著者
小澤 弘幸 渡邊 愛記 石井 杏樹 川上 祥 小林 健太郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.663-669, 2023-10-15 (Released:2023-10-15)
参考文献数
12

視空間認知障害を呈した左片麻痺症例に対し,単一事例実験研究による応用行動分析学に基づいた上衣の着衣練習の有効性を検証した.着衣動作を6つの工程に分割し,それぞれに対して介助量によって点数付けをし,その得点と着衣動作の遂行時間を計測した.ベースライン期では試行錯誤による着衣練習,介入期では時間遅延法と視覚的プロンプト・フェイディング法による着衣練習を行った.その結果,介入期ではベースライン期に比べて着衣の遂行時間と得点が有意に改善し,その後も着衣動作が継続的に可能となった.これらより,応用行動分析学に基づいた着衣練習は,視空間認知障害を呈した片麻痺患者に対する有効な訓練方法であると示唆された.
著者
斉藤 理恵子 川上 茂久 浅川 満彦
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.115-118, 2004 (Released:2018-05-04)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

南アフリカから搬入された5頭のケープハイラックスProcavia capensisから検出された内部寄生虫を検討したところ,Inermicapsifer hyracis, I.cf. beveridgei, Grassenema procaviaeおよびEimeria dendrohyracisが検出された。I.hyracis以外は日本の飼育下ハイラックス類では初めての記録であった。
著者
高崎 康志 川上 祥一 久保 雛乃 金児 紘征
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.139, no.9, pp.39-46, 2023-09-30 (Released:2023-09-30)
参考文献数
17

The anodic dissolution reaction of copper in copper electro-refining was studied by considering the reaction of galvanic couples with different metals as impurities. In this study, zinc was chosen as a typical anodic impurity and silver as a cathodic impurity, and electrochemical measurements of galvanic couples with silver or zinc wires winding around a copper wire and in situ observation of the electrode surface using a stereo microscope were carried out. For comparison, copper wire with zinc or silver plating was used. As a result, even the simple method of winding silver or zinc wire around copper wire was able to capture the characteristic behavior of the galvanic reaction of silver and zinc on copper wire. It was also confirmed that zinc dissolution was accelerated by copper and copper dissolution was accelerated by silver, and that the effects were more promoted under anodic polarization. The crystallization and passivation of copper sulfate on the copper electrode surface and the dissolution behavior of silver were also observed. These results indicate that the experimental method presented in this study is an effective way to investigate the effects of impurities on the solubility and passivation of crude copper metal.
著者
渡辺 康徳 渡辺 俊行 龍 有二 赤司 泰義 川上 司
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.62, no.495, pp.21-29, 1997-05-30 (Released:2017-02-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

The purpose of this study is to analyze indoor thermal environment of a highly insulated airtight house in seasonal hot-humid area. In this paper, shelter performance, indoor thermal environment, and energy consumption of a highly insulated airtight house installed with central ventilation system and ordinary houses were investigated in Kitakyushu. The major conclusions of this measurement are as follows. l)This house is excellent in heat insulating and airtightness compared with the ordinary houses. The heat loss coefficient per floor area of the house is 2.53 W/(m^2・K) and equivalent leakage area per floor area of the house is 0.94 cm^2/m^2 measured by the pressrization method. (0.56 cm^2/m^2 by the depressurization method) 2)There is a room for improvement in the indoor thermal environment on air-conditioning during the summer, because this house had no consideration for solar shading and there are some problems about the position of thermosensor for air-conditioning and the balance of the air-flow below the floor level. 3)It is efficient to use the ventilation system installed with a sensible and latent heat exchanger at a highly insulated airtight house diring both summer and winter.
著者
李 偉国 川上 洋司 本多 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.811-816, 1998-10-25 (Released:2018-04-01)
参考文献数
8

This study aims to clarify urban environmental problems accompanied with rapid economic development, in Hangzhou City on coastal area of China, based on three aspect's analysis of environmental feature, environmental policy system and resident's awareness. The conclusions are as follows: 1) Urban environmental problems are becoming more complex than before, so now traffic, industry and building activity are being main pollution sources that affect whole area of the city. 2) Though local environmental policy system is being set up by each local government, there are still less sufficiency in correspondence with activities of traffic, urban development, and resident living throughout the city. Finally, 3) the study points out the issues of urban environmental administration from the viewpoint of government and resident' roles.
著者
三好 智子 大戸 敬之 岡崎 史子 舩越 拓 吉田 暁 芳野 純 今福 輪太郎 川上 ちひろ 早川 佳穂 西城 卓也
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.77-82, 2022-02-25 (Released:2022-06-19)
参考文献数
11

