著者
浅野 貞美 山口 智晴 森本 耕吉 諸遊 直子 藤岡 佳伸 谷島 薫 川上 愛 後藤 健
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.225-231, 2023 (Released:2023-06-28)
参考文献数
31

血液透析患者が透析療法を継続するためには,注意・遂行機能を維持することが必要である.血液透析患者は認知機能障害の罹患率が高いが,認知機能の一部である注意・遂行機能の実態や地域在住高齢者との差異,認知機能と関連が認められている握力や下肢機能,骨格筋量との関連性については十分に検証されていない.そこで本研究は,血液透析患者32名と地域在住高齢者31名を対象に,trail making test part B(TMT-B)を用いて,注意・遂行機能の実態を比較検討した.また血液透析患者における筋力や骨格筋量と注意・遂行機能との関連性を検証した.その結果,血液透析患者のTMT-Bの所要時間は,地域住民と比較して有意に長く,血液透析患者は注意・遂行機能の低下リスクが高いことが示唆された.またTMT-Bと握力,SMIに有意な負の相関が認められた.今後は縦断研究により,注意・遂行機能と握力,骨格筋量との関連性やTMT-Bが臨床的に有用な指標となるのかを検討することが必要である.
著者
フェルドマン オフェル 川上 和久
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
新聞学評論 (ISSN:04886550)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.197-206,311, 1988-04-30 (Released:2017-10-06)

This study was designed to explore and analyze some features related to the evaluations and the perceptions Japanese university students held toward the political coverage of the press. In paticular, while replicating and extending earlier studies conducted in the U.S., the aims of the present paper are threefold : to examine the multifaceted evaluations of the newspapers' political stories while referring to specific dimensions in categories of competence/trust, community involvement/personalism, and bias/sensationalism; to follow systematically the way Japanese youth construct their image of the press' functifon; and to determine whether newspapers' image has any effect on selected demographic and media use variables. The findings reveal that the press is highly trusted in its political reportage, perceived as fulfilling and realizing its social role, and as presenting unbiased coverage as well as reflecting correctly the public opinion. More-over, frequency of general exposure to newspapers and television, reading or watching the political content of the news media, political interest, stances and knowledge of political events are all found to be associated with different degrees of perception of the printed media. From the comparative viewpoint, the study points out a diversity and variation of newspapers' images held in the U.S. and Japan and suggests further comparison surveys.
著者
川上 郁雄
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.77-90, 2019-09-30 (Released:2019-09-30)
参考文献数
35
被引用文献数
1

日本政府は2018年12月「経済財政運営と改革の基本方針」に基づき,2019年度より新たな在留資格を創設し外国人労働者を積極的に受け入れることを決定した.留学生を含む外国人労働者の在留資格の認定に,日本語能力の判定が大きく関わると思われるが,日本で働くためにどのような日本語能力が必要と判断されるのか,またその判断を支える考え方はどのようなものかはまだ十分に議論されていない.本稿は,移民受け入れ国で2000年以降導入された「市民権テスト」の実態とそれにともなう議論を検討し,それを踏まえた上で,国の政策と外国人労働者に対する日本語教育がどのような関係にあるのかを明らかにし,どのような日本語教育実践が必要かを提案する.
著者
小俣 翔子 川上 陽子 下鳥 春奈 北林 紘 山崎 貴子 岩森 大 伊藤 直子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.55, 2015 (Released:2015-08-24)

【目的】加工食品には食品添加物として、無機リン化合物が使用されていることが多く、これらは有機リン化合物に比べ、消化吸収率がよいことが知られている。患者にとって、リンの過剰摂取は高リン血症を惹起するため、食品添加物の含有に留意する必要があるが、原材料表示からはリン含有の有無はわかりにくい。我々は、食パンの総リン量、水溶性リン(無機リンの含有が高い)及び不溶性リン(有機リンの含有が高い)量を調べた。【方法】 市販食パン及び透析患者用のタンパク質調整食パンを破砕後、水で懸濁し、遠心分離して水溶性画分と不溶性画分に分離した。これらの画分と無処理の食パンをそれぞれ灰化し、バナドモリブデン酸吸光光度法にてリン量を測定した。その後リンを用いている可能性の高い食品添加物(イーストフード・乳化剤)の有無でリン量を比較した。【結果】タンパク質調整食パンの総リン量と水溶性リン量は、市販食パンの平均に比べるとそれぞれ約54%、31%であった。市販食パンにおいて食品添加物の有無で総リン量を比較すると、有意差はみられなかったが、可溶性リン量は食品添加物含有食パンのほうが有意に多かった。また、可溶性リン、不溶性リンの推定吸収率をそれぞれ90%、50%として試算すると、食品添加物が添加されている食パンのほうが有意に多かった。【考察】市販食パンにおいてリン量には有意差はなかったものの、食品添加物としてイーストフード、乳化剤を含有している食パンでは推定吸収率が高いことが示唆され、腎臓病患者はこれらの含有には注意する必要があると考えられる。しかしパッケージには、いずれもリンの記載はなく、リン含有のわかる記載が望まれる。
著者
川上 清文
出版者
日本子育て学会
雑誌
子育て研究 (ISSN:21890870)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.3-8, 2016 (Released:2019-01-25)
参考文献数
10

