著者
山田 剛二 小橋 澄治 草野 国重
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.11-24, 1971-08-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
3
被引用文献数
2 5 7
著者
下坂 将史 呉 修一 山田 正 吉川 秀夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.106-122, 2009 (Released:2009-06-19)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本論文は,ダム貯水池の洪水調節機能向上を目的としダム放流量の新しい決定方法を提案するものである.著者らは従来から,現在まで降った降雨のうち確実にダム貯水池へ流入する量を,実際に流入する以前に放流する事前放流方法を提案している.本論文では,放流開始までの準備時間及び下流懸案地点における水位上昇速度を考慮してダムからの放流シミュレーションを行う.これにより各種法律,施設の放流能力,放流開始までの準備時間を考慮した実務に即した放流が可能な事を示すとともに,洪水低減効果向上のためには放流開始に要する準備時間を短くする必要がある事を示した.また,出水直前のダム貯水位が夏期制限水位以下の場合でも,初期水位低下量を考慮した事前放流を行うことで出水以降には夏期制限水位へと貯水位が回復することを明らかにした.

2 0 0 0 OA 「あたし」考

著者
山西 正子 山田 繭子 Masako YAMANISHI Mayuko YAMADA 目白大学外国語学部アジア語学科 西東京市図書館
雑誌
目白大学人文学研究 = Mejiro journal of humanities (ISSN:13495186)
巻号頁・発行日
vol.(4), pp.183-200, 2008

本稿では、自称詞「あたし」について、史的変遷を概観し、現代のいわゆるJ-POPの世界での「あたし」の位置づけを考察する。そして、しばしば「ややくだけた語感」とされる「あたし」が、J-POPの歌詞としては、「かわいらしさや女性のオーラを伝える」ためのアイデンティティ管理の表現として意図的に選択されることを確認する。その背景に、現代における、終助詞を含む文末表現に殊に顕著な、言語上の性差の縮小を想定する。アーティストが、自分のアイデンティティ表明の場である歌詞の中で、大きく女性に傾いた、いわば「有標の自称詞」である「あたし」を多用するのは、終助詞の使用など、それ以外の言語上のアイデンティティ表明手段が弱体化しているからではないか。「あたし」は一般的に「「わたし」の変化したかたち」と説明される。しかし、さらに変化して特化されている「わっち」や「あたい」に比して、いわば「変化の度合いが小さい/「わたし」との乖離が少ない」ために、様々な表情をもち得る。男性には「おれ」や「僕」などの「わたくし」系に属さない自称詞があるが、一般的にはそれを使用しない女性にとって、「わたくし」「わたし」「あたし」の選択は、時に大きな意味をもつ。しかるに、現代語では、「わたくし」系の自称詞は漢字「私」で表記されることが多い。日常語の実際の発音習慣が「わたくし」か「わたし」か、さらには「あたし」かを問わず、文字化するときには漢字表記「私」ですませてしまうことが多い。その中であえて「あたし」と表記するときの表現者の意図に迫り、アイデンティティ管理の手段として「あたし」が積極的に選択されることもある点を指摘したい。
著者
伊藤 博崇 田中 新亮 山田 稔 吉村 禎二 河野 通盛 三浦 将彦 村脇 義之 谷村 隆志 杉原 誉明 小西 龍也
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.83-88, 2012 (Released:2019-07-22)
参考文献数
14

症例は66 歳の女性で、黄疸、肝機能障害、高血糖を近医で指摘され入院した。膵癌が疑われたが、精査の結果自己免疫性膵炎と診断し、プレドニゾロン35 mg を投与開始した。膵・胆管病変の明らかな改善を認めたが、ステロイド漸減中に呼吸困難・低酸素血症をきたし、間質性肺炎が疑われ再入院した。ステロイドパルス療法に反応せず、人工呼吸器管理としたが、間質性陰影増悪、両側気胸を合併し、第110 病日後に呼吸不全増悪により死亡した。病理学的検討はなされておらず不明な点が多いが、IgG4 関連間質性肺炎を強く疑った。
著者
山田 あすか
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.838-843, 2018-11-01

葉山ハートセンターは,重度の心臓疾患の外科手術による治療を目的として,循環器外科とその後方病床に特化した心臓病の最先端治療センターとして開設された.開設当時は,それまでの病院建築の典型を払拭した敷地選定や建物形状,質の高いインテリアデザインや眺望との一体感など「病院らしくない病院」は話題を集め(図1),心臓手術を受ける患者に配慮した環境が高く評価され,グッドデザイン賞金賞(2000年),日本医療福祉建築賞(2001年)を受賞している1).
著者
山田 清
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.61-75, 1994-03-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
17
被引用文献数
6 10

