著者
土井 元章 斉藤 珠美 長井 伸夫 今西 英雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.854-860, 1999-07-15
被引用文献数
2 3

1. 小花の30%が開花した段階で採花したシュッコンカスミソウ'ブリストル・フェアリー'の切り花を水にいけ20&acd;29℃下に保持したところ, 20℃下では小花は形を保ったま老化してドライフラワー状となり, 黒花とはならなかったが, 23℃以上の温度下では急激に花弁がしおれて萎縮し, 黒花となった.2. つぼみ段階で採花した切り花に対し0.2mM STSと4%ショ糖を含む前処理液で3時間の水あげを行っただけでは, 25℃下における黒花の発生を完全に回避することはできなかった.前処理に引き続いて0.26mM 8-hydroxyquinoline sulfate (8-HQS)と4%ショ糖を含む開花用溶液にいけて糖を与え続けることにより, 小花の開花が促されるとともに, 25℃下でも黒花発生をほぼ抑えることができた.収穫から30%開花までの日数は, 20℃で5日, 25℃で3日程度を要した.また, 開花を促す際に20℃として光強度を15.0W・m^<-2>にまで高めることにより, 切り花品質が向上し, その後水にいけた場合の品質保持期間が延長された.3. 切り花の呼吸速度は温度に対して指数関数的に増加し, 20℃での呼吸速度は約210 μmol CO_2・hr^<-1>・100 gfw^<-1>で, Q_<10>=1.5となった.4. 25℃下で水にいけた切り花の小花では, 20℃下でいけたものに比べて, 2日目および4日目のブドウ糖, 果糖含量が1/2&acd;1/3, ショ糖含量が1/4程度にまで減少していた.また, 25℃下で開花用溶液にいけた切り花では, これら3種類の糖含量が高く推移し, このことが黒花の発生を抑制しているものと考えられた.5. つぼみ切りした切り花は, 出荷段階にまで開花を促した後の品質保持期間を低下させることなく, STS処理後ショ糖溶液による湿式で4週間程度の貯蔵が可能であった.
著者
山内 加奈子 斉藤 功 加藤 匡宏 谷川 武 小林 敏生
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.537-547, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
43
被引用文献数
3

目的 地域高齢者における 5 年間の縦断的研究により主観的健康感の低下に影響を及ぼす心理・社会活動要因について明らかにすることを目的とする。方法 愛媛県東温市に在住する65歳以上の高齢者7,413人全員に「高齢者総合健康調査」を実施し,85歳以上または日常生活動作で介助を必要とする者および 5 年間における死亡・異動等を除く4,372人を追跡対象者とし,3,358人を分析対象者とした(追跡率76.8%)。主観的健康感は「普段,自分を健康だと思いますか」に 4 件法で回答を求め,さらに「非常に健康である」,「まあ健康である」を主観的健康感の健康群,「あまり健康でない」,「健康でない」を非健康群に分類した。この 2 群について,5 年間追跡することで,主観的健康感の変化およびそのパターン別の割合を検討した。次に,初回調査時における主観的健康感の健康群を対象とし,5 年後の主観的健康感が健康か非健康かを目的変数として交絡因子を調整の上,初回調査時の老研式活動能力指標,生活満足度尺度 K,認知症傾向,うつ傾向の心理・社会活動指標の各因子との関連についてロジスティック回帰分析を用いて検討した。結果 5 年間の追跡調査後に,主観的健康感の健康群は男女ともに減少した。追跡期間中に健康を維持した者の割合は,男女とも,前期高齢者では約 6 割,後期高齢者では約 4 割であった。前期高齢者においては,初回調査時の生活満足度が高いことの低いことに対する 5 年後の主観的健康感が非健康であるオッズ比は,男性で0.85(95%信頼区間:0.77-0.93),女性で0.79(95% CI: 0.72-0.87)とそれぞれ有意に低く,さらにうつ傾向有のうつ傾向無に対するオッズ比は女性でのみ1.68(95% CI: 1.11-2.56)と有意に高かった。後期高齢者においては,生活満足度が高いことの低いことに対する 5 年後の主観的健康感が非健康であるオッズ比は,男性で0.87(95% CI: 0.77-1.00),女性で0.89(95% CI: 0.80-0.99)と有意に低く,さらに老研式活動能力が高いことの低いことに対するオッズ比は,男性で0.80(95% CI: 0.70-0.91),女性で0.88(95% CI: 0.80-0.97)と有意に低かった。結論 本研究から,地域高齢者の主観的健康感の低下を防ぐためには,男女ともに生活満足感を高めることが必要と考えられた。加えて,前期高齢者の女性においてうつ傾向がないこと,および後期高齢者では,男女共に日常生活活動能力を維持することが,主観的健康感の維持のためには重要と考えられる。
著者
小山 秀紀 鈴木 一弥 茂木 伸之 斉藤 進 酒井 一博
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.56-67, 2019 (Released:2020-04-10)
参考文献数
33

