著者
稲垣 剛志 木村 昭夫 萩原 章嘉 佐々木 亮 新保 卓郎
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.192-199, 2013-04-15 (Released:2013-07-24)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

【目的】鈍的頭頸部外傷患者において,頸椎CT撮影の新たなclinical decision rule(CDR)を作成することを目的とした。【方法】Derivation研究の対象は2008年4月1日~2010年8月14日に当院へ救急搬送された頭頸部外傷患者のうち頸椎CTを施行した1,076症例,Validation研究の対象は2010年8月15日~12月31日に当院へ救急搬送された頭頸部外傷患者887例とし,診療録および救急患者データベースから後ろ向きに情報を得た。頸椎損傷の定義は骨折もしくは脱臼とした。頸椎損傷の有無と相関する因子を解析した後に,感度100%となるような新たなCDRを導けるか検討した。【結果】単変量解析では,年齢,後頸部痛の有無,神経学的異常所見の有無,来院時のGlasgow coma scaleスコアにおいてCT上の頸椎損傷所見の有無で有意差が認められた。また年齢が高い群で受傷機転における階段等からの転落の有無も有意差が認められた。二進再帰分割法を行った結果,意識障害や後頸部症状に加え,年齢や具体的な受傷機転を含めた新たな頸椎CT施行基準が導出され,感度100%を保ち,損傷の見逃しを回避することができた。以下に新基準により頸椎CTの適応となるものを示す。(1)GCSスコア13以下の患者。(2)GCSスコア14-15の患者で後頸部圧痛か神経学的異常所見を有する患者。(1) (2)以外の患者のうち,(3)60歳以上:受傷機転が階段等からの転落であった患者。(4)60歳未満:受傷機転がバイクの事故か墜落であった患者。【結語】従来より提唱されているGCSスコア,頸部症状,神経所見に加え,年齢や具体的な受傷機転を評価項目に含めた新しい基準は感度が高く,頸椎損傷の見逃しを回避しうるCDRである。
著者
東野 定律 木村 綾 岩本 真弓 堤 悠香
出版者
静岡県立大学経営情報学部
雑誌
経営と情報 : 静岡県立大学・経営情報学部研究紀要 (ISSN:09188215)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.31-41, 2018-03

本研究では、 静岡県内の介護事業所に行った調査結果と現在キャリアパス制度を導入している介護事業所に対するヒアリング調査を行った結果を基に、 キャリアパス制度を導入することで得られる効果、 導入するにあたっての課題を明らかにし、 介護事業所におけるキャリアパス制度の導入と整備に今後必要であると考えられる内容について提示することを目的とした。 分析した結果、 静岡県内の介護事業所において、 人事評価の仕組みや基準を示していない事業所が約4割を占め、 全体の51.4%が職員に人事評価の仕組みや基準が十分に伝わっていないという状況が明らかになった。 また、 キャリアパス制度がある法人では、 職員の行っている仕事やその役割が明確になっており、 賃金にも仕事の評価が反映する仕組みがあることが示された。 さらに、 調査結果から人事評価を行うにあたって問題を持っている事業所については、 時間がないシステムやノウハウがないといった問題の他に、 評価を行う評価者の能力や人材の問題、 職員に対して人事評価基準の重要性に関する認識を持たせることが課題として挙がった。 今後、 長期的に介護人材の確保や定着の推進を図るためには、 介護職員が将来の展望を持って介護の職場で働き続けることができるように、 能力や技術等に応じた公平な能力評価や人事評価が適切になされることが重要であり、 こうしたキャリアパスに関する仕組みを、 介護事業所に導入していく必要があるといえる。
著者
出口 ヨリ子 長田 邦子 内田 和美 木村 広子 芳川 雅樹 工藤 辰幸 保井 久子 綿貫 雅章
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.923-931, 1998-08-01
参考文献数
25
被引用文献数
40 62

