著者
本堂 毅 平田 光司 関根 勉 米村 滋人 尾内 隆之 笠 潤平 辻内 琢也 吉澤 剛 渡辺 千原 小林 傳司 鈴木 舞 纐纈 一起 水野 紀子 中島 貴子 中原 太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

科学技術の専門的知識には,程度の差はあれ,様々な不確実性が避けられない.また,社会の中で科学技術の知識を用いる際にどのような科学的知識が必要かは価値判断と不可欠であるため科学自体では定まらない.このような「科学的知識の不定性」を直視し,不定性の様々な性質を踏まえた上で,より的確な判断を私たちが主体的に下すための条件を考察し,科学的知識に伴う不定性の性質・類型を明らかにするとともに,その成果を書籍にまとめた(2017年度に出版予定).
著者
佐藤 慶二郎 穴山 万理子 住 昌彦 小林 光
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1688-1693, 2021 (Released:2022-01-13)
参考文献数
15

症例は95歳男性。2回目のBNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種後2日目より全身皮下出血や下血が出現した。接種後4日目に血小板減少,D-dimer軽度高値,Helicobacter pylori(H. pylori)IgG抗体陽性,抗リン脂質抗体陽性が認められた。血栓症を疑う身体症状は認めず,新規発症の免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia, ITP)と診断し,0.5 mg/kgのprednisoloneと免疫グロブリン療法(intravenous immunoglobulin, IVIG)0.4 g/kg/dayを開始し,翌日より血小板が改善傾向となった。3ヶ月経過時点で寛解を維持している。SARS-CoV-2ワクチン接種後の血小板減少の鑑別は,ITP以外に,血栓性血小板減少性紫斑病や新規疾患概念であるワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症など多岐にわたる。さらに自験例では抗リン脂質抗体関連血小板減少症やH. pylori関連ITPの可能性も考えられた。SARS-CoV-2ワクチン接種後の新規発症ITPの報告は増加傾向にあり,その多くがステロイドやIVIGに速やかに反応する。適切な鑑別疾患に基づいた症例の蓄積がSARS-CoV-2ワクチン後に出現する血小板減少症の対策に重要と考えられた。
著者
小林 茂
出版者
札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
雑誌
札幌学院大学心理学紀要 = Bulletin of Faculty of Psychology Sapporo Gakuin University (ISSN:24341967)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.1-11, 2021-02-26

本論では,日本におけるgifted という語の理解と社会的受容の問題の考察をおこなった。 日本の教育や福祉などの支援機関では高い知能の子どもの適切な支援や支援体制がなされていないことや,生きづらさの問題も懸念されている。そのためアメリカのギフテッド教育が注目されるようになった。だが,日本において才能教育に「ギフテッド」という用語を使用することは適切かが問われる。こうしたことから,gifted やtalented の語にある文化的な背景を語の使用の歴史と元にある言説と影響史を追うことで考察を行った。
著者
小林 直也
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1159, 2022 (Released:2022-12-01)
参考文献数
5

望みの標的タンパク質と特異的に結合するタンパク質を設計し,タンパク質相互作用を自由自在に制御することができれば,新しい医薬品の開発への応用が期待できる.これまで結合タンパク質を設計するには,標的タンパク質が他のタンパク質と結合した複合体構造が必要であり,標的タンパク質の立体構造情報のみを用いて結合タンパク質を設計する一般的な方法はなかった.本稿では,標的タンパク質の立体構造情報のみを用いて,任意の標的タンパク質の特定の部位に結合するタンパク質を設計する手法を開発したCaoらによる研究を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Cao L. et al., Nature, 605, 551–560(2022).2) Dou J. et al., Nature, 561, 485–491(2018).3) Rocklin G. J. et al., Science, 357, 168–175(2017).4) Chevalier A. et al., Nature, 550, 74–79(2017).5) Jumper J. et al., Nature, 596, 583–589(2021).
著者
小林 雅夫
出版者
早稲田大学地中海研究所
雑誌
地中海研究所紀要 (ISSN:13482076)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.45-54, 2008-03-01
著者
永瀬 和彦 中村 英男 小林 秀之
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.56, no.523, pp.797-802, 1990-03-25 (Released:2008-02-21)
参考文献数
4
被引用文献数
1

