著者
石田 義明 久加 朋子 清水 康行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_1429-I_1434, 2017 (Released:2018-02-28)
参考文献数
6
被引用文献数
1

2016年の北海道豪雨は,既往最大を記録するもので,過去に経験をしたことのない大洪水が全道各地で発生した.本論文では,空知川幾寅築堤における2ヶ所の堤防決壊に着目し,破堤と地形特性が氾濫状況に及ぼす影響について検討した.結果,上流破堤部が決壊した後,氾濫流は3m/s以上の高速で下流破堤部へと流れ込んだことが示された.また,下流破堤部の決壊の有無を比較し,この破堤が外水氾濫の排水機能を発現したことで,実質的な洪水被害の軽減につながったことが示された.さらに,今回の氾濫を昔の川の痕跡と比較した結果,氾濫流の流れは後背地の畑の下に隠れていた旧流路跡をたどり,本川へと再合流する様子が再現された.この現象は,水衝部における破堤や溢水箇所が若干異なっても,同様の結果を示すものであった.
著者
上田 祥平 平林 真伊 清水 美憲
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 38 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.491-492, 2014-09-13 (Released:2018-05-16)

STEM教育は,科学・技術・工学・数学を統合的に扱うことで,21世紀型能力等,これからの社会に求められる力の育成を目指す.学校数学の立場からこのSTEM教育をみると,理数系教育の新たな取り組みとして今後の展開が期待される一方,他分野と統合的に扱われるなかで数学の内容が後退するという問題点も挙げられる.本稿では,重要な数学の内容が含まれる活動として紹介されていたSTEM教育の活動の実践例を分析し,STEM教育での生徒の探究活動において数学化がどのような役割を果たしているのかを考察する.
著者
菅野 大 清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹 友永 省三
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.Suppl, pp.suppl_33-suppl_34, 2019-06-30 (Released:2019-07-24)
参考文献数
2

市販されている維持期のネコ用総合栄養食(各10種のドライ製品とウェット製品)および5種の一般食(ウェット製品)におけるタウリンおよびメチオニンの充足・過剰を検証した。充足・過剰の判定はAAFCO養分基準(2016)に基づいて行った。総合栄養食では、すべてのフードにおいてタウリンとメチオニンは充足していたが、1つのウェット製品においてメチオニンが過剰であった。一般食では、タウリン不足のフードが認められ、メチオニンはほとんどのフードで過剰であった。メチオニン含量および表示されている(粗)タンパク質含量は正の相関を示したことから、メチオニンのアンバランスは生じないため、その過剰の問題はない可能性がある。総合栄養食であるドライ製品の一部を一般食に置きかえることを想定しても、タウリンは不足しないことが示唆された。
著者
清水 政明 Le Thi Lien 桃木 至朗
出版者
京都大学
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.149-177, 1998-09

