著者
内野 博之 牛島 一男 平林 剛 石井 脩夫 芝崎 太 黒田 泰弘
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.527-550, 2007-10-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
63

集中治療における脳保護の成否は, (1) いかに早期に脳への血流を再開させ, エネルギー代謝を改善することができるか (脳機能回復を念頭に置いた脳蘇生法) と, (2) 血流再開後にいかに脳を保護できるか (脳神経障害から脳を保護する治療法の適用) の2点が大きな柱となるものと思われる。すなわち, 心停止後の頭蓋外臓器の機能を脳に有利になるような方法で管理し, かつ頭蓋内の恒常性を維持することをその意図とすることをその主目的としている。神経集中治療における救命救急処置法の改善および脳保護法の進歩や脳指向型集中管理法が併用され, これまでは回復が難しいと思われてきた神経機能回復に光明を見い出すことができるようになったが, 人の脳神経細胞障害のメカニズムは複雑かつ多要素で, 神経機能回復を目指した治療を開始するまでの時間が極めて短く, 虚血性脳神経細胞障害を完全に抑制できる状況とは言い難い。本稿では, 虚血性神経細胞障害における細胞内カルシウム動態とフリーラジカルの関与を紹介し, 細胞死に深く関わるミトコンドリア機能不全とカルシニューリン/イムノフィリン情報伝達系の重要性を概説する。
著者
小林 哲
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.29-40, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
28

地方は,長期に渡り構造的問題を抱えており,それを解決する方法として注目されているのが,交流人口を糧とする地域ブランディング手法に基づく地域経済の活性化である。しかし,現在,新型コロナウイルス感染症の蔓延により,その政策が実行できずにいる。そこで,本稿では,コロナ禍での地域ブランディング政策を,①交流人口を維持するための政策,②交流人口に代わる市場の開拓,③交流人口以外を糧とする地域ブランディング政策の可能性の3つの視点から考察する。なお,コロナ禍での政策には,構造的問題の解決という長期的視点(線)と,コロナ禍という特殊状況への対応という短期的視点(点)の両方が必要となる。本稿では,この両方の視点を踏まえて,コロナ禍での地域ブランディングの在り方を明らかにする。
著者
荒川 典子 秦 和文 栗原 加奈 川嵜 卓也 倉林 均 間嶋 満
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0051, 2006 (Released:2006-04-29)

【はじめに】視床障害の臨床症状として,感覚障害,不全片麻痺,運動失調症が代表的であるが,不随意運動としてジストニアが出現することも知られており,その頻度は17%程度とされている.今回,視床出血後に生じたジストニアが歩行及びADL能力改善の阻害因子となった3症例の理学療法を経験したので,その内容と経過について報告する.【症例紹介及び理学療法経過】<症例1>57歳男性,右視床出血.第2病日から脳外科病棟にて起立・歩行練習開始.第13病日リハ科転科.転科時のgrade(上肢/手指/下肢)は左6/10/10.左深部感覚脱失.第30病日頃から歩行・応用動作時,左上下肢にジストニアが出現し,同時に左肩関節痛も見られるようになった.歩行・階段昇降時に出現するジストニアと左肩関節痛に対して,疼痛及びジストニアが誘発されない肢位・運動強度での動作練習を実施.この際,左上下肢の深部感覚障害もジストニア発現に関与していると思われたため視覚フィードバックを用いた.第74病日,T字杖での監視歩行が室内で可能となり自宅退院.左深部感覚に改善はなく,左上下肢の痺れも残存.<症例2>68歳男性,右視床出血.第2病日から脳外科病棟にてベッド上座位開始.第6病日から端坐位,第19病日から起立,第22病日から歩行練習開始.第31病日リハ科転科.転科時のgradeは左10/10/10.左深部感覚中等度鈍麻.歩行・起立時に左上肢近位部・体幹にジストニア出現し,歩行時には左短下肢装具・膝装具を使用しても中等度の介助を要した.歩行時のジストニアに対し,運動療法と並行して薬物療法施行.第36病日からは歩行練習を中止し,下肢筋力強化,ジストニア抑制肢位で視覚フィードバックを用いた起立練習を実施.第53病日から平行棒内歩行,第66病日から四点杖歩行開始.第99病日,室内での四点杖による歩行が自立し,自宅退院.左深部感覚に改善なし.<症例3>64歳女性,右視床出血.発症当日から脳外科病棟にて起立練習開始,第5病日から歩行練習開始.第6病日リハ科転科.転科時のgradeは左11/11/10.左深部感覚重度鈍麻.左上下肢・体幹にジストニアを認め,歩行にはT字杖を用い,更に軽介助を要した.ジストニア抑制肢位での起立練習を実施.第32病日,独歩にて自宅退院.左深部感覚は中等度鈍麻.【まとめ】ジストニアの発症には深部感覚障害に基づくものと,大脳皮質-基底核間の運動制御ループの破綻によるものとの二つの生理学的機序が想定されている.ジストニアは強い筋収縮を伴う運動や精神的負荷で誘発されやすいことが知られており,今回の理学療法においてはジストニアが誘発されない範囲の負荷での反復運動を施行し,筋力強化や動作能力の向上を図ることが有効であることが示唆された.また,深部感覚障害によるジストニアの発現も考慮し,運動時のジストニア出現の自己抑制を目的とした,視覚フィードバックを利用することも重要であると思われた.
著者
小林 重人 山田 広明
出版者
地域活性学会
雑誌
地域活性研究 (ISSN:21850623)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-10, 2015-03

