著者
佐藤 孝幸 中川 隆雄 仁科 雅良 須賀 弘泰 高橋 春樹 出口 善純 小林 尊志
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.12, pp.941-947, 2009-12-15 (Released:2010-03-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

カフェインは嗜好品の他,感冒薬や眠気予防薬として普及しているため,過剰摂取が容易である。大量服用から致死的中毒を来した2症例を救命した。〈症例1〉34歳の女性。市販感冒薬を大量服用後,心室細動から心静止状態となり救急搬送された。感冒薬成分中の致死量のカフェインが心肺停止の原因と考えられた。〈症例2〉33歳の男性。自殺企図にて市販無水カフェイン(カフェイン量24g)を内服,嘔吐と気分不快のため自らの要請で救急搬送となった。いずれも大量のカフェイン急性中毒例で,薬剤抵抗性の難治性不整脈が特徴であった。早期の胃洗浄,活性炭と下剤の使用,呼吸循環管理により救命することができた。とくに症例2では,早期の血液吸着により血中濃度の減少と症状の劇的な改善を認めた。これは血液吸着の有用性を示す所見と考えられる。
著者
伊井 一夫 田野井 慶太朗 宇野 義雄 登 達也 廣瀬 農 小林 奈通子 二瓶 直登 小川 唯史 田尾 陽一 菅野 宗夫 西脇 淳子 溝口 勝
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.299-310, 2015-05-15 (Released:2015-05-28)
参考文献数
14
被引用文献数
2 8

2011年の原発事故以来,イネの作付制限地域に指定された飯舘村で,2012年に佐須・前田地区で,2013年には佐須・前田・小宮地区で水稲の試験栽培を行った。2012年において,除染の度合いにより土壌の放射性セシウム(134Cs+137Cs)濃度(0~15cm平均)が2000から6000Bq/kgの佐須・前田圃場では,玄米の放射性セシウム濃度は最大でも40Bq/kgであり,除染度合いに応じたセシウム濃度の低減効果が見られた。さらにカリウム(K)施肥による玄米のセシウム濃度の低減効果が確認された。土壌の交換性Kの濃度が高いほど,玄米の放射性セシウム濃度は低くなる傾向があるが,交換性K(K2O換算)が,20mg/100g乾燥土壌以上の区画では10Bq/kgとほぼ一定であった。一方,2013年において土壌の放射性セシウム濃度が除染後も8000Bq/kgを超えた小宮圃場では,玄米の放射性セシウム濃度が100Bq/kgを超えたサンプルが一部で見られた。これらの結果は,飯舘村において,適切な除染,K施肥により,水稲玄米への放射性セシウムを低減させ,基準値(100Bq/kg)を十分にクリアできることを示している。
著者
本間 済 河野 正司 武川 友紀 小林 博 櫻井 直樹
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.151-160, 2004-04-30
参考文献数
38
被引用文献数
8

咀嚼能力を評価するには,粉砕から食塊形成および嚥下までの全過程を観察する必要がある.しかし,これまで種々行われてきた咀嚼能力の評価方法は,その大半が粉砕能力評価を主体とした評価法であった.そこで,食塊形成能力を含めた咀嚼能力を簡易に評価できる方法を考案し,有効性の検討を行うことを目的として以下の実験を行った.食塊形成能力の指標を唾液分泌能力と舌側移送能力の2つと考え,吸水量の異なる煎餅における嚥下までの咀嚼回数が,それら食塊形成能力と,どのような関係にあるかの検討を行った.被験者は,健常有歯顎者(男性14名,女性7名)とした.舌側貯留率と粉砕度は,ピーナッツを一定回数咀嚼させ計測した.また,唾液分泌量と煎餅の嚥下までに要した咀嚼回数を計測し,それぞれの相関を求めた.結果:1.唾液分泌量と煎餅の初回嚥下までの咀嚼回数との間に負の相関が認められ,唾液分泌能力の高い者は座下までの咀嚼回数が少ない事が認められた.2.ピーナッツの舌側貯留率と煎餅の初回嚥下までの咀嚼回数との間に負の相関が認められ,舌側移送能力の高い者は嚥下までの咀嚼回数が少ない事が認められた.3.上記の関係は,吸水性の高い煎餅で顕著であった.以上の事より,吸水性の高い煎餅の初回嚥下までの咀嚼回数を計測するこの評価法は,食塊形成に密接な関係がある唾液分泌能力および舌側移送能力を予想する事ができた.この方法によりチェアサイドで食塊形成能力を含めた咀嚼能力を簡便に評価できることが分かった.
著者
服部 正嗣 本田 一郎 松下 英信 小林 大介 大河内 治 坪井 賢治
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.2229-2234, 2008
被引用文献数
7

