著者
平野 弥生 C. D. Trowbridge 平野 義明
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3-4, pp.212-216, 2013-10-31 (Released:2016-05-31)
参考文献数
19

餌海藻の細胞内に入り,内側から摂餌を行う嚢舌目ウミウシが少なくとも3種,沖縄に生息している。すべてアリモウミウシ属 Ercolaniaに分類され,1種はオーストラリアやグアムから報告されているE. kencolesi Grzymbowski et al., 2007と同定されたが,他の2種は未記載種であると思われる。これら3種には,海藻の細胞内に侵入するための独特な穴開け行動が共通して見られ,藻体内食は固有の行動適応を伴う新しい摂餌様式と見なすことができる。
著者
職域における喫煙対策研究会 大和 浩 姜 英 朝長 諒 藤本 俊樹 中川 恒夫 平野 公康
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.146-151, 2022-05-20 (Released:2022-05-25)
参考文献数
6

目的:改正健康増進法では,バスやタクシーなど旅客運送用車両での喫煙は禁止され,屋外や家庭,それ以外の車両等で喫煙する場合についても「望まない受動喫煙が発生しないように配慮すること」が求められている.しかし,一般企業の業務車両や自家用車で同乗者が居るにもかかわらず喫煙している状況が散見される.本研究では,車両の中で喫煙した場合の受動喫煙の実態を明らかにすることを目的とした.対象と方法:5人乗りの自動車内で運転者が紙巻きタバコを1本喫煙し,すべての窓を閉鎖した状態,一部の窓を開けた状態,すべての窓を開放した状態の計6パターンで,助手席と後部座席において喫煙により発生する微小粒子状物質(PM2.5)の濃度をデジタル粉じん計で測定した.なお,結果:すべての窓を閉鎖した状態では車内のPM2.5 は 3,400 μg/m3 に達した.一部の窓を 10 cm開けてもPM2.5 は 500~3,000 μg/m3,すべての窓を開放しても数百~1,500 μg/m3 と高い濃度になることが認められた.考察と結論:業務車両や自家用車で同乗者の望まない受動喫煙を防ぐ配慮としては,窓を開放する対策では不適切であり,車内で喫煙しないことが求められる.
著者
安斎 勇樹 平野 智紀 山田 小百合 塩瀬 隆之
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.27-38, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
15

本研究は,視覚障害者を対話のパートナーとした場合の美術鑑賞において,鑑賞の深まりのメカニズムについて明らかにした。実際に視覚障害者をサブナビゲイターとした対話型鑑賞の実践を行い,発話データの分析を行ったところ,視覚情報を共有出来ないがために,美術作品に関する精緻な言語化が動機付けられ,それに伴って精緻な観察が促されることが明らかになった。また,そうして説明された情報に対して,視覚障害者が素朴な疑問を繰り返し投げかけることによって,作品に対する解釈の前提が揺さぶられ,新たな作品の見え方が導かれていたことが明らかになった。また,考察の結果,視覚障害者を対話のパートナーとした美術鑑賞を実施する上では,事前に観察の結果を対話によって共有しやすい作品を選定すること,そして当日は作品鑑賞の時間を十分に確保し,鑑賞中には作品の細部だけに焦点が当たりすぎないようにナビゲイトを工夫するなどの注意点が示唆された。
著者
中島 英親 原田 香苗 寺本 憲市郎 武田 浩志 平野 哲也 米満 弘之
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.1204-1206, 1998-09-25 (Released:2010-03-16)
参考文献数
2

