著者
堀内 妙子 佐藤 久仁子 下村 陽子 片岡 秀樹
出版者
信州大学医学部附属病院看護部
雑誌
信州大学医学部附属病院看護研究集録 (ISSN:13433059)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.138-143, 2011-03

高度救命救急センター(以下センター) にて、固定チーム継続受け持ち制を導入し、患者理解、チーム運営、対応、コミュニケーション技術、スキルアップがどのように変化したかを評価基準を用いて半年後に調査した。その結果、ほとんどの項目で有意差を認め、チーム制を導入し小集団活動を取り入れたことで、継続看護に対する意識を向上させ、質の高い看護を提供するのに効果が見られた。
著者
丸岡 秀一郎 釋 文雄 村上 正人
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.317-321, 2016

気管支喘息 (以下, 喘息) の病態形成には, 遺伝因子と環境因子が深く関与している. 環境因子の一つとして心理社会的ストレス (以下, ストレス) がある. ストレスがどのように呼吸器疾患の発症機序に影響を及ぼしているのか依然不明な点が多い. 近年, エピジェネティクスという学問領域が注目されている. DNAメチル化, ヒストン修飾, ノンコーディングRNA (non-coding RNA : ncRNA) などにより遺伝子の暗号を変化させることなく, 疾患関連遺伝子の発現調整をするシステムであり, 環境因子 (ストレスなど) によりエピゲノムに修飾が起こり, 疾患の表現型決定に影響し, さらに世代を超えて保存される. 本稿では, ストレス誘導性エピゲノム修飾について総括し, 呼吸器心身症の代表である喘息の病態形成について考察する.
著者
中島 淑貴 柏岡 秀紀 キャンベル ニック 鹿野 清宏
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. D-II (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1757-1764, 2004-09-01
参考文献数
11
被引用文献数
37

非可聴つぶやき認識」という,新しいスタイルの実用的な入力インタフェースを提案する.これは音声認識の雑音に対する脆弱性,情報の周囲への漏えい性を克服するため,声帯の振動を伴う通常音声の空気伝搬ではなく,「非可聴つぶやき(Non-Audible Murmur:NAM)」,つまり第三者に聴取不能な声帯の振動を伴わない調音呼気音の体内伝導を,体表からサンプリングし.HMMを用いて認識するものである,これを実現するための基礎として,第一に医療用膜型聴診器の原理を応用した体表接着型マイクロホンを開発した.第二として体内を伝導するNAMを採取して認識するために最適な接着位置を発見した.第三としてNAMの音響学的性質を検討した.第四として,この部位から採取されたサンプルを用い.HMM音響モデルに追加学習してNAM音響モデルを作成した.これらをもとに,日本語ディクテーション基本ソフトウェアを評価に用い,認識エンジンJuliusを使用して大語い連続認識実験を行い.NAM認識の実用可能性を検討した.
著者
織田 揮準 中西 智子 廣岡 秀一
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466542)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.11-20, 2003-03

平成14年度から学校週5日制度がスタートした。学校週5日制の完全実施によって、児童生徒の学校内で過ごす時間が減少し、児童生徒の生活の場が学校から家庭、地域社会へと変化する。しかし、家庭や地域社会の休校日における児童の受け入れ態勢(受け皿)の不備による学力低下、非行の低年齢化がさらに進行するのではないかと危惧する意見がある。本研究によって、学校週5日制度導入のための試行期間であった平成13年度秋に三重県下の公民館が実施した「休校日における小学校および公民館の児童向け開放の実態」に関する調査結果から、子どもの居場所として公民館がどのような機能を果たしたか、公民館開放の阻害要因は何かなどの実態が明らかにされた。本研究成果が、学校週5日制時代における地域密着型公民館のあり方を創造する話し合いや協議のきっかけとなり、その資料として役立てば幸いである。
著者
北浦 明人 岩井 誠人 笹岡 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.315-317, 2007-03-01
被引用文献数
6

