著者
平野 淳平 大羽 辰矢 森島 済 三上 岳彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.275-286, 2012-05-01 (Released:2017-10-07)
参考文献数
22
被引用文献数
4 5

本研究では,東北地方南部に位置する山形県川西町において1830年から1980年までの151年間,古日記に記されていた天候記録にもとづいて冬季平均気温を推定し,その長期変動にみられる特徴について考察した.まず,古日記天候記録から推定した気温の変化を古気象観測記録にもとづく冬季気温の長期変動と比較したところ,両者の変動傾向はよく類似しており,本研究による推定結果の信頼性の高さが裏付けられた.また,気温の推定結果からは,従来の研究で,定性的に暖冬であったことが示唆されていた幕末期について,1)1840年代後半~1850年代前半と2)1860年代後半に,気温が現在の平年値とほぼ同程度である暖冬年が一時的に存在していたことが推定された.一方,これらの暖冬年を除くと,19世紀中頃以前の大部分の年では冬が現在よりも寒冷であったことが推定された.
著者
楯谷 一郎 平野 滋 伊藤 壽一
出版者
THE JAPAN LARYNGOLOGICAL ASSOCIATION
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.67-70, 2010-12-01 (Released:2011-04-08)
参考文献数
13
被引用文献数
1
著者
清水 健太郎 小倉 裕司 高橋 弘毅 和佐 勝史 平野 賢一
出版者
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
雑誌
学会誌JSPEN (ISSN:24344966)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.95-102, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
41

リフィーディング症候群は,飢餓状態にある低栄養患者が,栄養を急に摂取することで水,電解質分布の異常,心合併症を引き起こす病態であるが,低血糖との関連は明らかではない.BMIが14未満の低血糖を伴うリフィーディング症候群を発症した12例の本邦報告例を検討したところ,たこつぼ型心筋症や心停止を含む致死的な心合併症を10例に発症していた.機序は不明な点が多いが,低栄養状態でのエネルギー供給による過剰なインスリン分泌が低血糖を生じ,低血糖によるカテコラミンの過剰分泌がたこつぼ型心筋症をひきおこすことが推察された.また,心筋への不十分なエネルギー供給が心合併症の要因と考えられた.この病態は重症化する可能性があるため,極度の低栄養患者には心電図モニターや血糖値および電解質管理等の全身管理を要する.目標投与エネルギー量を適切に設定し,リフィーディング症候群およびそれに伴う合併症を予防しつつ厳密な栄養管理が必要である.
著者
平野 和宏 木下 一雄 千田 真大 河合 良訓 上久保 毅 安保 雅博
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.356-363, 2010-08-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
36

【目的】本研究の目的は,解剖学的観察を基に,MRIを用いて腸骨筋の機能を科学的に検証することである。【方法】実習用献体4体8肢を用いて大腰筋と腸骨筋の走行を確認した。腸骨筋前部線維は,腸腰筋腱とは別に筋線維のまま直接小転子と大腿骨に停止していた。他動的に大腿骨を操作し股関節を屈曲すると,初期屈曲では腸骨筋前部線維が短縮した。この所見を基に,健常成人11名を対象として股関節屈曲30°と屈曲90°の2条件の運動後,MRIのT2値を用いて大腰筋と腸骨筋前部・中部・後部それぞれの部位の筋活動に差があるか検討した。なお,T2値は安静時のT2値に対して運動後のT2値をT2値増加率として表した。【結果】股関節屈曲30°では,腸骨筋前部が大腰筋ならびに腸骨筋後部より有意にT2値増加率が高値を示した。屈曲90°では各部位間に有意差は認められなかった。各部位にて屈曲30°と屈曲90°のT2値増加率を比較すると,全ての部位にて屈曲90°のT2値増加率が有意に高値を示した。【結論】腸骨筋前部線維は股関節初期屈曲に作用している結果となり,屈曲角度の少ない動作は,腸骨筋前部線維が担っている可能性が示唆された。
著者