We performed finger reconstruction by the toe-to-finger transfer on 15 cases. 6 cases were reconstructed for small finger amputation.We utilized a third toe-to-finger transfer for the reconstruction.Informed consent is an important fector.8 case were finger reconstruction for the multiple digits (more than 3 digits), for which we have used a II toe-to-finger transfers were used.5 of these cases had undergone amputation at the metacarpal level.The total active motion of these 5 cases was 40° on average.As for the full range of motion of the thumb, all 5 cases were able to pinch well.Improved finger function was seen, but prostheses is required for ehhancement of cosmesls.
著者
森下 剛久 清水 鈴昭 井村 洋 岡本 昌隆 小野 芳孝 斉藤 稔 中村 康一 松井 俊和 重村 はるひ 井野 晶夫 江崎 幸治 平野 正美
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.627-639, 1984 (Released:2009-01-26)
参考文献数
22
被引用文献数
2

Pulmonary complications were studied in 213 patients with leukemia and lymphoma. The incidence of pulmonary lesions was 38.5% and diffuse changes were encountered twice more frequently than localized ones. Etiological diagnosis during life was difficult. In 38 out of 62 cases with diffuse lesions, their etiology was not determined. In 9 out of 28 cases with localized lesions their etiology was not clear. In some of these cases autopsy clarified their etiology.Among localized cases, infection, mainly of bacterial origin and infiltration of underlying diseases were two main etiologies. On the other hand, diffuse lung lesions were of various etiology; 29 infections (bacteria 8, fungus 9, virus 8, p.carinii 2), 11 tumor infiltrations, 11 interstitial pneumonia, 3 vascular origins. In these cases with diffuse lesions of different etiology, clinical findings such as fever, cough, dyspnea, low PO2, high LDH, increased CRP, and hypoalbuminemia were observed, but not helpful in differentiating the etiology. Eight out of 11 cases of interstitial pneumoonia occurred during or after tapering of glucocorticoid.The mortality rate was as high as 54.4% of all lung diseases. Retrospective studies on the chest X-ray pictures showed that diffuse ill-defined opacities or multilocated consolidations were associated with poor prognosis.The diagnostic value of transbronchoscopic lung biopsy and therapeutic implications of empirical glucocorticoid administration for etiologically undiagnosed lung lesions were also discussed.
著者
大森 翔子 平野 浩
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.73-87, 2017 (Released:2020-03-01)
参考文献数
39

近年,マスメディア報道の多様化を受けて,娯楽化したニュースが有権者の政治意識・投票行動に与える影響についての研究が進められている。本稿は,そうしたニューススタイルの中でも「戦略型フレーム」とされる報道への接触と,有権者の外的及び内的有効性感覚との関連について,受け手の政治知識レベルとの交互作用を含めて検討を加えるものである。JESⅢ2003年衆院選データを用いた分析の結果,戦略型フレーム報道への接触は,政治知識レベルの高い受け手については外的,内的いずれの有効性感覚ともネガティブな関連が見られることが示されたが,政治知識レベルの低い受け手においては外的有効性感覚との関連は殆ど無く,内的有効性感覚についてはむしろポジティブな関連があることが示された。この結果について,それを生じさせる心理学的メカニズム及びその民主政治に及ぼす影響が考察された。
著者
平野勇二郎 勇二郎 一ノ瀬 俊明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100205, 2017 (Released:2017-10-26)

今後の人口減少と高齢化に備えて、居住域の交通計画について検討が必要である。スプロール化が進行した現在の空間構造のまま人口減少した場合、広域的に人口密度が低下し、とくに地方部では過疎化が深刻化する。この結果、生活の利便性の低下や、環境負荷の増大が懸念される。とくに交通に関する問題は重大である。利便性を維持するためには公共交通の充実が不可欠であるが、過疎化した空間構造の中ではインフラの維持管理コストが見合わない。このため、人口密度が一定以下になれば自動車が不可欠となるが、運転困難な高齢者の生活がますます困難となる上、一人当たりCO2排出量の増加などの環境負荷にも結び付く。このため、今後の人口減少に備えて居住域をコンパクト化する提案も多い。こうした背景から、今後の居住域の空間計画を検討する上で、都市条件と交通手段の関係について把握することが不可欠である。そこで本研究では、家計調査などの統計データから交通手段ごとに移動距離を算出し、都市間での比較を行った。この結果から、全体として自動車の移動が多く、大半の都市において半分以上は自動車が占めていることが示された。大都市では鉄道の割合が相対的に高いが、地方部では大半の移動を自動車が占めている。また鉄道、バス、タクシーの合計を公共交通とし、自動車との関係を調べたところ、若干の負の相関が生じた(R=-0.650、1%有意)。この結果から、自動車と公共交通の間に代替性が定量化された。また、自動車と公共交通を合わせた移動距離は公共交通の利用が多い地域の方が若干短く、都市域において高密度化した都市構造に伴い、移動が効率化されている可能性が高い。今後、各都市の人口密度や土地利用などの詳細な都市構造を踏まえて、さらに解析を進める予定である。
著者
平野 直人 奥澤 康一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.691-700, 2002-11-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
43
被引用文献数
10 8

