著者
三浦 拓也 山中 正紀 森井 康博 寒川 美奈 齊藤 展士 小林 巧 井野 拓実 遠山 晴一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0512, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】体幹に属する筋群はその解剖学的特性からグローバル筋群とローカル筋群の2つに大別される。近年,この体幹ローカル筋群に属する腹横筋や腰部多裂筋の機能に注目が集まり,様々な研究が世界的に行われている。腹横筋の主たる機能として,上下肢運動時における他の体幹筋群からの独立的,かつ先行的な活動や腹腔内圧の上昇,仙腸関節の安定化などが報告されている。また,腰部多裂筋に関しては腹横筋と協調して,また両側性に活動することで腰椎へ安定性を提供しているとの報告がある。これら体幹ローカル筋群は主に深層に位置しているため,その評価には従来,ワイヤー筋電計やMRIといった侵襲性が高く,また高コストな手法が用いられてきたが,近年はその利便性や非侵襲性から超音波画像診断装置による筋厚や筋断面積の評価が広く行われている。腹横筋と腰部多裂筋は協調的に活動するとの報告は散見されるが,両筋の筋厚の関連性について言及した研究は少ない。本研究の目的は腹横筋と腰部多裂筋を超音波画像診断装置にて計測し,その関連性を調査することとした。【方法】対象は,本学に在籍する健常男性10名(21.0±0.9歳,173.9±6.6 cm,64.3±9.5 kg)とした。筋厚および筋断面積の計測には超音波画像診断装置(esaote MyLab25,7.5-12 MHz,B-mode,リニアプローブ)を使用した。画像上における腹横筋筋厚の計測部位は腹横筋筋腱移行部から側方に約2 cmの位置で,その方向は画像に対し垂直方向とした。腰部多裂筋の筋断面積計測におけるプローブの位置は第5腰椎棘突起から側方2 cmの位置で,画像上における筋断面積は内側縁を棘突起,外側縁を脊柱起立筋,前縁を椎弓,後縁を皮下組織との境界として計測した。動作課題は異なる重量(0,5,10,15%Body Weight:BW)を直立姿勢にて挙上させる動作とし,各重量条件をランダム化しそれぞれ3回ずつ計測,その平均値を解析に使用した。統計解析にはSPSS(Ver. 12.0)を使用し,Pearsonの相関係数にて腹横筋筋厚と腰部多裂筋筋断面積の関連性を検討した。統計学的有意水準はα=0.05とした。【結果】統計学的解析から,0%BW(r=0.78,p<0.05),5%BW(r=0.72,p<0.05)条件において腹横筋の筋厚と腰部多裂筋の筋断面積との間に有意な正の相関が認められた。10%BW,および15%BW条件においては有意な相関関係は認められなかった。【考察】本研究は,機能的課題時における腹横筋と腰部多裂筋の形態学的関連性を検討した初めての研究であり,体幹に安定性を提供するとされている両筋がどのような関連性をもって機能しているのか,その一端を示した有用な所見である。本結果より,低重量条件においては腹横筋筋厚と腰部多裂筋筋断面積との間に有意な正の相関が認められたが,重量の増加に伴い相関関係は認められなかった。先行研究によると腹横筋や腰部多裂筋は機能的活動中に低レベルで持続的な活動が必要であるとされており,かつ両筋は低レベルな筋活動で充分に安定化機能を果たすと報告されている。また,両筋は他の体幹筋群と比較して筋サイズも小さいため,高負荷になるにつれて筋厚や筋断面積の値はプラトーに達していた可能性があり,さらに,高重量条件では重量の増加に伴う体幹への高負荷に抗するため,体幹グローバル筋群である腹斜筋群や脊柱起立筋群などの活動性が優位となっていたために筋厚や筋断面積の関連性が検知されなかったかもしれない。本所見は上記の点を反映したものであると推察される。腹横筋や腰部多裂筋は活動環境に応じて協調的に働くことで体幹に対して適切な安定性を提供しているとされてきたが,様々な活動レベルを考慮したデザインにおいてその関連性を検討した研究は無く,明確なエビデンスは存在していない。本研究はその一端を示すものであり,今後は筋活動との関係性や他の体幹筋群との関係性,さらには腹横筋や腰部多裂筋の機能障害があるとされている慢性腰痛症例においてより詳細な検討が必要であると思われる。【理学療法学研究としての意義】体幹ローカル筋群である腹横筋と腰部多裂筋に関して,低負荷条件において有意な正の相関関係が認められた。本所見は,体幹へ安定性を提供するとされている両筋の形態学的関連性を示唆した初めての研究であり,リハビリテーションにおける体幹機能の評価やその解釈に対して有用な知見となるだろう。
著者
北 賢二 小林 昭男 宇多 高明 野志 保仁 和田 信幸
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.409-414, 2005 (Released:2011-06-27)
参考文献数
3