本稿の目的は、非常設型カフェの利用者の地域愛着を高めることで、利用者の地域に対する協力意向を形成する過程が効果的に機能するカフェの経験と利用者の属性を明らかにすることである。そのため、非常設型カフェの利用者に対してアンケート調査を実施した。分析結果から、地域外に居住する利用者の協力意向の形成には、地域の魅力となるメニューの提供と知らない他者とのコミュニケーションが寄与することを示した。また、これらの二要素に対する肯定的評価と地域愛着には有意な相関があることを示した。以上の結果から、地域愛着が中立である利用者の協力意向の形成には、カフェにおいて二要素を経験させることが効果的であると結論付ける。
著者
小林 隆 日端 康雄
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.469-474, 1999-10-25 (Released:2018-03-01)
参考文献数
9
被引用文献数
3

The purpose of this study is to clarify the problems of the planning information supply to the Internet, and the effect and possibility of the communication by the Internet electronic conference in master planning. Citizen tends to stop accessing the planning information open to public on the Internet in short term period in case interactive communication is not secured. The percentage of opinion reflection in the several electronic conferences exceeds that in the conference in the real world. Electronic conference help to support citizens' opinion formation and comprehension. As a result, there is possibility that electronic conference works as the place where reflect the citizen opinion to the urban master plan.
著者
小林 郁奈 松尾 歩 廣田 峻 陶山 佳久 阿部 晴恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.425, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

堅い殻に包まれたオニグルミ種子は、一般にアカネズミには採食されるが、より小型のヒメネズミには採食されない。しかし、アカネズミの分布しない新潟県粟島ではオニグルミ種子がヒメネズミに採食されると言われている(林ら、私信)。私たちの予備的観察では、佐渡島や粟島で小型のオニグルミ核果が多く観察されたため、オニグルミとヒメネズミの共進化が起こっているのではないかと予測した。そこで本研究では、島嶼3集団(粟島、佐渡島、金華山)および本州の7集団でオニグルミ核果を採取してサイズを計測し、さらに各集団から採取したオニグルミ計80個体を対象として、MIG-seq法を用いた集団遺伝学的解析を行うことで、島嶼と本州間での遺伝的分化と核果サイズ変異との関係を調査した。その結果、島嶼ではオニグルミの核果サイズが多様で、本州集団と比較すると小型だった。一方で島嶼と本州のオニグルミは遺伝的に分化しておらず、核果サイズ変異と遺伝的変異との関係は確認できなかった。また、野外にセンサーカメラを設置しヒメネズミがオニグルミ核果を持ち去るかどうかを撮影したところ、粟島では持ち去りが確認されたが、佐渡島では確認できなかった。
著者
長井 真弓 釼明 佳代子 桂 理江子 小野部 純 小林 武
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科
雑誌
東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科紀要 : リハビリテーション科学 = Rehabilitation science : memoirs of the Tohoku Bunka Gakuen University Faculty of Medical Science & Welfare, Department of Rehabilitation (ISSN:13497197)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.33-39, 2022-03-31

2020年度の一般企業による新規卒業者採用は,COVID-19感染拡大の影響を受け,採用時期が例年よりも遅かった.しかし,理学療法学生の就職活動状況に変化があったのかは不明である.そこで,学生の就職活動状況と養成校に届いた求人件数を2019年度と比較した.2019年度と2020年度に東北文化学園大学理学療法学専攻に4年次生として在籍し,アンケートに回答した95名のデータを分析した.2019年度,2020年度ともに95%以上の学生が医療機関から内定を得ていた.2020年度の内定月の最頻値は2019年度よりも1ヶ月遅く,第一希望施設から内定を得た学生割合も2020 年度の方が少なかった.求人件数についても2020年度は,2019年度よりも約80件少なかった.内定時期が1ヶ月遅かったことと第一希望施設から内定を得られなかった学生が多かったことは,緊急事態宣言などの影響により早期に募集定員が満たされたことも原因と推察され,2020年度の就職活動状況は少なからずCOVID-19による影響を受けたと考えられる.
著者
鴨 宏一 村松 歩 多屋 優人 横山 浩之 浅川 徹也 林 拓世 水野(松本) 由子
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.193-201, 2013-08-01 (Released:2013-11-01)
参考文献数
22
被引用文献数
2

