著者
木下 博久 長谷川 修一 野々村 敦子 山中 稔
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.472-484, 2019-02-10 (Released:2019-12-24)
参考文献数
50
被引用文献数
1 3

流域スケールにおける斜面崩壊の潜在的危険度を評価することを目的として,谷密度のみを変数とする簡便な評価手法を提案し,その有効性,適用性を検討した.国土地理院発行2万5千分の1地形図及び10mDEMを用いた地形解析から谷線を抽出し,谷密度を算出した.谷線はコンターの平均曲率(H)から求め,H>0.1を閾値とすることで,谷地形としての再現性が高くなることを確認した.表層崩壊,土石流を主とする既往土砂災害を対象として,災害発生斜面の流域の谷密度と比較した結果,谷密度が高い流域ほど豪雨時に不安定となり崩壊が発生しやすい場所が多く存在すること,また,谷頭付近を発生源とする崩壊が多いなどの傾向が認められた.谷密度と崩壊頻度との関係は,0.5~1.5km2程度の流域において比較的良い相関(r=0.60~0.66)を示した.このことから,対象とする解析領域の大きさを考慮することで,本手法は表層崩壊や土石流といった斜面崩壊の危険度評価に有効な手法となり得ると考えられる.今後さらに既往災害事例との比較を重ね,また,地形地質的素因が谷密度に与える影響を考慮するなどで,様々な崩壊タイプに対する本手法の汎用性,適用性の拡大が期待される.
著者
古屋 晋一 片寄 晴弘 木下 博 FURUYA Shinichi KATAYOSE Haruhiro KINOSHITA Hiroshi
雑誌
SIG-SKL = SIG-SKL
巻号頁・発行日
vol.01, no.04, pp.17-24, 2008-09-16

重力を利用して打鍵する「重量奏法」は、百年以上の間、ピアノ打鍵動作における熟練技能であると考えられてきた。本研究では、逆動力学計算と筋電図解析により、重量奏法が一流ピアニストのみが用いる運動技能であることを、世界で初めて実証することに成功した。
著者
福岡 荘尚 森田 祐子 小池 尚 木下 博章
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
日本セラミックス協会学術論文誌 : Nippon Seramikkusu Kyokai gakujutsu ronbunshi = Journal of the Ceramic Society of Japan (ISSN:09145400)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1292, pp.277-281, 2003-04-01
参考文献数
16
被引用文献数
1

径方向に屈折率分布を有するr-GRINレンズ(radial Gradient Index Lens)は光学設計上高い収差補正能力を持つことか知られている。このr-GRINレソズの中で,レンズ媒質中での色収差がほとんど発生しないものを低分散分布GRINレンズと呼び,白色光源下において,従来の均質レンズと比較してレソズ枚数を約1/3に削減し,光学系の超小型化か可能である。そこで著者らは,r-GRINレンズのガラス組成の設計を行い,Si0_2-Ti0_2-BaO-K_20系ガラスが色収差かほとんど発生しない低分散分布r-GRINレンズの最適な候補であることを明らかとした。この組成を目標に作製を検討し,屈折率差が0.018,投影解像度100本・mm-1の低分散分布r-GRINの作製を報告した。次に,分布付与溶媒の検討によるΔnの拡大検討を行った結果,メタノールとジイソプロピルエーテルの混合溶液を用いたとき,Δnを0.022まで拡大することが可能となった。しかし,これらのBa量では,最大の濃度差を付与しても, 0.04程度,又はそれ以上のΔnをもったr-GRINレンズを作製することは困難で,小型で高性能の光学系に適合することはできなかった。そこで,r-GRINレンズのΔnを拡大することを目的とし,ゾル調製時のBaを増量することによりBaの初期濃度を高くして,最終的に濃度差を大きくとることか可能となるSi0_2-Ti0_2-BaO系のゾル調製方法を遊星式かくはん脱抱腹により検討し,ゾル調製時のBa濃度を増加させ,かつ,ゾル調製工程を短縮し,従来のスクーラーによるかくけんでは調製が困難な領域の均一なゾルを容易に調製できることを明らかとしたそこで,遊星式かくはん脱泡機を用い,ゾル中のBa濃度を増加させてゾル調製を行いゲルを作製し,すでに報告したゲルの処理条件で処理すると,ほとんどのゲルに割れが発生した。従来のゲルの処理条件は,ゲル中のBa濃度が低く,処理溶媒はこの濃度に適合していた.しかし,本研究でりゲル中のBa濃度は高く,粗大な酢酸バリウムの結晶がゲルに折出して割れが発生したものと考えられる。そこで,高いBa濃度に適合した溶媒等のゲル処理条件を設定する必要があった。したがって,効率よく適切なゲルの液浸条件を決定するために,統計的な手法である品質工学(田ロメソッド)を用い,ゾル仕込み条件とウエットゲル作製条件を決定した。そして,決定した条件により作製したゲルを用いて,Δnが0.04程度のSi0_2-BaO-Ti0_2-K_20系の低分散分布r-GRINレソズを作製することを目的とした。
著者
天野 正道 田中 啓幹 高田 元敬 森永 修 三宅 清 木下 博之 絹川 敬吾 別所 敞子 松本 明
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.832-840, 1988-05-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
21