グアバ(<i>Psidium guajava</i> L.)は日本や亜熱帯地方で民間的に糖尿病や下痢止めに用いられている.グアバ葉の熱水抽出物(GvEx)の抗糖尿病効果を調べるために,動物やヒトへの投与実験を行った.これに先がけて,<i>in vitro</i>においてマルターゼ,シュクラーゼ, α-アミラーゼの糖類分解酵素活性の阻害作用を調べた.GvExはこれらの酵素活性を胆害したが,その中でα-アミラーゼの阻害が他の二つの酵素阻害より強いことが示された.正常マウスへのマルトース,シュクロース,可溶性デンプンの負荷試験では, GvEx投与により血糖値の低下が認められた.また,糖尿病性腎症を含む糖尿病の病態を示す糖尿病モデルマウス(C57BL/KsJ, db/db)へGvExを7週間経口投与を行った結果, GvEx非投与の対照群に比べて, GvEx投与群ではHbA<sub>1c</sub>%と腎臓メサンジウム基質の肥厚を示す糸球体数の有意な低下が認められた.<br> グアバ葉からグアバ茶を調製し,ヒトへの飲用試験を行い食後血糖値への影響を調べた.年齢40歳以上, BMI 22.0以上の対象者ではグアバ茶飲用により食後の血糖値の低下が認められた.これらの結果からGvExは糖の消化を抑制することにより,食後血糖値の上昇を低下させ,結果的に糖尿病の進展を遅らせることが予想された.
著者
政金 裕太 佐藤 佳穂 岡村 吉泰 岡部 篤行 木村 謙
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<b>1</b><b>.背景と目的</b><BR><br> 文科省の公式見解では、首都圏でM7クラスの地震が発生する確率は30年以内に70%といわれている。副都心の一つである渋谷駅周辺は、建物密度も昼間人口密度も極めて高い地区であるので、その防災対策は重要であり、大きな課題である。本研究では、その過密地域を含んだ青山学院大学周辺約1kmを対象地とし、災害発生時の人間の道路から避難施設までの避難行動をシミュレーションする。本研究は、その避難行動シミュレーションによって、いつ起こるかわからない震災に対して、すべての時間帯における人間の混雑した危険な状態がどこに発生するのかをチェックする手法を提案する。以下にそのプロセスを示す。<BR><br>(1)人間が何月何日何時に避難経路(道路)上に何人いるのかを推定する手法を示す。<BR><br>(2)2011年3月11日14時の避難者数の推定結果をシミュレーションに適用する。<BR><br>(3)シミュレーション結果からどこに危険な混雑が生じるのかを示す。<BR><br><BR><br><b>2</b><b>.手法の概略</b><BR><br> 道路ごとの人口数の推定は、「流動人口統計データ」(ゼンリンデータコム提供)、渋谷区、港区の避難施設データ、道路データを用いて行った。「流動人口統計データ」は在宅人口、勤務地人口、流動人口のデータから構成されており、ここでは対象地内に自宅も勤務地もないとされる流動人口を扱う。これらのデータをArcGIS上の空間解析ソフトで分析することで道路上の流動人口数の推定結果が得られる。この推定結果を道路上にいる避難者数として、シミュレーションに適用する。「流動人口統計データ」は時間帯ごとの人口データを含んでいるため、時間帯ごとの避難者数が推定できる。<BR><br> 避難シミュレーションにはSimTreadを使用した。SimTreadはCADソフトVectorWorks上で動かす歩行者シミュレーションソフトである。ArcGISで使用したデータをCADデータとしてエクスポートして、VectorWorksへインポートする。分析から得た避難施設ごとの避難者数の推定結果をVectorWorks上の道路にエージェントとして配置する。エージェントは、目的地の避難施設まで最短距離で移動をし、衝突を回避するために減速すると青色で表示され、衝突を回避するために止まってしまうと赤色で表示される。この設定によって赤く表示された箇所が混雑な危険箇所であると判断できる。これを繰り返しすべてのエージェントを道路上に配置したらシミュレーションを実行する。<BR><br><BR><br><b>3</b><b>.シミュレーションの適用</b><BR><br> 以上の手法を震災があった2011年3月11日14時台に適用する。この時間帯では、青山学院大への避難者数は55,111人であるという推定結果が出た。シミュレーションの結果、目的地付近で大混雑が生じ、避難開始30分が経っても約5分の一の10,178人しか避難し終えないことがわかった。<BR><br><BR> <br><b>4</b><b>.考察</b><BR><br> シミュレーション結果から、避難開始数分後は交差点とコーナーに混雑が確認できる。その後、避難行動が進むにつれて、エージェントが通る道路が限定されていき、混雑する道路を特定できる。また、曜日、時間ごとの推定結果を蓄積することで、それぞれの日時の混雑の傾向を推定することが可能になる。時間帯別の危険箇所を指摘することは今後の防災対策として有効に活用できると思われる。この結果から考えられる対策として、避難施設の入り口の拡張、避難者を分散させるような経路の検討、曲がる回数を最小に抑えた直線的な避難誘導などが挙げられる。本研究で提案した手法は、他の地域にも適用可能な汎用的手法である。今後、他の地域にも適用することで、混雑が生じる危険箇所を確認できるシステムとして広範囲に利用できる。<BR><br> 本手法は、扱ったデータの正確性から考えて、あくまでひとつの推定手法に過ぎない。また、災害の被害状況によってはすべての道路が安全に通れるという保障はない。しかし、時間帯ごとの避難行動のシミュレーションによって、時間ごとにおおよその混雑箇所、混雑道路が把握できるという点では有効な推定手法と言えよう。今後、より実態に近い避難行動の推定を行うには、過去の避難行動の調査を参考に、各避難施設の収容数も考慮した、より適切な避難行動モデルを設定する必要がある。
著者
野崎 俊貴 木村 拓海 川野 秀一
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.117-131, 2016