Damages of wind blown sand were investigated at Makuhari artificial beach in Chiba Prefecture, the Chigasaki coast in Kanagawa Prefecture and Nakatajima Sand Dune in Shizuoka Prefecture. Fine sand was transported by wind and deposited on the promenade behind the beach, causing obstruction against traffics. In order to study these phenomena, field study on wind blown sand consideringg rain size effect was carried out at Kujukuri beach. It was confirmed that selective transport of fines and is important and this results in sorting effect in an extensive area.
著者
林 寿恵 下村 貴文
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1413, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】平成28年4月16日に発生した熊本地震において演者の勤務地である阿蘇市は被災し,多くの住民が避難所での生活を余儀なくされた。自主避難所を含めた避難所は29箇所,想定避難者5,500人(H28. 4.22阿蘇市調べ)である。被害の大きさからも住民の避難所生活は長期化が予測され,環境変化に伴う,生活不活発予防,健康管理などの関与が重要であった。地震発災直後は昼夜を問わず避難所は満員であったが,経過とともに避難所スペースは空地,または非常時のみ利用する場所取りが出現した。しかし避難所スペースの変化はあるも,避難生活活動は変わらない住民の姿がみられた。避難所介入のひとつに生活不活発を防ぐ生活環境整備をあげ,避難所の環境コーディネートを行った。避難所の生活環境を住民や関係者と共に考え,住民主体の環境整備活動へと繋がった事例を経験した。避難所の環境コーディネートの重要性について学んだためここに報告する。【方法】避難所の空きスペースがみられた発災2週間後に避難所地域の区長,避難所に滞在している災害支援ナース,常駐している自治体職員等に避難所生活環境整備の必要性を説明し,協力を得た。環境整備をする目的は,生活しやすい環境づくりtと生活不活発を予防する,とした。整備内容は①移動の動線を明確にする②居住スペースと共有スペースを分ける③共有食事スペースを確保する④ベッド導入や間仕切り(パーソナルスペース)の検討⑤支援物資管理の透明化の以上5点を提案した。それに加え,区長からは要援護者配置場所の考慮,ベッド導入必要者検討,間仕切り非設置の提案,災害支援ナースからは住民主体の健康管理スペースや個別保健スペースの確保が挙がった。検討後,区長が避難者全世帯に環境整備の必要性を説明し,住民の理解と協力を得た【結果】環境整備前は,自スペースでの食事摂取,トイレ,入浴や支援者の訪問時等のみ活動や移動がみられた。そのため周囲への注意を払うこともほとんどなく自スペースのみで一日を過ごしていた。しかし,区長の説明後,住民が主体となって避難所清掃,居住スペースと共有スペースを整備した。そのことで,食事は共有スペースでの摂取が習慣化され,他者と交流しながら食事をとることが可能となった。また,要援護者に対しても多くの方々の理解を得ることができ,みんなで見守り,声掛けを行うことができた。間仕切りや,ベッド導入等も演者は提案のみで,実施は住民が主体で実施した。【結論】避難所という集団生活を強いられる特殊環境において自らの生活を確保するのは難しい。今回,生活環境整備をコーディネートし,区長の理解と協力を得たことで,住民が主体で環境を整備した。そのことが,個人スペースでの引きこもりをなくし,共有スペースでの交流や寝食分離を図ることができた。生活環境を整備したことで活動性があがり,不活発を予防できたと考える。
著者
磯部 裕 小林 薫 柴山 健爾 石井 幹十
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.18, no.20, pp.19-24, 1994-03-18 (Released:2017-10-13)

W-VHS VCR has been developed as a next generation consumer VCR in response to Hi-Vision and NTSC signals. This VCR has a high picture quality using new video signal processing technologies by new Metal-coated tapes, TCI signal processing and Temporal Emphasis. It has an excellent cost/performance ratio as a Hi-Vision VCR developed on the basis of the VHS system.
著者
吉野 純 中田 勇輝 古田 教彦 小林 智尚
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_493-I_498, 2017 (Released:2017-10-17)
参考文献数
6
被引用文献数
1

台風1610号は,2016年8月30日午後6時頃に北西進することで統計開始(1951年)以降初めて東北地方太平洋側に上陸した.本研究では,このような特異な進路をとった台風1610号の進路形成メカニズムを解明することを目的として,渦位部分的逆変換法に基づいて,台風周辺の擾乱が励起する指向流ベクトルを渦位偏差毎に分解することで推定した.台風1610号が岩手県大船渡市付近に上陸した時間帯には,台風の西側に位置した上層の寒冷渦が作り出す南東風に加えて,それに伴う積乱雲活動(非断熱加熱)により発達した下層低気圧(湿った正渦位偏差)が作る南風や上層高気圧(湿った負渦位偏差)が作り出す東風が同時に作用することで,約20 m/sの南東風の指向流ベクトルにより北西進したことが明らかとなった.
著者
小林 正泰
出版者
日本学校教育学会
雑誌
学校教育研究 (ISSN:09139427)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.66-79, 2015-07-17 (Released:2016-12-27)
参考文献数
28
著者
小林 統
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.465-471, 1996-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

