著者
林 勇吾
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.E-G91_1-9, 2017-07-01 (Released:2017-07-03)
参考文献数
24

The present study investigated the influence of reflections on self/others’ trust within group-based problem solving. The study assessed the role of trust dynamics on perspective-taking activities within conflictive groups, extending the experimental framework used by a previous study and including conversational agents for controlling participants’ interactions related to trust dynamics and perspective taking behavior. Results showed that (1) reflections of self/other trust in conflictive groups may influence trust towards other members, and (2) reflections of trust by members with conflicting perspectives may facilitate trust and perspective taking process. This suggests that the level of trust dynamics facilitates trust and can function to manifest perspective taking within cooperative groups. The results of the study provide new knowledge in collaborative problem solving studies that the development of trust has a progressive effect on perspective taking activities among conflictive members.
著者
小林 健彦 KOBAYASHI Takehiko
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.48, pp.21-41, 2017-01

日本に於ける自然地形―平坦部、山岳、河川、湖沼、海洋等―や、自然的な現象―気象や地学的な現象等―、或いは、事物等に対して、それらが人間では無いにも拘わらず、それらに恰も人間であるかの如き日本語運用上の待遇格を与え、それに準じた日本語表現法を採用することが有る。一般的には、それらは「愛称、通称」であり、愛着を指し示す目的の手法であるものとも解釈される。ただ、そこにはそれらを擬人化し、人と全く同様な待遇を与えながら運用をして行く、といった要素は全く無いのであろうか。本稿では、そうした視角に立脚して、人間ではない、日本の自然地形や事物に対する人格化表現法の目的等に就いて考察を加えたものである。
著者
小林 裕生 森田 伸 田仲 勝一 内田 茂博 伊藤 康弘 藤岡 修司 刈谷 友洋 板東 正記 田中 聡 金井 秀作 有馬 信男 山本 哲司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Fb0802, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 温熱療法は臨床において,加温による生理反応を利用し疼痛軽減,循環改善,軟部組織の伸張性向上などを目的に施行されている.温熱療法は一般に筋力トレーニングや動作練習といった運動療法前に施行される場合が多く,温熱負荷が筋力へ及ぼす影響を理解しておく必要がある.しかし,温熱負荷による筋力への影響についての報告は,種々の報告があり統一した結論には至っていない.本研究の目的は,一般的な温熱療法である HotPack(以下,HP)を使用した際の,深部温の変化に伴う等速性膝伸展筋力への影響を検討することである.【方法】 対象は,骨関節疾患を有さず運動習慣のない健常人9名(男性6名・女性3名,平均年齢29.2±5.2歳,BMI 22.4±3.3)とした.測定条件は,角速度60deg/sec・180deg/secの2種類の等速性膝伸展筋力(以下ISOK60・ISOK180)をHP施行しない場合と施行する場合で測定する4条件(以下 ISOK60・HP-ISOK60・ISOK180・HP-ISOK180)とした. HPは乾熱を使用し,端坐位にて利き脚の大腿前面に20分施行した.温度測定には深部温度計コアテンプ(CT‐210,TERUMO )を使用.皮下10mmの深部温の測定が可能であるプローブを大腿直筋中央直上に固定.安静時と HP 施行直後にプローブを装着し,測定器から温度が安定したという表示が出た時点の数値を深部温として記録した.等速性膝伸展筋力は, CYBEX Norm を使用.測定範囲は膝関節伸展0°・屈曲90°に設定,各速度で伸展・屈曲を3回実施した.なお,測定は筋疲労の影響を考慮し各条件は別日に実施した. 深部温の変化は,HP施行前とHP施行直後の深部温の平均値を算出し,等速性膝伸展筋力はピークトルク値を体重で正規化し平均値を算出した.いずれも統計学的検定は,各速度で HP を施行する場合と施行しない場合を対応のあるt検定で比較した.なお有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 全ての被験者に本研究の趣旨と内容,起こりうるリスクを説明し,書面にて同意を得た者のみ実験を行った.【結果】 深部温の変化は, HP 施行前34.44±0.52℃, HP 施行後37.57±0.24℃であり有意に温度上昇を認めた(p<0.001).等速性膝伸展筋力に関しては,ISOK60で1.9±0.7Nm/Kg,HP-ISOK60で2.0±0.5 Nm/Kg, ISOK180で1.2±0.4 Nm/Kg, HP-ISOK180で1.4±0.5 Nm/Kg という結果を示し, ISOK180と HP-ISOK180で有意差を認めた(p=0.01).【考察】 一般に HP は表在を加温する温熱療法であるが, HP 施行により深部温度は有意に上昇していた.加温による筋への影響について,生理学的には組織温が上昇することで末梢循環では代謝亢進や血流増大,ATP利用の活性化,神経・筋系では末梢神経伝達速度の上昇,筋線維伝導速度上昇に伴う筋張力の増加が期待できるという報告がある.今回の研究では,等速性膝伸展筋力の変化に関して, ISOK60とHP-ISOK60は有意差がみられなかったが, ISOK180と HP-ISOK180で有意差がみられた.したがって,深部温の上昇に伴う組織の生理学的変化はより速い速度での筋収縮に影響することが示唆された.この生理学的背景としては,組織温の上昇に伴う ATP の利用の活性化が第一に考えられる.筋肉は強く,瞬発力を要する筋張力を発揮する場合,運動単位としては速筋線維の活動が初期に起こるとされている. ATP 産生が酸化的に起こる遅筋線維と比較しても速筋線維は ATP 産生が解糖系であるためエネルギー遊離速度が速いといわれていることから,温度上昇により速筋線維の活動が賦活され筋力増加につながったのではないかと考えられる.さらに,神経伝達速度の上昇に伴い筋収縮反応性が向上したことも影響した要因の1つだと予想される. 今後は温度上昇部位の詳細な評価や温熱の深達度に影響を及ぼす皮下脂肪厚測定,誘発筋電図による神経伝達速度の評価を行い,今回の結果を詳細に検討していく必要がある.【理学療法学研究としての意義】 等速性膝伸展筋力は,筋収縮の特異性として速い角速度ほど動作能力に結びつきやすいといわれている.今回の研究において,深部温の上昇に伴いより速い角速度での等速性筋力が増加したことは,温熱療法が筋力へ影響することを示唆する結果となった.このことは,運動療法前に温熱療法を行うことの意義が拡大すると考えられる.
著者
小林 文明 鈴木 菊男 菅原 広史 前田 直樹 中藤 誠二
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
日本風工学会論文集 (ISSN:13493507)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.21-28, 2007 (Released:2007-08-24)
参考文献数
17

