著者
斉藤 修 星野 義延 辻 誠治 菅野 昭
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.83-96, 2004
被引用文献数
7

&nbsp;&nbsp;1.関東地方のコナラ二次林を対象として,20-26年前に植物社会学的方法で植生調査を行った113プロットの追跡調査を行い,その残存状況,種多様性及び種組成の変化の実態把握と要因解析を行った.<BR>&nbsp;&nbsp;2.追跡調査で残存していたのは113プロット中75プロット(残存率66.4%)であり,コナラ-クヌギ群集39プロット(同60.0%),コナラ-クリ群集36プロット(同75.0%)であった.<BR>&nbsp;&nbsp;3.時間経過に伴う出現種数の変化は両群集とも認められなかったが,管理プロットでは平均出現種数が増加し,非管理プロットでは逆に減少する傾向がみられた.出現種数の変化の要因としては,人為管理の有無及びそれに関連するササ類や常緑木本被度の変化が重要であった.<BR>&nbsp;&nbsp;4.種組成変化の度合いを示す共通係数は,コナラ-クリ群集の方がコナラ-クヌギ群集よりも有意に高かった.また,管理プロットの方が非管理プロットよりも共通係数が高かった.種組成変化に影響する要因としては,コナラ-クヌギ群集ではプロットが位置する市町村の林野率の変化が,コナラ-クリ群集ではプロットの斜面傾斜角,リター被覆率,常緑木本被度の変化が重要であった.<BR>&nbsp;&nbsp;5.減少が顕著であった種群には風散布植物が,増加が顕著であった種群には動物散布植物がそれぞれ多く含まれていた.また,主に鳥散布によって周辺から新規加入してきたと考えられる緑化・園芸種が両群集とも有意に増加していた.これらはプロット周辺地域の人口密度の増加が著しいほど,その増加が顕著であった.<BR>&nbsp;&nbsp;6.コナラ二次林の管理にあたっては,地域スケールでの林の立地特性を考慮しつつ,種多様性と種組成変化の長期的なモニタリングを行なっていくことが重要である.
著者
本田 浩子 斉藤 恵美子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.252-259, 2016

目的 発達障害は症状や障害の範囲が広く,外見から障害があることがわかりにくいことも多い。また,乳幼児期から青年期・成人期に進むと発達障害の特性に二次障害による生活障害が加わることも多く,家族の負担が増加することが予測される。そこで,本研究では成人の発達障害者の親を対象として親の負担感に関連する要因を明らかにし,家族への支援について検討することを目的とした。<br/>方法 首都圏で活動している発達障害者の親の会,精神保健福祉センター,発達障害者支援センターを利用している発達障害者(18歳以上)の親125人を調査対象とした。調査期間は2011年10~11月として,無記名自記式質問紙による郵送調査を行った。調査項目は,対象者の基本属性,負担感として日本語版 Zarit 介護負担尺度短縮版(以下,J-ZBI_8),子どもの状況(性別・年齢・診断名・診断年齢・日常生活の状況・二次障害の有無等),家族内外のサポート状況として情緒的サポート(配偶者,配偶者以外の同居家族等),相談者の有無等とした。<br/>結果 有効回答64票を分析対象とした。女性54人(84.4%),50歳以上89.1%,家族人数の平均3.5人(標準偏差1.1,以下 SD),子どもの平均年齢28.9歳(SD 6.6)であった。子どもの診断は,自閉症32人(50.0%),アスペルガー症候群16人(25.0%),広汎性発達障害(自閉症・アスペルガー症候群以外)13人(20.3%)であり,J-ZBI_8 の平均値は12.8(SD 7.2)であった。負担感を目的変数とし,2 変量の単回帰分析で統計的に有意差のあった家族人数,二次障害の有無,日常生活の状況,情緒的サポート(配偶者)を説明変数,対象者の年齢および診断名を調整変数とした重回帰分析を行った。その結果,二次障害がありの方が(P=0.001),また,日常生活の状況として援助が必要であるほど(P=0.041),負担感が高かった。<br/>考察 本研究は,自閉症を中心とした限定した発達障害者の親を対象としており解釈に限界はあるが,親の負担感は,統合失調症や高次脳機能障害などの精神障害者等を介護している家族の負担感とほぼ同様の結果であった。子どもに二次障害があり,また,日常生活の状況として援助が必要であるほど,親の負担感と関連があった。今回の結果から,親の負担感を軽減するために,二次障害への支援と日常生活の状況に応じた援助が重要であることが示唆された。
著者
平藤 雅之 世一 秀雄 三木 悠吾 木浦 卓治 深津 時広 田中 慶 松本 恵子 星 典宏 根角 博久 澁谷 幸憲 伊藤 淳士 二宮 正士 Adinarayana J. Sudharsan D. 斉藤 保典 小林 一樹 鈴木 剛伸
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.60-70, 2013
被引用文献数
3

