後、平安時代に隆盛した宮廷箏曲、安土桃山時代に誕生した筑紫箏曲、江戸時代初期に誕生した当道箏曲、明治時代に一部の宮廷箏曲を改変整備した雅楽箏曲、大正時代に当道箏曲から発展誕生した近代箏曲、近代箏曲の延長線上にある現代箏曲の、各奏法の相違点、特徴等を抽出し、それらが各箏曲の音楽的特徴を決定づけた要因の重要な要素となっていることを立証した。
著者
宮崎 信之
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology (ISSN:03852423)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.53-59, 1989-03

To improve knowledge of school structure of killer whale, Orcinus orca (LINNAEUS, 1758), the composition of 18 schools (705 individuals in total) were analyzed from the sighting information obtained through a 57-day sighting survey in the Southern Ocean between 115°E and 160°W. The fundamental units of the school of killer whales are considered to be the single adult male, the adult female with calf, and other whales including the juvenile whale and/or the adult female without calf. An aggregation of schools seems to be formed by combination of several large schools, each of which has some unit schools.
著者
宮崎 英明 亀田 能成 美濃 導彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1598-1605, 1999-10-25
被引用文献数
40

講義室に配置された複数の首振りカメラの制御とそれらの映像の切換えにより,複数のユーザがそれぞれ望むように実時間で講義を映像化する方法について述べる.講義を映像化するとき,ユーザが見たい対象は講義の状況によって変わってくる.状況に応じて各ユーザが見たい対象や撮影の方法は変化するが,カメラ台数が限られているので,いくつかのカメラワークだけを選択する必要がある.次に,選択されたカメラワークで各カメラの制御と映像の切換えを行うが,このときの映像の急激な変化の解消法について述べる.
著者
宮崎 一老
出版者
朝日新聞社
雑誌
科学朝日 (ISSN:03684741)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.44-49, 1954-01
著者
時永 神三 森保 洋 宮崎 明雄 島津 宣之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1793-1800, 1996-11-25
被引用文献数
36

本論文では,時系列がフラクタル的な性質をもつ場合に,これを利用した予測手法を展開し,予測誤差の検討,フラクタル次元の推定,および応用例について示す.まず,時系列をスケール関数の展開形式で表現されたインパルス応答と入力信号との畳み込みにより表現するモデルを仮定し,時系列にフラクタル性がある場合には時間軸の伸長に対してインパルス応答が自己相似的な性質を保持するので,これを用いた予測が可能であることを示す.いくつかのフラクタル次元をもつ時系列について1時刻先の予測誤差が小さくなることを示すと共に,n時刻先の予測についても適応的な手段により求めた予測値を逐次的に観測値として用いた場合の予測誤差を小さくできることを述べる.また,与えられて時系列の共分散行列およびスペクトル形状に基づきフラクタル次元を推定する方法についても述べる.応用例として株価のオプション価格の比較分析をあげ,本論文の手法を用いた戦略の結果が良好であることを示す.
著者
津田 勝利 松井 嘉孝 川端 昭子 田北 雅夫 宮崎 隆治 清水 賢一 上田 義夫 砂川 正興 竹永 昭雄
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, 1974-06-25

63才,男子30才よつ約27年間某アスベスト工場に勤務,昭和41年1月せき,たん,呼吸困難を訴え当科受診し胸部レ線像の結果,右上野に結核病巣を伴うアスベスト肺結核と診断され入院を含む通院加療にて肺結核は陳旧化した.しかし,昭和46年10月の胸部レ線像にて左上野に異常陰影が出現し,約1年後には直径3cm大の腫瘤陰影を呈し,諸検査の結果扁平上皮癌と診断されたが,肺機能その他の面から手術不能にてMMC総量40mg投与および対症療法を施行するも一般状態悪化し昭和48年3月11日死亡した.
著者
小林 進 落合 武徳 堀 誠司 宮内 英聡 清水 孝徳 千葉 聡 鈴木 孝雄 軍司 祥雄 島田 英昭 岡住 慎一 趙 明浩 大塚 恭寛 吉田 英生 大沼 直躬 金澤 正樹 山本 重則 小川 真司 河野 陽一 織田 成人 平澤 博之 一瀬 正治 江原 正明 横須賀 收 松谷 正一 丸山 紀史 税所 宏光 篠塚 典弘 西野 卓 野村 文夫 石倉 浩 宮崎 勝 田中 紘一
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.265-276, 2004-12-01