The detailed structure of a gustfront was revealed with Doppler radar, Doppler sodar, weather station and video cameras at Yokosuka observation site, Japan. The gustfront was accompanied with a downburst from bow echo of developing thunderstorm. Two gusts occurred at the passage of gustfront. First gust was observed about 2 km behind the gustfront. Second gust occurred about 5 km behind of the first gust and maximum wind speed of the second gust was larger than that of the first gust. The vertical circulation of the gustfront had about 5 km in horizontal scale and 500 m in vertical and made "arc cloud" , which had 200m of cloud base and 500m of cloud top in height. Strong wind cores (> 25 m/s) existed between 30 m and 500 m in height at the front of the circulation. Two gust winds, which were observed at the surface, were well corresponded with the strong wind core near the surface and updraft region of the circulations. Vertical distribution of the wind speed changed remarkably for 5 minutes in the vertical circulations.
著者
寺田 良一 舩橋 晴俊 平林 祐子 堀田 恭子 藤川 賢 堀畑 まなみ 原口 弥生 湯浅 陽一
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究においては、近年の急速な経済活動の国際化に伴い問題化しつつあるアジア太平洋地域における、環境負荷の移動、環境政策の相互影響、環境運動の交流などについて、一方で包括的にその時系列的、空間的な流れを解明する「環境総合年表」(すいれん舎刊)を作成し、もう一方で、その個別性と普遍性を考察する定性的比較研究(日本、韓国、中国、台湾、インド、米国等)を進め、研究成果報告書を刊行した。
著者
樋口 輝美 堀田 直 石川 由美子 山道 慎也 會所 拓斗 二階堂 杏子 瀬戸口 晴美 山崎 俊男 大川 恵里奈 安藤 英之 及川 治 小林 伸一郎 阿部 雅紀 岡田 一義
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.477-482, 2015 (Released:2015-08-28)
参考文献数
21