マイケル・ルイス(Michael Lewis)は、発達心理学のリーダーのひとりである。本論では彼の論文や著書に基づき、彼の自己発達理論を要約する。彼の理論は、発達研究者・保育者・親にとって重要な視点をもたらすに相違ない。彼は自己発達において2つの標石を想定している。生後1年半頃と2、3歳である。生後1年半頃、子どもたちは “意識(自己参照行動)” を獲得する。この “意識” の指摘こそが彼の理論の中核であり、彼の理論の独創性を示す。生後2、3歳で子どもたちは “自己意識的評価情動” を持つ。ルイスによるとヒトと大型類人猿だけが “意識” を持ち、ヒトだけが “自己意識的評価情動” を持つ。ルイスの理論はデータに基づいている。ゆえに彼の理論は、より多くのデータの裏付けにより洗練されていくであろう。
著者
小畑 仁司 荻田 誠司 川上 真樹子 二村 元 杉江 亮
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.445-450, 2017 (Released:2017-12-22)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

Fever in subarachnoid hemorrhage (SAH) is associated with vasospasm and poor outcome. To mitigate early brain damage in SAH, we have been treating World Federation of Neurological Surgeons (WFNS) Grade 5 patients with rapid induction of therapeutic hypothermia (TH) initiated immediately following onset of SAH and continued for approximately 7 days. Management after rewarming has been problematic. Rebound fever, especially during the period of post-SAH vasospasm, may increase the risk of cerebral infarction. We prospectively studied the feasibility and safety of endovascular cooling for maintaining prophylactic normothermia following initial TH in patients with severe SAH.TH (core body temperature 34.0°C) using surface cooling was initiated immediately after a diagnosis of WFNS Grade 5 SAH was made. All ruptured aneurysms were surgically clipped as soon as possible within 6 hours after arrival. At approximately postoperative day 7, after rewarming to 36°C, an endo- vascular catheter with 2 cooling balloons (Cool Line® Catheter, Asahi Kasei ZOLL Medical Corp., Tokyo, Japan) was inserted into the left internal jugular vein and connected to the Thermogard XP® Temperature Management System (Asahi Kasei ZOLL Medical Corp.) for the following 7 days. Temperature recordings in 11 SAH patients immediately before the period of endovascular cooling served as the control.Eleven patients (6 women; mean age of 63.8 ± 6.4 years [range, 50-73 years]) were enrolled in the study. Endovascular cooling was initiated at 7.9 ± 1.4 days (range, 6-11 days) after admission and continued for 6.7 ± 0.9 days (range 4-7 days). Unfavorable outcomes were associated with minimal shivering and good temperature control, whereas favorable outcomes were associated with vigorous shivering and increased temperature. Nine patients manifested shivering with increased temperature and were treated with acetaminophen, dexmedetomidine, and/or propofol. During the study period, two patients developed fevers above 38°C, and 8 of 11 patients without endovascular cooling developed fevers (p=0.03, two-tailed Fisher's exact test). There was no evidence of cerebral infarction related to vasospasm during endovascular cooling, and no catheter-related sepsis or thromboembolic events. In one patient, fasudil hydrochloride was administered intra-arterially for angiographic vasospasm, resulting in no cerebral infarction. In another patient, intensive treatment was withdrawn because of massive brain swelling; however, slight but extensive early ischemic change was retrospectively confirmed on computed tomography prior to endovascular cooling. Vasospasm-related cerebral infarction occurred in one patient 2 days after removal of the cooling catheter. In one patient, fatal bacterial meningitis related to spinal drainage occurred on Day 29. Three-month outcomes showed good recovery in 2, moderate disability in 4, severe disability in 2, vegetative state in 1, and death in 2. Amelioration of fever burden during the first 14 days after onset of SAH was safe and feasible with combined surface and endovascular cooling in patients with WFNS Grade 5 SAH.
著者
門間 陽樹 川上 諒子 山田 綾 澤田 亨
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.129-142, 2021-09-30 (Released:2022-07-12)
参考文献数
88

