著者
藤原 靖弘 村木 基子 木幡 幸恵 杉森 聖司 山上 博一 谷川 徹也 渡辺 憲治 渡辺 俊雄 富永 和作 荒川 哲男
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.3523-3528, 2011 (Released:2012-01-06)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は31歳,女性,6年前より嚥下困難・食物のつまり感を自覚し,他院で内視鏡など検査するも異常を指摘されなかった.症状が徐々に増悪するため紹介受診.上部消化管内視鏡検査では食道胃接合部に一致して著明な狭窄を認めたが,明らかな腫瘍や粘膜不整を認めず,超音波内視鏡では主に粘膜層の肥厚を認めた.食道生検にて食道粘膜内に著明な好酸球浸潤とmicroabscess形成を認め,好酸球性食道炎と診断した.フルチカゾン嚥下療法により症状および内視鏡像・組織学的改善を認めた.好酸球性食道炎は本邦では稀な疾患であるが,典型的な症状と特徴的な内視鏡像より食道生検を施行することが早期診断に重要である.
著者
清水 星香 江口 幸臣 森脇 典弘 中野 貴文 池内 忠宏 兼重 晋 神村 英利
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

【目的】現在,福岡大学病院でのEnterococcus faecium(E. faecium)感染症に対するバンコマイシン(VCM)の投与は,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus; MRSA)感染症に対する投与方法を基に設計されている。しかしながら,E.faecium感染症に対するVCMの有効性および安全性を評価する指標は検討されていない。そこで、E. faecium菌血症に対するVCMの適切な投与方法を後方視的に検討するため,薬物血中濃度と有効性、安全性の関連を調査した。【方法】2010年4月~2020年12月に血液培養でE. faeciumが分離された患者のうち,VCMが投与された症例を対象とした。有効性の指標は,体温,白血球数,C-reaticve protein値とし,改善かつE. faeciumが消失した場合を有効と判定した。一方,安全性の指標は,血清クレアチニン値の変化量とした。VCMのarea under the blood concentration-time curve(AUC)およびE. faeciumに対するminimum inhibitory concentration(MIC)を用いてAUC/MICを算出し,治療成績との関連を調査した。AUCはVCMのトラフ濃度を基にTDM解析ソフトウェアを用いて算出した。【結果】E. faecium感染症に対してVCMが使用された32例のうち,発熱がみられなかった4例とVCM血中濃度測定が未実施であった1例を除いた27例を対象とした。対象患者のうち,5例が有効と判定された。有効例のうち,4例はAUC/MICが1000以上であり,このうち2例に腎障害がみられた。【考察】本研究によりVCMのE. faecium菌血症に対するPK/PD指標としてAUC/MIC≧1000が必要である可能性が示された。一方で,高用量のVCMによる腎障害のリスクを考慮する必要があり,TDMの重要性が示唆された。
著者
生田 陽二 伊藤 麻美 森 貴幸 鈴木 洋実 小出 彩香 冨田 直 清水 直樹 三山 佐保子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.283-284, 2017 (Released:2017-07-12)
参考文献数
9

6歳女児. 発熱・頭痛で発症 (第1病日), 第7病日に傾眠傾向とけいれんが出現し入院. 頭部MRI拡散強調画像では大脳皮質に広範囲の拡散制限を, 脳波では高振幅徐波と全般性あるいは多焦点性の棘徐波複合を認めた. 入院時より下肢間代発作や全身強直発作が群発し, 人工呼吸管理とした. 発作は治療抵抗性で, 第9病日にthiopental (TP) 持続投与を開始したところ, 臨床発作は消失した. TP開始後, 心機能悪化が懸念されたため他の抗てんかん薬を併用してTPの減量を試みた. しかし部分発作が再発し, 脳波も数十秒間連続する多棘波が5~10分間隔で出現する非臨床発作と考えられる所見となり, TP離脱は困難であった. 第24病日に24時間の絶食期間を経てケトン指数3 : 1でケトン食療法を開始したところ, 絶食開始24時間後には背景脳波活動の改善がみられ, ケトン食開始後は速やかに発作と脳波上の棘波が減少した. 第35病日以降, 発作は消失し第42病日にTPを終了した. 以上の経過より, 本症例はTPからの離脱にケトン食療法が有効であった難治頻回部分発作重積型急性脳炎 (AERRPS) と診断した. AERRPSでは抗てんかん薬の大量かつ長期間の経静脈投与を必要とし, 心機能を含めた臓器障害が問題となる. 抗てんかん薬経静脈投与からの離脱困難例においてケトン食療法は選択肢の一つであり, 輸液中の糖質制限が発作抑制に有効である可能性が示唆された.
著者
森脇 恵太 大野 瞬 杉山 弘晃 酒造 正樹 前田 英作
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.2L1GS204, 2022 (Released:2022-07-11)