症例は58歳男性. 糖尿病性腎症による末期腎不全にて血液透析を導入された. 心エコー検査で, EFは48.9%で, E/e’も19.5と収縮障害と拡張障害を認め, LVMIも151g/m2と左室肥大を認めた. ESAsはrHuEPOを9,000単位/週を使用し, ERIはrHuEPO doses/kg/g/dL/週として算出し, 13.5と比較的高値を認め, レボカルニチン1,200mg/日で内服療法を開始した. 開始前と1年後の経過で, EFは48.9%から72.7%, LVMIも151g/m2から107g/m2, NT-proBNPは12,800pg/mLから7,850pg/mLへと改善した. 内服開始前の使用rHuEPOは9,000単位/週で, 開始前のERIは13.5と高値であったが, rHuEPOは3,000単位/週に減量し, ERIは3.9まで低下した. 動脈硬化症の指標のbaPWVは1,832cm/secから1,545cm/secと改善した. また上腕筋面積は, 32.9cm2から39.3cm2に上昇し, ALT, ASTは12U/L, 14U/Lで, それぞれ9U/Lと軽度低下した. レボカルニチンの投与により, 種々のパラメーターが改善した症例を経験したので報告する.
著者
林谷 秀樹
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.85-85, 2010

我が国における理想的な獣医学教育像を描くためには,(1) 学生の具体的な到達目標を明示すること,(2) 目標を達成するために必要なカリキュラムの内容(シラバス)を明らかにすること,(3) 教育手法を明示しておくことが不可欠であるとの認識のもと,文部科学省の先導的大学改革推進委託事業に「獣医学教育モデル・コア・カリキュラムに関する調査研究」が東京大学を代表者となって採択されたことを受けて,平成21年7月から獣医学教育のコア・カリキュラムの策定が開始された。本事業では獣医学の4分野(基礎,病態,応用ならびに臨床)の中から,取り上げるべき授業科目として50科目が選択され,それぞれの科目について学生が習得すべき基本的内容について検討されている。コア・カリキュラムとはそれぞれの分野で必ず学ぶべき必要最小限の共通カリキュラムであり,これまでに医学,薬学,歯学および法科大学院の4つの分野の教育で策定されている。獣医学教育でのコア・カリキュラムで策定される内容は,各科目で学ぶべき内容の2/3であり,残りの1/3については各大学が独自の理念や社会的要求に基づいた判断により実施することになっている。<BR>これまで,獣医学教育の中で,獣医疫学は公衆衛生学,獣医衛生学,獣医伝染病学などの科目の中で教育されていることが多く,近年,獣医疫学を独立した科目として教育する大学が増えつつあるものの,「獣医師国家試験ガイドライン」の中では独立した科目としては扱われていなかった。しかし,今回「獣医学教育モデル・コア・カリキュラムに関する調査研究」事業では,獣医疫学は応用獣医学の中の独立した一科目として選定され,そのコア・カリキュラムが検討されることとなった。獣医疫学のコア・カリキュラム策定に当たり,3名の委員(加藤行男,筒井俊之および林谷秀樹,いずれも獣医疫学会会員)が選出され,平成22年7月からそのコア・カリキュラムに関して検討を開始し,平成23年2月に案が完成した。獣医疫学に関するカリキュラムとして,獣医疫学会ではすでに2007年に獣医疫学に関するカリキュラムを学会から提言しているが,今回のコア・カリキュラム案もほぼそれに従った形になっている。コア・カリキュラムは,科目を通して全体で到達すべき目標と項目(20項目)ごとに一般目標と到達目標が設定されている。今回,委員で策定した獣医疫学のコア・カリキュラムについてその項目を下記に記した。このコア・カリキュラムは獣医学関係者や一般人からのパブリックコメントを得て修正し,平成23年3月に公表される予定となっている。<BR>いずれにしても,獣医疫学のコア・カリキュラムが策定されるということは,今後獣医系大学で獣医疫学が必須科目として講義されることになるということであり,獣医疫学の発展と普及を目指す本学会としては喜ばしい限りである。現在,獣医疫学会では,このコア・カリキュラムに準拠した形で獣医疫学の教科書の改訂を進めており,来春にはコア・カリキュラムに準拠した新しい獣医疫学の教科書が近代出版から発行される予定である。<BR><B>獣医疫学コア・カリキュラム(案)</B><BR>(1)疫学の概念 (16)スクリーニング<BR>(2)健康疾病事象の発生要因 (17)感染症の疫学<BR>(3)疫学で用いられる指標 (18)特定分野の疫学<BR>(4)疫学に必要な統計手法 (19)リスクアセスメント<BR>(5)標本抽出 (20)疾病の経済評価<BR>(6)疫学研究の信頼性と妥当性<BR>(7)疫学資料<BR>(8)記述疫学<BR>(9)生態学的研究<BR>(10)横断研究<BR>(11)症例対照研究<BR>(12)コホート研究<BR>(13)介入研究<BR>(14)因果関係<BR>(15)サーベイランス
著者
合田 和史 林 秀樹 加藤 優 上村 里菜 北夕 太郎 岩本 理央 近藤 剛弘 杉山 正
