- 著者
-
花岡 秀明
- 出版者
- 一般社団法人 日本作業療法士協会
- 雑誌
- 作業療法 (ISSN:02894920)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.5, pp.551, 2023-10-15 (Released:2023-10-15)
約十数年間,病院や通所リハビリテーションの職場で臨床を経験した私には,ある出会いによって転機が訪れた.それを好機と捉え,通信制大学から大学院へ進学した.そして現在,大学で教鞭をとっている.大学院時代から興味を持ってこれまで継続して回想法の研究をしているために回想するわけではないが,学術活動との初めての接点は,養成校を卒業して間もなく日本作業療法学会が松山で開催された時期であったと言える.その時のテーマは確か「再び作業療法の核を問う」であったと思う.当時の自分は,臨床1年目の新人として県士会で事例報告をしたのみで,調査や研究活動を本格的に行った経験がなかった.そのため,学会とは作業療法に関する新しい知見を学ぶ集いの場としか思っていなかった.本来,学会とは専門職がその学術活動の成果を発表し,専門職としての成果を内外に発信し,お互いに知的好奇心を刺激しあい,より高めあう場であるのだが,こうした学会の意義や学術活動の重要性に全く気づくことができていなかった.それからしばらくは,これまでと同様に研修会に参加することはあったものの,主体的に学術活動に取り組むことはなく,臨床に役立つ情報とは,先人の著した著書から得るものだという固定観念から抜け出せていなかった.