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。This paper aims to introduce one piece of chu nom material, which Henri Maspero mentioned in his article of 1912 as one of the oldest chu nom materials, and the existence of which remained for a long time unconfirmed. This paper also aims to analyze the chu nom characters contained in it from the historical phonological point of view. This material was rediscovered and introduced by Le Thi Lien in her 1989 B. A. thesis. It is an inscription erected in 1343 on the Ho Thanh mountain (nui Non Nuoc) in the present Ninh Binh province, Vietnam. It concerns donations made by local inhabitants for the construction of a temple on the mountain. Before analyzing the chu nom characters in the inscription, we first review the traditional method of analyzing chu nom characters as proposed by Henri Maspero in 1912,for the purpose of demonstrating the limitations of his method in the analysis of our material. We then refer to recent Viet-Muong phonological studies based on the newly discovered and described groups of the Viet-Muong branch such as Arem. Chu't. Ma Lieng. Aheu, and Pong, most of which were not known when Maspero wrote his paper. One of the main phonological features that differentiate them from the Mu'o'ng dialects described by Maspero is the existence of the disyllabic structure : (C_0)vC_1V(C_2)/T. We also utilize newly discovered chu nom materials such as the Sino-Vietnamese text of Phat thuyet a ai bao phu mau an trong kinh, compiled in the 15th century, which also throws light on our analysis. The material contains 11 common words and 18 person or place names written in chu nom characters. The latter 18 proper nouns are the object of discussion. Their common characteristics are the use of two characters for the transcription of one proper noun and occurrence of the vowel /a/ as the first element. We claim for these examples to show (1) certain patterns of the initial consonantal cluster, and (2) the trace of the disyllabic morphemes still preserved in the 14th century Vietnamese. Concerning the former point, we can reconstruct such patterns as /^* bl-/, /^* ml-/, and /^* k'r-/ from our material. The latter point is of special importance. Nguyen Tai Can (1995) reconstructed the major members of the minor syllable ((C_0)v) in the disyllabic structure of Proto Viet-Muong as /^* pə/, /^* tə/, /^* cə/, /^* kə/, /^* sə/, /^* a/, and we can recognize four of them in our matelial : /^* pə/, /^* tə/, /^* kə/, /^* a/. The chu nom characters contained in the Sino-Vietnamese text of Phat thuyet d ai bao phu mau an trong kinh mentioned above, in turn, show all six of them, and the characters transcribing each of these minor syllables coincide with each other between these two materials, a fact that may reinforce the credibility of our analysis. In conclusion, the insertion of a non-distinctive schwa vowel/ə/ between each of the initial consonantal clusters seems to have been common in Vietnamese during the 14th-15th centuries, but not in all cases. And the disyllabic strucure of Vietnamese, or at least the trace of it, is recognized to have existed until as late as 15th century.
著者
河合 光久 瀬戸山 裕美 高田 敏彦 清水 健介 佐藤 美紀子 眞鍋 勝行 牧野 孝 渡邉 治 吉岡 真樹 野中 千秋 久代 明 池邨 治夫
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.181-187, 2011 (Released:2011-09-06)
参考文献数
16
被引用文献数
2

便秘傾向で60歳以上の健常成人男女58名(平均年齢68.8±5.3歳)に,Bifidobacterium breveヤクルト株が製品1個あたり1.0×1010 cfu含まれるはっ酵乳(商品名 ミルミル)を連続4週間摂取するオープン試験を実施した.被験者は排便日数が週に3から5日で,便の硬めな(便の水分含量が70%未満)人を選択した.はっ酵乳(試験食品)の4週間摂取は,排便量の増加を伴った排便回数および排便日数の有意な増加を示した(各々p<0.0001).さらに3日間以上連続で排便のなかった被験者の割合も試験食品摂取により低下した(p=0.013).しかし,便の硬さを表す便性状スコア(Bristol stool scale)の評価では,試験食品の摂取によって平均スコアに変化は認められなかった.症状の程度を5段階で評価した排便時の症状および腹部症状スコアに対し,試験食品はいきみおよび残便感の平均スコアを低下し(各々p=0.022および0.0002),症状の軽減が示唆されたが,腹痛および腹部膨満感のスコアには顕著な変化はみられなかった.色素を経口摂取してから便中に色素が検出されるまでの時間(腸管通過時間)を観察したところ,色素の滞留時間は摂取前後で変化はみられなかった.以上の結果より,連続4週間のB.breveヤクルト株を含むビフィズス菌はっ酵乳の摂取は,便秘傾向な60歳以上の健常な男女において排便量の増加を促し,排便頻度の増加および排便リズムを安定化させる便秘改善効果が示唆された.また,排便時のいきみや残便感の症状を改善する可能性も示唆された.
著者
木村 容子 清水 悟 田中 彰 藤井 亜砂美 杵渕 彰 稲木 一元 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.707-713, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
27
被引用文献数
3 4

