著者
中静 透 井崎 淳平 松井 淳 長池 卓男
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 = Journal of the Japanese Forestry Society (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.171-178, 2000-05-16
参考文献数
13
被引用文献数
2

秋田県象潟町の鳥海山麓にある「あがりこ」樹型をもったブナの優占する森林の成因を,過去の空中写真,森林構造および年輪解析を調べることにより明らかにした。1997年の現地調査から,最高で地上約4mの位置から最大11本の萌芽幹をもつ株が観察されるブナ林で,個体サイズ分布(萌芽幹の胸高断面積の合計から推定)は,かなり発達した森林であることがわかったが,萌芽幹のサイズ分布は小径に偏っていた。1985年の空中写真では閉鎖林であるが,1961年では漸伐林に近い構造をもつ森林として映っていた。年輪の解析からは,森林全体でも,個体の中でも20~40年の周期で萌芽幹が発生していることが示唆された。以上のことから,この「あがりこ」ブナ林は,一度の伐採で個体当り1~数本の萌芽幹を残しながら雪上伐採されることにより形成されたと推定した。この作業は,ブナの萌芽生理からも理にかなっていると考えられた。
著者
藤澤 隆史 松井 淑恵 風井浩志 古屋 晋一 片寄 晴弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.764-770, 2009-08-15
参考文献数
6

本稿では,「ヒトは音楽をどのように感じているのか」という観点から脳機能の計測方法およびその実験デザインついて解説する.まず,脳において音楽がどのように認知されているかについて,「音楽の脳機能局在」の観点からその関連部位について概観する.次に,脳機能の計測において用いられている代表的な装置とその諸特徴を紹介し,有効な計測信号を得るための実験デザインについて解説する.最後に研究例を3つ紹介し,音楽認知研究における脳機能計測の有効性を示す.これらの例が示す脳機能計測の有効性は,ユーザが楽しめる音楽インタフェースを開発する上で,音楽を聴取する脳の働きや脳機能計測法に対する正しい理解を深めることが一層重要となることを示唆している.
著者
奈良原 光隆 松井 三枝 宮崎 淳 小林 恒之 西条 寿夫
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-7, 2011 (Released:2011-06-30)
参考文献数
28

The purpose of this study was to examine the relationships between moral conscious and self conscious emotion such as shame and guilt, and to investigate the neural mechanism of moral conscious using near-infrared spectroscopy (NIRS). Healthy adult participants were investigated with NIRS as they were presented brief stories including description of deviant behavior and were asked to image what happened before and after the stories and to write down the added stories of their images. There were three conditions: self deviant condition, other deviant condition and control condition. The story in each condition consisted of content related to social deviant situation. Self evaluation score of shame and guilt in self deviant condition was significantly higher than that in other deviant condition. The results also showed that arousal of self conscious emotion brought an increase of oxygenated hemoglobin concentrations in the prefrontal area. Especially, concentration change of oxygenated hemoglobin in the prefrontal area under self deviant condition increased more than that under other deviant condition. This result showed arousal of self conscious emotion would have been related to activation of prefrontal area. These findings suggest that it will be important to arouse self conscious emotion for production of moral conscious.
著者
松井 和宏 佐藤 晴夫
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.23, 2009

金融市場における自動取引戦略獲得のためのアプローチとして、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いる手法に着目し、遺伝子上での指標とパラメータのコーディング法について検討する。対立遺伝子表現と遺伝子座表現という2種類の指標表現法、及びパラメータの直接/間接コーディング法について、過去10年間の株価データを用いた検証実験を行ない、対立遺伝子表現と間接コーディングの組合せの優位性を確認した。
著者
合屋 十四秋 寺本 圭輔 松井 敦典 下永田 修二 土居 陽治郎 モラン ケビン
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学研究報告. 芸術・保健体育・家政・技術科学・創作編 (ISSN:18845150)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.35-46, 2011-03-01

The causes of drowning must dictate especially what we teach, content, and to a lesser degree, how we teach. Therefore, an project was conducted among Japanese university students in order to explore the relationship between swimming competency, students estimates of their competency, and their perception of the risk of drowning. Sixty five males and 48 females university physical education students enrolled at three institutions were the subjects of the study. The questionnaire consisted of a) perception of their ability, b) perception of their ability to perform these in open water and c) their perception of risk in five specific scenarios. Practical tests consist of seven aquatic skills. No significant differences were found in actual swimming-related abilities between male and female students, although more females than males did not complete the tests of: dive entry into pool (female 23%; male 11%), surface dive to 2m (female 33%; male 19%), and 100m swim on back (female 28%; male 9%). Similarly, no differences were found in self-estimated swimming abilities by gender. More females than males estimated higher risk of drowning for each of the 5 drowning scenarios that students were asked to estimate the personal degree of risk. This study found that male students tend to underestimate the potential dangers in the risk of drowning.
著者
福嶋 司 高砂 裕之 松井 哲哉 西尾 孝佳 喜屋武 豊 常富 豊
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.79-98, 1995
被引用文献数
46