江⽊ 盛時 ⼩倉 裕司 ⽮⽥部 智昭 安宅 ⼀晃 井上 茂亮 射場 敏明 垣花 泰之 川崎 達也 久志本 成樹 ⿊⽥ 泰弘 ⼩⾕ 穣治 志⾺ 伸朗 ⾕⼝ 巧 鶴⽥ 良介 ⼟井 研⼈ ⼟井 松幸 中⽥ 孝明 中根 正樹 藤島 清太郎 細川 直登 升⽥ 好樹 松嶋 ⿇⼦ 松⽥ 直之 ⼭川 ⼀⾺ 原 嘉孝 ⼤下 慎⼀郎 ⻘⽊ 善孝 稲⽥ ⿇⾐ 梅村 穣 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻⾕ 正明 對東 俊介 武⽥ 親宗 寺⼭ 毅郎 東平 ⽇出夫 橋本 英樹 林⽥ 敬 ⼀⼆三 亨 廣瀬 智也 福⽥ ⿓将 藤井 智⼦ 三浦 慎也 安⽥ 英⼈ 阿部 智⼀ 安藤 幸吉 飯⽥ 有輝 ⽯原 唯史 井⼿ 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲⽥ 雄 宇都宮 明美 卯野⽊ 健 遠藤 功⼆ ⼤内 玲 尾崎 将之 ⼩野 聡 桂 守弘 川⼝ 敦 川村 雄介 ⼯藤 ⼤介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下⼭ 哲 鈴⽊ 武志 関根 秀介 関野 元裕 ⾼橋 希 ⾼橋 世 ⾼橋 弘 ⽥上 隆 ⽥島 吾郎 巽 博⾂ ⾕ 昌憲 ⼟⾕ ⾶⿃ 堤 悠介 内藤 貴基 ⻑江 正晴 ⻑澤 俊郎 中村 謙介 ⻄村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 ⻑⾕川 ⼤祐 畠⼭ 淳司 原 直⼰ 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松⽯ 雄⼆朗 松⼭ 匡 峰松 佑輔 宮下 亮⼀ 宮武 祐⼠ 森安 恵実 ⼭⽥ 亨 ⼭⽥ 博之 ⼭元 良 吉⽥ 健史 吉⽥ 悠平 吉村 旬平 四本 ⻯⼀ ⽶倉 寛 和⽥ 剛志 渡邉 栄三 ⻘⽊ 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五⼗嵐 豊 井⼝ 直也 ⽯川 雅⺒ ⽯丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今⻑⾕ 尚史 井村 春樹 ⼊野⽥ 崇 上原 健司 ⽣塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕⼦ 榎本 有希 太⽥ 浩平 ⼤地 嘉史 ⼤野 孝則 ⼤邉 寛幸 岡 和幸 岡⽥ 信⻑ 岡⽥ 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥⽥ 拓史 ⼩倉 崇以 ⼩野寺 悠 ⼩⼭ 雄太 ⾙沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 ⾦⾕ 明浩 ⾦⼦ 唯 ⾦畑 圭太 狩野 謙⼀ 河野 浩幸 菊⾕ 知也 菊地 ⻫ 城⼾ 崇裕 ⽊村 翔 ⼩網 博之 ⼩橋 ⼤輔 ⿑⽊ 巌 堺 正仁 坂本 彩⾹ 佐藤 哲哉 志賀 康浩 下⼾ 学 下⼭ 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉⽥ 篤紀 鈴⽊ 聡 鈴⽊ 祐⼆ 壽原 朋宏 其⽥ 健司 ⾼⽒ 修平 ⾼島 光平 ⾼橋 ⽣ ⾼橋 洋⼦ ⽵下 淳 ⽥中 裕記 丹保 亜希仁 ⾓⼭ 泰⼀朗 鉄原 健⼀ 徳永 健太郎 富岡 義裕 冨⽥ 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊⽥ 幸樹年 内藤 宏道 永⽥ 功 ⻑⾨ 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 奈良場 啓 成⽥ 知⼤ ⻄岡 典宏 ⻄村 朋也 ⻄⼭ 慶 野村 智久 芳賀 ⼤樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速⽔ 宏樹 原⼝ 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤⽥ 基 藤村 直幸 舩越 拓 堀⼝ 真仁 牧 盾 增永 直久 松村 洋輔 真⼸ 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村⽥ 哲平 柳井 真知 ⽮野 隆郎 ⼭⽥ 浩平 ⼭⽥ 直樹 ⼭本 朋納 吉廣 尚⼤ ⽥中 裕 ⻄⽥ 修
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
pp.27S0001, (Released:2020-09-28)
被引用文献数
2