本研究では昼寝を想定した椅子での短時間仮眠が睡眠の質,パフォーマンス,眠気に及ぼす影響を調べた。仮眠は昼食後の20分間とし,ベッドでの仮眠を比較対照とした。測定項目は睡眠ポリグラフ,パフォーマンス(選択反応課題,論理課題),精神的作業負担とした。分析対象は夜間睡眠統制に成功した6名(20.8 ± 1.6歳)であった。ベッド条件に比べ,椅子条件では中途覚醒数が有意に多く(p < 0.05),徐波睡眠が少ない傾向にあった。両条件で仮眠後に眠気スコアは有意に低下した(p < 0.001)。パフォーマンスは条件間で有意差はなかった。昼寝椅子における短時間仮眠は睡眠が深くなりにくく,ベッドとほぼ同様の眠気の軽減効果が得られることが示された。(図5,表8)
著者
秋山 一文 斉藤 淳
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.207-212, 2006-10-25
被引用文献数
1

脳には視床下部-下垂体-副腎皮質系(hypothalamiic-pituitary-adrenocortical axis, HPA系)とノルアドレナリン系というストレス反応を担う2つの系が存在する.急性のストレス反応を終焉させるためにHPA系全体に負のフィードバックが作動する.しかしストレス反応は長期化すればいわば「両刃の刃」としての性質をもつようになる.その引き金になるのがストレスの反復による海馬神経細胞への障害で,これにはbrain derived neurotrophic factor(BDNF)の減少が関与しているかもしれない.またストレスの反復によって脳内ノルアドレナリンの放出は感作される.精神障害は何らかの意味でストレスの影響を被るが,特にストレス反応を担うHPAの制御の障害が示唆される精神障害としてうつ病.外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder, PTSD),摂食障害を取り上げた.いずれも遺伝的要因を含む脆弱性を有する個人に何らかのストレス負荷が加わり発症するという図式に共通点がある.しかしデキサメサゾン抑制試験で評価したHPAの制御障害の方向性はうつ病では非抑制,PTSDでは過剰抑制と相反している.MRIによるうつ病の画像研究では海馬の萎縮を認めた報告が多い.これがいつから始まるかという問題はストレスによる海馬神経細胞への障害の時間的経過という点で興味深いが更に今後の検討が必要と考えられる.近年,児童虐待が社会問題化しているが,被虐待児が後年になってうつ病,あるいはPTSDなど深刻な精神障害を高率に発症することが見いだされている.このようにストレスと精神障害との関係は大きな広がりを見せつつある.
著者
斉藤 誠 社 雨霏 丸岡 大祐 八木 啓俊
出版者
大阪大学歴史教育研究会
雑誌
大阪大学歴史教育研究会 成果報告書シリーズ (ISSN:21869308)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-23, 2017-03-15

2016年度大阪大学歴史教育研究会院生グループ報告(1)研究者・教員・市民のための新しい歴史学入門(平成26-29年度科学研究費補助金・基盤研究(A)・課題番号26244034) #研究代表者 桃木至朗(大阪大学大学院文学研究科教授)
著者
斉藤 英俊 大塚 攻 河合 幸一郎
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

