著者
藤井 景介 今井 謙一郎 都丸 泰寿 内藤 実 坂田 康彰 福島 洋介 小林 明男 依田 哲也
出版者
一般社団法人 日本有病者歯科医療学会
雑誌
有病者歯科医療 (ISSN:09188150)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.81-86, 2005-09-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
11

訪問歯科診療後, 歯性感染により敗血症を発症した症例を報告する. 患者は67歳, 男性で糖尿病, 肝硬変, 慢性腎不全があり右側頬部から頸部にかけての腫脹と激痛を主訴に当院救急部に来院した. 患者は訪問歯科診療で根管処置を受け, 同日夜より右側頬部から頸部にかけて腫脹と激痛が出現し, 全身倦怠感もみられた. われわれは右側急性下顎骨炎, 頸部蜂窩織炎と診断した. 抗菌薬投与およびドレナージ施行したが翌日より敗血症によるショック状態となった. その後, ドレナージの追加および内科的治療を行うも意識レベルがもどらず, 入院46日後, 死亡した. 死因は腎不全による尿酸の増加であった. 訪問歯科診療は近年増加する傾向にあるが, しかし, 安易な治療により重篤な感染を起こす可能性があり, 患者の既往歴および現在の全身状態の把握が必要である.
著者
本堂 毅 平田 光司 関根 勉 米村 滋人 尾内 隆之 笠 潤平 辻内 琢也 吉澤 剛 渡辺 千原 小林 傳司 鈴木 舞 纐纈 一起 水野 紀子 中島 貴子 中原 太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

科学技術の専門的知識には,程度の差はあれ,様々な不確実性が避けられない.また,社会の中で科学技術の知識を用いる際にどのような科学的知識が必要かは価値判断と不可欠であるため科学自体では定まらない.このような「科学的知識の不定性」を直視し,不定性の様々な性質を踏まえた上で,より的確な判断を私たちが主体的に下すための条件を考察し,科学的知識に伴う不定性の性質・類型を明らかにするとともに,その成果を書籍にまとめた(2017年度に出版予定).
著者
桑林 賢治
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.5-30, 2021 (Released:2021-04-13)
参考文献数
59
被引用文献数
3

先住民による「記憶の場所」の構築と,支配的マジョリティがそこに与えた文化的・社会的な影響を分析することは,先住民のアイデンティティと過去,そして場所の関係性を解明する一助となりうる。本稿は,アイヌによってシャクシャインに関する「記憶の場所」へと構築された北海道新ひだか町の真歌山を事例に,その構築がいかに彼(女)らをめぐるポストコロニアル状況に影響されていたのかを考察する。真歌山は従来からシャクシャインに対する顕彰行為の場であったが,1960年代末以降,和人のまなざしの影響を受けながら,アイヌ・アイデンティティと結びつく「記憶の場所」へと構築され,各地のアイヌを巻き込んでいった。その後も,アイヌによる和人のまなざしの受け止め方が変化するたびに,真歌山という「記憶の場所」は再構築され続けている。こうした動きには,文化的な喪失と同化を経験し,今なお和人のまなざしから解放されていない,現代のアイヌをめぐる文化的・社会的なポストコロニアル状況が映し出されていた。その意味で,真歌山は現代のアイヌを取り巻くコロニアリズムの残滓を反映した,ポストコロニアルな「記憶の場所」として位置づけられる。このようなコロニアリズムの残滓について,多様な解釈が存在することを想定し,それらを丁寧に読み解くことが,真歌山という「記憶の場所」の構築をより深く理解するためには必要である。
著者
藤井 幸治 高橋 直樹 熊本 幸司 松本 英一 高橋 幸二 宮原 成樹 楠田 司 村林 紘二
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.833-837, 2008-09-30 (Released:2008-11-05)
参考文献数
19

58歳,男性。散弾銃が至近距離から患者の左腰部に命中し,受傷約2.5時間後に当院に搬送された。顔面蒼白であるも意識清明。血圧130/70mmHg,脈拍66/minであった。左腰部に径4cmの射入口を,右側腹部に4ヵ所の射出口と2個の弾丸を認めた。L2以下の知覚鈍麻と下半身麻痺を認めた。CTにて左腰部から右側腹部に銃創を認め,弾丸貫通による腰椎粉砕骨折,さらに腹腔内に腹水およびfree airを認めた。救急搬送約80分後に緊急開腹術を施行した。十二指腸下行脚に1ヵ所,回腸に5ヵ所の穿孔部を認め,回結腸動脈が断裂していた。腰椎を貫通した弾丸は下大静脈と右尿管の間を通過しており大血管損傷は免れていた。回盲部切除,十二指腸穿孔部閉鎖,胃空腸バイパス,腹腔内洗浄ドレナージ術を施行し,皮下の弾丸を2個摘出後,左腰部射入口を洗浄,閉創した。下半身麻痺のため,術後33日目にリハビリ目的に整形外科に転科となった。
著者
佐藤 慶二郎 穴山 万理子 住 昌彦 小林 光
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1688-1693, 2021 (Released:2022-01-13)
参考文献数
15

