著者
正田 誠 松浦 明 藤原 俊六郎 仲 勇治
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

大量の食品廃棄物が排出され、適当な処理方法が無い一方で、農業においては、植物病が多発し、化学農薬の過剰使用が起こっている。この問題を同時に解決するために、以下の研究を遂行した。(i)我々が分離した枯葉菌B.subtilis RB14を用い、オカラを培地とした固体培養物を微生物農薬として生産するするために、枯葉菌によるオカラの固体培養のスケールアップにおける最適条件の検討を行った。最適水分、最適温度、通気方法、センサー配置、冷却方法などの検討とそれらの制御方式の解析を行い、オカラの成分変化と抗菌物質の生産の関係の解析を行った。(ii)この培養でできた有機物の肥料効果および微生物農薬効果をポット試験にて実証した。枯葉菌によるオカラ分解物の土壌施用と分解過程の解析を行い、オカラの有機炭素、有機窒素の土壌中での変化をゲルクロ分析し、枯葉菌およびこの菌の生産する抗菌物質iturin Aおよびバイオサーファクタントsurfactinの動態変化を検討した。(iii)枯葉菌によるオカラ分解物の農薬作用の試験の実施を病原菌で汚染した土壌を用い、トマトについて実施した。病原菌はRhizoctonia solani,を対象とし、枯葉菌数の計測、iturin Aおよびsurfactinの土壌中の定量も行なった。(iv)抗菌物質iturin Aおよびsurfactinの合成に関与する遺伝子の解析とこの遺伝子と病害の抑制との関係を明らかにした。本菌の遺伝子解析および組換え体を用いた。植物試験を行い、その抑制メカニズムをあきらかにした。(V)神奈川県における有機物質の流れに関する調査を行い、システム作成の基礎を作った。
著者
中村 陽子 人見 裕江 西内 章 津村 智惠子 上村 聡子 松浦 尊麿 村岡 節 金 玄勲 金 東善
出版者
園田学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

限界集落における終末期の現状は在宅死よりも病院での死亡が多かったが、後期高齢者になると自宅か町内の病院死が多かった。厳しい生活条件の下での暮らしの中、人々は地域に深い愛情を持ち、家で終末期を迎えることを希望しながらも現実は無理であるとの思いが強かった。高齢化と過疎化、相互扶助の文化が薄れてきており、看取りの文化の継承が困難である現状が明らかになった。韓国の過疎地域における終末期ケアの課題としては医療・福祉サービスなどの多様なサービスの提供と都市部と地方の地域格差の解消が重要であることの示唆を得た。
著者
松浦 健二
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

WEB上のコミュニティ空間に、実世界での動作を伴う身体スキルの情報を蓄積し、それを活用する支援環境を設計および構築した。本研究を通じて、個人の身体スキルがコミュニティ空間を媒体として他者に伝播し、コミュニティに属する個人のスキル学習につながる様子が観測された。この中で、身体スキルを表現するには、各種のセンサを用いたメディア処理を適正に実装する必要があり、技術開発も実施した。
著者
問田 千晶 六車 崇 賀来 典之 塚原 紘平 安達 晋吾 光銭 大裕 新田 雅彦 野坂 宜之 林 卓郎 松浦 治人 守谷 俊
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.57-61, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
9

目的:オンライン型PPMECコース用の教材を作成し,オンライン型PPMECコースの理解・満足度と課題について検証した。方法:オンライン型PPMECコース受講前後のアンケート結果を用いて,新規教材およびオンライン型PPMECコースの理解度と満足度を量的に分析した。完全満足評価群と他評価群の2群比較および多重ロジスティック回帰分析を実施し,オンライン型PPMECコースの満足度に影響する因子を抽出した。結果:オンラン型PPMECコースは少数のインストラクターで多数の受講生に対して実施でき,一定の理解度と満足度を得ていた。完全満足群では教育内容を「十分に理解できている」と回答した受講生の割合が高かった。また,コースの満足度には「小児の評価」および「小児basic airway」の理解度がコース評価に有意に影響していた。結論:オンライン型PPMECコースは受講生の満足度と理解度を得ることにつながっていたが,理解しやすい教育教材への改良などによりコースの質を向上させることが課題である。
著者
福島 卓 松浦 晃宏 苅田 哲也 森 大志
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.387-391, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
22

