- 著者
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平野 滋
杉山 庸一郎
金子 真美
椋代 茂之
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.124, no.1, pp.11-13, 2021-01-20 (Released:2021-02-01)
- 参考文献数
- 13
- 被引用文献数
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声帯は50歳ごろより萎縮が始まり, 声の減弱化, 嗄声を呈するようになる. 声帯の粘膜および筋肉の萎縮によるが, 声の劣化は活力の低下, 生活圏の制限, 社会的地位への脅威など高齢者における生活および仕事環境を脅かすことにもなり, またひいては誤嚥による健康被害にも繋がる. 声が掠れてきたら要注意であり, 予防による声帯の維持が重要である. 声帯の維持のために, 1. 声帯の保湿, 2. 喉頭の慢性炎症の予防, 3. 適度な発声, 4. 活性酸素の抑制を勧めている. 声帯の保湿には1日1.5L 以上の水分摂取が世界的に推奨されている. 喉頭の慢性炎症予防のためには禁煙, 胃酸逆流やアレルギー性炎症のコントロールが重要である. 歌手は声帯の寿命が長いといわれるが, 近年の臨床研究で一定のエビデンスが示された. 適切な発声を継続することが声帯維持に重要である. また, 活性酸素は加齢とともに増加し, 組織障害性を発揮する. 声帯も例外ではなく, 加齢や声帯酷使により声帯粘膜内の活性酸素が増加すること, また抗酸化剤の投与によりこれを予防し, 声帯の維持に有効なことを示した. 声帯の萎縮が生じてしまった場合, 呼気と共鳴を最適化する適切な音声治療によりある程度の改善が期待できる. 塩基性線維芽細胞増殖因子は, 萎縮した声帯粘膜内のヒアルロン酸産生を促進することで, 声帯の再生を促すことが可能である. かつては「年だから仕方ない」とされた声帯萎縮であるが, 健康長寿のために予防と治療が重要である.