Phytosociological classifications were carried out in order to revise and coordinate data on beech forest in Japan. Reports from different authors as well as our investigations using the BRAUN-BLANQUET method resulted in a total of 2,717 releves. These were used for constructing a vegetation table that produced five beech forest associations. These associations are 1. Sapio Japonici-Fagetum crenatae, 2. Corno-Fagetum crenatae, 3. Sasamorpho-Fagetum crenatae, 4. Lindero umbellatae-Fagetum crenatae and 5. Saso kurilensis-Fagetum crenatae. Associations 1,2,and 3 belong to the alliance, Sasamorpho-Fagion crenatae, which is distributed along the Pacific coast of Japan, whereas 4 and 5 belong to the alliance Saso-Fagion crenatae, which is distributed along the Japan Sea side. These alliances are of the order Saso-Fagetalia and of the class Fagetea crenatae. On the Pacific side, there are more floristic variations because there are many independent mountains with their own characteristic floras. Association 1 is distributed mainly on Kyushu, Shikoku and Kii peninsula. It is characterized by the Sohayaki elements which are historically related to that of East Asia. Association 2 is distributed mainly in the Fuji Volcanic Area whose characteristic features are the Fossa Magna elements. Association 3 is distributed mainly from the Chubu to Kanto regions inland with an extension into the middlepart of Tohoku. Its floristic composition represents the typical Pacific side beech forests. Along the Japan Sea side, there are fewer floristic variations because the covered area is more extensive and has a wider altitudinal range, with heavy snow deposition. Association 4 is distributed from Chugoku up to the low altitudinal areas of Hokuriku. Its floristic composition is basically made up of the Japan Sea elements with some Pacific side flora. Association 5 is distributed from Hokuriku through Tohoku, up to southwest Hokkaido, and floristically this is typical of the Japan Sea side.
著者
Baym Gordon 真部 知博 伊藤 正和 寺中 久男 高木 春男 松井 哲男 乙藤 岳志 上羽 牧夫
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.315-333, 1980-07-20

今まで高密度物質についていろいろと話をしてきました。物質を圧縮すると何がおこるだろうか。密度が10^4g/cm^3に達するとイオン状態になる。すベての電子は伝導状態にはいり,裸の原子核と電子のプラズマになってしまう。つづけて圧縮すると,核物質密度で原子核はくっつきはじめて核子の流体になる。この核子はそれぞれ3つのクォークから構成されている。更に圧縮されて核子同士がくっつきはじめると,ばらばらのクォークからなる液体になる。それはクォーク物質と呼ばれる。
著者
Baym Gordon 上羽 牧夫 高木 春男 白田 理一郎 山内 淳 田中 一尚 松井 哲男
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.265-280, 1980-03-20

きょうはπ凝縮の一般的問題について少し詳しく話す。π凝縮は中性子星の物理だけでなく,重イオン衝突の際にも重要な問題だし,通常の原子核にも関係があるかも知れない。中性子星のつくられる超新星爆発の機構にも重要である。
著者
松井 信義
出版者
舞鶴工業高等専門学校
雑誌
舞鶴工業高等専門学校紀要 (ISSN:02863839)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.76-83, 2007-03-15

広告(advertisement)は,一般にテレビ,ラジオ,新聞,雑誌,広告板(billboard),パンフレット(pamphlet)などの媒体(medium)を通して受け手(receiver)に伝達(communicate)される。そして広告の主たる目的は,'to tell the public about a product or a service in order to encourage people to buy or to use it'(OALD, 6^<th> ed.2000)の定義からもわかるように,受け手にその内容について興味・関心を抱かせ,結果として何らかの行動(action)を起こさせるよう仕向けることである。本稿では主に,リーフレット(leaflet)タイプのパンフレットを取り上げ,広告はどのように受け手に行動の動機付けを与えようとしているのか,その言語ストラテジー(linguistic strategies)について考察する。とりわけ,'だじゃれ'(pun)などの'言葉遊び'(play-on-word)を含むレトリックは効果的な言語ストラテジーだと言える。
著者
寺川 眞理 松井 淳 濱田 知宏 野間 直彦 湯本 貴和
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.161-167, 2008-11-30
被引用文献数
1