千葉大学医学部附属病院において2000年3月から,2003年8月まで8例の生体部分肝移植手術を施行した。5例が18歳未満(7ヶ月,4歳,12歳,13歳,17歳)の小児例,3側が18歳以上(22歳,55歳,59歳)の成人例であった。2例(7ヶ月,4歳)の小児例は左外側区域グラフトであるが,他の6例はすべて右葉グラフトであった。2側が肝不全,肺炎のため移植後3ヶ月,2ヶ月で死亡となったが他の6例は健存中であり,元気に社会生活を送っている。第1例目は2000年3月6日に実施した13歳男児のウイルソン病性肝不全症例に対する(ドナー;姉22歳,右葉グラフト)生体部分肝移植である。現在,肝移植後4年3ヶ月が経過したが,肝機能,銅代謝は正常化し,神経症状も全く見られていない。第2例目は2000年11月23日に実施した12歳男児の亜急性型劇症肝炎症例である(ドナー;母親42歳,右葉グラフト)。術前,肝性昏睡度Vとなり,痛覚反応も消失するほどの昏睡状態であったが,術後3日でほぼ完全に意識は回復し,神経学的後遺症をまったく残さず退院となった。現在,術後3年7ヶ月年が経過したがプログラフ(タクロリムス)のみで拒絶反応は全く見られず,元気に高校生生活を送っている。第3側目は2001年7月2日に実施した生後7ヶ月男児の先天性胆道閉鎖症術後症例である。母親(30歳)からの左外側区域グラフトを用いた生体部分肝移植であったが,術後,出血,腹膜炎により,2回の開腹術,B3胆管閉塞のためPTCD,さらに急性拒絶反応も併発し,肝機能の改善が見られず,術後管理に難渋したが,術後1ヶ月ごろより,徐々にビリルビンも下降し始め,病態も落ち着いた。術後6ヵ月目に人工肛門閉鎖,腸管空腸吻合を行い,現在,2年11ケ月が経過し,免疫抑制剤なしで拒絶反応は見られず,すっかり元気になり,精神的身体的成長障害も見られていない。第4例目は2001年11月5日に行った22歳男性の先天性胆道閉鎖症術後症例である(ドナー:母親62歳,右葉グラフト)。術後10日目ごろから,38.5度前後の熱発が続き,白血球数は22.700/mm^3と上昇し,さらに腹腔内出血が見られ,開腹手術を行った。しかし,その後敗血症症状が出現し,さらに移植肝の梗塞巣が現れ,徐々に肝不全へと進行し,第85病日死亡となった。第5例目は2002年1月28日に行った4歳女児のオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症症例である(ドナー;父親35歳,左外側区域グラフト)。肝移植前は高アンモニア血症のため32回の入院を要したが,肝移植後,血中アンモニア値は正常化し,卵,プリンなどの経口摂取が可能となり,QOLの劇的な改善が見られた。現在2年5ヶ月が経過したが,今年(2004年)小学校に入学し元気に通学している。第6例目は2002年7月30日に行った17歳女性の亜急性型劇症肝炎(自己免疫性肝炎)症例である(ドナー:母親44歳,右葉グラフト)。意識は第2病日までにほぼ回復し,第4病日まで順調な経過をたどっていた。しかし,第6病日突然,超音波ドップラー検査で門脈血流の消失が見られた。同日のCTAPにて,グラフトは前区域を中心とした広範囲の門派血流不全域が示された。その後,肝の梗塞巣は前区域の肝表面領域に限局し,肝機能の回復が見られたが,多剤耐性菌による重症肺炎を併発し,第49病日死亡となった。第7例目は2003年3月17日に行った59歳男性の肝癌合併肝硬変症例(HCV陽性)症例である(ドナー:三男26歳,右葉グラフト)。Child-Pugh Cであり,S8に4個,S5に1個,計5個の小肝細胞癌を認めた。ドナー肝右葉は中肝静脈による広い環流域をもっていたため,中肝静脈付きの右葉グラフトとなった。術後は非常に順調な経過をたどり,インターフェロン投与によりC型肝炎ウイルスのコントロールを行い,移植後1年3ヶ月を経過したが,肝癌の再発も見られず順調な経過をとっている。第8例目は2003年8月11日に行った55歳男性の肝癌合併肝硬変症例(HBV陽性)症例である(ドナー;妻50歳,右葉グラフト)。Child-Pugh Cであり,S2に1個,S3に1個,計2個の小肝細胞癌を認めた。グラフト肝は470gであり過小グラフト状態となることが懸念されたため,門脈一下大静脈シヤントを作成した。術後はHBV Immunoglobulin,ラミブジン投与により,B型肝炎ウイルスは陰性化し,順調に肝機能は改善し合併症もなく退院となった。現在移植後10ヶ月が経過したが,肝癌の再発も見られず順調な経過をとっている。ドナー8例全員において,血液及び血液製剤は一切使用せず,術後トラブルもなく,20日以内に退院となっている。また肝切除後の後遺症も見られていない。
著者
頼 瓊〓 趙 英玉 田中 みなみ 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.46, pp.98-99, 1999-10-15

