著者
小林 哲郎 稲増 一憲
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.85-100, 2011 (Released:2017-07-03)
参考文献数
108

社会心理学およびコミュニケーション研究の観点からメディア効果論の動向について論じる。前半は,マスメディアの変容とその効果について論じる。特に,娯楽的要素の強いソフトニュースの台頭とケーブルテレビの普及がもたらしたニュースの多様化・多チャンネル化について近年の研究を紹介する。また,メディア効果論において重要な論点となるニュース接触における認知過程について,フレーミングや議題設定効果,プライミングといった主要な概念に関する研究が統合されつつある動向について紹介する。後半では,ネットが変えつつあるメディア環境の特性に注目し,従来型のメディア効果論の理論やモデルが有効性を失いつつある可能性について指摘する。さらに,携帯電話やソーシャルメディアの普及に関する研究についても概観し,最後にメディア効果論の方法論的発展の可能性について簡単に述べる。
著者
小林 とよ子 渡辺 邦友 上野 一恵
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.1639-1644, 1992-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
22
被引用文献数
3

沖縄本島および南西諸島 (粟国島, 宮古島, 伊良部島, 多良間島, 石垣島, 小浜島, 西表島, 波照間島) の144地区における砂糖キビ畑を中心に採取した土壌290検体および黒砂糖の製糖工場において精糖工程から抜き取り採取した53検体についてボッリヌス菌と破傷風菌の分離を行った.ボッリヌスE型菌は沖縄本島の土壌135検体のうち, 北部地区の我地および安波と南部地区の豊見城の3ヵ所から検出された.ボッリヌスC型毒素は沖縄本島および粟国島, 伊良部島, 小浜島, 波照間島から証明されたが, 菌は分離されなかった.ボッリヌスA型菌は沖縄本島および南西諸島のいずれの土壌からも検出されなかった.破傷風菌の分布は地域により片寄りがみられ, 沖縄本島では北部より南部の方が高率に検出された.南西諸島では粟国島, 宮古島, 伊良部島, 多良間島, 西表島および波照間島の土壌から検出され, とくに伊良部島と多良間島では高率に検出された.黒砂糖工場における調査では, 波照間島の検体からボッリヌスC型毒素が証明された.破傷風菌は多良間島, 石垣島および小浜島の検体から検出された.しかし, 最終製品の黒砂糖からはボッリヌス菌, 破傷風菌は検出されなかった.
著者
伊豆 裕一 加藤 裕治 林 在圭 イズ ユウイチ カトウ ユウジ イム ゼエギュ Yuichi IZU Yuji KATO Jaegyu Lim
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.15, pp.73-84, 2015-03-31

1955 年、東京芝浦電気より発売された自動式電気釜は、米と水を入れてスイッチを入れればおいしいご飯が炊けるという、今では当たり前となったことを実現した夢の商品であった。日本国内で急速に普及率を伸ばした電気釜は、その後、アジアの各国に輸出され、米食を簡単で身近なものとした。本稿では、まず、我が国における、電気釜の普及と生活文化の関係を、デザインと広告の変遷を見ることで考察する。つぎに、同じく米を主食とする韓国における電気釜のデザインの変遷との比較を行うことで、地域の食文化と家電製品の関係について論じる。
著者
小林 晃洋 大久保 街亜
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.60-68, 2014-04-25 (Released:2014-04-15)
参考文献数
34
被引用文献数
2 8

The Operation Span Test (OSPAN) is widely used to assess working memory capacity. However, this instrument has been rarely used to test Japanese participants because its task was not sufficiently difficult. The mean score for the original computerized OSPAN often reached a ceiling when Japanese participants were tested. In this study, we developed a computerized version of OSPAN for Japanese participants by increasing the task difficulty of the arithmetic procedures. The OSPAN scores were normally distributed and the mean score was approximately 50%. There were positive correlations between OSPAN scores and other scores of working memory measurements, such as a reading span test and a digit span test. These results suggest that the Japanese OSPAN is a reliable and valid measurement of working memory to test Japanese participants.
著者
上林 憲司 田戸岡 好香 石井 国雄 村田 光二
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.130-138, 2016 (Released:2016-09-07)
参考文献数
28
被引用文献数
2 3

社会における善悪判断を左右する道徳性が,外的要因により意識されないまま変化することが知られている。本研究は道徳性に変化を及ぼす要因の一つとして,着衣に注目した。特に,道徳性が白色および黒色と結びついていることに基づき,白色または黒色の着衣が,着用者の道徳性に関する自己認知に及ぼす影響を検討した。参加者は白色または黒色の衣服を着用した状態で,自己と道徳性の潜在的な結びつきを測る潜在連合テスト(IAT)に取り組んだ。その後,道徳性について顕在的な自己評定を行った。その結果,潜在認知と顕在認知のどちらにおいても,白服着用者の方が黒服着用者より,自己を道徳的に捉えていた。これらの結果を踏まえ,着衣が認知や行動に影響を及ぼす過程や,道徳性を変化させる要因について議論した。
著者
小林 佳美
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.6-17, 2019 (Released:2020-06-05)
参考文献数
28