オンライン学習とは, 近年機械学習の分野において注目を集めている学習法であり, その利点は, 逐次的にデータを学習しモデルを構成することにある. 本稿では, 適応正則化学習 (Adaptive Regularization of Weight Vectors; AROW) と呼ばれるオンライン学習モデルの特徴選択を可能にするために, スパース推定に基づく方法を提案する. 推定アルゴリズムには, 座標降下法 (coordinate descent method) を用い, これにより高速化も実現する. 提案手法は, いくつかのチューニングパラメータに依存しているため, これらの値を交差検証法を用いて客観的に選択する. ベンチマークデータに基づく数値実験を通して, 提案手法の有効性を検証する.
著者
藤 泰子 金 鍾明 松井 章浩 栗原 志夫 諸澤 妙子 石田 順子 田中 真帆 遠藤 高帆 角谷 徹仁 豊田 哲郎 木村 宏 横山 茂之 篠崎 一雄 関 原明
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.375, 2011

シロイヌナズナのヒストン脱アセチル化酵素HDA6は、RNA依存性DNAメチル化を介したヘテロクロマチン制御因子として同定されている。我々が行った全ゲノム発現解析の結果から、HDA6とDNAメチル化酵素MET1は、ヘテロクロマチン領域を主とした共通の遺伝子を抑制することが示された。また<I>hda6</I>機能欠損により、これら領域ではヒストンアセチル化の上昇など、エピジェネティックなクロマチン状態の推移が認められた。一方、同領域にはRDR2依存的な24nt siRNAが多数マップされるにもかかわらず、その転写活性は<I>rdr2</I>変異では殆ど影響を受けなかった。HDA6標的領域では周辺のDNAメチル化状態に呼応した2つのCGメチル化状態が観察された。周辺のDNAメチル化領域から孤立している場合では、<I>hda6</I>機能欠損により標的領域のCGメチル化は完全に消失していた。一方、DNAメチル化が隣接する場合には、CGメチル化が残留していた。また、これら両領域ではCGメチル化の状態に関わらず、CHGおよびCHHメチル化はともに消失し、転写が再活性化されていた。さらに、HDA6は周囲のDNAメチル化領域には結合せず、その標的領域にのみ結合していることが確認された。これらの結果から、HDA6はRNA依存性DNAメチル化経路に殆ど依存せず、MET1と協調して領域特異的なヘテロクロマチン抑制に機能することが示唆された。
著者
菅井 和子 木村 博一 宮地 裕美子 吉原 重美 緒方 裕光 岡山 吉道
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.22-27, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
22