本研究では,事実不整合検出の為の分類モデルと事実不整合修正の為の生成モデルとを組み合わせて,文章に含まれる事実不整合の修正を行い,ニューラルネットを用いた文章生成モデルの出力に事実不整合が含まれることを防ぐことを目的とする. 検出,修正モデルの学習には文章生成を行うモデルの学習データセットを改変した人工的なデータセットを用いる. 修正モデルのみを用いた場合と比較を行った結果,検出モデルを入れることで修正モデルによる整合文から不整合文への書き換えを防ぎつつ,事実不整合を含む文章の書き換えを行うことができることが示された. しかし,二つのモデルの解決可能,不可能な問題に同様の傾向が見られた. より性能を上げるために,それぞれのモデルが相補的に働くことができるような学習データを用意する必要があると考える.
著者
武森 信曉
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.53-57, 2022 (Released:2022-10-08)
参考文献数
7

Top-down proteomics, the analysis via mass spectrometry of cellular protein components as intact species without enzymatic digestion, is emerging as a powerful analytical approach to reveal entire proteoform profiles in vivo. To improve the number of proteoforms detected in top-down proteomics, high-resolution proteome fractionation prior to mass spectrometry is crucial, and interest in polyacrylamide gel electrophoresis as a sample pre-fractionation tool has been growing in recent years. This review describes a gel-based proteome fractionation workflow, which facilitates highly efficient protein extraction following polyacrylamide gel electrophoresis, and its application to sample pre-fractionation for top-down proteomics.
著者
川瀬 良美 森 和代 吉崎 晶子 和田 充弘 松本 清一
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.119-133, 2004-07-31 (Released:2017-01-26)
被引用文献数
3

本研究の目的は,成熟期の女性のPMSの実態について即時的な記録から明らかにしようとするものである.成熟期の25歳以上45歳以下の141名の388月経周期について月経前期と月経期に記録された身体症状,精神症状そして社会的症状の合計51症状について検討した.月経前症状の頻度,平均値,最大値からみた主症状は,精神症状のイライラする,怒りやすい,身体症状の乳房の張りの3症状といえた.また特定の人に強く経験されている症状も認められた.対象者の諸属性のうち,年齢グループ別,出産経験有無別,就労形態別で検討したところ,それぞれの属性で有意に高い平均値を示す症状群が認められた.月経前期から月経期への推移について検討したところ,月経前期から月経へ減少または消失するというPMSの特徴を統計的に有意に示す症状は15症状であった.それら症状の相互関連をクラスター分析によって検討した結果,イライラ,怒りやすい,そして食欲増加という選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に反応するような脳レベルの問題と考えられる症状のクラスターAと,乳房の張り,ニキビができやすいなど卵巣ホルモンが直接発症に関与している症状のクラスターBが見いだされた.また,クラスター分析と属性別の結果から出産経験の有無による相違が認められ,出産経験が症状と特異的に関連していることが示唆された.また,月経前期から月経期へ統計的に有意な増加を示す症状は12症状で,クラスター分析の結果,下腹痛など子宮レベルの問題を背景とした症状と精神症状と社会的症状で構成されたクラスターCが見いだされ,成熟期女性にも周経期症候群(PEMS)の概念で説明できる月経前症状が認められた.以上の結果から,本邦における成熟期女性の月経前症状は,脳レベルの問題,卵巣レベルの問題,子宮レベルの問題を背景として,PMSとPEMSという特徴的な臨床像による2つの概念で説明できる.
著者
森戸 直美 西宮 肇 都築 和代
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.161, pp.19-27, 2010-08-05 (Released:2017-09-05)
参考文献数
13
被引用文献数
2