症例は22歳,女性.平成18年8月過食による急性胃拡張の診断で入院し保存的治療にて軽快・退院した.10月再び過食後に腹痛・嘔気が出現して当院を受診し急性胃拡張の診断にて入院となった.経鼻胃管挿入にて減圧をはかるも腹痛軽快せず.同日深夜,ショック状態となり挿管呼吸管理,カテコラミン大量投与による循環管理を開始した.CTで腹水とfree air,腹腔穿刺で混濁腹水を認め,緊急手術を施行した.胃は広範に壊死・破裂しており,腹腔内に多量の壊死物質と食物残渣を認めた.脾臓にも壊死を認め,胃全摘術・脾摘出術・腹腔洗浄ドレナージ術を行った.術中もショック状態が続き,術後,DIC・多臓器不全の状態となった.持続血液濾過・血液製剤大量投与などの加療にもかかわらず,術後26時間で死亡した.複雑な家庭環境でのストレスが誘因とされる過食による急性胃拡張が原因で胃壊死・破裂をきたした症例を経験したので報告する.
著者
清水 雄也 小林 佑太
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.111, 2023-11-15 (Released:2023-11-15)
参考文献数
17

Kei Yoshida's recent book Philosophy of the Social Sciences: An Introduction is the first introductory textbook on the philosophy of the social sciences written in Japanese. It concisely expounds on a wide range of topics in the discipline, while its explication of those topics is not impartial or neutral as the author himself says. This paper gives a critical review of the book. The first half of it briefly overviews and assesses the book as a whole. The latter half of the paper reconstructs the gist of the author's exposition of the naturalism/interpretivism debate and criticizes it.
著者
下司 信夫 小林 哲夫
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-20, 2006-02-28
被引用文献数
2

Volcanic history of Kuchinoerabujima Volcano in the last 30,000 years is reconstructed based on tephra stratigraphy. Kuchinoerabujima is a volcanic island which is a cluster of at least nine volcanic edifices; Gokyo, Jyogahana, Ban-yagamine, Takadomori, Noike, Kashimine, Hachikubo, Furutake and Shintake. Eruptions within the last 30,000 years occurred from Noike, Hachikubo, Furutake and Shintake volcanoes. Two major pumice and scoria eruptions occurred between 15 and 11 ka after an inactive period since ca. 30ka. NoikeYumugi tephra (15-14ka, DRE>0.06km^3), erupted from the summit of Noike Volcano, consists of Yumugi pumice fall deposit and Nemachi pyroclastic flow deposit. Furutake-Megasaki tephra (12-11 ka, DRE ca. 0.8km^3) erupted from Furutake Volcano and consists of Furutake agglutinate, Furutake scoria flow deposit and Megasaki scoria fall deposits. Volcanic edifice of Older Furutake was built during the 12-11 ka eruption. Eruption style changed around 10ka, after the collapse of Older Furutake Volcano. Activities of Yougner Furutake and Shintake Volcanoes are characterized with effusion of lava flow and no major pumice eruption is recognized. Lithic tephra erupted from Younger Furutake and Shitake Volcanoes within the last 10,000 indicates repetitive Vulcanian-type and phreatomagmatic eruptions. All historical eruptions since 1841 occurred at and around Shintake crater and were Vulcanian-type explosions with emission of magmatic materials and phreatic explosions.
著者
高木 静代 小林 康江
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.227-237, 2010 (Released:2011-04-07)
参考文献数
25
被引用文献数
2

目 的 本研究の目的は,助産師が中期中絶を受ける女性のケアに携わることに対して感じる困難を明らかにし,記述することである。対象と方法 胎児異常を理由とした中期中絶ケアの経験のある2年目以上10年目未満の助産師9名から,半構成的面接によってデータを得た。データを逐語録に起こしデータを理解した上で,困難についての語りの内容を抽出し,コード化を行った。さらに,コード間の類似性と相違性の比較や,データとの比較を行いながらサブカテゴリー,カテゴリーへと抽象化した。結 果 助産師が中期中絶のケアに携わることに対して感じる困難は,4つのカテゴリーから構成されていた。助産師にとって中期中絶は,人工的に命が淘汰されることであり,亡くなりゆく命を目の当たりにするという受け入れがたい体験であり《絶たれる命に対する苦悩》を感じていた。また,助産師は母親がどのようなケアを望んでいるかが分からず,ケアに迷いが生じていた。これは,十分なケアが行えていないもどかしさを感じるが,一方では十分なケアを行えるだけの余裕もなく,《ケアに対する不全感》を招いていた。また,母親への違和感や,母親から感じ取る近づきにくさは,母親と関わることへのためらいとなり,《母親との関係性の築きにくさ》となった。助産師である自分が,子どもの人工的な死に加担することを役割として認めることができず,助産師自身がどう対応するべきかという戸惑いとなり《ケア提供者になりきれない》と感じ,ケア役割を遂行できないと認識していた。結 論 中期中絶のケアに携わる助産師の困難は,人工的に命が絶たれることへの苦悩や,ケアすることに対して感じる不全感,さらには母親へのケアを行うという関係性の築きにくさや,助産師としてケアを行うという役割に徹することができないという4つから構成されていることが明らかとなった。
著者
小林 美佳 岸野 光司 秋山 友子 進藤 聖子 大槻 郁子 菅野 直子 藤原 慎一郎 山本 千裕 室井 一男
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.613-618, 2020-08-25 (Released:2020-09-18)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