1990•1991の両年に新潟県中之島町のハス田と同加茂市の小河川でコサギなわばり性と採食行動について調査した.1)ハス田では移動性の低いドジョウが最も重要な餌だった(湿重量比で80.8%).2)河川では移動性の低いアメリカザリガニ•ドジョウ(40.0%),移動性の高い遊泳魚(59.5%)とも多く捕食されていて餌の構成が多様だった.3)採食方法は餌の発見方法(待ち伏せ法と歩行法)と捕獲のテクニック(追跡型と非追跡型)の2段階に分け,その組合せによって分類することができた.4)餌と用いられる採食方法は明確に対応していた.待ち伏せ法は,主に大型の遊泳魚と対応していた.歩行法のうち追跡型の方法には中型の遊泳魚が,非追跡型の方法には移動性の低いザリガニ•ドジョウまたは小型の魚類がそれぞれ対応していた.5)ハス田では,境界が明瞭な採食なわばりが特定の場所で長期に渡って維持されていた.これをハス田タイプのなわばりと呼んだ.6)河川では,待ち伏せ法で採食する個体が自分の周囲のごく狭い範囲から他個体を排除した.河川でのなわばりの範囲は採食個体の移動にともなって移動し,これを河川タイプのなわばりと呼んだ.7)2つの環境で見られた採食なわばりについて餌および採食環境と関連させて考察した.
著者
山田 仁志 Masashi Yamada
雑誌
国際経営・文化研究 = Cross-cultural business and cultural studies (ISSN:13431412)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.73-83, 2016-12-01

After the Second World War, the financing behavior of Japanese companies, has been the primary means of debt financing. Therefore, the equity ratio of Japanese companies, were in much lower levels. However, the Japanese economy is in a low growth period, it began to change is seen in the financing behavior of companies.This paper, based on the data of Financial Statement Statistics of Corporations, to discuss the changes in the financing behavior of Japanese companies. Since the 1970s, equity ratio of Japanese companies continued to rise. In the paper, it was pointed out the features of the Japanese companies. Also, describe the changes in the capital structure of the company, it has also referred to the change of corporate assets.
著者
岸川 禮子 宗 信夫 井上 定三 上村 正行 家守 千鶴子 河田 賢治 栗田 建一 城崎 拓郎 竹田 和夫 野上 兼一郎 三橋 勝彦 宿久 修 山田 篤伸 奥村 康 西間 三馨 石川 哮
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.127-136, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
24

通常の薬物治療を行っているスギ花粉症患者を対象に,カテキンより強力な抗アレルギー性を有すると報告されているメチル化カテキン含有品種べにふうき茶の飲用効果を,やぶきた茶飲用群と花粉飛散時期に比較検討した. 福岡県内 12 施設の耳鼻咽喉科医院を受診したスギ花粉症患者 486 例に,単盲検法に準じてべにふうき茶飲用群(A 群)とやぶきた茶飲用群(B 群)に分けて 2005 年 2 月 1 日から毎日,スギ,ヒノキ科花粉飛散終了まで飲用させた.症状の重症度,薬剤使用量および QOL 障害度をスコア化して 2 群間内で比較した. A 群と B 群との間で眼・鼻症状の日毎推移・QOL 障害度に差はなかった.しかし,スギ花粉飛散時期において合計薬剤スコアが A 群において低く,とくに飛散ピーク時期以降 A 群が B 群より低く推移する傾向が得られた (p < 0.1). 花粉飛散時期に通常量のべにふうき茶を飲用することで,スギ花粉症増悪時に薬剤使用量が対照茶より少なく経過する傾向が得られたことから,補完的治療対策の 1 つの選択肢となる可能性が示唆された.
著者
駒澤 純 山田 茂
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.367-384, 2006-08-01 (Released:2007-05-15)
参考文献数
120