フィールドサーバは,野外における情報収集,灌水等の制御,センサ等新デバイスの実験を行うためのセンサネットワーク用プラットフォームである.そのためには多機能かつ十分な拡張性を備えると同時に,機械作業や栽培ステージに応じて手軽に移設でき作業者等の安全性にも配慮したオールインワン化及びワンユニット化が必要とされる.また,半導体技術の進歩やCPU等LSIの世代交代にあわせてハードウェア及びファームウェアの更新と機能向上を迅速に行う必要がある.ところが,大量生産ができない段階では低コスト化と高機能化を両立させることは困難であり,しかもそのような初期段階においては低コストで高機能な試用機がないとアプリケーション開発ができず市場が拡大しないというジレンマがある.これらの問題を解決するための制作手法としてオープンソース・ハードウェアを用いる方法を考案し,オープンソースのフィールドサーバ(Open-FS)を開発した.さらに,Open-FSを用いて測定したデータを低コストに収集・閲覧・共有するための方法として,既存のクラウドサービス(Twitter等)とHTML5で記述した閲覧用ソフトウェアからなる"センサクラウド・システム"を提案し,試作及びインドと日本における長期現地実験によってその有効性を評価した.<br>
著者
斉藤 了文 SAITO Norifumi
出版者
科学基礎論学会
巻号頁・発行日
2007

rights : Copy right 科学基礎論学会「本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものである」Relation : is Version Of.http://ci.nii.ac.jp/naid/130001435409
著者
斉藤 了文 SAITO Norifumi
出版者
社団法人 日本技術士会中部支部 ETの会
巻号頁・発行日
2007

エンジニアを専門職として位置づけるのがここでの問題である。そのために、3つの点に注目して考察する。先ず第一は、人工物問題だ。これは、エンジニア人工物をつくる専門家だということに関わる(第一節)。次に、組織問題がある。これは、エンジニアが独立して仕事をするというよりも、企業や組織に属するということに関わる(第2節)。第三に、専門家の集団が、専門家をどのようにサポートするかという問題がある(第3節)。
著者
斉藤 了文 SAITO Norifumi
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.1-28, 2013-03

We construct a new technology study on artifacts. In this paper, artifacts as physical existence, designed objects, and products ordered by clients will be discussed in terms of living with objects produced by human craft. 技術論を、人工物を中心にまとめることがこの論文の目的である。理学と工学の相違から始めて、人工物を個物として取り上げる。そして、人工物は、科学技術を体現したものであるというだけでなく、発注者の意図を体現したものでもある。この観点から、責任を考えていく。そして、設計というポイントを取り出す。これらの自明の論点を展開することによって、新しい技術論を、人工物と共に暮らすという観点の下に立ち上げる。
著者
斉藤 了文 SAITO Norifumi
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.29-52, 2013-03