日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG2016)の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG2020)の目的は,J-SSCG2016と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG2016ではSSCG2016にない新しい領域(ICU-acquiredweakness(ICU-AW)とPost-Intensive Care Syndrome(PICS),体温管理など)を取り上げたが,J-SSCG2020では新たに注目すべき4領域(Patient-and Family-Centered Care,Sepsis Treatment System,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な117の臨床課題(クリニカルクエスチョン:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQには,日本国内で特に注目されているCQも含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員24名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班を2016年版に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,117CQに対する回答として,79個のGRADEによる推奨,5個のGPS(Good Practice Statement),18個のエキスパートコンセンサス,27個のBQ(Background Question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG2020は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。
著者
平野 直子
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.107-130, 2016 (Released:2017-09-15)

本稿は、スピリチュアリティ研究の対象としてよく取り上げられる、オルタナティブな食実践における身体観を取り上げ、そこに見られる〈現代の社会システムのなかで流布している通常医療や科学の言説における身体観を乗り越える〉という言説について検討を加える。食を含むオルタナティブな療法や身体実践においては、身体を「自然なもの」と見て、それを見つめ直すことにより、より良い身体やライフスタイルを作り上げることが提案される。しかしそもそも、言説から切り離された白紙の身体というのは有り得るのか。本稿ではこの点を検討すると同時に、実践者たちにとって重要なのは、自分自身やライフスタイルを再帰的に見つめ、管理し、絶えず作り直していくツールを消費し共有することであることを示す。
著者
江口 定夫 平野 七恵
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.32-46, 2019-02-05 (Released:2019-02-20)
参考文献数
48
被引用文献数
1

食料生産~消費過程(フードチェーン)における環境中への反応性窒素(Nr)排出削減対策は,生産者対象の窒素利用効率(NUE)向上やNr再利用だけでなく,消費者の食生活改善も併せて総合的に進める必要がある.1960~2015年を対象に,国の統計値等に基づき,日本の消費者の食べ過ぎNr, 食品ロスNr, 排出Nr(食のNフットプリント)の実態及び削減可能量を示すと共に,2095年までの総人口減少,少子高齢化及び農地面積減少を考慮し,国連の持続可能な開発目標12に沿って食べ過ぎNr・食品ロスNr発生率を半減期15年とした場合の排出Nrと食料自給率(SSR)を予測した.食品ロスNrは,60年代に急増した食べ過ぎNrが最大かつ一定となった70年代後半から増大した.食生活改善策は,量的には食べ過ぎ・食品ロス削減が健康維持や環境保全(排出Nrを最大33%削減),食料安全保障(2050年の食料SSRが60%)に有効だが,実現には数十年以上かかること,質的には畜産物主体から70年頃の豆類・魚介類主体の食事への回帰が有効(排出Nrを19%削減)であり,量的・質的改善策の同時適用で排出Nrを最大46%削減可能と計算された.また,排出Nrの約40%は食料輸入元の国々で発生し,食料生産の海外依存度増加が結果的に低NUEの食料需給体系をもたらしていた.以上の知見をN循環の駆動力である消費者と共有することがNr排出削減のために最も重要である.