The authors constructed "slipping adhesion test bogie" designed upon a new idea of measuring the coefficient of adhesion continually while running, and have observed the state of adhesion on main lines since 1985. Recently, they placed a car equipped with this bogie on a steep line where wheel-spin and skidding of rolling stock had been frequently the cause of troubles. As the result of runs of the car under various weather conditions such as fine, fog, snow, sleet and frost, influence of the weather condition upon the adhesion between rails and wheels has been made clear and evaluated quantitatively.
著者
坪内 佑樹 脇坂 朝人 濱田 健 松木 雅幸 小林 隆浩 阿部 博 松本 亮介
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.818-828, 2021-03-15

クラウド上のシステムの大規模化にともない,CPU利用率などのシステムの各構成要素の状態を把握するために,大量の時系列データを保存する必要がある.そのために,時系列データを保存するデータベースにはデータの挿入処理とデータ保存の効率化と挿入スケールアウト性の向上が求められる.既存技術は,挿入スケールアウト性を高めるために広く利用されているディスクベースの分散KVS(Key Value Store)を利用する.しかし,ランダムI/Oが低速なディスクへ書き込むという前提があることから,メモリ上でキーを整列させながら挿入可能な平衡木が利用されるが,キーの挿入時に系列数に対して対数時間を要する.すべてのデータをメモリ上に保持するメモリベースKVSであれば,ハッシュ表に基づくデータ構造の利用により定数時間の挿入が可能となる.しかし,メモリは容量単価が大きいことから,データを長期間保存するには不向きである.本論文では,メモリベースKVSとディスクベースKVSを階層化する高性能な時系列データベースHeteroTSDBを提案する.HeteroTSDBは,メモリベースKVS上に系列名をキーとして,系列本体をバリューとしたハッシュ表を構成することにより,系列数に対して定数時間でデータを挿入する.加えて,系列を格納するキーにTTL(Time To Live)によるタイマを設定し,古くなったデータを系列単位でまとめてディスクベースKVSへ移動させることにより,データ保存のための容量単価を低減させている.実験の結果,ディスクベースKVSを利用した既存の時系列データベースであるKairosDBと比較し,HeteroTSDBは3.98倍の挿入スループット向上を達成した.
著者
上妻 歩夢 齋藤 未花 本間 洋樹 水野 増彦 横山 順一 小林 史明 畑山 茂雄 菊池 直樹
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.3015-3020, 2021

Previous studies have reported that a relationship between attractiveness and athletic achievement exists such as in cycling and American football. The goal of this study was to examine the association between at-tractiveness, facial width-to-height ratio (FWHR) and athletic achievement in collegiate track and field ath-letes. Ninety-three athletes (42 males and 51 females, aged 19.8±1.2 years) participated in the present study. All athletes were divided into higher-level athletes and lower-level athletes according to their athletic achievement. Two-hundred and forty-one evaluators (124 males and 117 females, aged 20.81±1.5 years) as-sessed the attractiveness of the athletes. Attractiveness was evaluated using the visual analog scale (VAS) by evaluators who met the athletes for the first time and were of the opposite sex. We measured the FWHR, facial width ratio, area between the left and right cheekbones, and height between the upper lip and under the eye-brows using ImageJ. This study reveal that elite sprinters were more attractive than the lower-level athletes (p=0.053). Conversely, elite endurance athletes were less attractive (p=0.039) (FWHR, p=0.047) than the lower-level athletes. In summary, our results suggested that higher-level sprinters tend to be more attractive in comparison to higher-level endurance athletes who showed a lower FWHR and were found to be less attrac-tive.
著者
青木 稔弥 青田 寿美 神林 尚子 北村 啓子 木戸 雄一 ロバート キャンベル 小林 実 佐々木 亨 佐藤 至子 高木 元 高橋(山下) 則子 谷川 惠一 中丸 宣明 福井 辰彦 間城 美砂 柳 宗利 山田 俊治 山本 和明
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館 2006年度秋季特別展 仮名垣魯文百覧会展示目録
巻号頁・発行日
pp.1-49, 2006-11-01