本研究では携帯端末による情動刺激下での脳波を用いた脳機能の評価を目的とした。被験者は健常成人24 名で,Cornell Medical Index(CMI),日本版State-Trait Anxiety Inventory(STAI),簡易ストレス度チェックリスト(SCL)によって心身状態を評価し,心理検査低値群と心理検査高値群に分類した。情動刺激は,情動的視聴覚セッション(安静,快,不快)と情動的文章セッション(快文章,不快文章)を用意し,携帯端末からの視聴覚刺激として被験者に提示し,脳波を計測した。脳波は離散フーリエ変換を行い,パワースペクトル値を算出した。α2 帯域の結果から,心理検査高値群は不快刺激および不快文章刺激時に側頭部でスペクトル値が高値を示した。以上より,携帯端末による情動刺激が精神安定度と関連して,脳機能の反応に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
小林 快次
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

「今世紀最大の発見、恐竜全身骨格化石」が,平成25・26年に北海道むかわ町穂別から発掘された.通称“むかわ竜”と呼ばれている全長8メートルを超える巨大恐竜で,平成27年に行われた記者発表は,世界を騒がせた歴史的な発見だった.日本の恐竜研究史の中で,国内から発見された恐竜骨格化石としては,最も完全な骨格であり,恐竜絶滅直前の白亜紀末の恐竜としても国内初の全身骨格である.本研究では,この“むかわ竜”を記載・比較研究することで新属新種として命名し,この恐竜が属すグループである植物食恐竜ハドロサウルス科の進化と移動の解明,そして恐竜絶滅直前の東アジアの多様性の解明を目指す.
著者
林 浩一
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2021-CE-160, no.9, pp.1-10, 2021-05-29

戦略コンサルティング会社に由来するロジカルシンキングの手法は,説得力のある提案や報告の作成に効果的なことから広く普及している.この手法では,主張や結論を根拠が支える論理の基本構造 (以降,論証関係と呼ぶ) を適切に扱えることが重要であるが,筆者らはこれまでに,大学での授業と社会人向け研修において,論証関係の読取り誤りが高い頻度で生じることを見出した.本論文では調査対象を広げることで,この読取り誤りの割合が年齢による差異がない一方で,職業・学歴による差異が大きいことを示し,学生に論理思考力を指導する上での課題を提起し解決手段について議論する.
著者
樋口 悠子 高橋 努 笹林 大樹 西山 志満子 鈴木 道雄
出版者
日本精神保健・予防学会
雑誌
予防精神医学 (ISSN:24334499)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.87-96, 2021 (Released:2021-12-01)
参考文献数
25

自閉スペクトラム症 (autism spectrum disorder; ASD) に統合失調症が併存する割合については様々な報告があるが、ASDでは統合失調症に類似した症状がみられることがあり、時に鑑別が困難な症例を経験する。われわれは神経発達症を背景に精神病発症リスク状態を経て統合失調症を発症した症例を経験したので報告する。症例は10代男性。乳幼児期に発達の遅れがみられ、4歳時に小児科でASD、注意欠陥多動症の特性を指摘され小学4年まで同小児科に通院した。小学5年時より、考えが人に見透かされている感じや盗聴されている感じなどが出現した。成績低下や不登校に加え、不潔恐怖や希死念慮もみられ、中学2年時に当院を受診し、精神病発症リスク状態の基準を満たした。間もなく自生思考や持続性の幻覚妄想が生じ、統合失調症と診断された。精神病症状の顕在化に先立ち測定したmismatch negativity (MMN)では、持続長MMN(duration MMN; dMMN) の振幅低下と周波数MMN (frequency MMN; fMMN)の潜時延長を認めた。各々統合失調症とASDの特徴を表しており、本患者の疾患素因の反映と考えられた。MMNは統合失調症の生物学的マーカーとして早期診断への応用が期待されているが、本症例の結果より、MMNがASD症例における統合失調症の併存リスク評価にも有用である可能性が示唆された。
著者
成田 太一 小林 恵子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.205-213, 2020 (Released:2020-11-06)
参考文献数
24
被引用文献数
2