冷房の気流が睡眠に及ぼす影響について明らかにする目的で,被験者実験を実施した。比較したのは、エアコンの風を感じにくくするために開発した天井設置型冷房システム(天井冷房)と一般的な壁取り付け型エアコン(エアコン冷房)の2条件である。いずれの条件とも、実験室内の平均温度が26℃になるように制御した。実験用戸建住宅内の2実験室を使って10名の健康な青年男子を被験者とした。被験者近傍における実測の平均値は、天井冷房条件は温度26.4℃、相対湿度53%、平均放射温度26.1℃、風速0.04m/s、PMV-0.25、エアコン冷房条件は同じく26.4℃、58%、26.3℃、0.14m/s、-0.30であった。天井冷房の方が、風速は小さく(躯幹部位置で最大風速0.3m/s、エアコン冷房では1.1m/s)、かつ、送風頻度(冷風が吹き出す頻度)も少なくなった(8時間あたり11回、エアコン冷房では28回)。平均皮膚温や快適感、睡眠段階毎の総時間には2条件間で有意な差は認められなかったが、エアコン冷房の方で風を感じており、温冷感でやや寒いという申告であった。送風時においての比較では、エアコン冷房の方で皮膚温低下度が額や腕など露出部位において有意に大きくなり、覚醒、心拍数の上昇、ならびに、体動の回数が有意に多くなった。これらの結果は、エアコン冷房の方が冷刺激となり睡眠を阻害する可能性があり、天井冷房の方が睡眠に適していたことを示唆している。
著者
森本 泰夫 喜多村 紘子 空閑 玄明 井手 玲子 明星 敏彦 東 敏昭 佐藤 敏彦 相澤 好治
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-10, 2009 (Released:2009-02-05)
参考文献数
52
被引用文献数
2 3

トナー粒子における新たな生体影響調査と労働衛生管理について:森本泰夫ほか.産業医科大学産業生態科学研究所―トナーの加熱印字(プリントアウト)を行う際にナノ粒子のような微細粒子やvolatile organic compounds(VOC)の発生を伴うことが社会問題になったため,トナー自体の影響だけでなく,これらの付加的化学物質の影響もふまえた生体影響調査が必要となった.しかし,どのようなナノ粒子が発生したのか不明であること,及びその測定法も確立されたものがないことより,対応に苦慮した.このような状況を鑑み,トナーの構成成分より考えられる浮遊化学物質をリストアップし,疫学的及び動物試験等の知見を収集し,これを元に労働衛生管理の対応を検討した事例を紹介する.トナーの主成分のカーボンブラック,及び表面付着物質のナノ粒子である二酸化チタンやアモルファスシリカ,VOCを想定される対象化学物質として,生体影響の文献調査を行った.これらの微細化学物質やVOCのデータを基に,有効な曝露指標の検索,環境曝露や測定法についてまとめた.その結果から,微細粒子またはVOC曝露のバイオマーカーとして高感度CRP,尿中8ヒドロキシデオキシグアノシン,心拍間変動係数が有用であること,加熱印字の際のVOC濃度は低かったこと,ナノ粒子などの微細粒子が発生したこと,微細粒子の測定法として,scanning mobility particle sizer(SMPS)による個数基準計測が多く報告されていることが認められた.これらの結果をふまえ,トナーの印字により発生する付加的化学物質に対する労働衛生管理を展開することが検討されている. (産衛誌2009; 51: 1-10)
著者
森 菜摘 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.143-148, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
3

We administered physical therapy for a patient with knee osteoarthritis who had an increased risk of falling backward while standing up or standing. The patient experienced poor hip flexion during sitting and the flexion phase of standing up, causing the pelvis to tilt backward. Moreover, the extension of both hip joints was poor in standing and the flexion phase of standing up, which compromised the support of the upper limbs. Improved muscle tone in the iliacus muscle and gluteus maximus increased the flexion of both hip joints during sitting and the flexion phase of standing up. Additionally, the extension of both hip joints increased in standing. Consequently, the risk of falling backward was reduced in standing up and standing, which improved the patient's safety and standing ability.
著者
渕上 健 松尾 篤 越本 浩章 河口 紗織 北裏 真己 松井 有史 森岡 周
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.251-256, 2015 (Released:2015-06-24)
参考文献数
27
被引用文献数
3 2

〔目的〕慢性期脳卒中片麻痺患者の下肢機能に対する運動観察治療の効果を検証すること.〔対象〕慢性期脳卒中片麻痺患者21名とした.〔方法〕参加者を運動観察治療群と対照群に分けた.運動観察治療群は他者が前方またぎおよび側方またぎ動作を施行している映像を各5分間観察した後,同様の身体練習を各5分間実施した.対照群はまたぎ動作の身体練習のみを行った.アウトカムは前方および側方またぎ動作の成功回数,functional reach test,four square step testとし,介入前後および介入1ヵ月後に抽出した.〔結果〕群間比較において,functional reach testに交互作用が認められた.また,運動観察治療群において,前方またぎ動作の成功回数,functional reach test,four square step testが有意に向上し,介入1ヵ月後まで持続した.また,効果量についてすべての項目で運動観察治療群が対照群を上回っていた.〔結語〕慢性期脳卒中片麻痺患者に対する運動観察治療は,身体練習のみに比較して下肢パフォーマンスを有意に改善させる.
著者
上松 弘明 森 博愛
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
医用電子と生体工学 (ISSN:00213292)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.78-85, 1973-04-30 (Released:2011-07-05)
参考文献数
8