本論文では,フェージング変動が緩やかに変化しているような環境での秘密鍵共有方式として,二つのアンテナの受信信号強度の大小比較により2値化を行う方式を提案する.また,提案方式の性能を計算機シミュレーションにより評価を行った.
著者
市岡 秀俊 安東一真 大久保英嗣 津田 孝夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.32, no.11, pp.1401-1411, 1991-11-15
被引用文献数
1

われわれは オブジェクト指向オペレーティングシステムOzoneの開発を進めているOzoneプロジェクトの目標は オブジェクト指向に基づくオペレーティングシステムの構成法を確立することであるこれは 従来のオペレーティングシステムにおいては モジュール分割の基準がなく その構造モデルが明確でないことによるOzoneにおけるオブジェクト指向は次の点に要約されるすなわち システム構成要素の一様なメッセージの受渡しと システムのクラス階層による構造化である一様棟なそして統一されたインタフェースを使用することによって アプリケーションプログラムのみならずシステム自体の移植性や保守性が大幅に向上するまた システム構成要素をクラス化し 継承を利用することによって 再利用可能なソフトウェアが自然に推進されることになるさらに 動的結合により 構成要素内のアルゴリズム(メソッド)の動的な置き換え(あるいは選択)が可能となる現在 Ozoneのプロトタイプシステムが完成している本論文では Ozoneのプロトタイピングで得られた知見について述べるさらにOzoneのプロセス管理について詳述する
著者
堀 信行 飯島 祥二 高岡 貞夫 岡 秀一
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

色彩景観研究に取り組むに当たり、城下町起源の東西の小都市である角館と萩を対象地域に選び、平成8年度には角館、平成9年度には角館と萩の両者について現地調査を実施した。研究は大きく二つの方向で進められた。第一の方向は都市景観の色彩に関する計測的研究で、街路景観を構成する施設色彩の特性の都市間比較および自然・人工景観における輝度や色度の特性の都市間比較を試みた。当初、研究対象地域の植生の色彩がその地域の色彩景観との間に何らかの相互関係が存在するのではないかと考えたが、色彩景観として街路景観やビルの外壁など施設色彩に注目して分析を行った結果、現在のところ角館と萩の両者を比較しても、この作業仮説を積極的に支持する成果は得られていない。第二の方向は色彩民俗学的視点を取り入れた研究で、お祭りや絵図の中に現出する色彩群に社会的・文化的コードの文脈を読み取り、それを自然景観や記憶色との関係から分析した。角館の9月上旬に行われる祭りには、ヤマと呼ばれる山車が各町内から出て町を練り回る。山の象徴である山車は、きわめて濃い濃紺の布で覆われ、それに春の象徴としての桜、秋の象徴としての紅葉したモミジが飾り付けられている。さらに山の象徴に杉の樹も使われ、季節の推移に連動して山と里の間を出入りする神のイメージが植生の色彩を通して表現されている。これらの分析から、色彩景観として住民が互いに共有する記憶色といえる象徴的な色彩が意識され、それぞれが祭りの山車に表現されていることが分かった。
著者
原岡 秀樹 遠峰 菊郎 川端 隆志 宮本 一彦 深渡瀬 角太郎
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.369-379, 1995-06-30
参考文献数
14
被引用文献数
2

三沢飛行場における海霧の予報に資するため,1992年6月22日から7月14日の間,飛行場の東南東約6kmに位置する三沢漁港において,小型係留ゾンデを用いて大気境界層内の観測を行い,海霧の発現前後の温湿度場及び風系の鉛直構造を調べた.海霧発現時には,高度300m以下に気温傾度が2℃/50m程度の逆転層が形成され,その底部は200m付近に位置することが多く,混合層内よりも逆転層下層の方が比湿が大きくなっていることが分かった.また,海霧が発現した場合は逆転層内に比湿の大きな湿潤域が存在していたのに対し,発現しなかった場合は湿潤域が存在しなかった.逆転層下層において比湿が小さいと,ここに湿球温位から見て不安定な層が形成され,逆転層底部での乱渦混合が凝結を妨げるように働くと考えられる.このことから,逆転層内に比湿の大きな湿潤域を持つ,逆転層下層において湿球温位からみて安定な場で海霧が発現し易いことが分かった.
著者
田辺 亮 山崎 隆浩 芦澤 芳夫 岡 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. VLD, VLSI設計技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.322, pp.21-26, 2004-09-21

