著者
松尾 篤 草場 正彦 進戸 健太郎 冷水 誠 岡田 洋平 森岡 周 関 啓子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.B3P3295, 2009

【目的】脳卒中後の運動障害治療として,ミラーセラピーが臨床応用されつつある.この治療は,上下肢の鏡映像錯覚を利用して,運動前野領域を活動させ,患肢の運動イメージ生成を補助する有効な手段とされている(Yavuzer, 2008).我々もミラーセラピーの臨床応用を試み,幾つかの有効性に関する知見を報告してきた.また,最近では運動観察治療も運動障害治療の手段として報告されている.運動観察治療は,他者の意図的行為を観察した後に,自身で身体練習を反復実施する治療であり,脳卒中患者での有効性も報告されている(Ertelt, 2007).今回は,健常者における複雑で精緻な手の運動学習課題を使用して,ミラーセラピーと運動観察治療の効果を明らかにすることを目的とする.<BR>【方法】研究内容を説明し同意を得た右利き健常大学生30名(平均年齢22.5±2.8歳)を対象とし,参加条件としては右手でペン回しが可能なこととした.ペン回しとは,母指,示指と中指を巧緻に操作ながら,把持したペンの重心を弾いて母指を中心に回転させる課題である.本研究では左手でのペン回し課題を運動学習課題とした.30名をランダムに3つのグループに各10名ずつ割り付けた.グループは,ミラーセラピー(MT)群,運動観察(OB)群,身体練習のみ(PP)群とし,MT群とOB群は5分間の身体練習に加えて各介入を実施した.MT群では,作成したミラーボックス内の正中矢状面に鏡を設置し,右手でのペン回し鏡映像が,左手でペン回しを実施しているかのような錯覚を惹起するように設定し,5分間ミラーセラピーを実施した.OB群では,あらかじめ撮影したペン回し映像をPC上で表示し,対象者は安静座位の肢位でこの映像を5分間観察した.PP群では,5分間の左手でのペン回し練習のみとした.介入期間は10分間/日で5日間とし,測定は介入前と介入期間中の計6回実施した.測定アウトカムは,左手でのペン回し成功回数,3軸平均加速度とした.分析には二元配置分散分析を実施し,有意水準は5%未満とした.<BR>【結果】ペン回し成功回数は,介入前と比較して介入1日目から順に5日目まで増加し(P<0.001),グループ間にも主効果を確認した(P<0.001).特に,MT群においてはOB群,PP群に比較して介入1日目の変化率が大きいことが観察された.3軸平均加速度にはグループ間で有意差を認めなかった.<BR>【考察】本研究の結果から,健常者における新規で巧緻な手の運動学習では,ミラーセラピーを身体練習に組み合わせることが,運動観察や身体練習のみの場合よりも効果的な方法であることが示唆された.また,介入直後の変化がMT群で大きなことから,ミラーセラピーは運動学習初期の段階で,新規運動課題の運動イメージ生成をより効率的に促進させる効果がある可能性が示唆された.今後の臨床においても,より効果的なミラーセラピーの適応を検討していく必要がある.
著者
丸山 温 松本 陽介 森川 靖
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.427-432, 1996-11-16 (Released:2008-05-16)
参考文献数
21

樹冠上部の葉は,重カポテンシャル差によって常に下部と比べて乾燥状態におかれている。'この乾燥に対する適応を明らかにするため,スギ成木の梢端部と最下部の葉について,水分特性と形態的特徴の季節変化を調べた。梢端部の葉では,圧ポテンシャル(Ψp)を失うときの水ポテンシャル(ψWtip),飽水時の浸透ポテンシャル(ψSsat)が最下部と比べて低く,Ψpを維持しやすい特徴を持っていた。また,梢端部の葉では空隙の発達が抑制され,葉の単位体積当りの水分量も最下部と比べて多かった。すなわち,水分特性だけでなく,形態的にも梢端部の葉は乾燥に適応しており,このことがスギが高い樹高まで育つ重要な要因になっていると考えられる。
著者
島田 有紀子 森 源治郎 今西 英雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.617-623, 1995-12-15
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