本稿では,私立保育所の保育士賃金が1990 年代後半以降の保育制度改革を機に,一般的に低いと認識される状況に陥った背景と,その要因を,1980 ~ 2015 年の都道府県別時系列集計データを活用して分析した。分析対象期間の保育士賃金の動向は,2000 年すぎから低下し,2005 年にはいずれの人口規模においても女性労働者の平均を下まわるレベルとなったことが確認された。この低下の要因を検討するため,保育制度改革期を機に減少した公立/私立割合,及び女性の就労環境の変化に着目してプールド重回帰分析を行った。集計データによる分析は留保を要する結果ではあるものの,2000年以降,平均勤続年数の増加にともなう賃金上昇が抑制されたこと,主に人口密度の低い地方部で公立割合の減少と共に賃金水準が低下したことが確認され,専門職としての経験を積み上げられる賃金体系を,ナショナルミニマムとして回復することの必要性が示唆された。
著者
小林 大祐
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.1, pp.1-6, 2019-01-01 (Released:2019-01-01)
参考文献数
36
被引用文献数
5

Overconsumption of Ginkgo biloba seeds induces food poisoning characterized by tonic-clonic convulsions and vomiting. The primary toxic component, 4′-O-methylpyridoxine (MPN), was purified from the seeds in 1985. This review includes the following aspects of ginkgo seed poisoning: 1) toxicity related to the content of MPN and MPN glucoside in G. biloba seeds; 2) the effect of MPN on vitamin B6 analogs, including an increase in pyridoxal and pyridoxic acid and decrease in pyridoxal-5′-phosphate plasma concentrations; 3) case reports of ginkgo seed poisoning in Asia, North America, and Europe, and their effective treatment via vitamin B6 administration. Considering the increase in the use of G. biloba seeds, it is essential to raise global awareness of their potential toxicity.
著者
八木 太門 小林 寛明 今瀬 玲菜 三島 有華 尾形 朋之 山下 高明 土屋 公威 稲瀬 直彦
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.190-194, 2016-05-25 (Released:2016-06-07)
参考文献数
14

背景.フッ素樹脂は日用品に汎用されるが,過燃焼によりヒュームを生じ,時に肺障害をきたし得る.症例.55歳女性.鍋に火をかけて寝てしまい,2時間後に呼吸困難を自覚し当院へ搬送となった.発熱と低酸素血症があり,胸部CTにて中枢側優位のすりガラス陰影を認めた.気管支鏡検査では気管支肺胞洗浄液にて好中球増多があり,経気管支肺生検では軽度の胞隔炎の所見であった.フッ素樹脂加工鍋の使用歴から,ポリマーヒューム吸入による肺障害と診断した.症状や画像所見は速やかに消失し,第7病日に退院となった.結論.ポリマーヒューム熱は日常生活の中で起こり得る疾患として注意が必要であるため,報告する.
著者
森脇 広 小林 哲夫
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.223-224, 2002-08-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
林 長閑
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.141-152, 2007-12-28

この検索表は日本において食品,衣類,家具などに見出される甲虫目の幼虫について科まで同定できるようにした.34科を取り上げたが,その中にはエンマムシ科のように捕食性があり害虫の天敵として有益なものも含まれる.
著者
林 文子 Udijanto Tedjosasongko 粟根 佐穂里 岡田 貢 香西 克之 長坂 信夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.708-715, 1999-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
32
被引用文献数
2

日本茶,ウーロン茶,紅茶などの各種茶のフッ素溶出濃度を測定し,齲蝕予防への効果を検討するため,宇治産および静岡産煎茶,静岡産ほうじ茶,中国産ウーロン茶,スリランカ産紅茶を材料とし,浸出温度50℃,60℃,70℃,80℃ および90℃,浸出時間30秒,1分,2分,5分および10分の各条件下で浸出した茶浸出液のフッ素溶出濃度を測定し,以下の結果を得た。1)温水で浸出した場合のフッ素溶出濃度は,浸出温度にかかわらず紅茶,ほうじ茶,煎茶,ウーロン茶の順に高く,その濃度は浸出温度80℃,浸出時間2分の場合紅茶1.82ppm,ほうじ茶1.02ppm,煎茶(宇治産,並級,古茶)0.80PPm,ウーロン茶0.48PPmであった。2)煎茶においては保存期間にかかわらず,並級の方がフッ素溶出濃度が高い傾向がみられた。また,産地別では宇治産のものにフッ素溶出濃度が高い傾向がみられた。3)水だしした場合のフッ素溶出濃度は,ほうじ茶(3.69ppm),ウーロン茶(2.18ppm),煎茶(1.39PPm),紅茶(1.58PPm)の順に高かった。以上の結果より,茶浸出液のフッ素溶出濃度は茶の産地や製法で異なり,煎茶においては,一般に下級と言われる硬化した下位葉を使用した茶に多く含まれていることが示された。これらの結果は,齲蝕予防における食生活指導への茶飲料の効果的な利用を示唆するものである。
著者
千ヶ崎 学 中根 基行 小川 和夫 若林 久嗣
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.215-221, 2000-12-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
14
被引用文献数
11 23