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.44-49, 2015-01-10 (Released:2016-01-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1

In Japan, the online distribution of over-the-counter (OTC) drugs began in June 2014. A distributor has a duty to explain information about drugs to consumers, as well as to provide OTC drugs that have undergone quality control. In this study, we investigated the method of identifying health conditions of customers and the delivery channels of OTC drugs from the distributors to consumers, using 130 online stores as our sample. First-class OTC drugs were sold at 29 stores; pharmacists are required to explain information about these drugs to consumers. All the stores set up a column on which consumers could select their health conditions on a computer screen. However, in 25 of the stores, “no problem” had been inserted in the column beforehand. This meant that consumers could buy first-class OTC drugs without indicating their health conditions. Felbinac-containing poultices, which are contraindicated for pregnant women, were sold at 99 stores. However, consumers could buy the poultices at 91 stores without providing information about pregnancy. All the stores delivered OTC drugs through home delivery services, which did not store the drugs in cool conditions. In addition, some stores delivered suppositories by mail services in summer. These findings suggest the need for online distribution of OTC drugs to incorporate an improved method of providing drug information to consumers and ensuring quality control.
著者
小林 祐樹 Yuki Kobayashi
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2016-03-25

本論文では, モンテカルロ木探索を用いた囲碁プログラムのデータ構造を考え, 学習手法やヒューリスティックの有無がプログラムの強さにどのように影響するかを考察した.モンテカルロ木探索は木探索部とシミュレーション部に分けられ, さらにシミュレーション部は大きく2つに分けられる. 1つは盤全体の着手確率のテーブルを保持して, その中からランダムに着手を選ぶ非決定論的シミュレーションであり, もう1つは直前の着手に対応する良さそうな手があったら, 即座にその手を選ぶ決定論的シミュレーションである. 決定論的シミュレーションを行うオープンソースソフトウェアにPachi やFuego などがあるが, それらと同等の棋力を持つ非決定論的シミュレーションを行うオープンソースソフトウェアは存在しない.本研究では, 非決定論的シミュレーションを用いる囲碁プログラムを設計し, Pachi やFuego よりも強い囲碁プログラムの開発を目指した.プログラムに利用している学習手法の妥当性や, ヒューリスティックの有効性を示し, 13路盤と19路盤ではPachi とFuego よりも強いプログラムを開発できた.非決定論的シミュレーションを行うプログラムを作成し, オープンソースソフトウェアとすることで, 様々な手法の有効性を2つのシミュレーション手法の違いを含めて検証できるようになった.
著者
立石 健二 宮崎 林太郎 長田 誠也 増山 毅司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.211, pp.53-57, 2014-09-11