sub-100nm領域の極微細MOSFETにおいては,従来のDrift-Diffusion輸送モデルで完全に記述するのは難しく,モンテカルロ法による解析が注目されている.最近ではFinFET,TriGate FETなどNon-Planarデバイスが非常に注目されており,これらは従来の2次元シミュレーションでの解析は難しい.そこで,我々は富士通製モンテカルロ・シミュレータFALCONを3次元に拡張し,マルチゲートデバイスの検討を行った.第一原理擬ポテンシャルバンド計算プログラムと結合することにより,歪みSiの計算を行い,さらに,Bohmポテンシャルを用いる量子補正により量子効果の計算も同時に可能にした.
著者
波多野 浩士 佐藤 元孝 辻本 裕一 高田 剛 本多 正人 松宮 清美 水谷 哲 藤岡 秀樹
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.641-644, 2006-08

79歳男.前立腺肥大症と診断され,内服治療を行ったが,排尿悪化に伴い経尿道的前立腺切除術(TURP)を椎麻酔下で施行した.術後の著明な出血により術後7日目に尿道カテーテルを抜去したが39~40℃の発熱が持続し,E.cloacae,MRSAの検出をみた.9日目より腰痛を自覚しMRIでL4~5椎間腔の狭小化を認め,腰痛症又は腰椎ヘルニアを疑うが脊椎炎の所見は認めなかった.imipenem(IPM),teicoplanin(TEIC)を2週間CRPは陰性化しなかったが解熱,WBC低下と血液・尿培養の陰性化を受け,galifloxacin(GFLX)に変更したが再び発熱とWBC,CRPが上昇し,腰痛悪化で歩行困難となった.Gaシンチ施行により術後39日目に化膿性背椎炎と診断し,E.cloacaeが検出された.3週間治療内服後CRPの陰性化,腰痛は軽減し歩行可能となり術後6ヵ月目に退院したWe report a case of pyogenic spondylitis caused by Enterobacter cloacae as a rare complication of transurethral resection of the prostate (TURP). A 79-year-old man underwent TURP. Immediate after removal of urethral catheter on postoperative day (POD) 7, he developed high fever > 40 degrees C with increased acute inflammatory reaction. Urine and blood culture detected E. cloacae and methicillin-resistant Staplylococcus aureus. He complained of lumbago since POD 9. Two-week administration of imipenem and teicoplanin resulted in resolution of fever as well as laboratory data, so intravenous antibiotics were changed to oral gatifloxacin. However, his lumbago worsened and gait disturbance appeared. On POD 39, diagnosis of pyogenic spondylitis was finally obtained by Ga-scintigraphy and magnetic resonance imaging. Aspiration of the intervertebral disk (L4-5) revealed E. cloacae as the causative organism of pyogenic spondylitis. His condition improved after conservative treatment with teicoplanin, meropenem and ciplofloxacin for 9 weeks.
著者
神尾 享秀 三瓶 政一 笹岡 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.11-18, 1994-01-25
被引用文献数
7

陸上移動通信において,高速伝送を行う場合には,マルチパスフェージングによる周波数選択性フェージングのため,伝送特性が著しく劣化する.このような場合の対策として判定帰還型等化器(DFE; Decision Feedback Equalizer)が研究されている.既に,QPSK / TDMAシステムにおいて,プリアンブルおよびポストアンブルのタップ係数を内挿する簡略化DFEを提案している.本論文では,周波数利用率の大きい16QAM / TDMAシステムへの適用について検討を行った.この場合,信号間距離の減少,判定誤りによる誤り伝搬により誤り率特性が劣化する.このため,逆方向等化での遅延波のタイミング検出機能を付加した両方向等化および逆数補間を用いて,タップ数を減少し,遅延波の存在しない場合および,遅延波の影響による軽減困難誤り特性を向上させたシステムを提案する.提案方式について,計算機シミュレーションにより検討を行った.また,演算量の従来方式との比較も行った.その結果,提案方式は,従来方式の1 / 10の演算量で,良好な等化特性を得られることがわかった.
著者
礒田 健太郎 辻 成佳 原田 芳徳 吉田 祐志 吉村 麻衣子 松岡 秀俊 沖田 康孝 村上 輝明 橋本 淳 大島 至郎 佐伯 行彦
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.121-131, 2021 (Released:2021-07-16)
参考文献数
26
被引用文献数
1