臨床現場での研修医/専攻医 (レジデント) のパフォーマンスを改善するため, 指導医が振り返りを促す際の面談に活用できるR2C2モデルが開発された. 信頼と関係を構築する (R), 評価結果に対する反応や認識を探る (R), レジデントが結果/評価内容をどう理解しているか探索する (C), パフォーマンスを改善させるためのコーチング (C) の4段階で構成される. R2C2モデルには, レジデントが省察的かつ目標志向の話し合いに関わることができ, 指導医と共に学習/改善計画を検討できるという効果が認められている. 本稿では, R2C2モデルの日本語版とその知見を紹介する.
著者
西田 淳志 山崎 修道 川上 憲人 長谷川 眞理子
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-06-30

西田らは、主体価値測定アプリを開発し、思春期大規模コホート研究に導入した。その結果、思春期のロールモデルの獲得・更新と自己制御性の発達が、自律性の成熟の基盤となり、さらにその自律性が基盤となって主体価値が形成されていくことを解明した。山崎らは、全英出生コホートデータを用い、思春期の主体価値と自己制御の発達の相互作用が高齢期のウェルビーイングを予測することを解明した。川上らは、国内外のコホートデータを用いた一連の研究から、思春期主体価値の2要因モデルを提唱した。
著者
新井 啓 川上 芳明 大澤 哲雄 波田野 彰彦 糸井 俊之 水澤 隆樹 筒井 寿基 谷川 俊貴 高橋 公太
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.525-528, 2003-05-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
19

症例は, 28歳男性および30歳男性の兄弟. 弟は左精巣の腫脹を主訴に受診し精巣腫瘍を疑われ手術となった. 術中, 子宮・卵管の遺残を認めたため, 交叉性精巣転移を伴うミュラー管遺残症候群に精巣腫瘍を合併したものと診断された. 兄は不妊症を主訴に受診し精巣の生検の際, 子宮・卵管の遺残を認め, 交叉性精巣転移を伴うミュラー管遺残症候群と診断された.
著者
竹鼻 一也 川上 茂久 Chatchote Thitaram 松野 啓太
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.17-27, 2022-03-01 (Released:2022-05-02)
参考文献数
46

若齢アジアゾウに致死的出血病を引き起こす原因とされるElephant endotheliotropic herpesvirus(EEHV)は,世界中のゾウ飼育施設において多くの死亡例をもたらし,直近20年の間で飼育下アジアゾウの最も主要な死亡原因となっている。EEHVはゾウを自然宿主とし,他のヘルペスウイルス種と同様に潜伏感染する。若齢ゾウにおいては,何らかの原因で血中ウイルス量が異常上昇することに伴い,致死的出血病に至ることがある。発症後の治療には反応が乏しく,有効な治療法が確立されているとは言い難いものの,発症初期に積極的な治療を行うことで救命率向上が認められる。そのため,飼育施設においては日常的な検査体制の確立による早期診断および早期治療開始が求められる。
著者
金子 一幸 川上 静夫 三好 正一 虻川 孝秀 山中 栄 望月 誠 吉原 進平
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.183-186, 1998-04-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
14

卵巣に嚢腫卵胞を有するホルスタイン種乳牛78頭を発情周期および直腸検査所見から3群に区分し, 各群別の処置により空胎期間の短縮を試みた. 初診日の発情徴候が良好で, 嚢腫卵胞と正常卵胞 (NF) が共存していた39頭 (NF共存群) には無処置で人工授精のみを行った. 初診日に発情徴候がみられず, 嚢腫卵胞と黄体 (CL) が共存していた16頭 (CL共存群) にはジノプロスト (25mg) を投与し, 投与後7日以内に発情が誘起された例には人工授精を行った. 嚢腫卵胞のみが認められた23頭 (卵胞嚢腫群) には, 酢酸フェルチレリン (200μg) 投与後14日にジノプロスト (25mg) を投与し, 発情誘起例に人工授精を行った. NF共存群, CL共存群および卵胞嚢腫群の初診から初回授精までの日数 (平均±SD) は, それぞれ0, 9.3±14.であった. また, 各群の初回授精受胎率は43.6, 43.8, 34.8%であり, 受胎に要した授精回数は1.9±1.1.
著者
長坂 侑里 中堀 祐香 阿部 隼人 中川 智史 山口 諭 馬場 俊見 川上 純平 山崎 武志 萩谷 功一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.5-13, 2022-02-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
21