身体活動が健康の維持向上に寄与することは広く受け入れられており,国内外のガイドラインで身体活動の促進が推奨されている。一方,近年では,海外のガイドラインにおいて有酸素性の身体活動だけではなく筋力トレーニングの実施についても言及されるようになってきており,週2回以上実施することが推奨されている。このように,筋力トレーニングに関する研究は,スポーツ科学やトレーニング分野だけではなく公衆衛生分野にも広がり,健康アウトカムに対する筋力トレーニングの影響をテーマとした研究を中心に筋力トレーニングに関する疫学研究が報告されるようになってきている。そこで本レビューでは,新たな運動疫学研究の分野である筋力トレーニングに関する疫学研究について概説する。最初に,筋力トレーニングに関する用語の定義と整理を行う。次に,筋力トレーニングに関する歴史を紹介する。その後,死亡や疾病の罹患をアウトカムとした筋力トレーニングの研究を中心に解説し,最後に,筋力トレーニングの実施割合および関連要因について述べる。本レビューで紹介する研究の多くは海外からの報告である。日本で実施されている筋力トレーニングに関する疫学研究は,主に実施者の割合に関するものであり,特に,健康リスクとの関連に関する疫学研究は非常に限られている。今後,日本人を対象とした研究が数多く報告されることが期待される。
著者
東野 正明 林 伊吹 高橋 俊樹 須原 均 二村 吉継 櫟原 新平 青野 幸余 松尾 彩 川上 理郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Suppl.2, pp.S181-S188, 2010 (Released:2011-12-01)
参考文献数
8

心臓血管外科手術患者において、術後の嚥下障害を術前や術直後に予測できるかどうかを検討した。症例は、心臓血管手術後経口摂取に問題があり、本院栄養サポートチーム (NST) に栄養管理の依頼があった 20 例 (男性 14 例、女性 6 例) で、手術から最終食事内容に至るまでの期間が 1 カ月未満であった 8 例 (A 群) と、1 カ月以上かかり術後の嚥下障害が大きな問題となった 12 例 (B 群) に分けて、両群間で比較検討した。その結果、心臓血管手術後嚥下障害を起こす要因として、年齢 (70 歳以上)、Body mass index (BMI)≧25 の肥満もしくは BMI < 18.5 の低体重、高度心機能低下 (EF ≦ 40%) の有無、脳梗塞の既往の有無、呼吸器疾患の既往の有無、緊急手術か否か、大動脈手術か否か、長時間手術 (10時間以上) か否か、の 8 項目のうち 4 項目以上に該当すると嚥下障害を引き起こす可能性が高いと考えられた。その中でも緊急手術、肥満、大動脈手術が影響していると考えられた。この 8 項目をスコア化したものと手術から最終食事形態に至るまでの日数との間に相関が認められた。また、心臓血管外科手術後患者の嚥下障害に対する NST 介入の効果も示された。術前スコアから術後の嚥下障害のリスクがあると予測される患者家族に対しては、十分な術前説明をするとともに、適切かつ迅速な対策を講じる必要があると考えられた。
著者
山極 哲也 酒井 和加子 吉岡 亮 上野 博司 山代 亜紀子 川上 明 荻野 行正 土屋 宣之 大谷 哲之 大里 真之輔 信谷 健太郎 竹浦 嘉子 上林 孝豊 清水 正樹 大西 佳子 上田 和茂
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.123-128, 2023 (Released:2023-04-24)
参考文献数
11

地域全体の緩和ケアの質の向上を図るためには,各施設が緊密につながることが必要であると考え,2017年9月に「京都ホスピス・緩和ケア病棟(PCU)連絡会」を発足させた.個々のPCU施設が抱える問題を気軽に話し合い,共に悩み考え,成長,発展させる場,新規立ち上げ施設を支援する場とした.連絡会では,その時々の話題(緊急入院,輸血,喫煙,遺族会など)をテーマに議論を行った.2020年,COVID-19流行のため連絡会は休会となったが,メール連絡網を用い,感染対策,PCU運営などの意見を交わし,WEB会議システムを用い連絡会を再開させた.日頃より顔の見える関係があることで,COVID-19流行という有事においてもPCU間の連携を維持し,がん治療病院との連携にも発展させることができた.京都府のPCUが一つのチームとなることで,患者,家族がどのような場所においても安心して生活できることを目指している.
著者
小武 和正 田平 明啓 川上 恭弘
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
pp.22-00201, (Released:2023-03-07)
参考文献数
22

