著者
今西 和俊 内出 崇彦 大谷 真紀子 松下 レイケン 中井 未里
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.273-298, 2019-06-28 (Released:2019-07-06)
参考文献数
59
被引用文献数
7

関東地域の地殻応力マップを作成するため,過去14 年間にわたるマグニチュード1.5以上の地震の発震機構解を決定した.気象庁一元化カタログや我々の先行研究の結果もコンパイルし,10 kmメッシュの応力マップとして纏めた.小さな地震まで解析して発震機構解データを増やしたことで,先行研究よりも応力場の空白域が減少し,さらに応力場の空間分解能を格段に高くすることができた.得られた応力マップは非常に複雑な様相を示しており,最大水平圧縮応力方位(SHmax)が急変する場所があること,伊豆半島から北部に向けてSHmaxが時計回りに回転すること,数十kmスケールの複数の応力区が確認できること,太平洋沿岸域は正断層場が卓越するなどの特徴が明らかになった.これらの特徴は,この地域のテクトニクスの理解や将来の地震リスクを評価する上で重要な情報である.
著者
松下 康之 西野 恒 池内 克史 坂内 正夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. D-II (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.1186-1195, 2003-08-01
参考文献数
16

天候の変化に伴う影の動き及び静的な影の影響は,ビデオ監視システムの物体追跡アルゴリズムや認識アルゴリズムの精度低下の要因として問題視されている.本論文では,このようなシーンの照明による影響を入力画像中から頑健に取り除くために,イントリンシック画像を用いた照度成分の正規化に関するフレームワークを提案する.これまでに提案された手法とは異なり,本手法ではシーンの照明変化に伴う反射成分の変化を考慮することにより,より正確な照明画像を推定することができる.この照明画像を用いた照明成分の正規化手法について述べると同時に,入力画像から直接的に照明成分を推定するために照明固有空間を用いる手法を提案する.最後に照明成分を正規化した画像において車両のトラッキング性能を評価することにより,本手法の有効性を確認した.
著者
細田 昌良 小松 敏美 松下 美幸
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.140-144, 2008-05-23

流行性角結膜炎(EKC)は接触伝播し,しばしば院内感染を引き起こす.2006年7月から9月に眼科病棟のない当院でEKCが流行した.入院患者4名,職員2名,外来患者7名の計13名の発症があり,当院感染対策委員会は,アウトブレイクと判断した.院内の対策として,感染者の隔離,患部処置法の指導,環境の消毒などの接触感染対策の強化を行い,感染職員には出勤停止を指示した.更に,職員全員への啓発を目的に,院内へのポスター掲示や警告文書回覧を行った.EKC患者が発生した特別養護老人ホームへは当院の認定ICDが,接触感染対策と新規EKC発症の監視を指導した.また,院外の発症に対しては,地域内の保育園がEKC感染の媒介になっている可能性があり,当院から当該保育園へ患児の登園停止や集団生活での接触感染対策を指導した.更に,家庭内や教育現場での感染拡大を防ぐために地域社会全体への啓発活動を実施した.行政保健師を中心にEKCへの啓発番組を制作し,地域内ケーブルテレビで2週間放映した.これらの対策の結果,院内・院外ともEKC流行は終息した.行政と地域メディアの協力を得た,地域社会へ向けた感染対策は有用であった.感染制御に携わる医療従事者は,地域社会での感染対策活動にも指導的立場で臨むことが必要である.<br>
著者
相原 一貴 松下 和太郎 小野 武也 石倉 英樹 佐藤 勇太 松本 智博 田坂 厚志 積山 和加子 梅井 凡子 沖 貞明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】整形外科的手術で出血量抑制のために使用されるターニケットは,虚血再灌流障害を引き起こし骨格筋の浮腫や炎症,萎縮を発生させる可能性が報告されている。我々は先の動物実験において,圧力300mmHgで90分間ターニケットを使用すると,虚血再灌流後に筋収縮力の低下が生じ,その低下は再灌流後7日目においても完全回復に至らないことを明らかにした。しかし,7日目以降の筋収縮力の変化に関しては不明である。そこで,虚血再灌流後の筋収縮力の変化を明らかにする目的で,虚血再灌流後14日目における筋収縮力の測定,および歩行動作との関係について検討した。【方法】10週齢Wistar系雄ラット12匹(体重360.1±14.2g)を6匹ずつ正常群(以下C群)と虚血再灌流群(以下IR群)に分けた。IR群は,まず麻酔下で後肢にターニケットカフを巻き,圧力300mmHgで90分間の駆血を実施した。そして14日後に,両群の筋収縮力の測定と歩行観察を実施した。歩行観察は傾斜0°のラット用トレッドミル上を分速10m/minで歩行させ,その様子をビデオカメラで撮影し,その動画から足指伸展角と踵骨高を測定した。足指伸展角は爪先離地時に踵骨と第4中足骨を結ぶ線と床に平行な線がなす角度とし,値が小さい程伸展していることを示す。また踵骨高は足底接地時の踵骨と床の垂直距離とした。筋収縮力の測定は,ヒラメ筋を摘出し95%酸素および5%二酸化炭素の混合ガスを常時通気しているリンゲル液で満たしたオーガンバス内へ入れ,電気刺激を加え測定した。測定後のヒラメ筋は,凍結させHE染色し筋横断面短径を測定した。統計学的解析は,対応のないt検定を用い,危険率5%未満をもって有意差を判定した。【結果】筋収縮力はC群116.5±7.4g,IR群69.2±13.3g,筋横断面短径はC群58.6±2.8μm,IR群46.3±4.2μmであり,どちらもC群に比べIR群に有意な低下が認められた(P<0.05)。一方,歩行に関する測定項目である足指伸展角および踵骨高では,両群間に有意差は認められなかった(P<0.05)。【結論】本研究結果にて,筋収縮力や筋横断面短径はC群よりもIR群が有意に低下していたが,歩行に関する評価項目に有意差は認められなかった。一般的に筋収縮力は,筋横断面積と比例関係にある。また,虚血再灌流障害の症状として浮腫や炎症,筋萎縮が報告されている。そのため,IR群では虚血再灌流により低下した筋収縮力が完全回復していないことが推測できる。一方で,歩行に関して差がなかったことについては,歩行自体は低負荷の運動であるため,運動から筋機能の状態を評価するには,より負荷の高い運動に対する反応から判断する必要性が示唆されたと推測する。よって,虚血再灌流後14日では,歩行が正常であっても,筋機能の回復は完全ではない可能性があることを明らかにした。
著者
宮崎 和也 松下 光範
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.27, pp.155, 2011