乳幼児期のウイルス感染に伴う下気道感染症では喘鳴発症が多く, それが反復喘鳴や喘息発症の一因であることが多く報告されている. 特に, RSV, HRVは喘鳴のおもな起因ウイルスであり, アトピー-素因, 吸入抗原感作等と関連し, 喘息発症と関連するとの報告も多い. 低月齢児では肺機能等客観的な評価は困難だが, 非侵襲的に反復喘鳴予測ができれば, 喘息管理において, より早期の介入が可能となる. 喘息患者で気道上皮由来のTSLP, IL-25, IL-33やTh2サイトカイン等が注目されているが, 喘息発症前の初回喘鳴時のより強力な気道炎症誘導因子の存在も考えられる. われわれは, ウイルス感染に伴い初回喘鳴を呈した乳幼児対象の研究で, MIP-1αによりその後の反復喘鳴が予測可能となる研究結果を得た. 簡便に採取可能な鼻汁検体からの反復喘鳴予測の可能性が示唆された. パリビズマブの早産児におけるRSV感染後の反復喘鳴予防の有効性や, ワクチンの研究もあるが, 実用化には至っていない. ウイルス感染後の喘息発症予防において, 感染予防とともに発症予測因子に関する研究も今後さらに必要と考える.
著者
澁谷 智志 木村 健一
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.95, 2015 (Released:2015-06-11)

本研究では、美術初心者が持つ写実性制約が、絵を創作する行為にどのような影響があるかを実証的に検討する。芸術創作は、表現対象に対して知覚と創作行為を繰り返しながら表現を探索していく活動である。こうした知覚と行為の中での創造性を捉えるならば、知覚対象に対する認知的志向と創作行為には不可分な関係があると考えられる。美術初心者は、絵画に描かれた具体的事物に固執して絵画を見るという「写実性制約」があり、その制約が絵画鑑賞において、多角的に見ることの妨げになることが、指摘されてきた。 本実験では、図柄を配置することで絵を構成する課題について、具象画の図柄を用いた試行と、抽象画の図柄を用いた試行とで実施し、実験参加者のデッサン技能の有無によって、各々の試行の試行錯誤の度合いに違いがあるかを調べた。実験の結果から、デッサン技能の有無は、具象画の操作の試行錯誤の度合いに影響は与えないが、デッサン技能を有することは、抽象画の操作の試行錯誤を促進することがわかった。このことは、美術初心者は写実性制約に沿って解釈できない対象に出会ったとき、創作の試行錯誤が抑制される傾向があることが明らかになった。
著者
小林 憲弘 鈴木 俊也 小杉 有希 菱木 麻佑 加登 優樹 金田 智 植田 紘行 河相 暢幸 北本 靖子 土屋 かおり 木村 慎一 古川 浩司 岩間 紀知 中村 弘揮 粕谷 智浩 堀池 秀樹 京野 完 髙原 玲華 馬場 紀幸 佐藤 信武 久保田 領志 五十嵐 良明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.211-224, 2016 (Released:2016-11-10)
参考文献数
23
被引用文献数
7

水道水中のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドを迅速・簡便に分析するために, DNPHで誘導体化した試料をLC/UVあるいはLC/MS/MSにより測定する方法を検討した。検討の結果, 水道水に塩化アンモニウムを加えて残留塩素を除去した後, リン酸とDNPHを加えて誘導体化した試料を測定した。いずれの測定機器を用いた場合も両誘導体のピークは短時間で良好に分離し, ホルムアルデヒドの基準値の1/10の濃度 (0.008 mg L-1) まで高精度に分析できた。さらに, 本研究で確立した分析法が全国の水道水質検査に適用できるかどうかを検証するために, 15機関において水道水を用いた添加回収試験を行った結果, いずれの測定機器を用いた場合も両物質について「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」の真度, 併行精度および室内精度の目標を満たした。以上のことから, 本分析法は水道水の標準検査法として利用可能と考えられる。
著者
木村 優
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.464-479, 2010
被引用文献数
2