台湾では、近年若者の服装の色として、黒がずっと流行色として定着している。本研究は、台湾における色彩文化研究の一環として、黒に対するイメージ調査を三回に分けて行った。初めのイメージ調査において、黒は「上質」「高級」「高価」のイメージが強いという結果を得た。次ぎの調査の結果、「重い」「強い」「硬い」「冷たい」「粗暴な」が黒の主なイメージ語として選ばれた。最後に黒の服装に対するイメージ語を書いてもらったところ、「セクシー」「クール」「ハンサム」などの連想語が55%〜60%であった。以上のようなイメージ調査を通して、人びとが黒を着装する理由として、黒の物理的性質によるのではなく、主にはその心理的なイメージによる実用性を重視した結果であることが明らかになった。
著者
根立 研介 中村 俊春 平川 佳世 安田 篤生 稲本 泰生 深谷 訓子 劔持 あずさ 松岡 久美子 宮崎 もも 中尾 優衣 田中 健一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

美術史の転換期の問題は、何を強調するかで、美術史の語り方が大きく変わってくることもある。本研究は、従来美術史で語られてきた枠組みを再検討するための試みである。特に、大きな成果は、通常日本の古代末期に登場したとされてきた彫刻の和様の問題である。近年の日本史学の成果を取り入れると和様の成立は、中世初期とすることが可能かと思われ、和様は日本の中世期を貫く重要な様式であったことなどを明らかにした。また、この和様の成立には、中国の唐から宋への転換期の問題も深く関わることを明らかにした。
著者
宮崎 照雄 太田 早紀 ミヤザキ テルオ オオタ サキ MlYAZAKI Teruo OOTA Saki
出版者
三重大学
雑誌
三重大学生物資源学部紀要 (ISSN:09150471)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.21-30, 2002-11

養殖ヒラメに発生したリンホシスチス細胞(LCC)の微細構造を観察した。若いLCCは既に厚い硝子状被膜を持って肥大しており,細胞質にはウイルス合成の場(AS),粗面小胞体,リボゾーム,ミトコンドリアがよく発達し,細胞質の樹状の突起が被膜内に伸張していた。 ASは顆粒状のinclusion zoneと基質部から構成され,inclusion zone表面でウイルス粒子が合成されていた。大きく肥大したLCCの核周囲の細胞質内ではASが崩壊し,ウイルス粒子(250-300nm)は結晶配列を示していた。細胞辺縁部では,多数のウイルス粒子を含むASは明瞭であるが,微小器官の多くは変性していた。
著者
宮崎 照雄 太田 早紀
出版者
三重大学生物資源学部
雑誌
三重大学生物資源学部紀要 (ISSN:09150471)
巻号頁・発行日
no.29, pp.21-30, 2002-11

養殖ヒラメに発生したリンホシスチス細胞(LCC)の微細構造を観察した。若いLCCは既に厚い硝子状被膜を持って肥大しており、細胞質にはウイルス合成の場(AS)、粗面小胞体、リボゾーム、ミトコンドリアがよく発達し、細胞質の樹状の突起が被膜内に伸張していた。ASは顆粒状のinclusion zoneと基質部から構成され、inclusion zone表面でウイルス粒子が合成されていた。大きく肥大したLCCの核周囲の細胞質内ではASが崩壊し、ウイルス粒子(250-300nm)は結晶配列を示していた。細胞辺縁部では、多数のウイルス粒子を含むASは明瞭であるが、微小器官の多くは変性していた。
著者
荻野 雅敏 瀧 剛志 北島 章雄 尾倉 芳昌 宮崎 慎也 長谷川 純一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.390, pp.31-35, 2004-10-21
被引用文献数
1

ボブスレーは滑走コースを利用できる期間が冬季に限定されるため、シミュレーターを利用したトレーニングの実現に大きな期待が寄せられている。そこで、本研究では6軸電動アクチュエータ式の動揺装置(モーションベース)と4面構成の大型スクリーンを併用したVR装置を用いて、長野市にある実在のコースを模擬して作成したコースデータ上において、ボブスレーの滑走シミュレーションを実現した。動的物理シミュレーションと空間制約条件を併用することにより円筒状の氷上コースでの高速滑走の運動を生成する。動揺装置の運動制御は、ボブスレーの運動生成結果に基づいて決定される。