著者
平野 伸夫 竹之下 愛 土屋 範芳
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.198-207, 2009 (Released:2009-11-26)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

Carbonate hot spring is a natural chemical reaction field for understanding CO2 geological sequestration as a natural analogue. Natural analogue studies are particularly important to understand the kinetics of mineral precipitation which has potential difficulties in experimental investigations. Carbonate sinter is frequently formed in and around carbonate hot spring, which can be suitable to elucidate mechanisms of carbonate precipitation associated with flushing CO2.   Oku-Okuhachikuro hot spring, located in Kosaka town, Akita Prefecture, NE Japan, is an artificial hot spring after drilling of exploration for the Kuroko-deposits, and it is still active where carbonate sinter has still been forming continuously for more than thirty years after drilling. The temperature of spring water is 44 °C and water pH is 6.2, with discharge rate of 0.08 m3/min. The average chemical compositions of sinter correspond about 80 wt% CaCO3, and 4 wt% Fe2O3, associated with minor (<1 wt% each) SiO2, MnO, MgO, Na2O and K2O. Carbonate sinter is mainly composed of aragonite with a small amount of calcite; an intimate occurrence of these two forms of CaCO3 is the most characteristic feature of this locality. However, mineral assemblage, texture and structure of carbonate sinter are different in relation to the distance from the blowout point. Near the blowout point, the sinter is well solidified and shows laminar structure having both of calcite and aragonite. Thickness of Ca-rich laminar ranges from 20 to 150 μm and Fe-rich one is from 10 to 80 μm. Calcite and aragonite assemblage is mainly observed in Ca-rich layer. The Fe-rich layer, however, is composed only of aragonite. The sinter along downstream becomes porous and is monomineralic having aragonite as CaCO3. The observed relations on the special distribution of aragonite/calcite and the possible stability relations of these phases through EPMA and TG-DTA analyses suggest an importance of minor elements (Fe, etc.) in the precipitation of metastable carbonates: this possible effect of the precipitation of metastable phases should be taken into account in the consideration of geochemical processes of CO2 mineral trapping.
著者