本研究では,文章の編纂における入力方法の違いに着目して,文章を纏める過程のモデル化を行う.コンピュータの普及に伴い,文章の産出をキーボード入力で行う人が多くなった一方で,手書きで文章を産出する人もまだ多くいる.その理由は,これらの入力方法の利点が異なるためである.そこで,このような利点の違いを活かした新たな複合的入力手段の実現に向けた基礎検討を行う.その第一歩として,入力方法の違いが文章を纏める過程で,執筆者の行為にどのような差異をもたらすのかを実験を通して検証した.その結果,文章を纏める過程を順序と行為の頻度に着目すると,執筆者の文章を纏める過程が4つのパタンへと分類できることがわかった.
著者
松下 浩二 関口 裕之 瀬戸 康雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.83-88, 2005 (Released:2005-04-08)
参考文献数
17
被引用文献数
24 28

The detection performance of a portable surface acoustic wave sensor array chemical agent detector (JCAD, BAE Systems) was investigated with nerve gases, blister agents, and blood agents. The vapors of sarin, soman, tabun and lewisite 1 (low level) were recognized as “NERV (nerve agent)” after about 10 sec of sampling, and the detection limits were about 30, 50, 100 and 300 mg/m3, respectively. The vapors of mustard gas and lewisite 1 (high level) were recognized as “BL (blister agent)” after about 10 sec sampling, and the detection limit for mustard gas was about 40 mg/m3. The gases of hydrogen cyanide and cyanogen chloride were recognized as “BLOD (blood agent)” after about 2 min sampling, and the detection limits were about 30 and 1000 mg/m3, respectively. Many solvents, such as methanol, dichloromethane and ammonia, were also recognized as chemical-warfare agents.
著者
衛藤 久美 中西 明美 藤倉 純子 松下 佳代 田中 久子 香川 明夫 武見 ゆかり
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.252-266, 2019-05-15 (Released:2019-06-11)
参考文献数
17