釣藤散が有効な頭痛の患者タイプを多変量解析により検討した。51名の頭痛患者に対して随証治療にて釣藤散を投与し,このうち1カ月間服用した46名(男性13人,女性33人,中央値48歳,範囲19-77歳,片頭痛31例,緊張型頭痛14例,混合型頭痛1例)を対象とした。随伴症状,体質傾向,舌所見,腹部所見,年齢,性別,身長,体重,高血圧の有無の計38項目を説明変数とし,頭痛改善の有無を目的変数として,多次元クロス表分析により最適な説明変数とその組み合わせを検討した。この結果,単変量解析では,重要な順に「朝の頭痛」,「めまい・ふらつき感」,「不眠」,「体重」,「耳鳴」,「舌下静脈怒張」となった。これは,「朝の頭痛」という口訣を統計学的に支持する結果となった。多変量解析では,「朝の頭痛」,「舌下静脈怒張」と「頸肩こり」の組み合わせが,釣藤散による頭痛改善を予測する最適なモデルとなった。抑肝散証では「背中の張り」を重視するのに対して,釣藤散では「頸肩こり」が頭痛改善を予測する情報として有用であったことは,両者の鑑別に役立つものと考えられた。
著者
清水 嘉子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.530-540, 2002-12-01
参考文献数
23
被引用文献数
4

国籍別上位にある3カ国の在日韓国,中国,ブラジル人の育児問題を明らかにすることを目的として調査した.外国人の多在住4市の保育園に調査用紙を配布し韓国・中国・ブラジル人の母親210人より回収された結果を国別に分析し,日本の母親625人との比較を行った.その結果,在日外国人の育児に関する受け止めの違いが明らかとなった.育児ストレスはブラジルの母親が最も低く,次いで中国,韓国,日本となっていた.育児幸福感は逆の順位となり日本の母親が最も低かった.夫に対する信頼や大切な気持ちは日本の母親が最も低く,育児を取り巻く人に対するストレスが日本の母親に高いことが裏づけられた
著者
湯川 隆子 清水 裕士 廣岡 秀一
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.36, pp.131-150, 2008-03

本研究の目的は、大学生におけるジェンダー特性語の認知がここ20年でどのように変わったかを検討することである。1970年代と1990年代に男女各1000人の大学生を対象に、50語のジェンダー特性語について同一の分類テストと連想テストを実施した。主な結果は以下のようであった。(1)男性あるいは女性の典型的ジェンダー特性語として分類された特性語の数は、1970年代より1990年代のほうが少なくなっていた。(2)ジェンダー特性語に対する連想反応語は、1970年代でのほうが1990年代よりも典型的なステレオタイプを表すと見られる内容が多かった。(3)近年の日本の大学生においては、ジェンダー特性語に対し、ジェンダー・ステレオタイプに沿って反応する傾向が減少してきている。
著者
清水 擴
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
vol.389, pp.136-142, 1988-07-30 (Released:2017-12-25)

The purpose of this paper is to make clear the genealogy of the interior decoration of "Amidado" in Heian era. The conclusions are as follows. (1) The sourse of the interior decoration of "Amidado" exists in halls of Hojoji temple. (2) The method of interior decoration was completed in Hoodo, and the other "Amidado" took Hoodo for a model. (3) "Kuhon-ojo-zu" and "Gokuraku-jodo-zu" were the main themes of the interior painting, and several "Hiten", sculpture or painting, were arranged of the upper walls. (4) The first example of the use of "Raden" (mother-of-pearl-work) existed in "Amidado" of Hojoji, and of "Makie" (lacquer) in Tohokuin of Hojoji. (5) Introduction of the painting of "Ryokai-mandara" on the columns is due to belief in "Komyo shingon".
著者
清水 浩晃
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1043-1050, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
10

