著者
奈女良 昭 西田 まなみ 屋敷 幹雄 木村 恒二郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.126, no.12, pp.1271-1277, 2006-12-01 (Released:2006-12-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

In emergency and critical care medicine, it is important to guess which poisons that patients have taken or been exposedto. The assumption and identification of save lives. Therefore an accurate screening system is required to treat acute poisoning patients in clinical toxicology. However, the ability of a medical center is not sufficient to analyze poisonous substances using analytical equipment. Moreover, the handling and maintenance of the equipment are tedious and costly. To improve these problems, a simple detection method should be established to identify poisons and to treat acute patients in emergency and critical care medicine. In our laboratory, various supports have been attempted for the training of analysts who cope with poisoning incidents and accidents due to toxic substances. Moreover, a simple detection method for toxic substances utilized in the medical center was developed without using expensive analysis apparatus. However, it is impossible to detect and identify chemical warfare agents in a clinical laboratory, because of possible secondary exposure to such dangerous substances in insufficient analytical laboratory equipment. Therefore it is necessary to contact related organizations possessing the proper facilities.
著者
清水 晃 河野 潤一 葉杖 真二 木村 重 田村 弘
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.819-824, 1987

実験用のマウス (ヌードマウスを含む), ラット, ウサギおよび捕獲されたドブネズミ, クマネズミ, ハツカネズミ, フェレットから分離されたStaphylococcus aureus267株について, ヒト系 (Hセット) およびウシ系 (Bセット) S. aureus型別用ファージセットを用いて, 型別を試みた。実験用小動物由来139株の型別率はHセットで75.5%, Bセットで93.5%であり, 捕獲げっ歯類由来128株の型別率はHセットで32.8%, Bセットで62.5%であった。Hセットを用いて, 同一飼育場から購入したマウス・ラットの分離株をしらべると, マウス株のすべてがII群に, ラット株の大多数がI群および混合群に属した。Bセットを用いると, 捕獲されたドブネズミ株の多くはIV群に, クマネズミ株の多くはIII群に, ハツカネズミ株の多くはII群に属した。捕獲げっ歯類由来株の型別には, Bセットが型別率, 識別能力の点でHセットより有用と思われた。
著者
岩間 彬 青柳 鐘一郎 木村 元雄 井原 博之
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
燃料協会誌 (ISSN:03693775)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.79-95, 1972-02-20 (Released:2011-02-23)
参考文献数
31

From a view point of safety measure against the fire hazard involved with aircraft crash or ditch and singular hydrodynamical fluid motions in space flight and refueling with liquid rocket tankage, feasibility of gelled hydrocarbon fuels and propellants is discussed. It is concluded that O/W (oil-in-water) type gelled hydrocarbons are most promising as the safety fuels, resulting from a comparison in the rheological and combustion properties with the other gelled fuels; slurry, scaffold and thickened (highly viscous) ones. Physical properties and flammability of very high internal phase ratio gelled JP-4 and kerosene, ranged 96 to 99 vol% fuel content, and of N2H4/JP-4 gelled propellant developed by ISAS, Univ. of Tokyo and Mitsubishi Oil Company are described.
著者
渡部 哲史 山田 真史 吉田 奈津妃 佐々木 織江 神谷 秀明 田中 智大 丸谷 靖幸 峠 嘉哉 木村 匡臣 田上 雅浩 木下 陽平 林 義晃 池内 寛明
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.260-265, 2017
被引用文献数
1

 平成29年2月18,19日に東京大学本郷キャンパスにおいて,合計16名の参加者により第6回目となるWACCA (Water-Associated Community toward Collaborative Achievements)meetingを開催した.第6回となる今回は各自の研究内容を理解し,多様なスケールで展開される様々な水関連研究の現状やそれぞれが抱える課題,それらを克服するために必要なブレークスルーについて考える機会を設けた.各自の研究発表を基に,様々な研究分野に共通する課題やブレークスルーなど研究に関する議論や,アウトリーチのような活動に関する情報共有,その他研究を進める上で感じていること等の意見交換を行った.本報告ではそれらの議論の概要について記す.
著者
木村 亮介
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.87-91, 2019