本研究は独立行政法人学術振興協会の科研基盤研究(C)課題番号22500972の助成を得た。This article describes ethical issues in technology caused by the Fukushima nuclear accident based on reports of the Accident Investigation Committee and remarks by the party concerned. Multifaceted technological and social problems which are critical for professional engineers will be explored. The focus will be on a number of points: technological design, engineers' decision, social and legal regulation, scientific communication, and so on. 三つの事故調査委員会の報告書及び当事者の発言を基にして、福島原発事故においてどのような工学倫理の問題が存在しているかを記述してみる。もちろん、大きな事故があれば、当然多様で多面的な問題領域が出現する。その中で、技術者という専門家にとって重要となる、技術と社会の問題の発見を試みる。第1節では、設計に関して割り切りや技術の継承を扱う。第2節では、吉田所長という技術者の行動を中心に、海水注入と東電撤退の問題を扱う。第3節では、社会の要請としての規制が現場の技術から乖離する問題を取り上げた。第4節では、技術者が社会に発信する場合の問題を取り上げた。第5節では、セキュリティや専門家としての活動に関わる安全問題を取り上げた。
著者
斉藤 了文
出版者
名古屋工業大学技術倫理研究会
雑誌
技術倫理研究 (ISSN:13494805)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.129-135, 2012

大石敏広『技術者倫理の現在』と比屋根均『技術の知と倫理』の二つの著書の批評を通じて,技術者倫理について考えていく. 3 つの方向で論じて行く. まず第一に,この 2 著の感想,もしくは概観を通じて,技術者倫理の研究の方向性について,そして各著作の論点の幾つかについて取り上げる. 第二に,新たな現代的事例に対して,新しい技術者倫理の著者たちは,どう応えるのだろうか.ここでは,東電の福島原発の吉田所長の事例を提示してみる. 第三に,補足的ではあるが,私自身このごろまた考えている技術論,技術の知識に関して,比屋根さんの論点から触発された論点や議論を提示してみたい.
著者
斉藤 愛
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国際日本文学研究集会会議録 = PROCEEDINGS OF INTERNATIONAL CONFERENCE ON JAPANESE LITERATURE (ISSN:ISSN0387)
巻号頁・発行日
no.24, pp.105-122, 2001-03-01

The view of race is the conceptualization of eyes to a body different from his own. In Japan, the oldest map of human race of the world is one attached to the world map of Nanban sekaizu byôbu. It was produced by the first contact with European culture, and the interests in the different races and the world were kept by creating blockprinted Bankoku Jimbutsu-zu pictures or books, for example, Bankoku Jimbutsu-zu, even during the Edo era when people had the very limited information because of Japan's policy of isolation. And, apart from European culture, the form of knowledge originated from Shanhai-jing of China bore fruit of encyclopedias such as Wakan Sansai Zue (Encyclopedia of Japan and China).What greatly changed the genealogy was a series of political changes starting with the arrival of American ships in the late period of the feudal government. In the meantime the demand for international information burst and enlightening texts on foreign countries, the world maps and the pictorial books of the race in the world were published along with the changes above. The opening of a port in Yokohama in this situation and setting the residential area attracted incredible attention, and Yokohama ukiyo-e in which foreigners were drawn became a widespread fad.Meiji government was established afterward and Japan's modern times which followed Western culture had begun. The first opportunity to lead the era was the campaign for enlightenment by Fukuzawa Yukichi and others. The enlightening books released in succession made the far more precise knowledge about the world's civilization, region and race than one in the previous age popular and the gap between them which is the concept of cultural hierarchy also became well known. Because of this the outlook on the world was rearranged to be a vertical ladder of evolution with western culture on top, Asia at middle, Africa at bottom and Japan was directed to desperately climb up the ladder checking on its position all the time.I would like to follow the changes continuously happened until the birth of modern Japanese view of the race referring to Nanban sekaizu byôbu, Yokohama ukiyo-e, enlightening books in Meiji and the pictures in Kanagaki Robun's book.
著者
三好 孝典 今村 孝 小山 慎哉 大場 譲 市村 智康 沢口 義人 北川 秀夫 青木 悠祐 兼重 明宏 上木 諭 河合 康典 斉藤 徹 高久 有一 上 泰 川田 昌克 内堀 晃彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.501, pp.11-16, 2014-03-10