1. <I>Ornithogalum arabicum</I>の自然条件下における花芽の発育経過を観察するとともに, 花芽の発育および開花に及ぼす温度の影響について調べた.<BR>2. 花芽形成は9月上旬に始まり, 10月下旬には第1小花が外花被形成期から内花被形成期の般階にまで進み, 12月下旬に雌ずい形成期に達した. その後, 花芽の発育は緩慢となり, 4月中旬に四分子形成期に達し, 5月中旬に開花した.<BR>3. 花芽の発達, 開花には10月下旬以降の低温経過を必要としなかった. 花茎伸長のためには低温が必要で, 花茎の長い切り花を得るためには, 1月下旬頃まで自然低温に遭遇させる必要があった.<BR>4. 5&deg;~13&deg;Cの低温は後作用して開花および花茎伸長を促進し, その効果はりん茎を処理する際の乾湿条件に関係なく認められた. さらに, 9&deg;~13&deg;Cは直接的に作用して雌ずい形成期までの花芽の発育を促した. また, この低温は茎頂が生殖生長に転換した初期段階から有効に作用した.<BR>5. 6月中旬入手のハウス栽培球を用いた場合, 100%の開花率を得るためには, 花芽形成に先立って30&deg;C12週間の高温遭遇が必要であった.
著者
柳原 崇男 北川 博巳 大森 清博 北山 一郎 松本 泰幸
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.9, pp.6, 2008

【目的】本研究はロービジョン者の夜間歩行を支援するために、夜間の低い照度下でもロービジョン者が歩きやすくなる方法として、電柱等に取り付けたLED照射装置から光を照射し、道路面に連続したマークを用いた誘導方法を提案する。そこで平成19年に県道明石宝塚線歩道にて、LED照明を用いた誘導システムの実証実験を実施した。本研究の目的はこのLED照明を用いた夜間歩行支援システムの効果や課題を明らかにすることである。【方法】ロービジョン者21名に対し、上記で提案しているLEDを用いた誘導システム(以下:LED誘導マーク)に加え、市販の地面に埋め込むタイプのLEDも併設し、歩行実験を行った。実験方法はそれぞれの歩行速度、有効性等に関するアンケート調査を実施した。また、LED誘導マーク、埋め込み型LEDの有効性を把握するために、誘導システムが設置されていない区間(以下:LEDなし)も歩行してもらった。【結果】LED誘導マーク、埋め込み型LED、LEDなし区間20mの歩行時間と偏軌距離を比較した。その結果、歩行時間に関しては、埋め込み型LEDが一番早くなっていたが、統計的な有意差はなかった。偏軌距離に関しては、LEDなし(42.60cm)に比べて、LED誘導マーク(10.75cm)、埋め込み型LED(12.5cm)を用いることによって、より直線的に歩いていることがわかった。また、アンケート調査より、LED誘導マーク等のシステムのない場合と比べて、「歩きやすさ」だけでなく、「心理的負担の軽減」にも効果があることがわかった。【結論】歩行実験から歩行速度にはあまり大きな変化はないが、より直線的に歩行できていることがわかった。このことよりも、誘導性だけでなく、より安全な歩行を支援するという効果が見られた。意識調査より、LED誘導マークの設置間隔5mよりも埋め込み型LEDの設置間隔2mの方が高評価であるが、歩行速度、偏軌距離ではほぼ同程度の結果となっている。このことよりも、5m程度の間隔でも誘導性能は高いことがわかる。
著者
森 岳志 中川 正樹 高橋 延匡 中森 眞理雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.29, no.8, pp.807-814, 1988-08-15
被引用文献数
1