駒形 亮太 平野 史朗 川方 裕則 直井 誠
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

地震波形には、特定地域の震源特性や地下構造などの情報が豊富に含まれている。地震カタログに載らない微小地震による地震波を捉えることができれば、もちろん前震などの地震活動の特徴を捉えることにも有効であるが、地下構造をより詳細に知ることにも有効である。地震カタログに載らない微小地震による地震波を捉える方法はいくつか存在する。多く用いられている方法は、既知のテンプレート波形を用いた、相関係数によるテンプレートマッチングである(例えば、Doi and Kawakata, 2012; Kato et al., 2012)。しかし、この方法では既知の波形の類似波形を見つけることに他ならず、既知の波形を用いない解析を行えば、さらに多くの微小地震による地震波が捉えられる可能性がある。そこで、本研究ではテンプレート波形を用いずに高速な類似波形検出を行えるハッシュ法に注目した。Yoon, et al. (2015)はLocality Sensitive Hashing(LSH)を用いたハッシュ法の一種である、Fingerprint and Similarity Thresholding (FAST)という類似地震波形検出手法を提案した。FASTはBaluja&Covell.(2008)により音声検索において有効性が認められているWaveprintという手法を元に開発された。FASTは主に2つの構成要素から成り、1つ目はLSH特性を持つハッシュ関数による波形の特徴抽出、2つ目は波形ペアのハッシュ値の類似性であるJaccard係数を近似的に評価する類似検索である。そして、FASTの LSHとして開発されたFingerprintingを用いることで、地震カタログに載らない小さな類似波形のペアも見つけられることが確認されている。しかし、FASTはspectrogram 生成やWavelet変換という複雑な処理を行う必要がある。本研究では、より少ない手順で計算可能な新たなハッシュ関数を2つ提案し、それらとFASTの3手法による類似波形ペアの検出を行った。そして、検出された類似波形ペアの類似度と相関係数の関係、計算実行に要する時間の2点を中心にそれらの性能比較を行った。 連続波形記録のspectrogramを見ると、一般に地震波形は一時的な高エネルギーイベントとして現れる。FASTはこの特性を利用しており、spectrogram生成やHaarWavelet変換を必要とする。一方、時系列で連続波形記録を見ると、一般に地震波形は周囲の常時微動に比べ、振幅が大きくなることが期待される。そこで、本研究ではこの特性に着目し、FASTとは異なり、連続波形記録の時系列情報そのままで計算できるようなハッシュ関数を設計した。1つ目は、Fei et al. (2015)によって画像検出のために提案されたaHashを地震波検知のために改造し、常時微動と地震波の識別に強くした2bit-aHash、2つ目は連続波形記録から切り出した波形ウィンドウ振幅の絶対値の順位でハッシュ値を定める全く新しい手法のkHashである。2bit-aHashは時系列の振幅の後続N個の平均値と標準偏差を用いる。平均値±標準偏差から逸脱している正の振幅には10、負の振幅には01を対応させ、それ以外をノイズとして00に対応させる。kHashは、波形ウィンドウの時系列の振幅の絶対値上位k%の正の振幅には10、負の振幅には01を対応させ、それ以外をノイズとして00に対応させる。解析データとして、長野県中部で発生した Mj5.4の地震発生を含む2011年6月29日19:00~2011年6月30日18:59(JST)のHi-net松本和田観測点で記録された連続速度波形記録を用いた。結果として、2bit-aHash、kHashは地震カタログに載っていない、地震波のような類似波形ペアを検出することに成功した。そして2bit-aHash、kHashは検出波形波形ペア間の相関係数が高く、類似度の高さと相関係数の高さに相関がみられた。一方、FASTは複雑な処理を行う割に、検出される類似波形ペア間の相関係数が他の2手法に比べてばらつきが大きいことが分かった。加えて全体の実行時間は2bit-aHash、kHash共にFASTよりも約4~5倍高速であった。理由の一つとして、特徴抽出の際2bit-aHash、kHashがFASTよりも簡単に計算できることが挙げられるが、それだけでなく、類似検索の実行時間も数十倍高速になっていることが判明した。Yoon, et al. (2015)によると、解析に用いるデータのサンプル数nが非常に長くなれば類似検索の実行時間がO(n2)に近づいていくが、本研究の結果は2bit-aHashやkHashが類似検索時の実行時間の大きな改善にも貢献することを意味する。類似検索アルゴリズムではノイズ同士のペア、ノイズとイベント波形のペアなど、極端にJaccard係数が低い波形ペアはアルゴリズム内での類似度が定義できず、データベースから削除される。プロセスを精査したところFASTではこのような無駄なペアが削除されずに多数存在してしまうことが明らかになり、これを類似波形の候補として全て保持・検索しなければならないことが速度低下を招いていたものと考えられる。逆に2bit-aHash、kHashで出力された波形ペアのハッシュ値のJaccard係数はFASTのものよりも全体的に低く、無駄なペアがかなり削除されたため、速度が向上した。以上より、今回新たに提案した2bit-aHash、kHashの2手法はFASTよりも実行時間が特徴抽出だけでなく類似検索においても高速になり、また検出波形ペア間の相関係数が高くなりそのばらつきが少なくなることが示された。