日本の各地域の伝統的な町並みは近代化の過程において建物材料や工法の多様化などにより地域の建物像と異なる更新が連続することによって急速な崩れを経験してきた。これに対して、地域型住宅、すなわち地域の気候風土・伝統文化に適合した住宅への更新を促進することによって地域らしさを持ったまとまりある町並みを再生させる動きがHOPE計画を中心に始まった。本研究では、1987年のHOPE計画において「町並の復権」をうたい八尾型住宅を提唱、その普及によって町並みを劇的に再生させてきた富山市八尾町を対象に、その計画・手法、成果、そしてそれを実現した社会背景・地域特性的要因を明らかにすることで、「地域型住宅への更新による町並み再生」のモデルを提示する。この例では、「八尾型住宅」が、住民が居住性の向上を意図して行う建物更新に対して、その意図に干渉せず、うまく噛み合いながら町並みの美化も行えるような規範として提唱されたことで、規制的手法を用いていないにも関わらず無理なく八尾型住宅を普及させたこと、敷地拡大や別荘需要などの内部的要因が土地建物の流通・更新を促進したためにそれによって町並みが改善されてきたことなどがわかった。
著者
清水吉康 著
出版者
大成館
巻号頁・発行日
vol.広島県之部, 1904
著者
横田 勝 三船 温尚 清水 克朗
出版者
高岡短期大学
雑誌
高岡短期大学紀要 (ISSN:09157387)
巻号頁・発行日
no.5, pp.19-26, 1994

スズを基としたスズ-銅-アンチモン合金は一般にホワイトメタルと呼ばれ,工業用軸受け材料やピューターと呼ばれる工芸材料に多く利用されている。本実験では工芸材料の立場から金相学および機械的性質について実験と検討を行った。得られた結果は次の通りである ; (1)Sn-CuおよびSn-Sb 2元系合金の冷却過程において熱分析曲線の上で2種類の発熱ピークが観察された。一方,Sn-Cu-Sb 3元系合金では3種類のピークが観察された。これら3種類の合金の60OK付近で現われる第1ピークは平衡状態図中の液相線上の点に相当する。約500Kで現われる第2ピークは,それぞれSn-Cu系ではa/α+η,Sn-Sb系ではα/α+β. Sn-Cu-Sb系ではα+γ/α+β+γの変態温度に相当する。Sn-Cu-Sb 3元合金だけは520K付近で第3のピークが観察された。これは平衡状態図中の固相線温度に相当する。(2)5mass% CuまでのSnへの参加による硬さへの影響はほとんど認められなかった。しかしながら、SnへのSbの添加は硬さを著しく向上させた。SnへのCuとSbの同時添加は3元系合金の硬さを効果的に高めた。(3)本3元系合金の強化機構は時効硬化型であると考えられる。
著者
川上 麻衣 清水 裕毅 久保田 由美子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.120-124, 2019-04-01 (Released:2019-05-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

症例は 50 歳,女性。左下腿の虫刺様皮疹に対し市販外用薬を塗布していたが,同部が潰瘍を伴う隆起性病変となったため,1 カ月後,当科を受診した。初診時,左下腿内側に径 3 cm の黄色痂皮が付着した隆起性潰瘍病変を認め,ヨードコート®軟膏外用を開始したが悪化したため,壊疽性膿皮症などを疑った。血液検査で血清クロール濃度(Cl)が 156 mEq/l(正常:98∼108 mEq/l)と異常高値であったが,4 年前から高 Cl 血症であったことが判明した。詳細な問診の結果,約 10 年間,慢性頭痛に対してブロモバレリル尿素含有の市販鎮痛薬(ナロン®顆粒)を内服していることが判明した。臭素摂取過量による偽性高 Cl 血症を呈したと考え,血中臭素濃度を測定したところ 500 mg/l(正常 5 mg/l 以下)と中毒域であった。皮疹辺縁部の皮膚生検では表皮は偽癌性増殖を呈し,真皮内には膿瘍形成を認め,臭素疹と確定診断した。 その後,ナロン®顆粒の内服を中止したところ速やかに Cl は正常化し,皮疹も色素沈着となり軽快した。 軽微な外傷から生じた難治性の潰瘍病変は壊疽性膿皮症などをまず考えるが,臭化物の内服歴や高 Cl 血症を確認し,臭素疹を鑑別に入れる必要がある。