本研究の目的は, 授業における教師の感情経験と, 教職の専門性として説明されてきた認知や行動, さらに動機づけとの関連を検討することであった。高校教師10名に面接調査を実施し, グラウンデッド・セオリー・アプローチによるデータ分析を行った。その結果, 《感情の生起》という現象の中心概念が抽出され, (1) 教師は生徒の行為と自らが用いる授業方略に対して感情を経験し, (2) 状況により教師は異なる感情を混在して経験することが示された。そして, (3)教師が経験する感情の種類, 強さ, 対象によって, 《感情の生起》現象には, 心的報酬の即時的獲得, 認知の柔軟化・創造性の高まり, 悪循環, 反省と改善, 省察と軌道修正, という5つの過程が見出された。喜びや楽しさなどの快感情は教師の活力・動機づけを高めることで実践の改善に寄与し, さらに授業中では教師の集中を高めることで瞬間的な意識決定と創造的思考の展開を促進していた。一方, いらだちなどの不快感情は教師の身体的消耗や認知能力の低下を導くが, 苦しみや悔しさなどの自己意識感情は授業後の反省と授業中の省察に結びつき, 教師が実践を改善し, 即興的に授業を展開するのを可能にしていた。
著者
舘田 一博 木村 聡一郎 山口 惠三
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.11, pp.2677-2681, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

細菌の産生するホルモン様物質を介した情報伝達機構,クオラムセンシング(Quorum-sensing)が微生物学・感染症学・化学療法学の分野で注目されている.これはビブリオ属細菌における菌数依存的な蛍光物質産生という現象から見つかってきたシステムであるが,その後,多くの病原細菌が本機構を用いてバイオフィルム形成など様々な病原因子発現をコントロールしていることが明らかとなっている.
著者
木村 照夫
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.140-147, 2010 (Released:2014-10-07)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

循環型社会形成の重要性からリサイクルを義務づける数多くの法律が施行されている中で,繊維製品に関してはいまだ法律が施行されていない。現在,回収された衣類廃棄物の大半は中古衣料,反毛およびウエスとしてリサイクルされているが,衣類に関するリサイクル率は20%程度に留まっている。リサイクル率が低い大きな理由は繊維製品の多様性によるリサイクルの難しさにある。本稿では繊維製品の中でもわれわれに一番身近な衣類を対象に,リサイクルの現状と課題を整理している。さらに,筆者らの衣類廃棄物を用いた木材代替材料ならびに天然繊維複合材料としてのリサイクルの試みを紹介している。また,環境負荷の小さなリサイクルを推進する上でLCA解析が重要であること,ならびにリサイクル推進には技術開発のみでなく国民の意識改革が必要であることを述べ,教育用に作成された漫画本の反響についても言及している。
著者
岡本 耕一 岡村 誠介 井本 佳孝 木村 哲夫 竹内 尚 宮本 弘志 四宮 寛彦 岡久 稔也 和田 哲 高山 哲治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.260-266, 2012-02-20
参考文献数
13

症例は63歳,女性.検診にて異常を指摘され当科に紹介された.内視鏡検査にて十二指腸球部に細長い突起物を認め,内視鏡的ポリペクトミーを行った.この突起物は,病理組織学的に正常十二指腸粘膜で覆われBrunner腺の増生と拡張した静脈を有する粗な粘膜下組織を認め,内部に大小の嚢胞状に拡張した腺が認められた.本症例は稲本らやEzoeらにより提唱されたintraluminal duodenal protrusionやElongated non-neoplastic duodenal polypなる概念に相当するものと考えられた.
著者
木村吉次編著
出版者
市村出版
巻号頁・発行日
2010
著者
木村 朗 水池 千尋 大城 昌平 吉川 卓司 甲賀 美智子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D1191, 2005