1)スジエビ類および寄生種の遺伝属性: エビノコバンは、これまで沖縄県から山形県までの15県でエビノコバンを採集し、ミトコンドリア DNAの配列情報を明らかにして中国産エビノコバンのデータ(NCBLより引用)を加えて分子系統樹作成を行った。その結果、エビノコバンの分子系統樹は、本州~九州、沖縄および中国の3つのクレードに区分された。愛媛県のエビノコバン(宿主:チュウゴクスジエビ)は中国産個体に近い遺伝的属性を示したことから、チュウゴクスジエビの輸入にともないエビノコバンも中国から侵入している可能性が示唆された。2)寄生種がスジエビ類に及ぼす生態的影響:スジエビ類に対するエビノコバンの奇生生態の地域差を比較するため、前年度に引き続き野外調査をおこなった。その結果、宿主への寄生は東京都(利根川水系水路)では2018年7月(体長2mm)から2019年5月(体長12mm)までみられた。これに対して滋賀県(琵琶湖周辺河川) では2018年8月から2019年6月までみられた。また、エビノコバンの体長が比較的小型の時期にはスジエビ類よりも体サイズの小さいカワリヌマエビ類にも寄生する事例がみられた。なお、エビノコバンの室内飼育実験を試みたが、長期的なエビノコバンのエビ類への寄生状態を維持できなかった。これについては、次年度以降、野外調査データを利用してエビノコバンの寄生の有無と宿主であるエビ類の成長や肥満度の関係を解析することで明らかにできると考えている。3)スジエビ類および寄生種の流通状況:大阪府の釣具店において、スジエビ類を調査したところ、令和元年度はすべてスジエビであり、チュウゴクスジエビは流通していなかった。また、琵琶湖産スジエビに付随するエビノコバンを確認した。
著者
大塚 義顕 石川 哲 斉藤 雅史 斎藤 隆夫 大森 恵子 渋谷 泰子 佐藤 孝宏 長谷川 正行
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.69-74, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
14

呼吸器疾患患者の中でも慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)には嚥下障害が高率に併存し,増悪と嚥下障害との関連が指摘されている.一般的に,呼吸と嚥下は文字通り表裏一体の協調関係にあるとされ,切り離しては考えられない.嚥下筋は呼吸中枢からの制御を受けて呼吸と協調した運動をするが,COPDでは呼吸のサイクルが増し,呼気が短くなることから異常な嚥下反射が起こりやすくなると考えられる.そのため嚥下障害の特徴を踏まえたうえで対応することが望まれる.一方,フレイル・サルコペニアを考えたときにオーラルフレイルから咀嚼障害や嚥下障害に移行しないようにしなければならないし低栄養に陥らないようにもする必要がある.そこで,本報告はCOPDのオーラルフレイル・サルコペニア,嚥下障害との関連,および包括的な嚥下リハビリテーションの介入でCOPD増悪の頻度を低下できた症例を提示する.
著者
斉藤 邦史
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.127-138, 2018 (Released:2018-11-08)

本稿では,私人間におけるプライバシーの法的保護を再検討することにより,以下の考察を得た。第一に,信頼関係に基づく情報の分配状況は,個人の自律的な選択により実現する状態としてのプライバシーそのものなのであり,米国では信認義務の法理による保護の拡張が模索されている。第二に,私人間でプライバシー外延情報の「適切な管理についての合理的な期待」を保護する日本の判例法理は,当事者間の信頼関係に基づく情報の分配状況を保護法益と捉えるものであり,信認義務の法理と共通する側面がある。第三に,情報の「適切な管理」に関する事業者の義務を,信義則に基づくものと理解するならば,秘密保持義務だけでなく,情報開示義務をも基礎付けることができる。
著者
呉 珠響 斉藤 恵美子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.105-113, 2017 (Released:2017-10-31)
参考文献数
22

目的:本研究は,無年金または低年金の定住コリアン高齢者が経験した健康に関連する生活上の困難さを明らかにすることを目的とした.方法:研究参加者は,地域で生活する65歳以上の定住コリアン高齢者とした.Spradley(1979)のエスノグラフィックインタビューの手法を参考に,8名の参加者に1対1の半構造化面接を実施した.結果:収集したデータから70のサブカテゴリと8つのカテゴリを抽出した.カテゴリは,お金がないから生活が厳しい,1世は読み書きができない,地域に入っていくことは難しい,自分たちも日本人もどちらも関わろうとしない,人とのつながりをもつ重要性を認識しながらもつながりが持てない現実がある,よりどころがない,アイデンティティがひとつだけではない,社会へのあきらめの気持ちから地域に少しずつ染まるという8つで構成された.結論:看護職は,高齢の外国籍住民の多様な文化的背景や習慣の違いによる生活上の困難さを理解して,支援することが重要である.
著者
横山 真男 斉藤 勇也
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. EC, エンタテインメントコンピューティング (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.22, pp.1-6, 2015-02-23

