著者
野崎 愛 小林 正秀 藤田 博美 芦田 暢 江浪 敏夫 柴田 繁
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.61-66, 2001
被引用文献数
1

カジノナガキクイムシが穿入して枯死したミズナラの丸太にシイタケ菌・ナメコ菌・クリタケ菌を植菌し,子実体の発生量と植菌丸太からのカジノナガキクイムシ脱出数を調査した。丸太から食用きのこの子実体が発生し,枯死木がきのこ栽培に利用可能であることが示唆された。また,シイタケ植菌丸太からのカジノナガキクイムシ脱出数は少なかった。次に,被害枯死立木へシイタケ菌・ナメコ菌・クリタケ菌・エノキタケ菌を植菌したところ,シイタケ菌を植菌した立木からの脱出数が少なかった。これらの結果から,シイタケ菌を植菌することでカジノナガキクイムシを防除できることが示唆された。
著者
岩崎 衣津 時岡 宏明 福島 臣啓 實金 健 奥 格 小林 浩之 石井 瑞恵
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.92-100, 2012-03-15 (Released:2012-05-18)
参考文献数
32
被引用文献数
1

【目的】わが国では敗血症性ショック患者に対してエンドトキシン吸着療法(以下PMX-DHP)が保険適応になって以来,敗血症治療の第一選択として行われることが多い。しかし,国際的には臨床的有用性は議論されており,治療法としては確立されていない。当院では,敗血症性ショック患者に対して,速やかな感染源の除去,適切な血行動態の維持,抗菌薬の早期投与等の集学的治療を行っている。PMX-DHPを用いない当院において,緊急手術を施行した下部消化管疾患による敗血症性ショック患者の治療成績について後ろ向きに検討した。【対象と方法】下部消化管疾患に対し緊急手術を施行され,周術期に敗血症性ショックとなり昇圧剤を必要とした成人症例を対象とした。血行動態の維持には,頻回の心臓超音波検査による前負荷と心機能の評価を行い,輸液を投与した。昇圧剤にはドパミン,ノルアドレナリン,少量バソプレシン等を用いた。【結果】緊急手術を施行した下部消化管疾患による敗血症性ショック患者28例の院内死亡率は17.9%でAPACHE IIから算出した予測死亡率63.3%に比較して良好であった。とくに大腸穿孔患者15例では,予測死亡率57.7%に対して院内死亡率は0%であった。【結論】下部消化管疾患による敗血症性ショック患者の治療は,心臓超音波検査による適切な前負荷の維持とノルアドレナリンとバソプレシンの使用により,PMX-DHPを用いなくても良好な成績を示した。
著者
坂本 澄彦 堀内 淳一 大川 智彦 横路 謙次郎 細川 真澄男 小林 博
出版者
東北大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1989

低線量の放射線の腫瘍制御に果たす役割について研究を続けているが、今年は基礎的研究として、15ラドの全身照射を行なったマウスに対し尾静脈から腫瘍細胞を注入した場合に、肺に造る腫瘍細胞のコロニーが出来る割合が、照射をしなかったマウスの場合とどう異るのかについて更に詳細な検討を加えた。先ず肺に造るコロニーは10ラドの照射より15ラドの照射を受けたマウスの方が形成率が低いこと、更に15ラドの全身照射と局所照射の組合せが腫瘍の局所制御率が高まることを確認した。一方放射線照射による腫瘍関連抗原のshedding抑制とその意味する所についての研究が行なわれ、放射線照射による抗腫瘍免疫誘導の機序としてTAAの存在様式の変化が関与している可能性を示し、このような現象が生ずるのには30Gyという至適線量が存在することがわかった。又腫瘍誘発に対する低線量域での放射線の線量と線量の効果についての研究も進められているが、この研究の結論を得るのはもっと先の事になると思われる。臨床的研究としては、昨年に引続き全身或は半身照射のみの効果を調べるため進展例の悪性リンパ腫に対する効果を検討した。結果は45例の悪性リンパ腫の患者のうち1例は他病死したが残りの44例は、現在、再発の徴候なしに生存している。その生存期間は6ケ月から44ケ月の間に分布しており、現在もどんどん治療例が増えているので、近い将来に、統計的解析を行なって治療成績の正しい評価が下せるようになると考えている。又、肺癌、子宮癌、食道癌などの固形腫瘍に対する全身又は半身照射と局所照射の組合せによる治療も開始しているが、この研究は次年度に更に積極的に推進する予定である。
著者
曽根 啓子 子安 和弘 小林 秀司 田中 愼 織田 銑一
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.151-159, 2006 (Released:2007-02-01)
参考文献数
32
被引用文献数
2