本論文は 新しい浮動小数点表現法の比較・評価を行う環境を提供することを目的とし OS用言語CコンパイラCATに複数通りの浮動小数点表現法を実現したことについての報告である.本研究では (1)URR (2)IEEE表現法(3)MIL-STD-1750A表現法の3種類の表現法をサポートしている.さらに 表現法の選択を (ア)コンパイル時に行う方法 (イ)実行時に行う方法の両者を用いて実現した.後者の方法は 効率の良い評価環境を与えることを目的として考案された方式で 評価の際のコンパイルとリンクの手間を軽減し 新たに表現法を追加したとしても浮動小数点演算ライブラリの再編成だけを行えばよく プログラムの再コンパイルを必要としないことなどの特徴を有している.定数の扱いに問題が生じたが 現時点では実行時に内部表現に変換することによって解決している.
著者
中森真理雄
雑誌
電子情報通信学会論文誌A
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.1468-1469, 1988
被引用文献数
7
著者
森 幹士 本城 昌 茶野 徳宏 福田 眞輔
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.1155-1158, 1996-10-25

抄録:異常筋を伴った片側上肢肥大の症例を報告する.症例は20歳の女性である.単純X線,CT,MRI等の検索で,右手手指骨の肥大,示指の尺側偏位および右上肢,特に手部での筋肥大を認めた.示指尺側偏位,片側上肢肥大の特徴より,腫瘍性疾患,RA等の関節疾患,さらにdistal arthrogryposisも考えられたが,臨床所見より上記疾患は否定され,異常筋を伴う片側上肢肥大が疑われた.術中,異常筋の存在を認め,異常筋の切除,中手骨の骨切りを併用した示指尺側変位の矯正術を行った.本症例でみられた異常筋の一つ(短指伸筋)は,分化上の先祖帰り,atavistic muscleと考えられている.他の異常筋も同様に,系統発生学上の進化過程にある不安定な筋群より出現し,筋肥大や片側上肢肥大を起こしたものと考えた.
著者
森田 朗
出版者
日本行政学会
雑誌
年報行政研究 (ISSN:05481570)
巻号頁・発行日
vol.1984, no.18, pp.25-55, 1984-02-10 (Released:2012-09-24)
著者
森 基雄
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Naragakuen University (ISSN:2188918X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.97-108, 2018-03-10 (Released:2018-04-11)

要旨古英語において‘go’を意味する動詞であった長形gangan(<Gmc*gang-a-)と短形gānのうち、ganganは強変化動詞7類として分類され、その過去形としては本来の強変化動詞7類としての重複形*gegang-に由来するġēongを有したが、gānは不規則動詞として分類され、不規則な過去形ēodeを有した。またēodeはganganのもう1つの、しかも散文ではむしろ一般的な過去形でもあった。同様に、OEganganに対応するGogagganは不規則な過去形iddjaを有した。このように‘go’の過去形としてはまったく不規則な形態を成すēodeとiddjaの成り立ちと両者の語源関係についてはこれまでにさまざまな提案がなされてきたが、本稿ではこれらの提案に基づき、歴史的な観点からēodeとiddjaの成り立ちとその真の姿に迫った。
著者
岡花 和樹 村上 元良 細辻 浩介 堀 優作 森 真樹 竹中 章勝
出版者
日本デジタル教科書学会
雑誌
日本デジタル教科書学会発表予稿集 日本デジタル教科書学会第7回年次大会 (ISSN:24326127)
巻号頁・発行日
pp.29-30, 2018 (Released:2018-10-03)
参考文献数
2

平成 32 年度より施行される次期小学校学習指導要領解説総則には,「児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付ける ための学習活動」として,第5学年 B 図形の(1)における正多角形の作図が例示されている。本 研究では例示内容の他に,児童が継続してプログラミングを通して学習ができ,教科単元の学習 活動を深める学びにつながる授業開発を行なった。小学校 5 年生 B 図形(1)平面図形の性質の中 の合同な図形に注目し,合同な図形を描く際に分度器を用いて角の大きさを測定するアナログ的 操作をとり入れ,どの合同条件に対応するのか,必要な角の大きさや辺の長さは何かを考えなが ら,プログラミング環境 Scratch を用い,作図過程をプログラミングすることによって提示され た課題と同様の手順で図形を描いていくプログラム開発と授業開発を行い授業実践した。本発表 では従来のアナログ的な学びを活かしながら,新たにプログラミング的思考を育成する授業づく りを行うことで,数学的な見方考え方と情報的見方考え方を育成することでプログラミング的思 考の育成を同時に行える授業の提案をしたい。
著者
鈴木 誠 長山 智則 大原 壮太郎 森川 博之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J100-B, no.12, pp.952-960, 2017-12-01