〔目的〕重心移動練習課題中の前庭機能を抑制することを目的とした経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が重心移動学習を促進させるかを検討した.〔対象と方法〕健常成人10名を対象とし,重心移動練習課題中に右側乳様突起部へ3分間陰極通電するtDCS条件と課題開始後30秒間通電するsham刺激条件を比較した.練習課題前後に,前後・左右方向の足圧中心(CoP)変位と下肢荷重量を計測した.同時に下腿の表面筋電図を記録した.〔結果〕tDCS条件では,練習実施後にCoPが右側へ有意に変位し,右下肢荷重量が増大した.〔結語〕前庭tDCSは立位重心移動誘導を促進させるツールとなり得る可能性がある.
著者
松浦 一雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.13-17, 1994-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6

食品加工分野ではマイクロ波, 高周波, 遠赤外線, 超高圧, 超音波などの様々な物理エネルギーが利用されるようになってきた。超音波は魚群探知, 洗浄, 医療診断等の産業分野へ広く利用されているが, 食品産業分野への利用は最近のことである。ここでは酒類醸造分野での利用について, 超音波により酵母に阻害的に作用する溶存炭酸ガスを低減させることによって発酵制御を試みた例について解説していただいた。
著者
松浦 弘幸 根本 哲也 久保田 怜
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.89-96, 2012-05-30 (Released:2017-09-02)
参考文献数
9

神経軸索で興奮伝導や量子干渉を伝える媒体として,準粒子・ポラリトンの存在を考えた.ポラリトンは神経軸索膜で活動電位に伴って発生する分極が量子的波動として,軸索上や軸索間に伝搬して行く状態を分極ベクトルの回転として量子モデル化したものである.量子的分極波がエファプスやシナプス干渉,興奮の伝導の媒介等,ミクロな視点からの神経電気現象を担い,この分極ベクトルの変動の伝播・ポラリトンが神経的電磁気現象を伝える情報担体である.準粒子としてのポラリトン質量は約10^<-25>Kg,スピン1の質量を持つ光子として表現される.裸のポラリトンの質量は,電子質量の1〜10倍程度(6.7×10^<-30>Kg)である.通常は,熱ノイズの擾乱に耐えるために,水和した状態で存在する.高々,10個程度の水分子が,裸のポラリトンに引き寄せられて準粒子を形成する.神経伝導のポラリトンが持つ基底状態の波長は1μmを中心に10μ〜0.6μmに存在する.ポラリトンは,シュレディンガー方程式やクライン・ゴルドン方程式に従う.Na+,K+の膜の内外への流入・流出が伝導原因のカレントを形成し,その効果を軸索方向や軸索外に伝搬するのが,媒介粒子ポラリトンの役割である.
著者
中村 衣里 上田 友佳子 橋本 ゆかり 和田 宏美 松浦 寿喜
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.163-168, 2014-12-24 (Released:2017-01-27)
参考文献数
14
被引用文献数
2

The present study compared differently grades of powdered green tea (matcha) in order to clarify the relationship of matcha grade with their chemical constituents and functionality. The inhibitory effects of matcha on intestinal absorption of sucrose were examined in rats using portal cannulae. The contents of theanine, arginine and glutamic acid showed positive correlations with the quality of matcha. On the other hand, comparison of the catechin contents of differently grades of matcha revealed negative correlations between the quality of matcha and EGC, EC and EGCG content. Functionality was determined based on the duration of glucose absorption inhibition following matcha intake in portal vein-cannulated rats. Comparison between the high quality and low quality of matcha revealed a significantly reduced blood glucose concentration was observed with the low quality matcha as compared with the high quality of matcha, confirming glucose absorption inhibition. In the present study, we have shown that the relationship of quality of matcha with their chemical components and functionality.
著者
伊吾田 宏正 松浦 友紀子 八代田 千鶴 東谷 宗光 アンソニー デニコラ 鈴木 正嗣
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.103-109, 2017 (Released:2017-07-11)
参考文献数
13
被引用文献数
2