The proteolytic enzyme inhibitor nafamostat mesylate is widely used for the treatment of acute pancreatitis and disseminated intravascular coagulation. This drug may be a risk factor for phlebitis, but this risk has not been studied. Therefore, we aimed to investigate the frequency of phlebitis and its risk factors in patients treated with nafamostat mesylate in intensive care units (ICU) or high care units (HCU). During the study period, 83 patients met the inclusion criteria, and 22 of them (27%) experienced phlebitis. A multivariate logistic regression analysis was performed for severe acute pancreatitis, administration duration, and administration concentration of nafamostat mesylate in the ICU or HCU. As a result, the administration of nafamostat mesylate for ≥ 3 days in the ICU or HCU was an independent predictor of phlebitis caused by nafamostat mesylate (odds ratio, 10.3; 95% confidence interval, 1.28–82.5; p=0.03). This study suggests that the number of days of nafamostat mesylate administration is associated with phlebitis in patients treated with the drug, and it may be necessary to pay attention to its administration for ≥ 3 days in the ICU or HCU.
著者
川上 春菜
出版者
東京海洋大学
巻号頁・発行日
2009

東京海洋大学修士学位論文 平成21年度(2009) 食機能保全科学 第928号
著者
井藤 賀操 加藤 由佳梨 川上 智 榊原 均
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.710-713, 2011-08-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
28

ヒョウタンゴケの原糸体細胞の成長パターンを調査し,潤沢な培養条件では指数増殖期が認められたことから,本種が裸地環境へいち早く適応し繁茂できる生存戦略をもつ種類である可能性について意見を述べた.本種の乾燥粉末を利用した金属回収方法は,一般にカーボンニュートラルなプロセスとして分類される.私たちはさまざまな環境制御要因条件で原糸体細胞を生産し,鉛吸着材としての品質評価を実施した.400L規模に大型化した装置で生産した原糸体細胞においても,鉛吸着材としての十分な性能があることが確かめられた.したがって,私たちは,原糸体細胞を鉛回収するための新素材として位置づけ,産業利用できることを提案した.
著者
川上 富吉
雑誌
大妻女子大学文学部紀要
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-12, 1973-03
著者
大田尾 浩 村田 伸 八谷 瑞紀 弓岡 光徳 小野 武也 梅井 凡子 大塚 彰 溝上 昭宏 川上 照彦
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.123-129, 2012 (Released:2013-04-02)
参考文献数
41
被引用文献数
2 2

[目的]脳卒中片麻痺患者の座位での骨盤傾斜角度と基本動作能力との関連について検討した。[対象]脳卒中片麻痺患者28名(男性17名,女性11名)とした。[方法]測定項目は,端座位での自動運動による骨盤前傾角度,骨盤後傾角度,骨盤運動可動域,基本動作能力(立ち上がり,着座,立位保持,片脚立位,歩行),Brunnstrom stage および下肢筋力とし,基本動作の可否に関連する因子を分析した。[結果]片脚立位以外の基本動作能力と骨盤前傾角度に有意な関連を認めた。一方で,各測定項目と骨盤後傾角度および骨盤運動可動域とは有意な関係は認められなかった。[結語]脳卒中片麻痺患者の自動運動による骨盤前傾能力は,基本動作能力に関連している可能性が示された。
著者
西城 卓也 堀田 亮 藤江 里衣子 下井 俊典 清水 郁夫 川上 ちひろ
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.23-28, 2022-02-25 (Released:2022-06-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