日本で野生化し,農業害獣として問題となっているヌートリアMyocastor coypusによる農業被害の実態を把握することを目的として,農業被害多発地域の一つである愛知県において,被害の発生状況,とくに被害作物の種類とその発生時期,ならびに被害が発生しやすい時間帯と場所についての聞き取り調査を行った.また,穿坑被害を含む農業被害以外の被害の有無についても併せて調査した.ヌートリアによる農業被害の対象となっていたのは稲(水稲)および23品目の野菜であった.稲の被害(食害および倒害)は,被害経験のある34市町村のうちほぼ総て(32市町村/94.1%)の市町村で認められ,最も加害されやすい作物であると考えられた.とくに,育苗期(5-6月)から生育期(7-9月)にかけて被害が発生しやすいことが示唆された.一方,野菜の被害(食害および糞尿の被害)は収穫期にあたる夏期(6-9月)もしくは冬期(12-2月)に集中して認められた.夏期には瓜類(16市町村/47.1%),芋類(11市町村/32.4%),根菜類(8市町村/23.5%),葉菜類(3市町村/8.8%),豆類(3市町村/8.8%)など,冬期には葉菜類(17市町村/50.0%)ならびに根菜類(10市町村/29.4%)でそれぞれ被害が認められた.個別訪問した農家(18件)への聞き取りおよび現地確認の結果,主たる被害の発生時間帯は,日没後から翌朝の日の出前までの間であると推察された.農業被害が多く発生していた場所は,河川や農業用水路に隣接する農地であり,とくに護岸されていないヌートリアの生息に適した場所では被害が顕著であった.また,農業被害の他にも,生活環境被害(人家の庭先への侵入)および漁業被害(魚網の破壊)が1例ずつ認められたが,農業被害とは異なり,偶発的なものと推察された.今後は,被害量の推定を目指した基礎データの蓄積,ならびに捕殺以外の防除法の開発が重要な課題であると考えられた.
著者
太田 健太郎 小林 健太郎 山里 敬也 片山 正昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. USN, ユビキタス・センサネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.378, pp.137-142, 2011-01-13

太陽エネルギーの取得を行う無線センサネットワークにおけるノード稼働率の向上を目指している.ネットワーク全体の消費エネルギーを低減できる方法として,データ送信時にノードがデータの中継を行う協力伝送方式がある.しかし,取得エネルギーの変動を考慮しない場合,夜間にノード稼働率が低下する問題が生じる.本稿では,電池切れにより停止したノードの再稼働条件を導入することで昼夜のノード稼働率の平滑化を行い,要求される高いノード稼働率を達成する.
著者
梅本 通孝 熊谷 良雄 小林 健介 石神 努 渡辺 実 室崎 益輝 大西 一嘉
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.7, pp.228-233, 1997-11
被引用文献数
1

The Great Hanshin-Awaji Earthquake Disaster caused an LPG leak incident at a plant in Higashinada ward, Kobe city. Kobe municipal authorities announced evacuation recommendation to 72,000 inhabitants. A questionnaire was conducted to know when, where and how the inhabitants received the information of evacuation recommendation. Results of the questionnaire are as follows : ・In the day the evacuation order was announced, 9.9% of inhabitants in the recommendation area concerned did not receive the information of the recommendation. ・The farther from the plant where the incident happened, the more lately inhabitants received the information of the recommendation. ・Though about 80% of people who received the information of the recommendation become aware of the cause of it, many of them didn't know the further information.
著者
森山 葉子 豊川 智之 小林 廉毅 井上 和男 須山 靖男 杉本 七七子 三好 裕司
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.22, 2012 (Released:2012-03-05)
参考文献数
22
被引用文献数
3 4