Validity of Fourier coefficients as parameters for the electrocardiographic pattern recognition by means of the threshold logic units and the maximum likelihood method was verified. As the traditional methods of Fourier transform required much time, a new method of fast Fourier transform of folding type, which differed from FFT of Cooley and Tukey, was developed. Sampling points used in the present investigations totaled 100. Using scalar ECG of Frank's orthogonal system (X, Y and Z leads) 15 normal subjects, myocardial infarction cases and ostium secundum type of atrial septal defect cases respectively were analyzed by this new method, and the coefficients such as An, Bn, √An2+Bn2 and Arctan (An/Bn) were obtained.√An2+Bn2 was considered as the most useful parameter among them, because it is invariant for the parallel shift of amplitude and time axis.Normals, myocardial infarction and atrial septal defect cases were classified, in 100 per cent success, by threshold logic units and maximum likelihood method in the twelve dimensional information space, respectively using the initial four Fourier coefficients of the X, Y and Z leads as parameters.Fourier coefficient parameters were estimated by t-tests, and then the effort was made to reduce the numbers of parameters of information space.Complete separation was also obtained even when the number of dimension were reduced to seven by using the initial seven Fourier coefficients of X lead alone. This suggested that the important diagnostic information was mostly contained in X lead, and also that the lower harmonic components had the greater part of the information of ECG. Nonlinear discriminant function played an important role in the low dimensional information space.
著者
田中 孝治 森川 綾香 石川 健介
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会研究会資料 先進的学習科学と工学研究会 92回 (2021/7) (ISSN:13494104)
巻号頁・発行日
pp.04, 2021-06-30 (Released:2021-07-02)

コロナ禍の学校教育システムにおける価値共破壊を回避することが必要である。著者らの大学の学科では,学生が主体となってピアサポートサービスを提供するオンライン心理教育的援助サービスが実施された。本研究では,ピアサポートサービスの提供者を対象に質的調査を行い,心理教育的援助サービスにおける教員と学生の価値共創を検討した。
著者
小片 絵理 山辺 智代 金子 希代子 澤重 亨一 水沼 眞紀子 山内 俊一 飯嶋 正広 藤森 新
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.9-13, 2000 (Released:2012-11-27)
参考文献数
6
被引用文献数
3 3

地ビールおよび発泡酒のプリン体含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定した.各アルコール飲料に含まれるプリン体を加水分解し,adenine,guanine,hypoxanthine,xanthineの4種類のプリン塩基として測定し,各々を合計して総プリン体量と総プリンN量を求めた.その結果, 地ビールは6.78~16.64mg/dl( 総プリンN量として2.35~7.32mg/dl) で, 多いものでは一般のビールの3倍量のプリン体を含んでいた.一方,発泡酒のプリン体は少なく,2.83~3.82mg/dl(総プリンN量として1.29~1.77mg/dl)で,一般のビールの半分程度であった.
著者
森田 真理 坂本 理恵 大城 絵理奈 嘉山 郁未 菊池 恵理華 河原 英子 筑田 理絵 住友 正和 木田 達也 坂下 博之 豊田 茂雄 太田 郁子 渡部 春奈 斎藤 真理
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.135-139, 2022 (Released:2022-10-06)
参考文献数
12

【緒言】メサドンを用いたがん疼痛緩和治療の経過中に全身麻酔下で手術を行った2症例を経験した.【症例1】57歳女性.多発骨転移を伴った右進行乳がんで疼痛治療にメサドンを導入し,化学療法の経過中に右乳房切除術を行った.創部痛で臨時の鎮痛薬を用いたがメサドン休薬によるがん疼痛の増悪はみられなかった.【症例2】76歳男性.肺腺がんの痛みにメサドンを導入した.化学療法経過中に腰椎転移で下肢麻痺切迫状態になり除圧固定術を施行した.術中の痛みの増悪にケタミンを用い,麻酔覚醒後の痛みの再増悪にはフェンタニル注の持続注射で対応した.【結語】メサドンは従来の強オピオイドで緩和困難な強いがん疼痛に用いるが,本邦では内服薬のみの認可で他のオピオイドとの換算比がないため,周術期等の休薬が必要な期間の痛みの管理には注意を要する.したがって,メサドンの処方医はメサドン内服中の患者の周術期の円滑な痛みのコントロールにも積極的に貢献することが望まれる.
著者
鷺森 浩幸
出版者
帝塚山大学奈良学総合文化研究所
雑誌
奈良学研究 (ISSN:13445936)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.93-112, 2017-02-10
著者
濱 宏仁 森本 茂文
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.21-27, 2019-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
9