嶺岡帯,鴨川市峠においてアルカリ玄武岩溶岩中に噴出時に取り込まれたと考えられる砂岩を発見した.この砂岩はおもに,斜長石・ダトー石・石英・および珪長質火山岩片から構成され,ダトー石を除けば嶺岡層群神塚層または愛宕山層の砂岩の構成粒子の鉱物組み合わせに似ている.アルカリ玄武岩の活動場は,このような陸源性砂岩が供給されるような場であった事が明らかとなった.アルカリ玄武岩は,その産状と化学組成から,海山を構成していたと考えられるが,アルカリ玄武岩の噴出場と含まれている陸源性砂岩の堆積場は,おそらく海洋プレートと島弧もしくは大陸が会合する収束境界付近であった見込みが高い.アルカリ玄武岩の放射年代は,嶺岡帯のオフィオリティック岩体が本州弧側へ定置したとされる時代の直前であり,本論の結果と調和的である.本研究において嶺岡帯の形成過程を論じるにおいて新たな見地が得られた.
著者
平野 智美
出版者
国立音楽大学
雑誌
研究紀要 = Kunitachi College of Music journal (ISSN:02885492)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.135-145, 2017-03-31

ヨハン・セバスティアン・バッハがヨハン・エルンスト公子の依頼によって、最新の協奏曲をクラヴィーア用に編曲したことは広く知られている。クラヴィーアへの編曲は17曲あるが、そのうち6作品がアントニオ・ヴィヴァルディの原曲に由来する。本稿ではこれら6作品のうちヴィヴァルディの協奏曲集《調和の霊感》(Op.3-9)に基づいて編曲されたクラヴィーア曲(BWV972)について現存する資料を整理し、最終稿(BWV972)とヨハン・アンドレアス・クーナウによる写しで伝えられている初期稿(BWV972a)を比較した。バッハが編曲の過程でどのような独自性を追求したのかを考察、分析した結果、編曲技法の特徴である内声の付加やバスの旋律線の強化などの際にも、瞬間的に生まれる音の響きとそれらが連続して織り成す和声を念頭に置いて作曲していること、さらに減衰効果の強いクラヴィーアという楽器で、旋律や和音を持続させるよう試みられていることが明らかになった。
著者
木村 由莉 横山 芳春 平野 弘道
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.5-15, 2011-09-30 (Released:2017-10-03)
参考文献数
26