Modern humans dispersed into East Asia approximately 40K years ago and genetically adapted to unprecedentedenvironmental conditions. Signatures of local genetic adaptations, which are engraved in our genome, can bedetected using population genomics approaches. Human genome variation data have enabled a comprehensive searchfor genetic variants showing such signatures as well as for those associated with phenotypic variation. Although ourknowledge about local genetic adaptations has increased due to recent research efforts, little is known about whatselective pressures acted on the selected variants.
著者
野崎 俊貴 木村 拓海 川野 秀一
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.117-131, 2016 (Released:2017-05-01)
参考文献数
20

オンライン学習とは, 近年機械学習の分野において注目を集めている学習法であり, その利点は, 逐次的にデータを学習しモデルを構成することにある. 本稿では, 適応正則化学習 (Adaptive Regularization of Weight Vectors; AROW) と呼ばれるオンライン学習モデルの特徴選択を可能にするために, スパース推定に基づく方法を提案する. 推定アルゴリズムには, 座標降下法 (coordinate descent method) を用い, これにより高速化も実現する. 提案手法は, いくつかのチューニングパラメータに依存しているため, これらの値を交差検証法を用いて客観的に選択する. ベンチマークデータに基づく数値実験を通して, 提案手法の有効性を検証する.
著者
木村 瑞生 山本 正彦
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.141_3, 2018

<p> 本研究では、野球の打撃動作遂行における2つ要素(タイミング、コース:内角・外角)を変化させたときの反応時間を調べた。被験者は、神奈川大学野球連盟(2部)に所属する硬式野球部員10人(18~22歳)であった。本実験での打撃動作の反応時間(BS-RT)は、警告信号から光刺激までの時間(タイミング)とコース(赤色:内角、緑色:外角)を調節できる光刺激装置を用いて測定した。打者は構え姿勢をとり、前方15mの光刺激装置からの光刺激提示後できる限り素早く打撃動作を開始しT-スタンドのボールをヒットした。この際の光刺激提示からT-スタンドのボールをヒットするまでの時間をBS-RTとした。本実験では、光刺激のタイミングが一定(Tc)とランダム(Tr)、光刺激のコース(光の色)が一定(Sc)とランダム(Sr)の条件を組み合わせ、Tc-Sc、Tc-Sr、Tr-Sc、Tr-Srの4条件で内角と外角のBS-RTを比較した。その結果、Tc-Sc以外の3条件において内角のBS-RTの値の方が外角のそれより有意に小さかった。つまり、打者が投手から投球されたボールを打つ際、選択要素が1つでもある場合は内角の打撃動作の方が短時間に遂行されることが示唆された。</p>
著者
木村 宗裕 大城 英裕 植田 清一 藤木 穣 末田 直道
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.513-524, 2008-01-15
参考文献数
12
被引用文献数
2