単身赴任者と家族同居者における生活習慣,ストレス状況および健診結果の比較―MYヘルスアップ研究から―:森山葉子ほか.東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学―目的:全国に支社を持つある金融保険系企業の男性従業員を対象に,生活習慣,ストレス状況および健診結果について,有配偶単身赴任者と有配偶同居者との比較を行うこととした.対象と方法:2004年の定期健康診断を受診しており,かつ同年に実施した質問票による調査に回答した男性のうち,有配偶であり40代および50代の事務職である3,026名を調査対象とした.質問票の配偶者はいるかとの問いに,「はい」と答えた者を同居群,「はい(単身赴任中)」と答えた者を単身赴任群とした.生活習慣については運動,飲酒,喫煙習慣など12項目を,ストレス状況については,質問票内の職業性ストレス簡易調査票の下位尺度から,活気の低下,イライラ感,疲労感,不安感,抑うつ感,身体愁訴の6項目について喫煙者と非喫煙者を層化してχ2検定で分析した.健診結果についてはBMI,収縮期血圧,拡張期血圧,空腹時血糖,GOT,GPT,γ-GTP,総コレステロール,中性脂肪,HDLコレステロール,赤血球,白血球を用いて,単身赴任との関連を年齢と喫煙を共変量として回帰分析で検討した.結果:単身赴任群は同居群と比較した結果,運動・喫煙・飲酒・食生活・休日日数などの生活習慣が好ましくない者が多く,ストレス状況では喫煙者においてイライラ感と不安感,抑うつ感が高く,健康状況を示す健診結果については,総コレステロール,中性脂肪,白血球数が高かった.結論:本研究は,有配偶単身赴任者において食生活などの生活習慣が好ましくない者が多く,ストレス状況のイライラ感と不安感,抑うつ感が高く,健診結果において脂質関連の数値が高いことを示した.
著者
小林 正幸 西川 俊 石原 保志 高橋 秀知
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.97, no.397, pp.25-29, 1997-11-22
被引用文献数
9

我々は、高速で文字入力が可能なMicrosoft Windows NT Ver. 4.0の環境下で動作するDOS/Vパソコン対応の日本語高速入カシステム (ステノワードPCシステム) を2セット用意し、1セット目で発話内容のひらがな入力とかな・漢字変換を行い、他のセットで誤字、脱字等の修正を行う、より正確な字幕をリアルタイムで提示可能な新システムを開発したので、このシステム (連弾入力方式RSVシステム) の機能や特徴について報告する。また、ISDN (INSネット64) とテレビ会議システムを介して遠隔地でキーボードの入力作業が可能な遠隔地連弾入力方式RSVシステムについても報告する。
著者
小林 満
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1613年の「カステッリ宛の書簡」のなかでガリレオは聖書と自然学の関係を整理してコペルニクス説のほうがアリストテレス・プトレマイオス体系よりも優位にあることを証明したが、その論理の攻撃性もあって、彼は宗教的な論争に巻き込まれてしまう。その反省から、『偽金鑑識官』から『世界の二大体系についての対話』へと執筆活動が展開していくにつれ、彼の説得の技術は、論理的に敵を打ち負かすだけでなく、「たとえ話」をも導入して、読者をより引き込むものへと進化していった。17世紀の前半には「感覚」を重要視する文化的風土があった。たとえば「感覚に基づく経験と必然的な論証」を自然学の研究手段と考えるガリレオ、あらゆる事物には感覚が備わっているという視点から自然を説明する哲学者カンパネッラ、そして五感を通した快楽を主題としたバロック詩人マリーノである。『アドーネ』のなかでマリーノは、望遠鏡を「遠くにあっても、対象を非常に拡大して、誰の感覚にでも近づける道具」と位置づけているとおり、「感覚」に奉仕する新器具の発明者としてのガリレオを賛美した。また、海の航海者=地理的征服者コロンブスと天空の航海者=自然哲学的征服者ガリレオという2人のイタリア人が新時代の象徴として描かれており、ペトラルカの『カンツォニエーレ』所収「わがイタリアよ、たとえ語るのがむだでも」からレオパルディの『カンティ』所収「アンジェロ・マイヘ」に到るイタリアの偉人たちを引き合いに出しながらイタリアを憂える詩のバロック的変奏をなしているとも考えられる。またマリー・ド・メディシスの招聰によってパリの宮廷に登ったマリーノがこの作品をフランスで発表したことを考え合わせると、新旧論争の前段階の重要な作品と位置づけることも可能であろう。ガリレオの存在がいかに国境や領域を越えた「事件」であったかの証左と言える。
著者
荒木 英人 村川 正宏 小林 匠 樋口 哲也 久保田 一 大津 展之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.19, pp.73-76, 2009-02-26