急性精巣上体炎の原因微生物として Chlamydia trachomatis (C. trachomatis) の占める割合を明らかにするために自験例42例 (平均年齢35.8歳) を対象に尿道よりのC. trachomatis の検出と血清抗体価測定を実施し以下の成績をえた. 1) C. trachomatisは18例中6例 (33.3%) より検出され, 血清抗体価を全例で測定しその陽性率は, IgM 19.0%, IgA 38.1%, IgG 66.7%であった. 年代別では抗原, 抗体共に年代が低いほど, 陽性率が高い傾向を認めた. 2) 各抗体価の経時的推移を7例につき最長4カ月観察した. 4倍以上の推移をみた症例数は, IgM 2例, IgA 1例, IgG 3例で, いずれかの抗体価が4倍以上の推移を示したのは7例中4例であった. 3) C. trachomatis が検出された6例の平均年齢は23.0歳 (18~31歳), 血清抗体価陽性症例はIgM 2例, IgAとIgGは全例であった. 膿尿は5例で認め, 一般細菌培養では検討した4例で起炎菌と推察される細菌は証明されなかった. 4) 急性精巣上体炎中C. trachomatis 感染症の占める割合を検討した. C. trachomatis 検出症例は6例, IgM抗体価陽性症例は7例, IgA抗体価陽性症例は5例, 以上18例はC. trachomatis 感染症と診断され全症例の42.9%に相当した. 著者らの検討ではIgG抗体価陽性症例中約80%が最近の感染による抗体価上昇と考えられ, それらを加えると44例中28例 (66.7%) がC. trachomatis 感染症と推察された. 若年者 (35歳以下) の本症ではC. trachomatisによるSTDとして捕え, 対処すべきとの考えを支持する成績であった.
著者
木下 博義 山中 真悟 中山 貴司
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.181-188, 2013-11-27 (Released:2013-12-12)
参考文献数
13
被引用文献数
5 2

本研究では,理科における小学生の批判的思考に焦点を当て,その実態を明らかにすることを第一の目的とした。さらに,小学生の批判的思考に影響を及ぼす要因構造を分析し,指導法考案へ向けての示唆を導出することを第二の目的とした。これらの目的を達成するため,小学校5,6 年生429 名を対象に,35 項目からなる質問紙調査を実施した。その結果,一つ目の目的に対して,児童の探究的・合理的な思考に比べて,反省的な思考や根拠を重視しようとする意識が低いことが明らかになった。また,二つ目の目的に対して,探究的・合理的に思考している児童ほど,反省的に思考したり,意見の根拠を重視したりしていることが明らかになった。これらの結果を踏まえ,児童の反省的な思考や根拠を重視しようとする意識を高めるためには,探究的・合理的な思考を培うような指導をすべきであるという示唆を得た。
著者
木下 博之 岩本 博光 馬野 泰一 椿原 秀明 坂田 好史 森 一成
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.1020-1024, 2015 (Released:2015-11-30)
参考文献数
23
被引用文献数
2