著者
松本 達郎 平野 弘道
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.102, pp.334-"342-1", 1976-07-15

北海道の白亜系産アンモナイトには保存のよいものが少なくないので, 殻の色彩の跡が残っているものはないかとかねてから留意していたが, この程6個体の例が見出された。それは天塩山地南西部の羽幌から小平にかけてのサントニアンの細砂泥岩中のもので, いずれもTexanitinaeに属する。Protexanits (Protexanites) bontanti shimizui MATSUMOTO 4個, Protexanites (Anatexanites) fukazawai (YABE et SHIMIZU) 1個, Paratexanites (Parabevahites) serratomarginatus (REDTENBACHER) 1個の実例には, どれも巻きの方向に平行する色帯があるが, 色帯の数, 位置, 幅, 間隔の相対的の幅などが種類により異なること, 1種の中では変異は僅かあるが, ほぼ一定していること, 第1・2種の色帯が類似するのに対し, 第3の種のそれはかなり異なることが注意される。色素は最外層部に集中しているようである。なお事実の記載に加えて, アンモナイトの殻の色模様一般に関して若干の論議を試みる。
著者
小田 桂吾 吉田 和歌子 藤沼 絢子 児玉 真知子 鈴木 恒 吉田 怜 成田 崇矢 馬見塚 尚孝 金森 章浩 宮川 俊平 平野 篤
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P3435, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】膝前十字靱帯(以下ACL)再建術後、再度ACL断裂を受傷した症例について調査し、今後のリハビリテーション(以下リハ)プログラム及び予防プログラムについて検討することを目的とする.【対象および方法】平成15年4月から平成20年9月までの期間に、当院で自家半腱様筋腱(および大腿薄筋腱)を用いた解剖学的二重束でACL再建術施行例のうち経過観察可能であった155名(男性70名,女性85名,平均年齢24±10歳)のうちACL再受傷した4名を対象とした.調査項目はACL再受傷発生頻度,性別,年齢,競技種目,競技レベル,再受傷期間,受傷機転について検討した.なお本研究は当院の倫理委員会の審査を受け、承認されたものである【結果】全手術例に対するACL再受傷発生率は2.6%であった.症例の性別,年齢,競技種目は男性1例(24歳、サッカー、JFLチーム所属).女性3例(16~17歳、バスケットボール部所属で全国大会出場レベル1例,県大会出場レベル1例、ハンドボール部所属,県大会出場レベル1例)で再受傷期間は165±47日であった.【考察】再断裂した症例は1例(女性,バスケットボール部全国大会出場レベル)を除いて競技復帰前に受傷していた.移植腱の成熟および骨の癒合は3~6か月程度要すると報告されていることから、この時期のリハは筋力の回復状況や膝固有感覚の回復を考慮したプログラムを実施すると同時に危険肢位等のリスク管理を十分患者に理解させ、再断裂を未然に防ぐことが重要である.また2例は部活動以外のアクシデントで再断裂している.スポーツ活動中だけでなく日常生活レベルでのリスク管理の指導も十分行う必要性がある.以上のことは以前から報告されているが、改善されていない理由として患者本人の病態意識の低さだけでなく、再断裂した症例は全て初回も再受傷も非接触型で受傷していることから我々のリスク管理を含めた予防トレーニングの指導力不足も関係しているのではないかと考える.また当院では術後6カ月でBIODEXを用いた筋力検査を行い患健比マイナス15%以内、H/Q比60%以上を競技復帰の目安にしており今回、競技復帰後に再断裂した症例はこの目安をクリアし順調に筋力が患健比約90%回復していたにも関わらず再断裂に至ってしまった.当院のACLのリハは筋力検査の結果を競技復帰の目安にし、術後平均約8か月でリハ終了としているが、まだ競技復帰に対して不安感を持っていながら、この時期を境に今まで行ってきたリハのプログラムを終了していたことが誘因のひとつであると推察した.
著者
平野 寿将 竹内 貴聖
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.16-28, 2020 (Released:2020-03-05)
参考文献数
14

本稿の目的は多くの国で採用されているリニエンシー制度がどの程度カルテルを防ぐ効果があるかを解明することである.そのために同質財ベルトラン競争でカルテルを分析したHinloopen and Soetevent (2005)に倣い,カルテルを行ったことを報告すると課徴金が減免される場合と褒賞金を与える場合とを比較した経済実験をz-Treeを用いて行った.その結果,平均入札価格,カルテルの形成率,再形成率という3つの指標を比較すると,褒賞金を与えるほうがよりカルテルを抑止できるということが判明した.