2014年の鳥獣保護管理法の改正により,条件付きでニホンジカ(Cervus nippon)の夜間銃猟が可能となったが,実施にあたっては,入念な計画,戦略,戦術が不可欠であり,無計画,無秩序な夜間銃猟はシカの警戒心を増大させ,むしろ捕獲を困難にする可能性が懸念される.そこで,効果的な夜間銃猟実施のための基礎情報を収集することを目的に,夜間のシカ狙撃に多数の実績を持つホワイトバッファロー社において,夜間を含む狙撃の実射訓練に参加した.2016年8月5日から7日まで,3日間でのべ約10.0時間の射撃場における射撃訓練及び試験,のべ約4.5時間の移動狙撃訓練コースにおける射撃訓練,のべ約4.5時間のシカ実験区におけるシカ狙撃実習,のべ約2.5時間の主に装備に関する室内講義,のべ約1.5時間以上の質疑応答を含む,合計約23時間以上の訓練を受けた.サウンドサプレッサー,光学スコープを装着したヘヴィーバレルの5.56 mm口径のライフルを用いて,100 m以下の様々な距離の標的およびシカを狙撃した.夜間狙撃はシカ管理の最終手段であり,射手はシカ個体群の警戒心を増大させないように,群れを全滅させることが求められる.そのためには,群れの全てのシカの脳を迅速に狙撃すべきであるが,それには徹底的な訓練が必要である.今後,我が国で夜間銃猟を安全かつ効果的に推進していく上で,捕獲従事者に高度な射撃技能ならびに野生動物管理に関する総合的な知識・技術を修得させるためのプログラムの構築が不可欠である.
著者
成本 忠正 松浦 直己
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.13-25, 2023-03-30 (Released:2023-03-25)
参考文献数
41
被引用文献数
1

注意欠如・多動性障害(attention deficit/hyperactivity disorder: ADHD)を抱える児童・生徒は視空間情報の処理と保持を同時に遂行する能力である視空間性ワーキングメモリ(visuospatial working memory: VSWM)が定型発達児よりも弱い。問題解決や心的創造などを伴う高次認知課題の遂行では,言語情報だけではなく視空間情報あるいは心的に生成した視覚イメージを保持しながら別の処理を遂行することや,保持内容に心的操作を加えて変化あるいは複雑化した視覚イメージを保持することが求められる。しかし,ADHD児における後者の保持能力に関しては研究されていない。本研究では,視空間短期記憶能力および心的操作によって複雑化する視覚イメージの保持能力においてADHD児と定型発達児で差が認められるのかを検討した。実験の結果,視空間短期記憶課題における両群の成績に差は認められなかったが,VSWM課題の成績に有意な差が認められた。これは,ADHD児の視空間短期記憶に問題はないが,心的操作によって変化する視覚イメージを保持する能力に問題があることを示している。本研究はADHD児のVSWM能力に関して新たな知見を提供したと言える。
著者
榎本 みのり 有竹 清夏 松浦 雅人
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.144-148, 2008-04-10 (Released:2008-10-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1
著者
松浦 茂樹 趙 揚
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.43-72, 2009-10-01 (Released:2017-08-30)
参考文献数
16
著者
河村 浩孝 佐藤 義雄 木野 健一郎 渡辺 義史 相澤 大和 松浦 正和 橋田 浩二 浜口 俊明 山口 健二郎 一丸 忠志 芥川 大祐 南部 透 梅原 隆司 水野 孝之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.57-63, 2010 (Released:2010-02-15)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