本研究はタイストール(TS,126,492頭),フリーストール(FS,88,851頭)および放牧主体(GZ,3,989頭)において,ホルスタイン雌牛の体型形質と在群期間(HL)の関係を調査した.データは1993から2008年の間に初産分娩した雌牛の体型審査記録から初産次の体型6形質(肢蹄得率,胸の幅,鋭角性,乳房の懸垂,乳房の深さ,前乳頭の配置)であった.各飼養形態において,体型形質におけるHLの最小二乗平均値(LSMHL)を比較した.FSとTSの肢蹄得率が高いほどLSMHLは高かったが,GZの肢蹄得率が79以下のとき,LSMHLは一定の値を示した.すべての飼養形態において,乳房が浅いときおよび乳頭が中央に位置するとき,LSMHLは高かった.FSおよびTSにおけるLSMHLは,多くの形質で近似したが,GZにおいて低い肢蹄得率でHLに大きな影響を与えない点が他と異なった.
著者
川上 暢子 菅野 重範
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.161-165, 2023-06-30 (Released:2023-07-18)
参考文献数
9

原発性進行性失語 (以下, PPA) は現在の診断基準では非流暢性 / 失文法型PPA (以下, nfvPPA) , 意味障害型PPA (以下, svPPA) , ロゴペニック型PPA (以下, lvPPA) に分類されるが, これに当てはまらない症例があり, その 1 つが進行性語聾 (または聴覚失認) の 1 群である。語聾では言語音の音韻認知が障害されており, 中枢神経の聴覚領域の損傷が原因とされる。神経変性疾患を背景とする PPA に併存する進行性語聾は, 背景疾患の種類により障害されやすい聴覚経路・領域が異なるため, 主要な聴覚処理障害および聴覚症状も nfvPPA, svPPA, lvPPA のそれぞれで違いがあることが報告されており, 本稿では最新の知見についてまとめた。また, 語聾の診断の基礎である言語音認知の評価は言語機能の影響を受けるため, PPA 症例では正確な評価が難しい場合も多い。評価方法の 1 例として, 基本的な聴覚機能および聴覚的言語理解について, 複数の言語・聴覚課題を組み合わせて評価を試みた症例を提示する。
著者
原 耕平 塩澤 恒雄 河野 茂 門田 淳一 白井 亮 川上 かおる 飯田 桂子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.569-574, 1998-06-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
26
被引用文献数
4 2

近年compromisedhostにおける日和見感染の実態が次第に明らかにされ, それらの感染症に対する治療の指針が述べられている.これらcompromisedhostにおける感染症の研究については数多くの成績が発表されているが, これらの病態における感染の発症が, 宿主の免疫能や栄養状態とどのようにかかわり合っているかを追求したものは極めて少ない.私達が行った成績では, 肺癌, 肝癌, 腎不全などの患者において, これら患者の免疫能は栄養状態によって影響をうけ, 栄養が不良になると免疫能の低下も著明になることが確かめられた.すでに手術を施行した患者においては, 術前に栄養の評価が行われ, その改善のための対策を講ずることによって予後を改善せしめようとの努力がなされているが, 多くの疾患においても, 宿主の栄養状態の管理は極めて重要で, その対策が感染の併発や疾病の予後を左右する要因であることを強調したい.
著者
川上 治 古池 保雄 安藤 哲朗 杉浦 真 加藤 博子 横井 克典 都築 雨桂
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.51-55, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
15

目的:脳梗塞後はじめて発作を発症した場合,てんかんと診断できるか検討するため,有事率とそのリスク,非誘発性発作の再発率等について多数例を後ろ向きに調査した.方法:当院に入院した脳梗塞急性期(transient ischemic attack;TIAを除く)患者2071名を対象に,けいれん発作発症例を抽出した.年齢,性,皮質病変,Oxford分類,MRIでの深部白質病変等を評価項目とした.結果:脳梗塞発症後,急性症候性発作(acute symptomatic seizure;ASS)は43例で過半数は発症当日であった.非誘発性発作(unprovoked seizure;US)は,100~300日でピークとなるがその後も増加を続け,5年間で73例であった.ASSのリスクは,皮質病変・total anterior circulation infarction;TACI(Oxford分類),USのリスクは,皮質病変・TACI・partial anterior circulation infarction;PACI(Oxford分類)・deep and subcortical white matter hyperintensity;DSWMH(グレード3・4)・75歳未満(多重ロジスティック回帰法)であった.再発性USは,US群74%,ASS群9%と有意にUS群で高かった.初発より抗てんかん薬(antiepileptic drugs;AEDs)を投与すると有意に再発率が減少した.非誘発性発作の重積発作発生率は,AEDs投与群19.6%,非投与群34.3%と有意にAEDs投与群が少なかった.結論:脳梗塞慢性期に初発発作を発症した場合は,てんかんと診断できる.AEDsは,US再発およびてんかん重積状態の予防に有効であり初発USより投与開始を検討する必要がある.
著者
塩崎 功 村上 晃生 谷口 博幸 川上 康博 今井 久 稲葉 秀雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.579, pp.163-176, 1997-11-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1