本稿では、「結婚」「子育て」等のライフイベントに関するユーザ属性をYahoo!知恵袋の書込みとYahoo! Japan上の行動ログを用いて推定する方法を提案する。ユーザ属性は詳細に得られる程、ピンポイントなパーソナライズが可能になる一方、取得方法が課題となる。提案方式は2ステップで構成され、まずYahoo!知恵袋の「3歳の子供がいる」といった書き込みから「子育て」といった特定のライフイベント属性を持つ質問者をパターンマッチングにより抽出する。次に、得られた質問者を学習データとして、質問者のYahoo! Japan上の行動ログ(例.クエリ、閲覧ページ)を元に、知恵袋に投稿しないユーザがライフイベント属性を持つかを推定する。評価実験により、1ステップ目が、2ステップ目で正例として用いるに十分な数の質問者を高精度に抽出できることを確認した。
著者
山近 友里恵 山田 深 山田 卓也 中島 佐和子 寺林 大史 大田 哲生 木村 彰男
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第25回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.81, 2009 (Released:2010-04-21)

【目的】床面に登坂角度をつけた傾斜トレッドミル歩行における下肢関節運動および筋活動の特性を明らかにし,臨床での有用性について検討する.〈BR〉【方法】対象は本研究の内容について同意を得た健常成人3名(24.0±0.0歳).平地(Flat Floor:FF),傾斜なしトレッドミル(Flat Treadmill:FT),坂道(傾斜角12%)(Up-Slope:US),傾斜トレッドミル(同12%)(Tilt Treadmill:TT)の順に3分間の休憩を挟んで歩行を行った.FF,US歩行速度は主観的快適速度とし,FT,TT歩行はそれぞれFF,USと同一に設定した.歩行中の下肢筋電図および股関節角度変化を記録するために左側中殿筋,大殿筋,大腿筋膜張筋および大腿直筋筋腹上に表面電極を,股関節に角度計を貼付し,テレメータを介して各波形を記録した(サンプリング周波数2 kHz).また,圧センサーを足底に設置して歩行周期を同定した.解析はオフラインで行い,筋電波形を全波整流した後,50歩行周期分を加算平均し,各条件におけるパターンの相違を検証した.〈BR〉【結果】大殿筋,大腿筋膜張筋および大腿直筋の表面筋電波形パターンは個人差が大きく一定の傾向は見られなかったが,中殿筋においては立脚初期から中期にかけて筋活動の増大が共通して確認された.特にTTおよびUS歩行では二峰性のパターンを示し,中殿筋の筋活動は傾斜のない歩行と比べ相対的に増大していた.また,TT歩行時の筋活動はUS歩行と比べ全般的に高電位であった.股関節角度はTTおよびUS歩行において,遊脚後期から立脚初期にかけて屈曲方向へ増大する傾向が認められた.〈BR〉【考察】斜面歩行は平地歩行と比べ,股関節外転筋群への運動負荷を効率的にかけ得ることを示した.さらに,トレッドミルを用いることで,筋活動をより増大させることが可能であると示唆された.
著者
遠藤 秀紀 日柳 章彦 九郎丸 正道 林 良博 坂本 一則 木村 順平
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.635-640, 1997-08-25
被引用文献数
1 2