1980 年代から 2000 年にヒットした邦楽の楽曲構造を分析し可視化を行った.対象として,オリコンランキングの 1980 年から 2007 年の各年で Top10 に入る楽曲について調査した.本研究では,曲のサビに注目し,コード進行の頻度やパターン,シンコペーションの数,動機のパターンを取り上げ,年毎にその特徴を分析した.
著者
東口 篤司 逸見 博文 金澤 朋扇 斉藤 学
出版者
日本哺乳動物卵子学会
雑誌
Journal of mammalian ova research = 日本哺乳動物卵子学会誌 (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.134-138, 2009-10-01
参考文献数
14

薄い内膜では何故妊娠率が低いのか、そのメカニズムは不明である。本研究ではそのメカニズムを解明するために薄い内膜と正常の厚さの内膜のステロイドレセプター、Transforming growth factor α(TGFα)、酸化ストレスを比較検討した。対象は205症例、1,035自然周期で、妊娠率から排卵後5-7日目の子宮内膜が6cm以下を薄い内膜群(12例;妊娠率8.3%)、7cm以上を正常内膜群(193例;妊娠率51.3%)とした。薄い内膜群ではエストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、内膜間質における酸化ストレスが有意に高く、TGFαが有意に低かった。これらの機能的異常が薄い内膜における低妊娠率のメカニズムと考えられた。
著者
斉藤 了文
出版者
名古屋工業大学技術倫理研究会
雑誌
技術倫理研究 (ISSN:13494805)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-20, 2006
被引用文献数
1

テクノロジーを理解する枠組みを提案する。その基本は、「人工物に媒介された倫理」である。人工物をつくるエンジニアにとって、その責任とか、人工物を使うユーザの位置づけを考える上で、人工物に媒介されているという観点は興味深い論点を含んでいる。 さらに、テクノロジーが使われている社会とその制度の記述を基に考察を進める。その基本が、不法行為法の変遷である。このポイントは、過失に焦点を当てると、それを通じて自律的な人間というユーザの位置づけができなくなる、ことである。この場合に、社会的行為者として責任を取ることのできるものは、メーカーつまり法人という「奇妙な人工物」になってしまう。また、エンジニアも専門家団体の一員として(医師や弁護士のように)損害賠償責任を負うことになれば、テクノロジーと共に暮らす社会の責任ある行為者となりうる。
著者
竹村 貴人 斉藤 奈美子 池野 順一 高橋 学
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.160-164, 2009-08-10
参考文献数
12
被引用文献数
1

近年の急速な産業技術の発展に伴い,レンズやシリコンウェハなどの先端材料の精密加工の需要が非常に高まっている.そのような背景のもと,砥石は物作り産業をはじめとする産業技術の基盤を支える重要な道具の一つであることはいうまでもない.しかしながら,天然砥石の合砥と呼ばれる仕上げ砥は,未だに人工的に造られた人工砥石よりも優れた研削性能を持つものもあるとされており,現在でも日本刀や和包丁など刃物の研ぎ師が好んで使っている.ここでは,このように優れた研削性能を持つ天然砥石,とくに合砥に関する情報を人工砥石に取り入れることを目的として,合砥の内部構造の特徴を応用地質学的な視点を交えてまとめた.その結果,質の高いとされる合砥はサブミクロンオーダーの空隙が多く存在していることが明らかになった.
著者
斉藤 理 渡部 史之
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学学術情報 (ISSN:21894825)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.41-54, 2017-02-28

There are many cultural assets in Yamaguchi prefecture at present, but much of them after the Edo Period aren't investigated sufficiently yet. Therefore it's necessary to investigate those cultural assets and know the contents to understand history in Yamaguchi prefecture and culture more deeply. Kinashi Seiichiro, from Yamaguchi prefecture, was a military personnel, an officer of a government and a politician from the late Edo Period to Meiji Period. This papen is the part of the research result of the cultural assets transmitted to offspring's house of him. The investigation is still continuing and through this analysis we could show some new historic interpretation of Mr. kinashi. We also expect that we can grow interest in preservation of the cultural assets in Yamaguchi prefecture through these investigations.