川浦ダム・川浦鞍部ダム周辺地山の透水性を評価するために, 初期湛水時にダム周辺地下水の水質・同位体調査を行った. イオン濃度の調査結果から, 川浦ダム監査廊内ボーリング孔, 川浦鞍部ダム左岸ボーリング孔の一部で調整池水の到達が確認された. イオン濃度の時間変化から求められた監査廊内への調整池水の流下時間は7~20ケ月と長く, ダム基礎岩盤の透水性は基礎処理によって十分改良されていることが示された.トリチウム, 酸素-18, 重水素の同位体データを用いた多変量解析結果より, イオン濃度からは判定できない仮排水路トンネル湧水への調整池水の到達が示された. 本調査の結果, 調整池水の到達を知るための指標として, 現場測定可能な電気伝導度および硝酸イオンが有効であった.
著者
寺田 裕 長澤 敏行 小西 ゆみ子 尾立 達治 森 真理 森谷 満 舞田 健夫 井出 肇 辻 昌宏 川上 智史 古市 保志
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.432-443, 2016 (Released:2016-10-31)
参考文献数
40

目的 : 歯周病を含む口腔の健康状態と脳梗塞や虚血性心疾患といった心血管疾患との関連については以前から研究されているが, 残存歯の咬合状態を含めて検討したものはほとんどない. 本研究では心臓血管疾患の既往と, 残存歯の健康状態ならびに咬合接触との関係を明らかにすることを目的として, 大学病院の内科と歯科の両方を受診している患者の歯科および内科の診療記録を分析した. 対象と方法 : 北海道医療大学病院の内科と歯科を受診しており, 血液検査・歯周組織検査ずみの93名を対象とした. 対象者は脳梗塞および虚血性心疾患既往の有無で分類後, 診査または検査項目の種類に応じてPearsonのカイ二乗検定, Fisherの正確確率検定, あるいはMann-Whitney検定を行った後, 二項ロジスティック回帰分析で関与している予測因子を解析した. 結果 : 93名中脳梗塞の既往者は8名, 虚血性心疾患の既往者は16名であった. 脳梗塞の既往者はEichner Cで有意に多く, Eichner Aで少なかった (p=0.015). 脳梗塞の既往者の総コレステロール (p=0.023) とHDLコレステロール (p=0.005) は低かった. 虚血性心疾患の既往者では, どの変数にも有意差はみられなかった. 脳梗塞の既往を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析では, Eichner C該当者 {p=0.013, オッズ比 (OR)=17.381, 95%信頼区間 (95%CI)=1.848~163.489} およびHDLコレステロール (p=0.020, OR=0.894, 95%CI=0.813~0.982) が有意な独立変数であることが明らかになった. 虚血性心疾患の既往者に対しては, 統計学的に有意に成立する回帰モデルは構築できなかった. 結論 : 脳梗塞の既往と, 上下顎の咬合接触の喪失を伴う歯の欠損との間で関連が示唆された.
著者
岡松 佑樹 井上 勝博 川上 覚 河口 知允 内山 明彦 笹栗 毅和
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.373-378, 2016-10-20 (Released:2016-11-11)
参考文献数
15

背景.軟骨肉腫は大腿骨や骨盤から発生することが多く,肺より発生する軟骨肉腫は極めて稀であり,国内では自験例を含めて18例が報告されているのみである.症例.53歳男性.高血圧症,脂質異常症で近医通院中であった.初診1か月前より咳嗽を認め,かかりつけ医を受診した.胸部X線写真で右下肺野に腫瘤影を指摘されたため当科紹介受診となり,精査目的に入院となった.胸部CTで右中下葉にまたがる腫瘤を認め,気管支鏡検査では確定診断には至らなかった.MRI,FDG-PET検査により悪性腫瘍が疑われたため,右中下葉切除術を施行した.切除標本の病理組織所見では,硝子軟骨様の多量の基質中に大小不同の異型性を有する軟骨細胞様の腫瘍細胞が増生しており,軟骨肉腫の病理診断となった.全身検索の結果,他臓器からの肺転移は否定的であり原発性肺軟骨肉腫と考えられた.術後経過は良好で,現在も再発や他臓器の原発巣の出現なく経過している.結語.今回我々は肺原発と考えられる軟骨肉腫の1例を経験した.治療の第1選択は手術による完全切除とされ,完全切除された場合の予後は比較的良好であるが,再発例も多く自験例も慎重な経過観察が必要である.