This review explores novel possibilities of skeletal muscle hypertrophy mechanism based on previous studies. Hypertrophy and/or regeneration of skeletal muscles are caused by activation of satellite cells, induced by mechanisms such as growth factors and cytokines. Many unsolved problems, however, yet remain concerning signaling pathways, activated by such substances, and regulation of transcriptional factors and cell cycles.In recent years, possible involvement of not only satellite cells but also tissue-specific stem cells in skeletal muscle hypertrophy has been reported from studies made on stem cell transplantation in muscle regeneration.It has been elucidated that differentiation plasticity of tissue-specific stem cells contributes to hypertrophy and/or regeneration of skeletal muscles. Moreover, satellite cells have come to be regarded as one kind of tissue-specific stem cells, since they have been known to exhibit diversity, by their differentiating into not only skeletal muscle cells but also other tissue cells, as well as self renewal capacity.This review also summarizes findings on signaling pathways based on ligand receptor characterization. Among the various signaling pathways, focus was especially placed on the possibilities of Wnt signaling pathway and Notch signaling pathway on skeletal muscle hypertrophy, indicating that Wnt expression in adult muscle stem cells leads to regulation of skeletal muscle hypertrophy.It has also become evident that Notch signaling pathway is associated with the activation of satellites cells, and that functional decline of such signaling pathway causes a decline in the activation of satellite cells. Such functional decline of Notch signaling pathway has also been revealed as the reason for the decline of regenerative capacity of skeletal muscles due to advancing age. Further discussion on the involvement of Notch signaling pathway in skeletal muscle hypertrophy is made based on these results. As indicated above, the roles of ligands and/or receptors of canonical growth factors, signaling pathways, and transcriptional factors contributing to skeletal muscle hypertrophy were reexamined in this review, after which the contribution of tissue-specific cells to skeletal muscle hypertrophy was discussed based on the results of muscle regeneration studies. Furthermore, focus was centered on Wnt and Notch signaling pathways, both of which are attracting renewed attention, and study was made on the possibility of the involvement of these pathways in skeletal muscle hypertrophy process.
著者
旭 寛治 鵜飼 直哉 浦城 恒雄 野口 健一郎 発田 弘 前島 正裕 山田 昭彦
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.58-65, 2015-12-15

今回は,日本初のハッカーと呼ばれ,パラメトロン計算機PC-1のイニシャルオーダーやHappy Hacking Keyboardの開発などで知られる東京大学名誉教授の和田英一氏にお話を伺った.
著者
宮崎 さやか 山田 静雄 東野 定律 渡邉 順子 水上 勝義
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.301-311, 2019-07-25 (Released:2019-07-31)
参考文献数
27

目的:高齢者の排尿障害にはポリファーマシーが関連すると言われているものの,ポリファーマシーによる排尿障害のリスクに,薬剤数あるいは種類のいずれが影響するのかは明らかではない.また薬剤と排尿障害の関連について,尿失禁のタイプ別に検討した報告はきわめて少ない.本研究では,これらの点を明らかにすることを目的とした.方法:在宅医療受療中の65歳以上で要介護1~5いずれかの認定を受け,処方薬5剤以上,抗がん剤による加療を受けていない者を対象とし,訪問看護ステーションに質問紙調査の回答を依頼した.また,排尿チェック票を用い排尿症状を判別した.結果:167名(女性97名,男性70名,平均年齢83.8歳)を分析対象とした.5~9剤処方が59.3%,10剤以上が40.7%であり,男性の10剤以上で,排尿障害のリスクに有意傾向を認めた.排尿障害と薬剤の種類の関連については,女性の場合,腹圧性尿失禁では,αアドレナリン受容体拮抗薬が,切迫性尿失禁ではベンゾジアゼピン系薬剤が有意なリスクであることが示された.機能性尿失禁では,αアドレナリン受容体拮抗薬が有意なリスク低下を認め,コリンエステラーゼ阻害薬は有意なリスクであることが示された.αアドレナリン受容体拮抗薬とベンゾジアゼピン系薬との併用で,腹圧性および切迫性尿失禁のリスクはそれぞれ単剤投与時より高値を示した.またαアドレナリン受容体拮抗薬とコリンエステラーゼ阻害薬の併用で,腹圧性尿失禁のリスクが著明に高まることが示された.男性ではいずれの排尿障害に対してもリスクとなる薬剤は抽出されなかった.結語:本研究結果より,薬剤による排尿障害には男女差がみられる,排尿障害のタイプによって関連する薬剤が異なる,リスクのある薬剤の併用によりリスクが著明に高まるなどの可能性が示唆された.
著者
山田 雅子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, 2019

<p> 日本人女子学生による肌の色の言語的表現を探った調査では,男性の方が女性よりも色黒,女性の方が男性よりも色白と表現される傾向が捉えられている(山田, 2017).だが,色みについては不明瞭なままであった.</p><p> 調査方法に若干の変更を加え,97名の日本人女子学生を対象として新規に調査した結果,男性の方が女性(回答者自身を含む)よりも色黒で黄み寄り,女性(同)の方が男性よりも色白で赤み寄りといった意識が持たれていることが判明した.また,当該傾向は現実に対する評価よりも理想において顕著となることが捉えられた.</p><p> 更に,肌の色の明るさに関する言語表現の選択パタンには両調査で共通する部分が多分に見られ,日本人女子学生というほぼ同質の対象者ならば一定の反応パタンが安定的に存在することが推察された.同時に,こうした肌の色に対する選択パタンによって,人物の美的評価における肌の要素(色白肌,肌のきめ細かさ)の重視特性が異なる傾向も確認された.</p>
著者
山田 哲司
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-4, 2018 (Released:2018-07-21)
参考文献数
11