生後4カ月未満児のABO血液型検査は,母由来の移行抗体や抗A抗Bの産生が不十分であることから,オモテ検査のみの判定でよいと厚生労働省の「輸血療法の実施に関する指針」に明記されている.しかし,生後4カ月以降のウラ検査については,明確にされていない.今回,当院でABO血液型検査を実施した2010年1月から2017年4月までの約7年間における3歳未満の乳幼児,延べ1,068例のABO血液型検査について解析した.生後1カ月未満児と生後1カ月以上4カ月未満児のABO血液型オモテ検査とウラ検査の一致率(一致率)を比較すると有意差は認められなかった(P=0.638).さらに生後4カ月以上1歳未満の乳児を2カ月毎に一致率を比較検討した.その結果,月齢を重ねるに従い一致率も上昇した.また生後4カ月未満児の一致率(56.6%)と生後4カ月以上1歳未満児の一致率(76.5%)の比較では,有意差(P<0.001)が認められた.さらに,生後1歳以上では約90%の一致率が認められ,以上の結果より乳幼児のオモテ・ウラ検査を用いたABO血液型を確定する時期は,生後1歳以上が適切と考えられる.
著者
永吉 雅人 杉田 収 橋本 明浩 小林 恵子 平澤 則子 飯吉 令枝 曽田 耕一
出版者
室内環境学会
雑誌
室内環境
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.97-103, 2013-12-01

上越市立の全小学校(新潟県)児童を対象に、化学物質過敏症(multiple chemical sensitivity:MCS)様症状に関するアンケート調査が2005年7月に実施されている。今回、その調査から5年経過した2010年7月、実態の時間的推移を把握するため、対象を市立の全小中学校の児童・生徒に拡げてアンケートの再調査を実施した。また今回新たに就寝時刻についても合わせて調査した。アンケートの有効回答数は14,024名(有効回答率84.0%)であった。/調査の結果、14,024名の回答児童・生徒中MCS様症状を示す児童・生徒は1,734名(12.4%)であった。今回の調査で主に、次の3つのことが明らかとなった。/1.小学1年生から中学3年生へ学年が進むに伴い、MCS様症状を示す児童・生徒の割合が増加傾向にあった。2.小学生全体のMCS様症状を示す児童の割合は、今回調査した小学生の方が5年前に比べて大きくなっていた。3.小学3年生から中学3年生までのMCS様症状を示す児童・生徒はMCS様症状を示していない児童・生徒より就寝時刻が遅かったことが明らかになった。
著者
海道 利実 濱口 雄平 奧村 晋也 小林 淳志 白井 久也 上本 伸二
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.822-828, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1

サルコペニアとは、筋肉量の低下に筋力の低下または身体機能の低下を伴う病態である。その成因によって、加齢に伴う筋肉量の減少である一次性サルコペニアと、活動性の低下 (廃用性萎縮) や低栄養、臓器不全や侵襲、腫瘍などの疾患に伴う筋肉量の減少である二次性サルコペニアに分類される。サルコペニアは生命予後に影響し、特に消化器外科領域においては、手術患者の高齢化による一次性サルコペニアと低栄養や担がん状態、手術侵襲などによる二次性サルコペニアを伴う患者が増加しており、今後、ますます重要な問題となるであろう。事実、最近、消化器領域を中心に、サルコペニアの意義に関する論文が急増している。そのほとんどが、術前サルコペニアは予後不良因子であるという論文である。したがって、今後、サルコペニアをターゲットとした栄養・リハビリテーション介入が、消化器がん治療成績向上の新たなブレークスルーになると期待されよう。
著者
樋口 収 下田 俊介 小林 麻衣 原島 雅之
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.14-22, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
28
被引用文献数
5 1

東京電力福島第一原子力発電所の事故から5年以上たった今なお福島県の産物の風評被害は続いている。なぜ消費者は福島県の産物を危険視するのだろうか?2つの実験で行動免疫システムが活性化すると,汚染地域を過大に推定するかどうかを検討した。実験1では,プライミングの条件(病気の脅威条件vs.統制条件)に関係なく,慢性的に感染嫌悪傾向が高い人の方が低い人よりも,汚染地域を過大に推定していた。実験2では,感染嫌悪傾向が高い人では病気の脅威条件の方が統制条件よりも汚染地域を過大に推定していた。また感染嫌悪傾向が低い人では条件で差異はみられなかった。風評被害と行動免疫システムの関係について考察した。