【目的】近年、生活習慣病を有す高齢片麻痺患者の維持期では新たに動作障害に応じた身体活動量の増加が求められている。生活習慣病は生理学的指標のバイアスになる。そこで、本研究は、生理学的指標を用いずに動作の加速安定性から定常状態を評価するための条件を探った。リズムに合わせた動作指導時の時間要因と、3方向の動作軸の空間要因が動作時間と加速度へ及ぼす影響を明らかにすることを目的として調べた。<BR><BR>【方法】介護老人保健施設に通所する測定協力に同意が得られたCVA発症後5年以上経過した年齢が70歳から83歳の片麻痺患者5名(男性3名、女性2名)をランダムに選んだ。ステージは上肢4、手3、下肢4。手順は被験者にイス座位で加速度センサー(microstone、MVPA305)を正中位に両手保持し、肘を90度屈曲位にしたまま左右に体幹を回旋するよう指示した。次いで、ラルゲットテンポ(66Hz)の <I>リンゴの唄</I>を頭部後ろから聞き取らせ、60秒間、唄のテンポに合わせ左右に最大回旋するよう指示した。5ms時からの最初の5動作と最後の直前の5動作49510ms時までのxyz軸方向の反復動作時間(加速度のピークからピークまでの時間:PPD)とピークの加速度を測定した。初期vs定常期(時間要因:TF)と前後-上下-水平:xyz方向要因(空間要因:SF)がPPDおよび加速度に及ぼす影響をANOVAで調べた。<BR><BR>【結果】開始初期のPPD(平均±SD単位はms)、 前後:1047.5±105.2、上下:2076.2± 54.5、水平:2071.2±59.7定常状態期のPPD前後:1072.5±441.9、上下:2093.7±45.8、水平:108.70+/-51.2。開始初期の加速度(平均±SD単位はm/sec<SUP>2</SUP>)前後:5.7±.6、上下: 8.8±.9、水平:14.6±.9定常状態期の加速度、前後:6.7±.9、上下:8.7±1.2、水平:15.0±1.0。ANOVAの結果:PPDのTF:ns、SF:p<0.001。Tukeyは95%CIがx-y:-1268.0から-781.9、y-z:-248.0から238.0(ns)、x-z:-1273.0から-786.9であった。加速度のTF:ns、SF:p<0.001。Tukeyは95%CIがx-y:-3.6から-1.4、y-z:-9.6から-7.4、x-z:1.4から3.6。nsを除き、p<0.01。<BR><BR>【考察】被験者は意識的に体幹の回旋とリズムを合わせようと指示され、肘が体幹に固定されているため上下の動きで随意的努力が少なく済み、水平の動作では四肢の片麻痺でも体幹が両側支配で、座位での体幹回旋は、四肢に比べ麻痺の影響が少ないためにリズムに合わせることが可能であったと考えられる。注意を促さない前後の動きで加速が定常期に増えるのは動作の継続を可能にするための身体効率を高める何らかの自動制御機構の関与が加わる可能性が考えられる。<BR><BR>【まとめ】座位体幹回旋エアロビクス運動では定常状態に至るにつれ前後方向の加速度はリズムを反映しないで増加する。この<B>揺れ増加現象</B>に注意して指導する必要があろう。

1 0 0 0 OA 射精の研究

著者
木村 行雄
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.363-366, 1977 (Released:2010-07-23)
参考文献数
13
被引用文献数
1

Recently, 16 cases with ejaculatory disturbance were treated medically in our department and the following results were obtained.1) COMT inhibitor, L-dopa and antiserotonergic drugs were effective for the cases whose ejaculatory disturbance was supposed to be due to dysfunction of the higher center of ejaculation.2) COMT inhibitor and antihistaminergic drugs were effective in some cases of retrograde ejacula-tion.3) COMT inhibitor and L-dopa were effective for the cases who had no orgasm during ejaculation.4) These medical treatments were effective in 11 of 16 cases treated.