候補画像の選択を繰り返すことにより目的とする画像処理パラメータの探索を行う,直感的な対話型の画像処理システムを提案する.提案システムは,ユーザとの対話を繰り返し画像処理パラメータの最適化問題を解くことで,ユーザの望む画像処理結果の生成を行う.ユーザは,画像処理に関する知識や経験がなくても,システムにより提示される候補画像の選択を繰り返すだけで目的の画像処理結果を得ることが可能となる.画像処理パラメータの探索は,ユーザの選択した候補画像ならびに過去に提示した候補画像のパラメータ空間中の距離情報を用いて,パラメータ空間のボロノイ分割を擬似的に行い,探索空間を限定することで,ユーザの評価揺れにロバストにかつ高速に処理が行われる.また,システムはユーザが望むと思われる候補を優先的に生成,提示することで効率的な探索を行う.シミュレーション実験では,実際のユーザを模した仮想ユーザを用いて,27人のユーザがそれぞれ100回システムを試行した結果に相当するデータを擬似的に確保し,システムの有効性の評価,検証を行った.
著者
木村 哲三郎
出版者
亜細亜大学アジア研究所
雑誌
アジア研究所紀要
巻号頁・発行日
vol.38, pp.209-239, 2011
著者
平田 和彦 伊藤 義広 安達 伸生 木村 浩彰 越智 光夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ca0233, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 膝関節軟骨損傷は,しばしばスポーツによって発生し,膝関節の疼痛や機能障害を引き起こす.関節軟骨は自己修復能力が低く,関節軟骨損傷は保存的治療のみでは修復困難であり,徐々に増悪し,変形性膝関節症に移行する.そのため近年,軟骨損傷に対し,外科的治療法が選択されている.軟骨損傷に対する外科的治療として,マイクロフラクチャー(MF)や骨軟骨柱移植(OAT),自家培養軟骨移植(ACI)などが選択され,術後の膝関節機能について多くの報告がある.しかし,患者にとって最も重要と思われる術後のスポーツ復帰状況に焦点を当てた報告は少ない.今回,当院で軟骨修復術を受けた患者のスポーツ復帰状況を調査したので報告する.【方法】 2004年8月から2008年9月までに膝関節軟骨損傷と診断され,当院で外科的手術をうけた患者を対象とした.術前・術後2年でフォロー可能であった33患者のデータを収集した.患者の内訳はMF11名(男性9名,女性2名,平均年齢31.4±16.9歳),OAT9名(男性7名,女性2名,平均年齢33±18.1歳),ACI13名(男性8名,女性5名,平均年齢30.0±9.6歳)だった. 臨床データは,膝機能評価として術前と術後2年のLysholm socreを測定した.活動レベルの評価は,Tegner activity scoreを使用し,受傷前と術前,術後2年で評価した.また,術式毎のスポーツ復帰率とスポーツ復帰までの期間を評価した.統計学的解析として, Lysholm scoreの経時的変化の比較には対応のあるt検定を用いた(P<0.05を有意).Tegner activity scoreの経時的変化の比較には,Bonferroni補正法によるt検定を用い,P<0.017=0.05/3を有意とした.統計解析にはPASW statistics ver.18(SPSS Japan,日本)を使用した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究では,世界医師会による「ヘルシンキ宣言」及び厚生労働省「臨床研究に関する倫理指針」を遵守し行った.また,本研究に参加するにあたり研究の趣旨について十分な説明を行い,同意が得られた症例を対象とした.【結果】 Lyholm Scoreは,MF(術前76.4±18.5点,術後2年97.2±4.1点),OAT(術前56.1±18.5点,術後2年94.7±10.7点),ACI(術前61.3±20.4点,術後2年92.5±8.75点) と3つの術式ともに術前と比較して術後2年で有意に高かった(P<0.05). Tegner activity scoreにおいては,MF(受傷前7.7±2.5点,術前3.9±4.7点,術後2年8.0±1.8点),OAT(受傷前6.4±2.4点,術前1.1±2.4点,術後2年5.7±2.4点), ACI(受傷前7.3点±1.5点,術前1.3±2.5点,術後2年5.9±2.0点)だった.すべての術式で受傷前と術前,術前と術後2年の間に有意な差を認めた(P<0.017).ACIのみ受傷前と術後2年の間に有意な差を認めた(P<0.017).スポーツ復帰率は,MF81.8%,OAT77.8%,ACI61.5%であった.スポーツ復帰までの期間は,MF6.9±3.4ヶ月,OAT12.9±8.1ヶ月,ACI18.9±7.4ヶ月であった.【考察】 今回の結果では,膝機能はMF,OAT,ACIで術後に同程度の改善がみられた.しかし,スポーツ活動レベルでは,ACIで術後2年の時点で術前レベルまで回復が見られていなかった。軟骨修復術後のスポーツ復帰は,手術侵襲の大きさや修復軟骨の成熟過程に基づいて計画される.ACIはOATやMFよりも手術侵襲が大きく,修復軟骨の成熟に長期間を要すため,スポーツ復帰に時間がかかる。Mithoeferらは,術後活動制限が長い程,スポーツ復帰に時間がかかると述べている.したがって、早期スポーツ復帰を目標とするアスリートにとっては,MFは有利である.しかし,理論上ACIは,修復軟骨の長期的な耐久性に関してMFやOATより優位でありより長期間のスポーツ活動を希望する場合,ACIは良い適応である.今回の結果より,軟骨修復術の選択はスポーツ復帰時期やスポーツレベル,さらに長期的な予後を考慮し,患者の希望と照らし合わせて行われるべきである.【理学療法学研究としての意義】 軟骨損傷を受傷したスポーツ選手にとって,手術後にスポーツ復帰が可能かどうかは,治療を選択する上で最も重要な情報である.さらに,スポーツ復帰に関する情報は,今後軟骨損傷リハビリテーションプログラムを発展させていく上での基盤となる.
著者
木村 清孝 Kiyotaka Kimura
出版者
国際仏教学大学院大学
雑誌
国際仏教学大学院大学研究紀要 = Journal of the International College for Postgraduate Buddhist Studies (ISSN:13434128)
巻号頁・発行日
no.10, pp.170-155, 2006-03-31