症例は51歳の男性.腹膜播種を伴う高度進行胃癌に対してXP (capecitabin/CDDP)療法を6コース施行した後に胃全摘,2群リンパ節郭清術を施行した.術後も2コースを追加したところ,Grade 4の汎血球減少と頻回の下痢を認め,大腸内視鏡検査と血液検査からサイトメガロウイルス(以下CMV)腸炎と診断した.その後,ガンシクロビルの投与で腸炎は著明に改善した.なお,末梢血単核球中のdihydropyrimidine dehydrogenase(以下DPD)蛋白量は21.5U/mg proteinと基準値(33.6~183.6U/mg protein)に比して低値を示し,DPDの活性低値により重篤な副作用が発症したものと判断した.DPDが欠損または活性低下を示す患者の存在と日和見感染症としてのCMV腸炎の発症にも留意することが肝要であると考える.
著者
角屋 重樹 木下 博義 佐伯 貴昭
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.37-43, 2007
被引用文献数
2

本研究の目的は,小学校と中学校の教師を対象に,観察・実験を通して児童・生徒に育成される力を因子論的に分析するとともに,小学校教師と中学校教師がとらえている観察・実験を通して育成される力に関する因子の関係を検討することである。このため,広島県内の全公立小中学校の理科担当教師を対象に,16項目からなる質問紙調査を実施した。小学校教師366名と中学校教師255名を対象とした結果は,以下のようになった。(1)小学校教師が観察・実験を通して児童に育成されると考えている因子は,問題解決の技能と原理や法則の理解からなるものと,人間性の育成,の2つである。(2)中学校教師のそれは,問題解決の技能,人間性の育成,原理や法則の理解,の3つである。(3)小学校教師と中学校教師の観察・実験を通して育成される力に関する因子の関係は,以下のようになった。(1)小学校教師が観察・実験を通して育成されると考えている因子は,問題解決の技能と原理や法則の理解からなるものであったが,中学校のそれは問題解決の技能と原理や法則の理解に分離していた。(2)小学校教師が観察・実験を通して育成されると考えている人間性の育成という因子は,中学校教師と同一であった。
著者
中村 弘樹 木下 博明 広橋 一裕 久保 正二 田中 宏 塚本 忠司 藤尾 長久
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.22-28, 1994-02-25 (Released:2012-11-13)
参考文献数
17

最近3年間の肝胆道手術症例213例の肝門部胆管合流形式を検討したところ, 総肝管より肝内に向かって第1次および第2次分枝の合流形式は, 2枝合流型149例(70%), 3枝合流型30例(14%), 後枝独立合流型11例(5%) および左肝管に後枝が合流する型23例(11%)であった. 2枝合流型のうち, 右肝管に第3 次分枝の右前枝と右後枝が別個に合流する破格が2例(1%), 第4次分枝以降の肝管枝が肝門部に合流する破格が2例(1%) みられた. これらの肝管枝は, 後枝独立合流型の右後枝や左肝管に後枝が合流する型の右前枝とともに, 副肝管とされることがある. しかし, 帰納的に類推すると, 諸家が従来副肝管と呼称した胆管枝が実は, 肝管の第 2, 3, ……n次分枝 (ある肝領域の唯一の胆汁排出枝) の破格と考えられた. 「副」は付随的な意味ゆえ, 機能的に同等な肝管枝が形態上「副肝管」とされるのは不適当で, この場合「異所性肝管」と呼称すべきである.
著者
吉本 充宏 古川 竜太 七山 太 西村 裕一 仁科 健二 内田 康人 宝田 晋治 高橋 良 木下 博久
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.109, no.10, pp.595-606, 2003-10-15
被引用文献数
5 18