平成18年10月17日~11月2日に開催した国文学研究資料館2006年度秋季特別展「仮名垣魯文(ROBUN)百覧会」の展示目録。仮名垣魯文を中心とする、幕末・明治開化期文学に照明を当てたもので、当館が平成10年(1998)に近代部門を設けて以来初めての、関連分野の蒐書展示となる。〈仮名垣魯文(ROBUN)の肖像〉〈江戸の残照〉〈開化の寵児〉〈報道する戯作者〉〈魯文の交友圏〉〈毎日新聞社新屋文庫蔵 魯文関連資料の紹介〉〈その他〉のテーマごとに、7ブロック・13セクションに分けて資料を展示。魯文が生きた波乱と変動の時代を背景に読み込みながら、魯文と同時代戯作者たちの群像を、彼らの文業と共に通覧した。
著者
中村 大輝 田村 智哉 小林 誠 永田 さくら 大森 一磨 大野 俊一 堀田 晃毅 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.215-233, 2020 (Released:2021-02-05)
参考文献数
65

This study aims to determine the expected effect size of intervention studies in science lessons through meta-analysis. Intervention studies were collected from education-center websites in every Japanese prefecture to calculate the average effect size and examine the moderation effect. The results of the quantitative analysis showed that the mean effect size of multi-valued items was g=0.594 [0.557, 0.630] (k=626, N=9122). The moderator analysis revealed relatively low effect sizes for learning in the geology domain, and differences in effect size for various types of academic indicators. In addition, we provided basic statistics to help determine the sample size needed for future studies.
著者
小林 哲郎 松田 泰樹 安座間 隆
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.59-63, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
12

小学5年生の男子の小児甲状腺癌肺転移症例について,放射性ヨウ素治療後20年の経過を報告する。労作時の呼吸困難が強く,小学校の階段を2階の踊り場まで辛うじて上がっていた。胸部写真では,両側肺野に結節状の陰影が多数みられた。数年にわたり,計400mCiのI-131が投与された。現在成人男子に成長し,社会人となっている。小児甲状腺癌の予後は良好といえども,労作時呼吸困難が出現するほどの肺転移に,放射性ヨウ素治療なくして,病勢を食い止めることはできなかったであろうとその治療効果を評価する一方,晩期障害も認められ,注意してフォローしている。
著者
印牧 信行 太田 充治 辻田 裕規 小林 由佳子 安部 勝裕 瀧本 善之 今安 正樹
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.645-648, 2018-11-20 (Released:2018-12-20)
参考文献数
7

全国6カ所の眼科紹介動物病院より緑内障群及び非緑内障群の柴犬DNAサンプルを回収し,イヌ緑内障感受性遺伝子(SRBD1 遺伝子)の3つの一塩基多型(rs8655283,rs22018514,rs22018513)における緑内障発症との関連を調査した.その結果,rs8655283のリスクホモではノンリスクホモに対するオッズ比が3.45(P<0.05),rs22018514ではオッズ比4.32(P<0.01),rs22018513ではオッズ比10.33(P<0.01)となった.またrs22018513のヘテロではノンリスクホモに対するオッズ比が6.14(P<0.05)となった.SRBD1 遺伝子の一塩基多型解析は将来的な緑内障発症リスクの評価に有用と考えられる.
著者
小林 淳
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.327-343, 1999-08-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
41
被引用文献数
5 8