困難な状況にある学習者の支援は難しい. 効果的に支援することは病院・大学等の医育機関の責務の1つである. 従来は, とかく学習者に焦点が当たるバイアスがあり精神論で説得されがちであった. しかし教育現場で困難な状況にある学習者が生まれる要因には, 実は学習者の他, 教育者, 環境も挙げられる. さらに各要素を分析する際にも, 教育学・心理学・文化等からのアプローチがある. 今後は, まず, 支援者一人で複数の視点を持つことを提案したい. しかし支援者にはおかれた文脈があり, 多面的に見ることには限界がある. したがって複数の立場の, 複数の支援者が, 複数の視点をもちより, 大局的視座が担保された支援体制が医育機関には期待される.
著者
田内 亮吏 川上 紀明 小原 徹哉 齊藤 敏樹 馬場 聡史 森下 和明 山内 一平
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.11, pp.1285-1290, 2020-11-20 (Released:2020-11-20)
参考文献数
9

側弯症矯正手術後におけるインプラント抜去に関する報告は散見されるが,主にフックを使用した症例の報告であり,近年のペディクルスクリューを主体とした矯正術後のインプラント抜去に関するまとまった報告はない.今回,特発性側弯症に対するインプラント抜去の手術成績およびアライメント変化の評価を行った.2005年から2018年までに抜釘術を施行した126例について手術成績を評価,術後2年以上経過しえた53例について冠状面および矢状面アライメントを評価した.合併症発生率は約11.9%で,1例に術中骨折,3例に術後骨折が発生した.抜釘術後の主カーブCobb角の矯正損失平均2.8度で,胸椎後弯角の増加は平均6.6度であった.頚椎前弯,T1 slope角,SVAも有意に変化していた.10度以上の主カーブCobb角の増加症例が3.8%に対し,胸椎後弯の増加は18.9%と,抜釘術は矢状面アライメントにより影響していたことが示唆された.こうした結果を踏まえ,本人および家族に抜釘術の問題点などを十分に説明した後に抜釘術を考慮する必要がある.
著者
高橋 昌二 小原 利紀 吉川 美穂 川上 正人 中島 一彦
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E1131, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】座位姿勢の保持と変換は、健常者や軽度要介護者では少ない労力で済むためあまり意識せずに行える。重度要介護者では運動および感覚機能障害により、骨盤後傾し脊柱後彎した仙骨座りとなる場合が多い。仙骨座りを呈する症例では、身体を動かすあるいは姿勢のバランスを保持するための身体部位の位置決めや力の入れ方がわからなくなることが多く、座位で行う諸活動を拙劣にする要因になる。今回、支持基底面、支持基底面を通る重心線、筋活動など力学原理からなる身体力学(以下、ボディメカニクス)を応用した車椅子座位姿勢の保持と変換の動作練習を実施し、効果を検討したので報告する。【方法】障害高齢者の日常生活自立度B2で、座位姿勢の保持と変換が全介助または一部介助、通常は可でも健康状態低下時に要介助となる患者36名を対象とした。日常生活で使用する車椅子に座り、身体各部を意図的に動かし全身の協調による少ない筋力でも安定・安楽となる肢位が認識できるよう動作練習を実施した。保持は、先ず後傾した骨盤を垂直にするため体幹前面筋群および股関節屈筋群の協調的な収縮で股関節屈曲90度を保持しながら足底を床につける。次に後彎した脊柱を体幹全体で垂直方向に引き上げた最大伸展位から少し屈曲し、安定・安楽な肢位を認識する。変換である座り直しは、先ず安定を図るために上下肢による支持基底面の横幅を広くとる。次に座位バランスの保持を最小限の筋力で行うために、身体重心線が支持基底面内に収まるよう上体前傾を基本に、肩、肘掛けに置く手、床に接する足が側方から見て垂直に近づく位置とする。最後に力の方向として、上体前傾しつつ、手で肘掛けを真下に押すことにより上肢で殿部を挙上し座面との摩擦を軽減、足で挙上している殿部を前後左右に動かす。体幹と上下肢の位置を少しずつ変えて安定・安楽に座り直せる肢位を認識する。【結果】改善25名。不変11名。筋力が全身的に重度低下、活力と欲動が過度に低下した症例では改善が認められなかった。【考察】仙骨座りが改善し、座位姿勢の保持と変換が連動できるようになると、視野が広がる、テーブルや洗面所に体幹と上肢が接近する、上肢を挙上しやすくなる効果があるので、食事や整容を上手で綺麗に行うというニーズに応えることができる。なお、仙骨座りを呈する症例は健康状態が低下しやく、低下した場合は動作練習をその都度実施し改善を図る必要がある。【まとめ】重度要介護者でも心身機能が悪化していなければ、ボディメカニクスを応用した動作練習で仙骨座りを改善し、車椅子座位の活動向上に有効と考えられた。