蛍光色素 CFSE で生体染色したヘテロボツリウム孵化幼生を0歳トラフグに感染させた。 CFSE は孵化幼生の感染能力に影響しなかった。 0―4日齢の孵化幼生を異なる濃度(1L, 1尾当たり 29,58,116虫)と接触時間(1―10時間)で感染させ, 以下の結果を得た。 孵化幼生の感染能力は経日的に低下し, 2日齢以降はほとんど感染しなかった。 濃度は着定率に影響しなかった。 着定率は3時間以降は有意に増加しなかった。 従って, 孵化後1日以内の幼生に3時間接触させるのを標準感染法とした。
著者
加川 隆三郎 斎藤 徹 宮岡 哲郎 黒川 彰夫 有竹 賀子 吉川 宣輝 西庄 勇 岩田 辰吾 竹林 正孝
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.505-512, 1998 (Released:2009-06-05)
参考文献数
25
被引用文献数
9 2

ヒトパピローマウイルス(HPV)は,子宮頚癌をはじめ各種扁平上皮癌組織にそのDNAが検出され,HPV感染による発癌機構の解明が進みつつある,諸外国では肛門管,直腸の扁平上皮癌にHPV-DNAを確認した報告がみられるが,本邦ではほとんどない。今回,HPV-DNAの検出に最も感度が高く,また型の同定も可能なPCR法により,日本人の肛門管,大腸の扁平上皮癌発癌におけるHPVの関与を研究した,方法:肛門管扁平上皮癌18例,その他の肛門管癌5例および大腸扁平上皮癌3例のパラフィン包埋標本より得られた検体のDNAをPCR法にて増幅,制限酵素にて処理後,消化パターンにより型判定をおこないHPV6,11,16,18,31,33,42,52,58について検討した.また肛門管扁平上皮癌症例で,HPV,p53に対する免疫組織化学的検討を行った.結果:肛門管扁平上皮癌症例のうち3例からHPV16,1例からHPV6のDNAが検出され,HPVによる発癌が示唆された。免疫染色では扁平上皮癌細胞の核が染色され,癌細胞核内のHPVの存在,mutantp53の蓄積が示された.欧米の成績と比較してHPVの種類には差はないものの,検出頻度は低かった.しかし,日本人の性習慣の変貌にともない,肛門管の扁平上皮癌の感染実態の変化が予想された。
著者
三浦 智 鈴木 智裕 小林 洋 藤江 正克
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.850, pp.16-00414, 2017 (Released:2017-06-25)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

Hemiplegic patients often have reduced typing speed due to finger paralysis. Our motivation is to develop a keyboard that enables their typing speed to increase. For this purpose, we have developed a three-dimensional keyboard that reduces the distance that fingers move while typing. In this paper, our objective was to construct the finger model that combines the motion speed and muscle fatigue for design of keyboard that can be typed with fast motion speed and low muscle fatigue. In experiment, we measured the finger position using a magnetic 3D motion device and EMG when the participant pressed the proposed key. The experiment was carried out in a variety of the finger postures. We qualified the motion speed and muscle fatigue at each joint angle. Then, we weighted and combined two of the objective functions. We found out the Pareto solution and get an effective keyboard design straight. In the future, we verify the typing speed and finger muscle fatigue during typing the three-dimensional keyboard that is designed based on our finger model.
著者
犬塚 貴 木村 暁夫 林 祐一
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.94-98, 2016 (Released:2016-08-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2

Several autoantibodies are associated with autoimmune encephalitis. Some of these antibodies are directed against intracellular neuronal antigens such as Hu and Ma2, which are strongly associated with paraneoplatic syndrome. In the past 10 years, various antibodies were identified that recognize neuronal cell–surface or synaptic proteins in patients associated with or without malignancy. Some of these antibodies are able to directly access receptors of neurotransmitters or channels and are responsible for causing neurological syndromes. Autoimmune encephalopathy with these antibodies generally responds to immunotherapies, such as steroids, plasmapheresis, and intravenous immunoglobulin as well as immunosuppressant and anti–cancer treatments in cases of paraneoplastic syndrome.Patients with N–methyl–D–aspartate (NMDA) receptor antibodies, which are the most common in autoimmune encephalopathy, often cause psychiatric manifestation, memory impairment, seizures, dyskinesia, catatonia, autonomic instability and respiratory failures. Although 86% of patients become worse at the stage of mRS5, almost 80% of all patients recover to the stage of less than mRS2 with immunomodulatory therapy and careful management for their general condition. Detection of those antibodies in both serum and CSF using cell–based assays is important for definite diagnosis. Availability of screening systems of antibodies and covering health insurance for immunomodulatory therapy for autoimmune encephalitis are highly expected.