箱根火山周辺域に分布する箱根火山起源テフラ(降下軽石,火砕流堆積物)と富士火山起源テフラ,および広域テフラの層序関係を確立し,箱根火山中央火口丘の噴火活動史・火山体形成史を明らかにした.中央火口丘期の噴火活動は,新期カルデラ内に先神山(pre-Kamiyama)が形成されることにより始まった(約50ka).先神山の噴火活動は,最初,噴煙柱を形成しながら軽石を噴出していたが,徐々に軽石よりも類質岩片を多く噴出するようになり,最終的には先神山の一部が崩壊した(早川泥流CC2:約37,38ka).先神山崩壊後は,粘性の高い溶岩の大規模な流出に伴って,火砕流(block and ash flow)を頻繁に流下させながら溶岩ドームを形成する噴火様式に変化し,神山を中心とした中央火口丘群が次々と形成された.これらの結果から得られた噴出量階段図より,最近11万年間のマグマ噴出率は7.6×1011kg/kyと求められる.しかし,詳細に見ると,この噴出率は段階的に減少傾向を示していることが明らかになった.
著者
宮崎 百代 小林 憲太郎 山本 真貴子 松田 航 廣瀬 恵佳 植村 樹 佐々木 亮 木村 昭夫
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.392-395, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
7

脂肪吸引術は, 体形の美容的改善を目的とした保険外診療である。手術は全身麻酔下で小さな切開孔から盲目的に広範囲の脂肪吸引を行う。外来手術で行われる症例が多いが, 時に術後当日に救急搬送を要する患者が発生し, 救急部門でその合併症治療に迫られることがある。今回われわれは, そのような患者の実態調査と他院保険外診療による合併症患者の診療請求のあり方を後方視的に検討した。2年半の間に該当症例は4症例であり, 全患者が入院診療を必要とした。半数は輸血を要するほどの貧血を呈していた。また併発した合併症に対し手術療法が必要となった症例もあった。当院当科では, 事務部門と協議し, 東京保険医協会のコメントをもとに保険診療としたが, 診療費は多額になる症例もあり, 保険診療とすることで公的医療費の負担が増すことを考えると, 手術した施設に支払いを請求するなど他の対策も講じる必要がある。
著者
大越 裕人 上條 貢司 畑下 恒寛 小林 郁夫
出版者
一般社団法人 日本脳神経外傷学会
雑誌
神経外傷 (ISSN:24343900)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.113-116, 2017-12-20 (Released:2020-04-27)
参考文献数
11

Although chronic subdural hematomas usually affect elderly individuals, they sometimes affect young individuals. We present a case of 19-year-old male with a chronic subdural hematoma that occurred because of previous headbanging. During a rock concert, the patient was intensely headbanging, after which he experienced persisting headache, and his symptoms gradually deteriorated. He visited our hospital for a chief complaint of a headache. Brain CT revealed a right subdural hematoma, and he was urgently admitted. He was treated with emergency surgical drainage with a mass of hematoma. His postoperative status was pretty fair, and he was dis­charged on hospital day 8. Follow-up brain MRI showed an arachnoid cyst in the right frontal lobe, and the cyst was considered to be the cause of hematoma. To date, only two cases of headbanging-associated chronic subdural hematoma have been reported in western countries. To our knowledge, our patient is the first Japanese case.
著者
余郷 嘉明 鄭 懐穎 長谷川 政美 杉本 智恵 田中 新立 本庄 健男 小林 伸好 太田 信隆 北村 唯一
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.19-34, 2003 (Released:2003-11-19)
参考文献数
57
被引用文献数
3 4

JC ウイルス (JCV) DNA の系統解析によりアイヌの起源を解明することを目的として, 北海道の3地域(浦河, 白老, 旭川)に住むアイヌ30名から尿を採取した。尿から検出された JCV DNA (n = 13) は5つのゲノム型 (MY-b, MY-x, MX, EU-a/Arc, EU-c) に分類された。MY-b, EU-a/Arc, EU-cは過去に近隣の人類集団から検出されたが, MY-xとMXは今回初めてアイヌから検出された。得られた知見から, (1) 東北アジアから渡来した複数の人類集団が現代アイヌを築いたこと, (2) ヨーロッパ人に近縁の東北シベリア先住民の祖先集団が現代アイヌの中核を形成したこと, (3) 縄文人を形成した集団や新規な東北アジア系集団も現代アイヌの形成に寄与したことが示唆された。