大型果実食動物が絶滅した「空洞化した森林」では種子散布者が喪失し、植物の種子散布機能の低下が生じていると危惧されている。本研究では、ニホンザルが絶滅した種子島に着目し、サルの主要餌資源のヤマモモを対象に、種子の散布量が減少しているかを調べた。種子島と近隣のニホンザルが生息する屋久島にて、ヤマモモの結実木を直接観察し、散布動物の種構成と訪問頻度、採食果実数を求めた。屋久島で73時間46分、種子島で63時間44分の観察を行い、調査地の周辺では果実食動物がどちらの島でも10種ずつ確認されたが、ヤマモモに訪れたのは、主にニホンザル(屋久島のみ)とヒヨドリ(屋久島と種子島)に限られていた。ニホンザルは、ヒヨドリに比べて滞在時間が長く、採食速度も速いため、1訪問あたりの採食果実数は20倍以上の差があった。この結果は、ニホンザル1個体が採食したヤマモモの果実量をヒヨドリが採食するには20羽以上の個体が必要であることを意味する。しかしながら、本研究では、屋久島と種子島のヒヨドリのヤマモモへの訪問個体数は同程度であった。ヤマモモ1個体あたりの1日の平均果実消失量は、屋久島ではニホンザルにより893.0個、ヒヨドリにより25.1個の合計918.1個、種子島ではヒヨドリのみで24.0個であり、サルが絶滅した種子島では、ヤマモモの果実が母樹から持ち去られる量が極めて少ないことが示された。本研究の結果は、ニホンザルが絶滅した場合にヒヨドリがその効果を補うことはできない可能性を示しており、温帯においても空洞化した森林での種子散布者喪失の影響を評価していくことは森林生態系保全を考える上で今後の重要な課題であると考えられる。
著者
松井孝典著
出版者
集英社
巻号頁・発行日
2005
著者
松井 健一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.238-261, 2009-09-30

北米の先住民族と入植者は、過去400年以上の間にヨーロッパの国々やアメリカ、カナダと500以上の条約結び、条約にまつわる独特な歴史と文化を形成してきた。本稿は、このプロセスをハイブリッド文化としてとらえ、先住民族の条約を理解する上で重要な視点になると主張する。特に、ワンパムベルトや条約メダルにまつわる表象物や外交儀礼を詳しく考察しながら、これらが異文化交流の結果成立したことを明らかにする。先住民族の条約に関する先行研究は、条約文書に約束された事項を法律学や政治学の範疇で分析することが多いが、本稿は先住民族の視点をできるだけ取り入れながら、異文化交流のプロセスを歴史と文化の文脈からアプローチするエスノヒストリー的論文である。また、条約交渉・締結・更新のプロセスにおいてもたらされた銀製品や貝殻ビーズ、そのほかの交易品が果たした役割を検証し、それらが地域性豊かな先住民族の伝統文化とあいまってハイブリッド文化を形成した例を具体的に紹介する。こうした考察を加えながら、本稿が最終的に解釈する先住民族の条約とは、先住民族の権利を奪い伝統文化を打ち消すための法律文書ではなく、北米独自の歴史や文化の多様性・地域性に寄与してきた文化構築物である。
著者
高木 興一 松井 利仁 青野 正二 酒井 雅子
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.957-964, 1995-12-01
被引用文献数
12

本研究では、パチンコ、音楽鑑賞などの娯楽に伴い暴露されるような音の危険性をTTS(騒音性一過性域値変化)の観点から、暴露実験により評価することを試みた。暴露実験の結果、パチンコ店、ディスコ、ライブハウスの音を2時間暴露すると20dB程度のTTSが生じ、その聴力への危険性が大きいことが示された。一方、ヘッドホンステレオでの聴取を想定した、洋楽、邦楽のCDの音の暴露では、3〜5dBのTTSが生じるのにとどまった。また、既存の2種類の予測式によりTTSを計算したところ、どちらの予測値も実測値に比較的よく追随し、レベル変動の大きな変動騒音によるTTSの予測に対し、両予測式を適用できることが分かった。
著者
松井 藤五郎 後藤 卓 和泉 潔 陳 昱
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

複利型強化学習は,複利のリターンに基づいて強化学習を行う枠組みであり,ファイナンスへの応用に適している. 本論文では,複利型強化学習を国債銘柄を選択する問題へ適用し,その結果を報告する. 具体的には,国債銘柄選択問題を債務不履行(デフォルト)確率と利回りに基づいてバンディット問題として定式化する方法について述べ,複利型Q学習をこの問題に適用した実験結果を報告する.
著者
菊竹 清訓 松井 源吾
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文報告集 (ISSN:09108025)
巻号頁・発行日
no.444, pp.63-72, 1993-02-28
被引用文献数
1

Uniformly loaded shallow shells whose shape conforms to an elastic membrane inflated by internal (air) pressure are often referred to as membrane shells. They are advantageous since no bending moments but only axial (membrane) stresses occur. In the present paper, membrane shells are defined analytically on circular, elliptical, and various regular-polygonal boundaries. The analytical results are verified by membrane tests, whereas the deflections of the inflated membranes are mapped by using a reflection-type Moire method. Design applications are introduced and cases of some irregular boundaries are also dealt with.