インターネットにより生み出されるソーシャルコミュニケーションは,何万人・何億人もの人々がお互いに映像や音声を共有し合う人類が経験したことのないコミュニケーションを実現している.しかしながら,これまでに世界中の人々がお互いの力覚を同時に共有し,コミュニケーションを行った例はほとんど報告されていない.本報告では,マルチラテラル遠隔制御を応用し,全国8ヶ所での仮想綱引き実験による力覚共有を報告すると共に,従来行われてきた手法との比較,検討を行う.
著者
林 隆子 川端 博子 石川 尚子 大久保 みたみ 大関 政康 大竹 美登利 唐沢 恵子 斉藤 浩子 高崎 禎子 武田 紀久子 山形 昭衛
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.361-369, 1992

高齢者を対象とする日常着についての調査より, 高齢者の衣服の着方について以下のような特徴がみられた.<BR>(1) 男性は, 上半身に肌着シャツ, 外衣シャツ, ジャケットかジャンパーの着用が一般的であるが, 5・6月ごろの気温の変化には, 肌着シャツの重ね着で対応していることがわかった.下半身には, パンツ, ズボン下にズボンを着用している.<BR>(2) 女性は, 上半身に肌着シャツ, ブラウス, セーター類を着用している例が最も多かった.上半身用衣服には前あき型で七分袖のものが多く, 肌着シャツの重ね着は男子と同様であった.また, 下半身には, パンツ, 長パンツやズボン下そしてズボンかスカートを着用している.夏に向けてスカート・ワンピースの着用が増すが, パンツ類の着用は依然として多く, 足腰の冷えと着衣の関連性をうかがわせる結果であった.また, 服種は男性のものにくらべ女性のほうが多い.<BR>(3) 高齢者用衣服の素材には, 下着類に綿, 外衣に化学繊維が多く使用され, 天然繊維を志向する若者と対照的である.素材に関する知識は一般に低かった.<BR>(4) 着衣の種類より推定した衣服の熱抵抗と衣服重量より, 高齢者は, 若者にくらべ厚着の傾向がみられるが, 衣服の着方に個人差が大きい.<BR>以上の結果より, 高齢者のよりよい衣生活をめざして次のような点が望まれる.<BR>服種の多様化 : 高齢者の日常着の種類をみるとき, 男性では, ジャケットやジャンパーの着用が多い.それにくらべて女性はカジュアルなセーター類の着用が多い.男性は, 習慣的に外出用としてこの種の衣服を着用していると考えられるが, 家庭内ばかりでなく近所等に出かけるときにも, 軽量で伸縮性に富む衣服の着用が勧められる.女性については, 若年者にくらべ衣服の種類が少ないが, 夏になるとスカートやワンピースの着用者も増えるなどおしゃれに無関心でないことが推察される.そこで, ファッション性を取り入れた衣服の供給が望まれる.たとえばキュロットスカートなどは活動がしやすい衣服の例として考えられる.<BR>衣服の着方と形・素材の工夫 : 男女とも, 体温調節のため厚着傾向の人が多数を占めていたが, 少ない枚数でも重ね着をすると同効果が得られるような衣服, とくに下着類の充実が求められる.すなわち, 腰, ひざやひじの冷えを防ぐよう局所的に厚手のものにするなど構成と形の工夫, 熱抵抗性の高い布素材の利用, また, 重ね着をしても活動に支障をきたさないような伸縮性素材の使用などが考えられる.一方で着衣の量に個人差が大きいことから, 季節を問わず, 保温性の高いものから低いものまで多種多様な衣服の供給が望まれる.<BR>表示の改善 : 素材についての知識は一般に低いので, 組成や洗濯表示を見やすく, わかりやすい大きさで表示されるよう改善を促す必要がある.