症例は95歳男性。2回目のBNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種後2日目より全身皮下出血や下血が出現した。接種後4日目に血小板減少,D-dimer軽度高値,Helicobacter pylori(H. pylori)IgG抗体陽性,抗リン脂質抗体陽性が認められた。血栓症を疑う身体症状は認めず,新規発症の免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia, ITP)と診断し,0.5 mg/kgのprednisoloneと免疫グロブリン療法(intravenous immunoglobulin, IVIG)0.4 g/kg/dayを開始し,翌日より血小板が改善傾向となった。3ヶ月経過時点で寛解を維持している。SARS-CoV-2ワクチン接種後の血小板減少の鑑別は,ITP以外に,血栓性血小板減少性紫斑病や新規疾患概念であるワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症など多岐にわたる。さらに自験例では抗リン脂質抗体関連血小板減少症やH. pylori関連ITPの可能性も考えられた。SARS-CoV-2ワクチン接種後の新規発症ITPの報告は増加傾向にあり,その多くがステロイドやIVIGに速やかに反応する。適切な鑑別疾患に基づいた症例の蓄積がSARS-CoV-2ワクチン後に出現する血小板減少症の対策に重要と考えられた。
著者
小林 茂
出版者
札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
雑誌
札幌学院大学心理学紀要 = Bulletin of Faculty of Psychology Sapporo Gakuin University (ISSN:24341967)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.1-11, 2021-02-26

本論では,日本におけるgifted という語の理解と社会的受容の問題の考察をおこなった。 日本の教育や福祉などの支援機関では高い知能の子どもの適切な支援や支援体制がなされていないことや,生きづらさの問題も懸念されている。そのためアメリカのギフテッド教育が注目されるようになった。だが,日本において才能教育に「ギフテッド」という用語を使用することは適切かが問われる。こうしたことから,gifted やtalented の語にある文化的な背景を語の使用の歴史と元にある言説と影響史を追うことで考察を行った。
著者
小山 珠美 若林 秀隆 前田 圭介 篠原 健太 平山 康一 社本 博 百崎 良
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.14-25, 2020-04-30 (Released:2020-08-31)
参考文献数
26
被引用文献数
1

【目的】当院では,チーム医療による早期経口摂取開始に取り組んできた.誤嚥性肺炎患者に対する入院後早期の経口摂取開始が,在院日数と退院時経口摂取に及ぼす影響を検討した.【対象と方法】2014 年4 月から2018 年3 月までに誤嚥性肺炎で当院に入院した65 歳以上の380 名を対象とした.死亡者を除外した.年齢,性別,要介護度,入院前生活場所,入院時肺炎重症度分類(ADROP),入院後経口摂取開始までの日数,入院後2 日以内の経口摂取開始,リハビリテーションの有無,経口摂取開始後発熱,在院日数,退院時摂食嚥下レベル(FOIS),退院時経口摂取の有無,自宅退院の有無を診断群分類包括評価(DPC)データから後方視的に調査した.また,チーム医療無群とチーム医療有群に分類し,両群を比較したうえで,早期経口摂取による在院日数,退院時経口摂取への影響を検討した.統計解析は単変量解析としてカイ2 乗検定,t 検定,Mann-Whitney のU 検定,多変量解析として重回帰分析,ロジスティック回帰分析を行い,有意水準は5% 未満とした.【結果】対象者の年齢(平均値±標準偏差)は85.9±7.0 歳,経口摂取開始日(中央値)は3 日,在院日数(中央値)は21 日,退院時経口摂取は294 名(77%)であった.チーム医療有無群で比較すると,単変量解析では,入院時A-DROP, リハビリテーション介入,退院時FOIS, 退院時経口摂取,在院日数に有意差がみられた.多変量解析では,在院日数に有意に関連した因子は,要介護度(β =-0.215),入院前生活場所(β= 0.146),チーム医療(β=-0.151),入院後2日以内経口摂取開始(β=-0.134),リハビリテーション介入(β = 0.145),経口摂取開始後発熱(β = 0.202),退院時FOIS(β =-0.280),退院先(β = -0.184)であった.退院時経口摂取に有意に関連した因子は,年齢(オッズ比= 1.039),チーム医療(オッズ比= 3.196),入院後2 日以内の経口摂取開始(オッズ比= 4.095)であった.【考察】急性期医療でのチーム医療による早期経口摂取開始は,在院日数を短縮し,退院時経口摂取率を高める可能性が示唆された.
著者
小林 直也
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1159, 2022 (Released:2022-12-01)
参考文献数
5