目的:関節リウマチ(RA)患者において,栄養状態が感染症の発生に与える影響を調査した.対象・方法:入院を要する重症感染症を合併したRA患者(入院患者群)と,感染症入院のない患者(非入院患者群)との患者背景,臨床所見,治療内容,栄養状態を比較した.栄養状態の指標には予後栄養指標prognostic nutritional index(PNI)とcontrolling nutritional status(CONUT)を用いた.結果:PNIとCONUTによる栄養状態は,入院患者群では非入院患者群より有意に不良であり(共にP < 0.001),特にPNI低値は重症感染症発生の予測因子であった(オッズ比:1.749, 95%信頼区間:1.110-2.755, P < 0.001).結論:RAにおいて感染症は重大な合併症である.感染症を合併しないように安全に治療を行うためには栄養状態の評価と管理が不可欠である.
著者
藤岡 秀英 野口 理子 山岡 順太郎 鈴木 純 堀江 進也 佐藤 純恵 内種 岳詞 木下 祐輔 山岡 淳 足立 泰美 勇上 和史 張 帆
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、勤労者の心身の健康の維持・増進に資する効果的な施策のあり方を検討するため、健康保険事業者と連携し、事業者、従業者への2回目のアンケート調査を実施して「統合パネルデータ」を構築する。これにより、A.特定健診や特定保健指導等の疾病予防施策の有効性、B.職場環境や企業の健康管理施策が勤労者の心身の健康に及ぼす効果、ならびに、C.勤労者の心身の健康の維持・増進が企業業績に及ぼす影響を実証的に検証する。新しく考案した「加点式健診事業」の実施と評価を行い、地域全体の健康づくりへのモチベーションを高めることで、住民の健康診断受診率の向上、就労、所得、地域生活への効果を調査検証する。
著者
五十嵐達也 塩浦 宏祐 谷 友太 小田原大昂 井上 和樹 星野 涼 松岡 秀典 三友 恵一
出版者
一般社団法人 日本地域理学療法学会
雑誌
地域理学療法学 (ISSN:27580318)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.52-58, 2023 (Released:2023-03-31)
参考文献数
31

【目的】要支援・要介護高齢者を対象に,生活空間での移動性の広狭を判別する修正版5回椅子立ち座りテスト(modified SS-5)と片脚立位時間(OLS)のカットオフ値を明らかにすることを目的とした.【方法】要支援・要介護高齢者66名(年齢80.9±7.6歳,女性39名)をLife Space Assessmentの点数から2群に分類した.modified SS-5とOLSのカットオフ値と判別精度を,ROC曲線によるYouden IndexとAUCで算出した.【結果】AUCとカットオフ値は,modified SS-5が0.905(感度0.889,特異度0.754)と12.82秒,OLSが0.860(感度0.778,特異度0.842)と7.25秒であった.【結論】要支援・要介護高齢者の生活空間での移動性の広狭の判別には,下肢筋力とバランス能力が重要な指標であることが示唆された.本研究の結果は,社会参加の向上を目指した理学療法における目標設定や介入計画の意思決定に寄与する知見である.
著者
花岡 秀明
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.551, 2023-10-15 (Released:2023-10-15)