シマハイエナ (Hyena hyena) の膵臓の葉区分を肉眼解剖学的に観察し, 膵管と副腎管の走行を検討した. また, 組織学的に外分泌部と膵島の配置を確認し, 免疫組織化学的手法により, 膵島におけるA, B, D, およびPP細胞の分布状態を検討した. 膵臓は胃の大弯付近から十二指腸近傍にかけての間膜に発達していた. 幽門部を境界に鋭く折れるため, 前半部を左葉, 後半部を右葉と判断することができた. 右葉よりさらに後方に, 特徴的な独立した小さな葉が確認され, これを後葉 (caudal lobe) と名付けた. 導管は合計3本確認され, 大十二指腸乳頭近傍に到達するものと, そこからさらに前方に分岐するものを膵管と推定し, 後葉から十二指腸に至る最後部の管を副膵管と定めた. 組織学的には多数の膵島が外分泌部の間に観察された. A細胞およびPP細胞は膵島の辺縁部に限局し, B細胞とD細胞は, 膵島内に偏りなく分布していた. また, 外分泌部に単独で散在するB細胞が観察された. ハイエナ類の膵臓の形態はこれまでに記載されたことがない. 肉眼的には後葉の存在と膵管の分岐が特記された. 組織学的には, B細胞の膵島での均等な分布と外分泌部での散在が, シマハイエナの特徴であるといえる. これらの結果は, 食肉類の中で独特の進化を遂げたハイエナ科における膵臓の形態学的データとして, 今後の比較検討にも用いることができよう.
著者
二藤 宏美 林 安紀子 南 曜子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.240, pp.47-52, 2000-07-21
参考文献数
3

乳児が日常において養育者から聴いている音楽への選好をどのように形成していくか、童謡を用いて検討した。選好振り向き法を用い、5〜14ヵ月児に対し、長調の童謡6曲とそれらの短調への変型6曲の旋律を聴かせ、聴取反応を測定した。その結果、5、8、11ヵ月児群においては月齢内で一貫した聴取反応は認められなかったのに対し、14ヵ月齢群において、原型への有意な選好が認められた。また、8、11ヵ月児群において、聴取経験と選好との相関が認められた。以上より、乳児は0歳後期から徐々に音楽の聴取経験の影響を受け、1歳前期にはこれらの原型への選好が形成される可能性が示唆された。
著者
小林 史枝 武田 正則 佐藤 正暢 山下 好史 杉山 賢司 森田 雅教
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.59-63, 1997

近年の膜型人工肺は,ハードシェルめ静脈貯血槽との一体型が多く,簡素化されている。しかし,最低貯血量の必要性などにより,人工心肺回路の充填量軽減には限界がある。そこで我々は,低充填量を目的に,静脈血液が貯血槽を経ない遠心ポンプと落差の併用脱血方式の回路を試作し,臨床使用した。脱血回路は,貯血槽から遠心ポンプへの回路の中間へ接続し,主な静脈血は直接遠心ポンプへ流入し,灌流量以外の静脈血は貯血槽の流出口から自然落差により逆流し貯血する。灌流量が不足の場合は,貯血槽から補う方式とした。また,脱血回路にはエアーフィルタを装着し,遠心ポンプへの空気混入を回避した。エアーフィルタは100μmに織ったポリエステルのスクリリーンタイプで,充填量が40mlのものを使用した。このフィルタの性能試験を牛血(Ht=20%)で1分間5mlの空気を4回注入し,フィルタの出口で気泡を検知した結果,40μm以上の気泡は18個で,その内17個が60μm以内で,1個だけ70μmが検知された。この微小気泡は,人工肺出口でも同量が検知されたが,遠心ポンプの拍出には影響なく,最終的には動脈フィルタにおいて全て遮断された。試作回路は充填液量が1,000mlと少なく,脱血回路への空気混入は,エアーフィルタで除去され,弁疾患などの開心術症例にも支障なく使用でき,有用な人工心肺回路であった。