In Japan, wa (和. he in Chinese) is still popular as an important tenet taught by Prince Shotoku in the Ancient Age. In this paper, the author tries to analyze the concept of he as it appears in Chinese and Japanese Buddhist texts (Especially Chinese Versions of the Buddhist Canons) and clarify its various meanings, some of which have been deeply influenced by Chinese thought. Since the time of Early Buddhism, Buddhists have fundamentally attached importance to unification and harmonious relations of the order. For example, the famous Dhammapada says, sukha sanghassa samaggi samagganam tapo sukho. Samaggi in this sentence was translated he (和) or hehe (和合) in China. This seems to be the most basic sense of he in Buddhism. Secondly, the idea of hejing (和敬), which relates with he mentioned above is also notable. This idea served as the base of the theory of six kinds of hejing (六和敬), which means harmonious behaviors in the six fields of body (身), speaking (口), mind (意), sila (戒), view (見), and benefit (利) in general. But it does not seem that this theory was formed before the occurrence of Mahayana Buddhism in the first century B.C. and widely prevailed all over the Buddhist world. Thirdly, there is the term of heyan-aiyu (和顔愛語. wagen-aigo in Japanese). This phrase is very popular in Japan. However, we can not find out any equivalent in the Sanskrit text of the Amitayus-sutra to heyan, that constitutes the most well-known idiom in one of the Chinese versions of it. Fourthly, we discuss the concept of heguang-tongchen (和光同塵) 50 Buddhism and the Concept of he (和, wa in Japanese) in East Asia (Kimura) originating in the Laozi. This was accepted in Chinese Buddhism in two ways, i.e., one positive, and the other negative. We can see one typical example of the positive usage of this idiom in the Great Concentration and Insight (Mohezhiguan.摩訶止観) by Zhiyi (538-597). The negative usage of it, in the expression butongqichen (不同其塵) appears in the Mahayana-nirvana-sutra translated by Dharmaksema. Lastly, the author investigates the relationship between these various meanings of he in East Asian Buddhism and the thought of he advocated by Prince Shotoku. Our conclusion is that Prince Shotoku tried to apply the Buddhist idea of samaggi to the secular society at large.
著者
小山内 康徳 木村 礼志 高杉 公彦 櫻井 秀彦
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.288-298, 2018-06-10 (Released:2019-06-10)
参考文献数
15
被引用文献数
4

A survey was conducted among patients that use health insurance pharmacies to determine the importance of drug consultation contents that are discussed during “holiday and night hours” and “regular open hours”. We investigated differences in the degree of importance in consultation topics for each drug between “holiday and night hours” and “regular open hours”. Also, for each time period, we also attempted to identify priority drug consultation topics for multiple medications. Three important consultation topics during “holiday and night hours” were found to be “drug interaction”, “actions to be taken in an emergency” and “whether or not to take a medication”. When drug consultation topics were compared between “holiday and night hours” and “regular open hours”, topics regarding “expiration date” and “indication” were found to be of higher importance during “regular open hours”. In regard to ideal patient consultations at pharmacies, based on the fact that i) the consultation contents differ depending on the patient's background and the time of day, and ii) the patient's needs differ from the topics of information covered when providing medication instructions and other information, the above results suggest that consultations need to be improved and aligned with the patient's needs.
著者
木村 剛英 金子 文成 長畑 啓太 柴田 恵理子 青木 信裕
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100461, 2013