大腸がんの90%以上の症例でAPC,CTTNB1,TCF7L2等のWntシグナル伝達経路の遺伝子に変異があり,同経路が恒常的に活性化している.Wntシグナルは細胞増殖,細胞死の抑制に加え,幹細胞機能の維持にも重要であり,このシグナルを遮断することで大腸がんが治療できると考えられてきたが,医薬品として実用化されたものはない.これは,大腸がんの80%以上でAPC遺伝子に機能喪失変異があり,その下流でWntシグナルを遮断する必要があるからである.我々はAPCの下流でWntシグナルの実行因子として働くTCF4(T-cell factor-4)転写複合体と相互作用する分子を徹底的にプロテオーム探索し,TNIK(TRAF2 and NCK-interacting protein kinase)キナーゼを同定した.TNIKはWntシグナルの活性化,大腸がん細胞の増殖に必須であり,その活性を抑える化合物はヒト大腸がんマウス移植腫瘍に対し著明な増殖抑制効果を示し,有望な臨床候補化合物と考えられた.

2 0 0 0 OA 平家物語

著者
山田孝雄 校訂
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
vol.下巻, 1932
著者
宮﨑 義之 倉田 有希江 古賀 裕章 山口 智 立花 宏文 山田 耕路
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.63-69, 2016-02-15 (Released:2016-03-29)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

本研究では,食酢の体調調節機能の解明を目的として,各種果実酢のヒスタミン放出抑制活性について検討した.まず,山ブドウ,ハスカップ,ブルーベリー,ザクロを原料とする4種類の果実酢がラット好塩基球様白血病細胞株RBL-2H3のヒスタミン放出に及ぼす影響を検討したところ,各果実酢がヒスタミン放出抑制活性を有することが明らかとなり,特にザクロ酢で極めて強い活性が認められた.そこで,Diaion HP20を用いてザクロ酢中の生理活性成分のクロマト分離を試みた結果,50% EtOH溶出画分に強いヒスタミン放出抑制活性が認められた.さらに,本50% EtOH溶出画分を液-液抽出によって分画し,ザクロ酢には水溶性の異なる複数のヒスタミン放出抑制成分が存在することを明らかにした.また,各画分のヒスタミン放出抑制活性がPVPPで処理することによってほぼ完全に消失したことから,ポリフェノール化合物が主要な活性成分であることが示唆された.これらの結果から,ザクロ酢にはヒスタミン放出抑制に寄与する複数のポリフェノール成分が存在し,他の食酢と比較して強い抗アレルギー作用を発揮する可能性があることが示唆された.
著者
山田 剛史 YAMADA Tsuyoshi
出版者
名古屋大学高等研究教育センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.155-176, 2018-03

本稿の目的は、第1に、大きく変化する時代・社会的状況の中で、アウトカム基盤型カリキュラムの設計や多様な能力育成手段としてのアクティブラーニングの展開、多面的な学習成果の測定・評価(インスティテューショナル・リサーチ)および改善につなげる内部質保証システムの構築など、急速に進められる大学教育の質的転換の流れを概観することである。第2に、学生の学習(学び)と発達(成長)の双方を促し、大学から社会へのトランジション課題を乗り越えるために必要な視点・概念として、「学生エンゲージメント(StudentEngagement)」に着目し、理論的・実証的知見の整理を行うとともに、国内で実施した全国調査(社会人調査、大学生調査)に基づく検討、それらを通じた大学教育への実践的視座を得ることである。検討の結果、(1)アウトカム(成果)を左右する上でも学生エンゲージメント(プロセス)に着目し、それらを高めることが重要であること、(2)学生エンゲージメントを高めるためには、質保証の仕組みやツールを導入したり、教育方法としてアクティブラーニングを行ったりするだけではなく、教職員によるエンゲージメント(深い関与)が必要であることなどが示された。This paper aims first to outline the trend of rapid qualitative transformation in university education, for instance, design of outcome-based curriculum, promotion of active learning as a means to cultivate diverse abilities, and establishment of an internal quality assurance system that measures and assesses multifaceted learning outcomes (institutional research: IR) and leads to their improvement in drastically changing times and social situations. The second aim is to organize theories and empirical knowledge focusing on “student engagement” as a necessary viewpoint and concept to encourage both students’ learning and development so that they overcome transition problems from university to society. Furthermore, the paper aims to gain a practical perspective on university education through investigation based on national surveys (for university students and working adults, respectively) conducted in Japan. The investigation’s result shows: 1) It is important to focus on and enhance “student engagement (process),” which influences their learning outcomes; and 2) in addition to introduction of a quality assurance system, tools, and implementation of active learning as an educational method, faculty members’ engagement is also required to enhance student engagement.