酵母の凝集に関しては, 清酒酵母でも泡なし酵母でも種々研究され, 細胞壁の構造が関与していることが解明され, 実用化が進んでいる。ビール酵母でも酵母の凝集は発酵に大きな作用を及ぼすことは昔から知られていた。ここでは, 凝集に関与する遺伝子について筆者の研究をも紹介しながら, 分かりやすく解説していただいた。
著者
林 衛
巻号頁・発行日
pp.1-22, 2014-11-16

学制発布以来最悪の学校災害となった石巻市立大川小学校の事故検証委員会(以下,大川小検証委または検証委)は,2014年3月までに報告書をまとめ公開した。原因究明と再発防止を切に願う遺族,ジャーナリスト,研究者らによる調査・提言がないがしろになった結果,石巻市教育委員会による不十分な調査が遺族らへの二次被害をもたらしたのに引き続き,未完成の検証の一人歩きが遺族らへの三次被害を生じてしまっている原因を考察する。
著者
林 睦
出版者
滋賀大学教育学部
雑誌
滋賀大学教育学部紀要 (ISSN:21887691)
巻号頁・発行日
no.67, pp.199-204, 2018-03-30

「ギフテッド」とは、英語のgiftedという語に由来しており、天賦の才能を持つ人々という意味である。先天的に平均よりも顕著に高い能力を持っている人のことを指し、どの国や社会にも一定数存在すると考えられる。アメリカ連邦政府の定義では、ギフテッドの子どもとは、「知性、創造性、芸術性、リーダーシップ、または特定の学問分野で高い達成能力を持ち、その能力を発揮させるために通常の学校教育以上の活動や支援を必要とする子ども」を指す。National Center for Education Statisticsのデータによると、全米の学齢期の子どもの6.7%がギフテッドであるとされている。では、ギフテッドとは具体的にはどんな子供を指すのだろうか。まず、ギフテッドの一般的な特徴について、アメリカのギフテッドのガイドブックを参照してみることにしよう。
著者
小林 カオル
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

リファンピシンによる小腸P-糖タンパク(MDR1)の誘導には、核内受容体であるpregnane X receptor (PXR)が重要な役割を果たしており、小腸には他の臓器と比較してPXRが多く発現していることが知られている。しかし、小腸よりもPXRが高発現している肝臓ではMDR1の誘導は認められない。それに対し、MDR1と同様にPXRを介してリファンピシンにより誘導されるCYP3A4の場合、肝臓と小腸の両方で誘導が認められる。このようなMDR1のPXRを介した小腸特異的な誘導がどのようなメカニズムで起こっているのかは不明である。本研究では、リファンピシンによるMDR1の誘導がヒト大腸がん由来細胞のLS180で認められるのに対し、ヒト肝ガン由来細胞のHepG2細胞では認められないことを明らかにした。この二つの細胞株にはともにPXRが発現しておりリファンピシンによるCYP3A4の誘導は認められる。そこで、この二つの細胞株を比較することによりMDR1のPXRを介した小腸特異的な誘導メカニズムの解明について検討を行った。まず、MDR1遺伝子のレポータージーンアッセイを行うことにより、転写開始点より上流-7970/-7011の領域がLS180細胞におけるMDR1遺伝子のリファンピシンによる転写活性化に重要であることを明らかにした。さらに、cDNAサブトラクションによりLS180細胞には腸管に発現していて肝臓に発現していない転写因子epithelial-specific ets factor (ESE-3)が多く発現していることを明らかにした。また、HepG2細胞にESE-3を導入することにより、リファンピシンによるMDR1遺伝子の転写活性化が認められることが明らかとなった。ESE-3に対するsiRNAを用いてLS180細胞のESE-3をノックダウンしたところ、リファンピシンによるMDR1 mRNA誘導の低下が認められた。これらの結果より、LS180細胞において認められたリファンピシンによるMDR1の誘導には、PXRに加え、ESE-3が重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、ESE-3を発現しているLS180細胞を用いて、21種の化合物によるMDR1 mRNAの誘導とMDR1レポーター活性の上昇との関係を調べたところ、有意な正の相関が得られた。これらの結果より、LS180細胞はPXRとESE-3を共に発現しており、この細胞を用いたMDR1 mRNAの誘導とMDR1レポーター活性の上昇は、小腸特異的なP-糖タンパクの誘導を予測し得る可能性が強く示唆された。