【はじめに、目的】二重課題とは,同時に複数のことを行う課題である。この二重課題では,単一の課題を行う一重課題よりも各課題において巧緻性や反応時間などの精度が低下する。これは,ヒトが一度に遂行出来る課題量には限界があることを示している。そして,この限界を規定する因子として,ワーキングメモリが挙げられる。ワーキングメモリとは,目標に向かって情報を処理しつつ,一時的に必要な事柄の保持を行う脳の一領域であり,保持出来る情報量に限界を持つ。また,ワーキングメモリが保持できる情報量は,トレーニングによって増加する。このことから,ワーキングメモリのトレーニングを行うことで同時に遂行出来る課題量が増え,二重課題条件下での各課題の精度低下を防げる可能性があると考えた。そこで本研究では,運動課題を用いた二重課題に焦点を当て,ワーキングメモリ容量の増加が二重課題条件下での運動精度にどのような影響を及ぼすか明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健康な男子大学生24 名とした。初期評価として,二重課題条件下での運動課題,ワーキングメモリ容量の測定を行った。その後「ワーキングメモリトレーニング群」「二重課題条件下運動トレーニング群」「コントロール群」に割付け,2 週間の介入後,初期評価と同様の最終評価を行った。ワーキングメモリトレーニング群は,パソコンに次々と表示される円の位置と順番を記憶し,のちに再生する方法を用いた介入を行った。二重課題条件下運動トレーニング群は,評価で用いた二重課題条件下での運動課題を介入として行った。二重課題条件下での運動課題は,右下肢の等尺性収縮と左上肢の肘屈曲運動を同時に行う課題とした。第一課題は,事前に測定した右下肢伸展ピークトルクの20%及び40%を目標トルクとし,等尺性収縮にて目標トルクを維持させる課題とした。同時に行う第二課題として,前方のスクリーンに表示された合図に反応して,肘関節を出来るだけ速く強く屈曲方向へ等尺性収縮する運動を行わせた。下肢運動能力の評価には,実際に測定された下肢伸展トルクと目標トルクとの差の積分値を用いた。上肢運動能力の評価には,上腕二頭筋の表面筋電図より算出したpre motor time(PMT)と整流平滑化筋電図(ARV)を用い,得られたPMTの逆数とARVの積を評価指標とした。さらに,介入前後の二重課題能力の変化を評価するために,上肢と下肢の運動能力評価値から散布図を描き,分布の変化をカイ2 乗検定にて検定した。ワーキングメモリ容量の測定は,パソコン画面に表示される複数個の正方形の色判別課題を行い,結果を点数化した。得られた結果から各群および介入前後の2 つを要因とした二元配置分散分析を実施し,2 つの要因間で交互作用があった場合,多重比較として単純主効果の検定を行った。いずれも有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき,事前に研究目的や測定内容等を明記した書面を用いて十分な説明を行った。その上で被験者より同意を得られた場合のみ測定を行った。【結果】ワーキングメモリ容量は,全ての群において介入前後で有意に変化しなかったものの,ワーキングメモリトレーニング群において平均値が高値を示した。また,介入前後における散布図の分布の偏りは20%条件で全ての群で有意に変化した。一方,40%条件ではワーキングメモリトレーニング群,運動トレーニング群において分布の偏りが有意に変化した。【考察】下肢40%条件コントロール群のみ二重課題条件下での運動能力改善を認めなかった。これは40%条件では20%条件より負荷量が多く,必要とする注意量が増えたため各運動へ十分な注意を配分出来ず学習が進みにくかったことが原因であると考える。一方,ワーキングメモリトレーニングを行うことで,実際の運動を行っていないにも関わらず20%条件,40% 条件いずれも二重課題条件下の運動能力に改善を認めた。これは,ワーキングメモリトレーニングに伴うワーキングメモリ容量の増加が,上肢,下肢の各運動に十分な注意を配分することが出来たためであると考える。本研究結果より,ワーキングメモリトレーニングによるワーキングメモリ容量の増加は二重課題条件下の運動精度を改善する可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】日常生活の動作や運動は,複数の動作を同時に行うことで成立している。今回,ワーキングメモリトレーニングにより二重課題条件下の運動が改善した。この結果は,認知課題を行うことで,運動の改善が得られることを表している。この事実から,長期臥床の患者様やケガからのスポーツ復帰を目指すアスリートなど,運動を十分に行えない環境にいる者に対し,従来の運動療法に加えて認知面からも運動機能を改善できる可能性が示唆された。
著者
木村 直也 早麻 里穂
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.310-315, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)

IPランドスケープは「自社,競合他社,市場の研究開発,経営戦略等の動向及び個別特許等の技術情報を含み,自社の市場ポジションについての現状の俯瞰・将来の展望等」と定義され,その最終的なステップは「戦略を経営層へ提言すること」とされている。当社では自社経営層へ戦略検討・提言をする立場にあるお客様から調査を請負い,実施している。本稿では,IPランドスケープのための技術調査の具体的な進め方を,実際の流れに沿って紹介する。いくつかのアウトプットの例示にあたっては3Dプリンタを取り上げた。