実用化に向け行き詰まりを見せていたマルチホップ無線センサネットワークが,同時送信フラッディング(CTF)のもたらした強烈なインパクトにより,全く新たな技術に生まれ変わろうとしている.筆者らは,CTFが提案された当初からその重要性を認識し,全ての通信をCTFで行うセンシング基盤Chocoの開発を進めてきた.また,実フィールドにおけるCTFの有用性を明らかにするため,社会的要請の強い橋梁モニタリングシステムをChocoを利用して開発し,実橋梁において10台〜70台といった規模で実証をも進めてきた.本論文では,CTFが無線センサネットワークにもたらした変化について論じるとともに,CTF利用型センシング基盤Choco,及びChocoを用いた構造モニタリングシステムの開発について述べる.また,実証実験から得られた「シンクノードも含めノードの移動に頑健なため設置が簡易である」「中継ノードを増やせば繋がるため無線に対する深い知識がなくても構築できる」といったCTFの運用時における特性についても示す.
著者
森田貴己
出版者
水産庁
巻号頁・発行日
2011-05-11
著者
森津 千尋 Chihiro MORITSU
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.197-208, 2017-03-10

日本で「新婚旅行」という言葉が使われるようになったのは明治20年以降であり、最初は英語 honeymoon の訳語として登場した。「新婚旅行」に限らず、この時期には西洋からもたらされた物や概念を指す訳語が作りだされ、「恋愛」「家庭」といった言葉もこの時期に誕生した。そして知識人の間では、理想としての「恋愛結婚(当時は自由結婚)」また夫婦や親子が愛情で結びついた「家庭(ホーム)」が論じられ、それら概念を背景に「新婚旅行」は語られるようになっていく。またこの時期には上流階級を中心にレジャー文化が拡がり、多様化する旅の一形態としても「新婚旅行」は受け入れられていく。当時「新婚旅行」に行けたのは限られた一部の上流階級のみであったが、新聞や家庭小説などで「新婚旅行」が取り上げられることで、実際には「新婚旅行」に行けない人々にも「新婚旅行」のイメージが認知されていったことが考えられる。
著者
本村 あずみ 森 貴久
雑誌
帝京科学大学紀要 = Bulletin of Teikyo University of Science (ISSN:18800580)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.161-166, 2016-03-31

Saihara, which is located in north-western area of Uenohara in Yamanashi Prefecture, is a depopulated area. A traditional Kabuki play had been performed at Ichinomiya Shrine in Saihara for the autumn festival since at latest 1860s until 2001,and ceased to be performed since then. Interviews with 29 people living in Saihara held in 2009-2010 enabled us to collect information on the traditional Kabuki play. What is clarified in this article is as follows: (1) there were 3 types of play: a traditional Kabuki play performed by Saihara people, plays performed by a professional theatre company, and semi-traditional Shimpa plays; (2) during Meiji and Taisho period, most plays were traditional Kabuki plays performed by Saihara people,performance by theatre companies had become popular later, and the traditional kabuki play by Saihara people became popular again after 1980s; and (3) performance of plays for the shrine festival had become a hard task due to a change of life style in Saihara, which seemed to be the most serious cause for the interruption of this traditional local play.
著者
服部 正平 森田 英利
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.59-60, 2016-03-31

メタゲノムからヒト常在菌叢の生態と機能を読み解く
著者
森 望 村井 清人
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

従来、神経発生の初期段階において神経分化の抑制因子と考えられていたRESTが、ヒトの老化脳においては神経分化抑制ではなく、神経保護に機能し、RESTの発現が認知能力とも相関すると報じられている。申請者らはこの結果の真偽を検証する目的で、マウスのRESTの発現を培養神経老化モデルで検討した。また、RESTに細胞保護機能があるかどうかについて、酸化ストレスやDNA障害をモデルに検討した。全長のRESTおよび短絡型のREST4の発現が若齢と老齢の神経細胞で異なることが判明した。ただし、REST4の機能性や、RESTの老化神経での発現変動の意義については未だはっきりせず今後の研究に委ねられる。