Molluscan fossils in storm-generated shell beds are commonly transported and damaged. Here we report a case study on assessing mollusc shell transport from original habitats to lower shoreface storm deposits. Fossil assemblages recovered from eight storm-generated shell beds in the Pliocene Dainichi Formation, Kakegawa Group, Japan, were examined. We assessed temporal changes in the relative frequency of three ecological categories (mode of life of bivalves, substrate preference, and habitat depth), using available information on modern molluscan species. The studied stratigraphic section was subdivided into two distinct units based on taxonomic compositions and the ecological categories. The lower unit (D-1, D-2, D-2') is characterized by rocky-bottom dwellers such as Area arabica, Cardita leana, Chama sp., Lima vulgaris, Collisella spp., and Siliquaria cumingii. The gravelbottom dweller Arcopsis symmetrica is more common in the lower unit. The upper unit (D-3 to D-7) can be distinguished from the lower one by a decrease in deposit feeders that are better able to escape sudden burial than suspension feeders. In this unit, suspension feeders that generally inhabit quiescent environments increase in the place of the deposit feeders. The results indicate the followings: (1) the storm-generated shell beds in the study section represent indigenous fossil assemblages; (2) thin and flat bivalves (e.g., "Macoma" spp. and Saccella spp.) exclusively deposited on the laminar surface (D-2') were more or less transported, whereas gastropods accumulated in lag deposits (D-2) of hummocky cross-stratified beds were residues after a storm event and its attendant winnowing of fine sediments; (3) paleontological evidence obtained from the lower unit indicates the existence of a rocky coast during the time when the Dainichi Formation began to deposit in the study area (Dainichi, Fukuroi City); and (4) the changes in the ecological categories from the lower to the upper unit are compatible with the upward-deepening sedimentary sequence recorded in the Dainichi Formation.
著者
平野 聖
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.60, 2012 (Released:2012-06-11)

昭和後期の扇風機のデザインの変遷に関し、三洋電機のデザイン開発事例をもとに考察した。同社において市場喚起の役割を担ったのが「パーソナル」、「フロアライフ」をキーワードとした差別化戦略であった。特徴的な風のパターンを生み出す「マジックターン」等はサーキュレーション効果に優れ、国内外の市場に高く評価された。また、収納時のコンパクト化や、自然な風の再現を目指したりもした。ただ、これらの動きについては、他社のコンパクト化戦略や、「1/fゆらぎ」に代表される自然な風志向にも影響を受けていることは否めない。昭和60年代以降はNIEsの強力な輸出攻勢により、価格競争に巻き込まれ、低価格化を余儀なくされるとともに、生産拠点が中国へと移転してゆく。
著者
藤原 帰一 久保 文明 加藤 淳子 苅部 直 飯田 敬輔 平野 聡 川人 貞史 川出 良枝 田邊 國昭 金井 利之 城山 英明 谷口 将紀 塩川 伸明 高原 明生 大串 和雄 中山 洋平
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

危機管理の政策決定と、それが政治社会にもたらす効果について、多角的な実地調査とデータ収集を行うとともに、三つの理論的視点、すなわちセキュリタイゼーション研究、危機管理研究、そして平和構築から分析を進めた。本作業の国際的パートナーがオレ・ウィーバー、イークワン・ヘン、そして、ジョンアイケンベリーであり、この三名を含む内外の研究者と共に2015年1月30日に大規模な国際研究集会を東京にて開催し研究成果の報告を行った。本会議においては理論研究とより具体的国際動向の分析を行う研究者との間の連絡に注意し、実務家との意見交換にも留意した。
著者
平野 実
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-11, 1970-04-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
12
被引用文献数
3

歌声における声区, ピッチ, 強さの調節機構を, 職業的声楽家について研究した.研究には, 喉頭筋筋電図と声帯の高速度映画撮影を用いた.声区は主として声帯筋によって調節される.声区が重い程声帯筋の収縮は強い.側筋と横筋は声区の調節に当たって声帯筋を助ける.したがって, 重い声区では声帯は厚く, 粘膜波動は著明で声門閉鎖期が長く, 開閉速度率が大きい・前筋は声帯筋の拮抗筋として声区に影響を与える.しかし, 第一義的の声区調節者ではない.一般に, 声帯緊張筋および内転筋の活動はピッチの上昇とともに増加する.しかし, 軽い声区の高い音域では, これらの筋のピッチの調節への関与度はより小さい.重い声区の低い音域では, 声の強さは主として内転多によって調節されるが, 軽い声区の高い音域では主として呼吸筋によって調節される.声区, ピッチ, 強さは生きた人間においてはお互いに全く独立した因子ではない.