著者
花田 定晴 岡戸 敦男 濱野 武彦 平野 佳代子 宮下 浩二 小林 寛和
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.205, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】 腰痛の発生は、様々な身体機能の低下が相俟って腰椎-骨盤リズムの乱れなどを生じさせることが問題となる。それが動作時の問題を誘発させ、痛みの発生につながると考えられる症例を多く経験する。その中で、特に股関節の可動域制限は腰痛を誘発する重要な要因の一つである。 今回は腰痛の発生要因の一つである股関節の関節可動域に限定し、動作時の痛みの発生パターンとの関連を定量的に調査した。【対象と方法】 対象は平成4年4月より平成14年10月までに当所にて腰痛症と診断され、理学療法を実施した男性179名とした。 対象を体幹運動の方向と痛みの発生の関係から_丸1_体幹屈曲時に痛みが生じる屈曲型、_丸2_体幹伸展時に痛みが生じる伸展型に分類(川野)した。また、この2項目に分類されないものは対象から除外した。内訳は、屈曲型52名(年齢21.6±9.7歳、身長171.2±5.1cm、体重64.1±11.8kg)、伸展型127名(年齢19.7±8.4歳、身長169.6±8.8cm、体重63.9±14.1kg)であった。 理学療法記録より下肢伸展挙上(以下、SLR)、股関節伸展、外旋、内旋の関節可動域を調査し、各々の項目について屈曲型と伸展型の間で比較した。検定はt検定を用い、有意水準5%未満とした。【結果】 関節可動域の平均値はSLRでは屈曲型74.9±11.1度、伸展型77.9±10.9度であり有意差がみられた(p
著者
工藤 晋平 淺田(平野) 慎太郎
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.140-162, 2017 (Released:2018-10-20)
参考文献数
158

This paper proposes a model explaining both the development and occurrence of delinquency and crime from the perspective of attachment theory. First of all, factors regarding the development of delinquency and crime are summarized, which includes attachment, and then their interactions especially at the onset of delinquency in adolescence are discussed. Then, the relationship between individual differences of attachment and offenses, such as sexual crime, violent crime, and drug abuse, are reviewed. It was concluded that each delinquent behavior connotes deviant forms of both attachment behaviors and attachment figures, that is, such actions relieved offenders from afraid, and in that sense, their actions were thought of as solutions, not problems. The Dual Circle Model of development and occurrence of delinquency and crime are presented as a contribution to the forensic field based on this information. Finally, a comparison with preexisting theories is discussed mainly regarding rehabilitation intervention. Future tasks and prospective studies are also suggested.
著者
吉野 朋美 小林 ふみ子 青木 幸子 中嶋 真也 平野 多恵 佐藤 至子 兼岡 理恵 中野 貴文
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の概要は、以下の四点に集約される。【1】多様な教育手法と経験を備えた大学と高校の教員が、専門分野や学校の垣根を越えて連携し、研究と高等教育の現場を結びつけて、探究型の古典文学教育を実現する。【2】学習者(高校生・大学生・大学院生)と教授者(高校・大学教員)が同じ題材を学び合うことで多様な視座の獲得を可能にするワークショップ(以下WS)を継続的に開催し、古典文学教育でディープ・アクティブラーニングを実現する授業方法を開発する。【3】欧米の大学・大学院における教育方法を応用し、新たな古典教育のモデルを開発する。【4】本研究で開発した教材や教育方法モデルをWeb公開して、社会に広く還元する。
著者
小林 哲郎 柏木 悠 相馬 満利 藤戸 靖則 平野 智也 山岸 道央 和田 匡史 船渡 和男
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.182_2, 2016

<p> 【目的】全力クロール泳におけるキックが水平速度(SV)、ストローク頻度(SR)、ストローク長(SL)、ストロークサイクル内の水平速度変動(IVV)に及ぼす影響を明らかにすること。【方法】被験者は日本代表経験者を含む男子水泳選手5名(身長;175.2 ±6.5cm、体重;78.1 ±7.5kg、50mベストタイム;23.82 ± 0.73s)であった。試技はクロール泳の通常の泳ぎ(スイム)と足首をロープ固定した腕によるストロークだけの泳ぎ(プル)で、25m全力泳をそれぞれ行った。デジタルビデオカメラ(60fps)を用いて選手右矢状面より水中映像撮影を行った。分析区間は右手の1ストロークサイクルとし、選手の右大転子点よりSVを算出した。【結果及び考察】SVはプルに対してスイムで約20%の速度増加がみられ、SRには有意差がなく、SLはスイムの方が大きい値を示した。IVVは、スイムとプルでそれぞれ7.84 ±1.76、9.73 ± 1.87%であり、スイムの方が統計的に有意に小さい値を示した(p<0.05)。スイムはキックにより1ストロークあたりの距離を大きくすることで高い速度を得ていることが推測された。</p>