約十数年間,病院や通所リハビリテーションの職場で臨床を経験した私には,ある出会いによって転機が訪れた.それを好機と捉え,通信制大学から大学院へ進学した.そして現在,大学で教鞭をとっている.大学院時代から興味を持ってこれまで継続して回想法の研究をしているために回想するわけではないが,学術活動との初めての接点は,養成校を卒業して間もなく日本作業療法学会が松山で開催された時期であったと言える.その時のテーマは確か「再び作業療法の核を問う」であったと思う.当時の自分は,臨床1年目の新人として県士会で事例報告をしたのみで,調査や研究活動を本格的に行った経験がなかった.そのため,学会とは作業療法に関する新しい知見を学ぶ集いの場としか思っていなかった.本来,学会とは専門職がその学術活動の成果を発表し,専門職としての成果を内外に発信し,お互いに知的好奇心を刺激しあい,より高めあう場であるのだが,こうした学会の意義や学術活動の重要性に全く気づくことができていなかった.それからしばらくは,これまでと同様に研修会に参加することはあったものの,主体的に学術活動に取り組むことはなく,臨床に役立つ情報とは,先人の著した著書から得るものだという固定観念から抜け出せていなかった.
著者
新野 浩隆 横山 明正 神谷 晃央 盧 隆徳 内田 成男 島岡 秀奉 牛場 潤一 正門 由久 木村 彰男
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0296, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】 近年、座位や背臥位での駆動が可能な、アシスト機能付き多機能エルゴメーター(ストレングスエルゴ、三菱電機エンジニアリング社製、以下S-Ergo)が臨床応用され、脳卒中片麻痺患者に対する痙縮軽減や機能改善の運動療法にも応用され、歩行訓練への有効な手段となる可能性がある。我々も健常者におけるS-Ergo駆動時の筋活動について過去の関連学会で報告した。しかし、脳卒中片麻痺患者のエルゴメーター運動時の筋活動や歩行能力変化について検討した報告は数少ない。そこで今回、我々は脳卒中片麻痺患者においてエルゴメーター駆動後の歩行能力の変化について検討を行なったので報告する。【対象】 対象は、当研究に同意が得られた脳卒中片麻痺患者10名(男性7名、女性3名)。平均年齢59.4±15.5歳、発症からの期間は平均1080±1811日であった。内訳としては、脳出血5名、脳梗塞5名、右片麻痺4名、左片麻痺6名、下肢Brunnstrom recovery stage(以下、下肢Brs-st)はIIが1名、IIIが3名、IVが3名、Vが3名であった。歩行能力は全例、近位監視~修正自立レベルであった。【方法】 エルゴメーター駆動前後の10m歩行時の所要時間と歩数をそれぞれ2回ずつ計測。エルゴメーター駆動前2回の歩行時の所要時間と歩数をそれぞれ平均し100%とし、駆動後の値から変化率を算出し、下肢Brs-st毎の平均をとった。S-Ergo駆動は、ペダルを時計方向(以下、正回転)と反時計方向(以下、逆回転)に回転させた2種類の駆動を行なった。駆動肢位は座位で最大膝伸展角度を30°とし、運動負荷はアイソトニックモードで3Nmとした。駆動速度は60rpmとし、ピッチ音によりタイミングを制御した駆動を10分間行なった。なお、各施行は1日以上の間隔をあけた。【結果】 所要時間では、正回転においてBrs-stIIが115%、Brs-stIIIが102%、Brs-stIVが110%、Brs-stVが88%、逆回転ではBrs-stIIが87%、Brs-stIIIが99%、Brs-stIVが95%、Brs-stVが93%であった。また、歩数では、正回転においてBrs-stIIが107%、Brs-stIIIが99%、Brs-stIVが105%、Brs-stVが92%、逆回転ではBrs-stIIが88%、Brs-stIIIが95%、Brs-stIVが95%、Brs-stVが95%であった。【考察】 今回の結果より、全てのステージにおいて逆回転で所要時間・歩数が減少する傾向が見られた。歩数の減少つまり歩幅の増大により、下肢のクリアランスが改善されたことがうかがえ、それに伴い所要時間が減少したとものと考えられた。今後は、各ステージの症例数を増やし、S-Ergo前後での歩行パターンの違いによる検討や、歩行中の筋活動の検討等を行なっていきたい。