When microbes present on the rubber stopper in a vial or attachment part of closed system drug transfer devices (CSTD), these microbes may contaminate vials by needle puncture. We examined the preservation of sterility in vials by different vial storage conditions on the premise of divided use of single-use vials. Experiments were conducted using liquid medium filled vials under the following conditions A-D. [A: Removed rubber stoppers (open-vials) and placed in safety cabinet (BSC), B: Placed open-vials in preparation room (ISO class 8), C: Placed negative-pressured vials with rubber stopper punctured twice by needle in preparation room, D: Placed the vials connected to CSTD in preparation room.] After 24 hours and 7 days, portions of the culture medium in the vial were cultured. In conditions A, C and D, no growth of microbes was confirmed except in B. Microbial contamination didn't occur when vials were stored in BSC. When the vials were stored under the ISO Class 8 environment, it is suggested that microbes may adhere to the rubber stopper of the vial. Even if the inside of the vial after puncture was negative pressure, the rubber stopper showed a certain protective effect from microorganism adherence, and CSTD was similar. Therefore, the vial storage condition in BSC (ISO class 5) is considered preferable on the premise that a single use vial is divided. However, if the rubber stopper or CSTD is connected even in an ISO class 8 environment, the sterility is retained for 7 days.
著者
森 駿志 大塚 和弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.10, pp.111-124, 2022-10-01

人と人との対話において対話者が表出する頭部運動には様々な機能があることが知られており,その認識のため畳み込みニューラルネットワーク(CNN) を用いた方法が提案されている.本論文では,対話者個人の頭部運動機能の概念を,頭部運動を介した聞き手・話し手間の相互作用機能へと拡張し,頭部運動機能を認識するCNNを転移させることで相互作用機能を認識するモデルを構築する戦略を提案する.この転移戦略の一つとして,複数の頭部運動機能について各々事前に学習されたCNNを再利用し,これらCNNの中間出力を特徴ベクトルとして抽出し,別の識別器により相互作用機能の認識を行うという戦略が含まれる.話し手・聞き手各々の機能認識CNNの出力について論理積をとる方策を基準として,提案した転移戦略を適用したモデルによる性能向上を検証した結果,話し手のリズム取りに対する聞き手の相槌という相互作用において,F値にて最高8.0ポイントの性能向上を確認し,また,話し手のリズム取りに対する聞き手の正の感情表出という相互作用では,最高13.9ポイントの性能向上を確認した.このように提案した転移戦略の潜在的可能性が確認された.
著者
森脇 丈子
出版者
日仏経営学会
雑誌
日仏経営学会誌 (ISSN:09151206)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.18-36, 2019 (Released:2019-07-22)
参考文献数
25

フランスの食品小売業界では、大規模スーパーの売上高が伸び悩む一方、大手小売業グループによるインターネット販売、そのなかでもとりわけ「ドライブ」「(drive:les drives, le driveと表記されることが多いが、本稿では‘Drive’と表記)が対前年度比での伸張に勢いが見られる。‘Drive’はインターネット注文した商品を登録している店舗に自分で取りに行く形が一般的であるため、「クリック&コレクト(click&collect)」の買い物方式の一つと考えられる。その他には、ここ数年で大都市での食品スーパーの宅配が増加している1)。この‘Drive’のように、2000年代後半以降のフランスの食品小売業界では、単一業態内部でのIT化の進展をめぐる競争が激しい。 本稿の課題は、買い物の不便さ解消の面で消費者の支持をうける‘Drive’の現状について整理すること、大手小売企業ごとに‘Drive’の設置形態や数に違いがあり、その違いが売上高の差に影響を与えていると思われることについてヒアリング調査をふまえて分析する。これらを通して、日本の流通・マーケティングの議論でほとんどとりあげられることのないフランスの食品小売業の競争の一端を示す。