目的 埼玉県坂戸市が2006年より女子栄養大学と協働して取り組んできた,坂戸市全小・中学校における「坂戸食育プログラム」(以下,食育プログラム)の評価を行い,これまでの成果と今後の課題を明らかにすることを目的とした。方法 本プログラムの対象は,小学5年生から中学2年生の全児童生徒である。本研究では,2006年度から2014年度に実施された児童生徒および教師対象の調査データを用い,経過評価および影響評価を行った。食育プログラムの授業実施状況および学習者の反応を把握するための調査(調査A),食育プログラム実施者のプログラムに対する反応として,小・中学校教員の食育プログラムへの関わりによる変化を確認するための調査(調査B)のデータを用いて経過評価を行った。4年間の児童生徒の学習効果を確認するための追跡調査(調査C),各学年の児童生徒の学習効果を確認するための前後比較調査(調査D),4年間の食育プログラム学習後の生徒の状況を把握するプログラム終了後調査(調査E)のデータを用いて影響評価を行った。活動内容 小学校の4年目ならびに中学校の2年目に教員が回答した授業実施状況について,授業が指導案通り「実施できた」クラスが7割以上,教材を「すべて使用した」クラスが8割以上,学習内容を児童生徒たちが「ほぼ理解できた」クラスも5割以上だった。小学校教員ならびに中学校男性教員は,研修会参加や授業実施経験がある者において「食育への関心が高くなった」と回答した者の割合が高かった。児童生徒の学習効果について,4年間の食育プログラムの学習効果はみられなかったが,各学年の食育プログラム学習前後に,具体目標②「健康を考え,バランスの良い食事をとろう」に関する食態度が改善した。終了後調査より,4年度すべて9割以上の中学2年生生徒が,食育プログラムを「学習してよかった」と回答した。結論 食育プログラムは,継続的に実施され,教員の食育への関心を高めることに役立っていると示唆された。児童生徒は,授業に多く含まれる目標「健康を考え,バランスの良い食事をとる」ことに関する食態度で有意な変化がみられた。今後は,学習内容の改善や,継続的な食育プログラムの実施体制の推進の他,学校を拠点とし,児童生徒の家族等他世代へも波及するような食育の検討が必要である。
著者
田中 秀樹 松下 正輝 古谷 真樹
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.61-71, 2007 (Released:2012-11-27)
参考文献数
40
被引用文献数
4

本稿では, 高齢者の睡眠と健康, 高齢者の不眠の特徴について概説するとともに, 健康生活の必須条件である快適な睡眠確保に有効な生活指導法を科学的根拠, 地域保健現場での実践例を交えながら紹介する。高齢者に短時間の昼寝と夕方の軽運動による生活指導を4週間を実施した結果, 睡眠の改善, 夕方以降の居眠りの減少が認められ, 夕方以降の覚醒維持が重要であることが実証された。また, 認知・行動的介入により, 睡眠の改善に伴い, 精神健康や身体健康の改善が認められた。高齢者の睡眠健康改善のための認知・行動的介入技法は, 高齢者のQOLやADLの向上にも有効であることが示唆された。
著者
松下 真也 高野 敏明 友次 克子
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

本研究の目的は,少数言語の解明に向けた支援である.具体的には,少数言語を音声から文字に書き起こす作業の支援を目指す.本稿では,文字の書き起こしに向け,2言語間における音素の対応関係について調べた.実験では,英語と日本語の音素の対応関係を調べた.結果として,音素波形の一部が類似している場合,異なるであろう音素でも似ている音素として扱われることが得られた.
著者
蔵本 築 松下 哲 三船 順一郎 坂井 誠 村上 元孝
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.115-120, 1977-03-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1

老年者肺炎12例に於て肺炎と同時または稍遅れて前壁中隔硬塞を思わせる心電図変化を認めた. すなわちV1-V3, V4のQSまたはrの減高, ST上昇, 冠性Tが出現し, 肺炎の軽快と共に異常Qは約一週間, 陰性Tは1カ月以内に正常化し, その後剖検し得た8例にはいずれも前壁中隔硬塞を認めなかった. 臨床所見では狭心痛はなく, 呼吸困難, 咳痰, チアノーゼ, 意識障害等が見られ, 肺炎は2葉以上にわたる広範な病巣を示し, 胸膜癒着または胸水を伴った. 検査所見ではGOTの軽度上昇を4例に認めたにすぎず, BUNの一過性上昇, CRP強陽性, PO2低下と共にヘマトクリットは全例4~9%の著明な上昇を示した.剖検し得た8例では肺気腫を6例, 気管支炎を7例に, 剖検時肺炎を6例に認めた. 陳旧性後壁硬塞及び後壁心外膜下出血を各1例に認めた. 左冠動脈前下行枝の50%以上狭窄を7例に認め, 心筋小胼胝を5例に認めた.急性心筋硬塞様心電図の発現機序として慢性肺疾患によるQRS軸の後方偏位, 肺炎に伴う急性右心負荷, hypoxia, 中等度の冠硬化などの上にヘマトクリット, 血液粘度の上昇等が加わって心筋に広範な一過性虚血性変化を来たすものと考えた.
著者
寺町 ひとみ 畠山 裕充 松下 良 今井 幸夫 宮本 謙一 辻 彰
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.530-540, 2002-12-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
17
被引用文献数
7 7