多チャンネルの時系列データからの異常検知は,時系列データ源の状態や変化を検知する上で重要である.そこで我々は多チャンネルの時系列データから高次局所相関に基づいた特徴量を抽出し,抽出した特徴量より異常の検知を行う.普段頻繁に得られるデータを正常パターンとして,主成分分析を行うことでそのパターンの成す正常部分空間を抽出する.得られた空間からの逸脱度を異常値として定義し,この値の多寡で異常を検知する.本手法の性能評価のため,心電図データを対象として,異常検知性能の評価量にF値を用い,従来手法と比較した.その結果,提案手法の優位性を示すことができた.Abnormality detection in multi-channel time-series data is important for detecting and understanding changes of states in the source of the data. We propose a method for automatically detecting abnormality by using correlation-based features of multi-channel time-series data. In general, the feature vectors for normal patterns, which occur frequently in time-series, form the low-dimensional subspace in the feature space. The proposed method exploit the subspace by PCA and defines the abnormality as deviation from the subspace. In the experiment of abnormality detection in electrocardiogram, the proposed method outperformed conventional methods in terms of F-measure.
著者
松本 光太郎 小林 敦子 梅村 坦 大野 旭 松本 ますみ 高橋 健太郎
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成19年度科学研究費補助金研究成果報告書は、3年間の調査研究の成果と、本プロジェクトの最終年度に開催された国際シンポジウム「移動する中国ムスリム-ヒトと知識と経済を結ぶネットワーク」の報告内容を整理し、作成したものである。その際、本科研プロジェクトの課題として提示した三つのテーマを軸としている。その三つのテーマとは次のとおりである。一つ目に、中国ムスリムの越境移住の実態について調査を行うことである。中国ムスリムは中国国内における人口流動のみならず、迫害や留学、労働移民、宗教指導者の動きやメッカ巡礼などによって、国境を越えて移住し、コミュニティを形成している。移住や定着にともなって、社会構造や文化にどのような変化が生じたのかという点が、本報告書で解明しようと試みた一つ目の軸である。二つ目に、中国ムスリムの国内外における移住に付随して、イスラーム的宗教知識と商業的ネットワークの構築過程を探ることが目的であった。本報告書では、宗教指導者や宗教学生のモスク間の移動や、イスラーム宗教知識の国境を越えた流動などが分析を二つ目の軸として分析している。三つ目に、中国ムスリムの移住や、移住にともなうイスラーム宗教知識の流動などにともなって生じる、宗教復興を調査分析することであった。イスラーム復興をキーワードとする論考も、本報告書に収録されている。これら三つの軸を中心に提出された研究成果を、中国西北、西南華南、新疆、中国域外という地域軸に基づいて整理しなおし、報告書として提出した。