望みの標的タンパク質と特異的に結合するタンパク質を設計し,タンパク質相互作用を自由自在に制御することができれば,新しい医薬品の開発への応用が期待できる.これまで結合タンパク質を設計するには,標的タンパク質が他のタンパク質と結合した複合体構造が必要であり,標的タンパク質の立体構造情報のみを用いて結合タンパク質を設計する一般的な方法はなかった.本稿では,標的タンパク質の立体構造情報のみを用いて,任意の標的タンパク質の特定の部位に結合するタンパク質を設計する手法を開発したCaoらによる研究を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Cao L. et al., Nature, 605, 551–560(2022).2) Dou J. et al., Nature, 561, 485–491(2018).3) Rocklin G. J. et al., Science, 357, 168–175(2017).4) Chevalier A. et al., Nature, 550, 74–79(2017).5) Jumper J. et al., Nature, 596, 583–589(2021).
著者
小林 雅夫
出版者
早稲田大学地中海研究所
雑誌
地中海研究所紀要 (ISSN:13482076)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.45-54, 2008-03-01
著者
永瀬 和彦 中村 英男 小林 秀之
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.56, no.523, pp.797-802, 1990-03-25 (Released:2008-02-21)
参考文献数
4
被引用文献数
1

The authors constructed "slipping adhesion test bogie" designed upon a new idea of measuring the coefficient of adhesion continually while running, and have observed the state of adhesion on main lines since 1985. Recently, they placed a car equipped with this bogie on a steep line where wheel-spin and skidding of rolling stock had been frequently the cause of troubles. As the result of runs of the car under various weather conditions such as fine, fog, snow, sleet and frost, influence of the weather condition upon the adhesion between rails and wheels has been made clear and evaluated quantitatively.
著者
沖 裕貴 林 徳治
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.15, pp.52-55, 1999
被引用文献数
1 1

仮想現実との接触によって, 青少年に「健全な心身の発達に対して危惧される影」の影響が懸念される。本稿では, そのうち, 「性的問題行動の増大」に関して, コンピュータによるポルノ・ゲームの影響を他のメディアと比較検討した。その結果, ポルノ・ゲームは, 他のホラー・ビデオ, ポルノ・コミック, ポルノ・ビデオと同様, 青少年の性犯罪や性的逸脱行為に対する罪悪感を減少させる傾向が見られた。また, その刺激性は, ポルノ・ビデオやポルノ・コミックに及ばないものの, そのメディアに接触する際の後ろめたさは, 他のメディアに比べて少なくなる傾向が見られた。さらに, ポルノ・ゲーム特有の問題点として, 「登場人物を好きになる」「現実の異性に興味を失う」「登場人物が実在する気がする」などの気分が指摘され, 筆者独自の質問紙調査でも, テレビ・ビデオ・メディアに比べて, 実体験との混同や現実からの逃避などの傾向が有意に高く表れた。またコンピュータ・ゲームでは, 年齢と現実の異性への興味との間に全く相関が見られず, 仮想体験の影響が長期に及ぶ可能性も示唆している。
著者
塚田 健一郎 宮林 千春 古川 浩一 寺尾 ゆみ子 窪川 芳樹 綱島 勝正 青柳 豊
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.1215-1220, 2006-06-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
19
被引用文献数
2

内視鏡検査後に一過性全健忘をきたした3例を報告する.いずれも女性で,逆行性健忘と順向件健忘を呈した.意識障害はなく年余に渡る長期記憶も障害されていなかったが,現在の自分の状況を理解できなかった.家族は状況の理解に苦しみ不審の念に駆られ,また施行医も当惑した.原因として,内視鏡検査を受ける不安・緊急などのストレスが挙げられる.極めて稀な合併症と思われるが,知っておくべき重要な合併症と考えられる.
著者
大林 正人 田中 誠一 小町 裕志
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.153-154, 2008-01-10
参考文献数
9

麻痺肢の擬人化とは,麻痺肢に対してあたかもそこに人格が宿ったかのようにふるまう症候である.今回68歳の右視床出血の女性患者において,入院数日後から麻痺を認めた左上肢に対して「てっちゃん」と名づけて話しかけるという特異な行動を認めた.意識障害や認知機能異常は認められず,身体失認が軽度認められる程度であった.擬人化は長期にわたり持続した.<br>
著者
大橋 綾子 柳田 諭 林 美穂 本村 啓介
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.117-126, 2011 (Released:2017-02-16)
参考文献数
66

強制水泳試験は,抗うつ薬のスクリーニングをはじめとして,ラットやマウスのうつ病様行動を評価する行動試験として,広く用いられてきた。しかし,強制水泳試験の行動上の結果と,脳内各部位におけるニューロンの活動性との関係には,未だ不明な点も多い。本稿では強制水泳試験の神経基盤について,これまでの研究の知見から主なものを紹介する。