目的:長期入院を経験し精神科デイケアを利用する男性統合失調症者が,地域においてどのように生活を再構築しているのか,当事者の視点からその特徴を明らかにし支援への示唆を得る.方法:男性統合失調症者9人を対象とし,参加観察やインタビューから得られたデータから退院後の生活の再構築についての語りを抽出し,分析した.結果:対象者は,【長期入院によるつながりの喪失】を経験し,退院後は馴染みのない【新たなコミュニティのメンバーシップを得ることの難しさ】から寂しさを感じていた.そのようななか,専門職や親族などからの【サポートの活用による病状や生活の維持】を図りながら,【地域におけるデイケアメンバーとのつながりと役割の獲得】により,生活を再構築していた.結論:長期入院を経験した男性統合失調症者が地域の中で孤立せず社会参加できるよう,当事者コミュニティと地域コミュニティとの関係づくりを強化することや,入院早期からの就労支援と地域における活動の機会の必要性が示唆された.
著者
千葉 桂子 林 ゆう
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部看護学科
雑誌
東北文化学園大学看護学科紀要 = Archives of Tohoku Bunka Gakuen University Nursing (ISSN:21866546)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.21-27, 2022-03-31

認知症高齢者の治療法は、主に薬物療法と非薬物療法に分類される。本研究では、研究者の実習時の体験から非薬物療法の一つである音楽療法に注目し、文献検討を行い、認知症に対する音楽療法の効果と今後の課題を検討することである。研究方法は、医学中央雑誌Web 版を使用し、「認知症高齢者」、「音楽療法」、「認知機能」のキーワードとし、対象論文の抽出を行った。9件の対象論文を抽出し、対象者、介入方法と評価方法、主な研究結果、考察に分類を行い、表を作成した。認知症高齢者に対しての音楽療法の内容は多岐にわたり、音楽だけではなく、音楽と体操や手遊びを併せて実施され、認知症高齢者の情緒の安定や活動性の向上に効果がみられた。音楽療法は身近で生活の中に取り入れやすい反面、プログラム内容の検討や音楽療法の専門性を高める取り組みが課題といえる。
著者
山田 真大 林 和宏 鈴木 章浩 岡本 幸太 小林 良岳 本田 晋也 高田 広章
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2013-OS-126, no.18, pp.1-7, 2013-07-24

組込み向け機器に利用されるハードウェアの高性能化に伴い,組込み OS として Linux などの汎用 OS が搭載されるようになった.組込み機器では,リアルタイム性が重要視されるため,Linux を採用する場合,カーネルに改良を施すことでリアルタイム性を確保している.また,マルチコア CPU を搭載する組込み機器では,Linux が持つ CPU affinity の機能を用いることで,シングルコアでは不可能であった高負荷時におけるリアルタイム性も確保することが可能になった.しかし,CPU コア毎に存在するカーネルスレッドは CPU affinity を適用することができず,また,この処理がまれに引き起こすタイマのカスケード処理には多くの処理時間を必要とし,リアルタイム性を阻害する原因となる.本論文では,マルチコア CPU の各コアを,リアルタイム性を必要とする CPU コアと不要とする CPU コアに分割し,リアルタイム性を必要とする CPU コアでは,タイマのカスケード処理を発生させないよう事前に対策を施すことで,リアルタイム性を確保する手法を提案する.
著者
菓子野 元郎 漆原 あゆみ 児玉 靖司 小林 純也 劉 勇 鈴木 実 増永 慎一郎 木梨 友子 渡邉 正己 小野 公二
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第51回大会
巻号頁・発行日
pp.209, 2008 (Released:2008-10-15)

我々は、DMSOによる放射線防護効果が、放射線による間接作用の抑制ではなく、DNA-PK依存的なDNA二重鎖切断修復の活性化によりもたらされているという仮説の検証を行った。細胞は、マウス由来細胞のCB09、及びそのDNA-PKcsを欠損するSD01を用いた。DMSOの濃度は、1時間処理しても細胞毒性がなく、放射線防護効果が大きく現れる2% (256 mM)とした。DMSO処理のタイミングは、照射前から1時間とし、照射直後にDMSOを除いた。放射線防護効果については、コロニー形成法による生存率試験及び微小核試験法を用いて調べた。DMSO処理細胞により放射線防護効果が現れることが、CB09細胞の生存率試験により分かった。微小核試験においても、同処理により、微小核保持細胞頻度が有意に抑制された。これに対して、DNA-PKcs欠損細胞(SD01)では、同処理による放射線防護効果がほとんど見られなかった。DNA-PKの有無がDMSOによる防護効果の機構に関わる可能性が考えられるので、照射15分後から2時間後までDNA二重鎖切断修復の効率を解析した。その結果、DNA二重鎖切断部位を反映すると考えられる53BP1のフォーカスの数は、照射15分後ではDMSO処理により約10%減っていた。これに対し、照射2時間後ではDMSO処理により約30%のフォーカス数の減少が見られ、照射15分後よりも2時間後に残存するDNA二重鎖切断の方が、DMSO処理により大きく軽減されることが分かった。これらの結果は、放射線照射により誘発されたDNA二重鎖切断生成がDMSOにより抑制されるわけではなく、照射直後からスタートするDNA-PKcsに依存したDNA二重鎖切断修復機構がDMSOの照射前処理により効率よく行われている可能性を示唆している。