鹿部冲の海底に分布する北海道駒ヶ岳火山1640年の岩屑なだれ堆積物を調査した音波探査の結果,海底岩屑なだれ堆積物の分布の末端部を確認することに成功したこれらは溶岩流などに認められる急勾配の末端崖は示さないものの,傾斜の変化を示す海域に分布する流れ山は岩屑なだれ堆積物分布末端部では存任せず,流走距離に反比例して規模・分布頻度が小さくなる傾向を示す海域における岩屑なだれ堆積物の分布は,主方向が北東方向と東方向の双頭状の分布を示し,給源からの最大水平流走距離は約20km,最大幅は約15km,分布面積は約126km^2であるH/L比は0.06であり,海底を流走した岩屑なだれは同規模の陸上岩屑なだれより流動性が高い傾向がある実際に海中に流入した体積は,探査から求めた海底地形データによって見積もった体積に,薄く広がった部分と流れ山の体積を加えた0.92〜120km^3と見積もられた
著者
吉永 砂織 藏元 恵里子 木下 博恵 根本 清次
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.115-119, 2012 (Released:2015-09-11)
参考文献数
9

健康な成人女性4名を対象に、運動負荷の前・後および回復期に僧帽筋の筋電図測定と頚肩部の自覚症状の聞き取りを行った。測定した筋電図は高速フーリエ変換による周波数解析を行い、パワースペクトルを求め、64階調のスケールカラーで表す筋電位トポグラムを構成した。この結果から、“肩こり”という症状を視認的に説明するための一助として、トポグラフィにより運動負荷による影響について検討した。  肩こりを自覚する2名には、運動負荷後に特徴的な電位の増大が認められ、周波数1~3 Hzおよび10~15 Hz帯域のトポグラム上で鮮明に確認された。これらの筋活動は肩こりのない2名には観察されなかった。以上の結果から、低周波帯域で電位が増大した筋活動は、肩こりに特有な筋活動現象であることが示唆された。
著者
首藤 太一 広橋 一裕 久保 正二 田中 宏 山本 隆嗣 竹村 茂一 大場 一輝 上西 崇弘 井上 清俊 木下 博明
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.1387-1394, 2001-09-01
被引用文献数
3

肝細胞癌(肝癌)切除後の他臓器転移(Distant metastasis:DM)例が増加し, 対応に苦慮することも多い.今回DM例の再発後生存率(R-SR)に関与する臨床病理学的因子の解析を行い, DM例に対する治療のあり方を検討した.対象と方法:1999年12月までの10年間に教室で初回肝切除の施された肝癌386例中227例が再発した.このうちDM例は61例(27%)であったが, DM例のR-SRに関与する臨床病理学的因子の単変量, 多変量解析を行った.結果:残肝単独再発166例およびDM例の再発後1, 3, 5年生存率はそれぞれ77, 48, 19%および61, 31, 15%(p=0.0042)であった.DM61例中43例に残肝再発が併存したが, DMの内訳は骨28例, 肺20例, リンパ節11例, 脳7例, 副腎7例, 胸腹壁4例, 腹膜3例であった.今回検討した因子中単変量解析でR-SRに関与する因子は初回肝切除時AFP陰性(n=39), Stage III以下(n=53), 再発時若齢(n=32), 残肝再発治療(n=34), DM巣切除(n=14)の5因子であった.多変量解析ではstage III以下, 残肝再発治療, DM巣切除が独立因子であり, 再発時肝機能因子や初回治療因子は関与しなかった.結語:DM例のR-SRは不良であるが, 残肝再発が治療可能な場合にはDM巣切除がR-SR向上に関与する可能性があるため, 切除も含めた他臓器転移の治療を継続すべきであると思われた.