The department of pharmacy which is a member of the Infection Control Committee in Kouseiren Chu-nou Hospital provided a systematic program of vancomycin (VCM) therapeutic drug monitoring (TDM) and consultations regarding the suitable dose and administration interval etc. of VCM for both patients and physicians. However, in many cases the initial dosage and dose interval were empirically decided by the physician.In the present study, we retrospectively examined three nomogrames that were recommended as the rough standard for determining the initial dosage and dose interval, in comparison to the Bayesian method, based on our hospital data collected from adult MRSA patients. We also compared our findings with the Moellering's method, Matzke's method, Maeda's method and the Population mean methods.Maeda's method did not predict the serum trough and peak levels that reach poisonous ranges. Maeda's method was found to be a safe method. In addition, Maeda's method was found to reach the therapeutic ranges the most frequently of the four methods. Furthermore, the calculations for Maeda's method were simpler than the other three methods. Accordingly, it is possible to easily calculate the initial dosage and dose interval in the clinical field. The serum VCM concentrations should thus be measured for each patient, as soon as possible, to correct the dosage using the Bayesian forecasting technique, because the therapeutic ranges sometimes deviate from the predicted range.
著者
松下 由実 横山 徹爾
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.39-45, 2019-04-01 (Released:2019-05-17)
参考文献数
28

【目的】IHD(虚血性心疾患)関連の心電図異常を見出す能力が高い,侵襲性のない新しい体格指数を作成することを目的とした。【方法】2004~2010年に人間ドックでCT検査を受けた12,628名を対象とした。IHD関連の心電図異常(心電図異常もしくは心筋梗塞現在治療中)を従属変数,身長,体重,ウエスト周囲長CT(WCCT)を独立変数にした回帰分析に基づき,新たな体格指数(BSI)を作成した。ROC曲線を描き,IHD関連の心電図異常を,BSI,内臓脂肪面積(VFA),内臓脂肪面積と皮下脂肪面積の和,WCCT,BMIで比較した。【結果】男性においてIHD関連の心電図異常を見出すためのBSIのROCの曲線下面積(AUC)は,VFA,WCCT,BMIに比べて有意に大きくなっていた(p<0.01)。女性においてAUCは,WCCTとBMIより有意に大きくなっており(p<0.05),VFAとはほぼ同等であった。IHD関連の心電図異常を感度80%で見出すことのできるBSIは,男性で-1.2,女性で-2.4であった。【考察】BSIは,IHD関連の心電図異常を見出す能力は,男性ではVFAより大きく,女性ではほぼ同等であることから,医療現場で使う指標としては有用である可能性が示唆された。今後は,IHDリスク評価について縦断的にみていく必要があると考えられる。
著者
松下 宗洋 原田 和弘 荒尾 孝
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.30-38, 2014 (Released:2015-01-13)
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的:運動行動を促進する技法の1つとして,インセンティブを用いて動機づけを高める技法が注目されている.インセンティブを効果的に用いるには,インセンティブの内容(種類,金額)や,対象者の運動行動に対する準備性を考慮する必要がある.本研究の目的は,対象者の運動行動変容ステージとインセンティブの内容によって,運動行動を動機づける強さが異なるかを検討することである.方法:40~69歳のモニターを対象(N=1,290)にインターネット調査による横断研究を実施した.測定項目は,インセンティブの種類による運動行動の動機づけの強さ(以下,動機強化得点),インセンティブとして希望する相当額,運動行動変容ステージであった.結果:動機強化得点は,インセンティブの種類(p<0.01),運動の行動変容ステージ(p<0.01)により有意に異なり,両者の交互作用も有意であった(p<0.01).しかし,各行動変容ステージにおける動機強化得点の高いインセンティブは,現金,商品券,旅行券であり,順位に大きな変動はなかった.各行動変容ステージの運動取組動機率が50%に達するインセンティブ希望金額は,前熟考期が2,000円,熟考期が1,000円,準備&実行期が1,500円,維持期が500円であった.結論:運動行動を動機づける強さは,インセンティブの内容(種類,金額)や運動の行動変容ステージによって異なることが明らかとなった.今後は,本研究を基にしたインセンティブによる運動実践率向上の検証が課題となる.