Boron isotope ratios were analyzed in seven domestic analytical labs for boric acid solutions with various compositions of boron isotope abundances, using an Inductively Coupled Plasma–Quadrupole Mass Spectrometer (ICP-QMS). Five sample solutions with different isotope abundances of 10B were prepared in the range of 10 to 20% by mixing two boric acid solutions containing natural B and enriched 11B, respectively. Then, the 10B isotope abundances of each sample were certified by analyzing with thermal ionization mass spectrometry (TI-MS) according to ASTM-C791-04. Results obtained from each lab have indicated good coincidences with TI-MS results. Also, the relative standard deviations of results with ICP-QMS of seven analytical labs were 0.11 to 0.81%. The measurement precision for ICP-QMS would be sufficient in terms of practical use, while taking into consideration a valid requirement required for verifying a depletion of the 10B isotope abundance in the PWR coolant, while this is greater than a nominal analytical error (relative value : 0.22%) for TI-MS shown in ASTM-C791-04.
著者
杉原 辰哉 萩原 文香 門永 陽子 鳥谷 悟 松浦 佑哉 井原 伸弥 黒崎 智之 森山 修治 上田 正樹 森脇 陽子 広江 貴美子 古志野 海人 山口 直人 大嶋 丈史 岡田 清治 太田 哲郎
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.53-56, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
10

【目的】心肺運動負荷試験(CPX)のAT レベルの心拍数(THRAT)での運動処方が困難な場合はKarvonen の式から得られる心拍数(THRkarvonen)を参考に実施するが, 心不全やβ遮断薬投与例では必ずしも適切な決定ができない.本研究はβ遮断薬投与中の急性心筋梗塞患者を対象にATHRとKarvonen 式の関係を検討し,適切な心拍数を求めることを目的とした.【方法】対象はβ遮断薬投与中の急性心筋梗塞患者20 例,年齢62.7±8.2 歳.a(220-年齢)を最大HR とし,係数a は実際にCPX で得られた実測最大HR からa =実測最大HR/(220-年齢)を求め,また,Karvonen の式から運動強度の係数k =(THRAT-安静時HR)/(最大HR-安静時HR)として求め,係数k と臨床的指標の関係について検討した.【結果】CPX から求めた係数a は0.72±0.09,係数k は0.42±0.13,THRmodified Karvonen = 0.42[0.72(220-年齢)-安静時HR]+安静時HR で,THRAT とTHRmodifiedKarvonen の相関関係はr=0.84(p < 0.01)であった.係数k と臨床的指標の関係は心リハ開始日数とLVEF に関連性が認められTHRclinical =(0.005×LVEF-0.015×心リハ開始まで+0.312)[0.72(220-年齢)-安静時HR]+安静時HR とすると,THRAT との相関関係はr=0.88(p < 0.01)であった.【結語】β遮断薬投与中の急性心筋梗塞患者はTHRmodified Karvonen = 0.42[0.72(220-年齢)-安静時HR]+安静時HR で求められ,係数k はLVEF と心リハ開始日数と関連して変化する可能性が示された.
著者
松浦 由美子
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.57-69, 2020 (Released:2021-08-25)

「自己決定権」の概念は、人工妊娠中絶へのアクセスを求めるフェミニズムの主張の論拠として1980年代後半以降広く使われてきたが、日本のフェミニズムは「権利」の語の使用には積極的ではなく、それはしばしば忌避され、ときには棄却されてきた。フェミニストたちは、自己決定することは胎児の生命の価値を否定するものではない、女性の「自己」とは胎児と別個に存在しているのではない、と繰り返し論じてきたが、「権利」のないその「自己決定」は「決定」の名に値するものなのか。はたして「権利」は中絶をめぐるフェミニズムの言説において本当に必要ないのだろうか。これらの問いに答えるために、カール・シュミット、ジャック・デリダ、エルネスト・ラクラウらの議論を参照して主体と決定との構成的な関係を考察する。それによりフェミニズムが用いてきた自己決定権の主張がはらむ問題点を明らかにし、これまで避けられてきた「権利」概念の必要性を論じたい。