著者
清水 哲郎
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.35-48, 2015-04-30 (Released:2015-05-12)
参考文献数
4
被引用文献数
2

本人・家族の意思決定支援について,公表されている二つの意思決定プロセス・ガイドラインが示すところを踏まえた上で検討する。まず,厚生労働省ガイドライン(2007年)を整合的な文書として読解すると,話し合いを通して関係者が合意形成することが本人の自己決定を尊重することに先立っており,合意が成った場合に本人の意思決定を基本とする」としていることが分かる。また,日本老年医学会のガイドライン(2012年)は,厚労省ガイドラインの考え方を受け継ぎ,かつその内容を臨床的により具体的に,必要条件のみならず十分条件まで示すものである。次に,通常の治療方針に関する意思決定プロセスにおける本人ないし家族の支援について,情報共有-合意モデルが示す関係者の共同決定というあり方を提示し,それは本人(家族)が状況を分った上での意向を形成するよう支援するプロセスでもあることを提示し,支援のあり方を検討する。最後に,将来のケア・治療について予め考える場面について,事前指示とACP(ケア計画事前作成プロセス)を取り上げて,意思決定支援を中心に考え,ことにACPが目指す成果を最期の時点に関する事前指示というように限定せず,本人が現在以降の人生を見渡して,予想される衰えの程度と相関的にどのような治療・ケアを受けるかの心積りをしていくことこそ,本人にとって肝要であることを示す。
著者
清水 沙也加 林 恵美子 若林 綾
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.24, pp.73-77, 2014 (Released:2014-05-30)
参考文献数
8

この研究の目的は,近代日本で文化的テクストが読者/オーディエンスによってどのように生産され,翻訳されていたかについて考察することである.とりわけ文化産業が発展した近現代では,文学テクストとメディアの関係はより錯綜し,多様な問題系を生み出している.文学テクストは,新聞や雑誌の記事の一つとして,美しくデザインされた本として,受け取られる.ときには,映画やマンガ,アニメーションに移植されることもある.そこに注目すると,文学テクストは,メディアや読者との協働を通じて,さまざまに変化していると言えるのだ.私たちは,資本主義と文化との関わりに注目しながら,メディアの中で作り上げられたイメージが,文学作品の受容にどんな影響を与えるかを検討した.
著者
小野 雅琴 清水 亮輔
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.68-78, 2018-09-30 (Released:2018-12-14)
参考文献数
28

制御焦点理論は本来,促進焦点を有する個人はポジティブな結果を重視した判断を行う一方で,予防焦点を有する個人はネガティブな結果を重視した判断を行うというテーゼを提唱する理論であるが,拡張の結果として,促進焦点を有する個人は感情的に結果を判断しようとする一方で,予防焦点を有する個人は認知的に結果を判断しようとするというテーゼも提唱されている。このテーゼを援用することによって,本論は,口コミ発信者に対する妬みが口コミ受信者による推奨製品の忌避に帰着すると説く最新の口コミ研究の主張を部分的に反駁し,促進焦点を有する個人はそうである一方で,予防焦点を有する個人はむしろ推奨製品を採用する傾向にあると主張する。消費者実験を行って収集されたデータを用いてANOVAを行ってテストしたところ,仮説は首尾よく支持された。
著者
清水 翔
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.185-196, 2011

小学校におけるデザイン教育は,これまで美術科教育の理念に準じて行われてきた。具体的には,「作る」という造形表現が中心であったといえる。そして,デザインという語の意味の曖昧さに加え,新学習指導要領においてデザインという語が削除されたことも相まって,デザイン教育の指針が見えなくなっている。そこで本稿では,デザイナーへのインタビューに基づき,デザイン教育の新たな可能性を提示した。インタビューの結果からは,小学校におけるデザイン教育の設計にあたって,日常生活を対象とする,デザインの機能を知る,協同学習を活用するという3つの特徴が重要であることが明らかになった。この結果に基づいて,デザインリテラシーの育成という観点から,デザイン教育の指針を提案した。
著者
本田 一陽 桜井 誠 千田 圭二 阿部 憲男 清水 博
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.200-204, 2002-04-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
20
被引用文献数
1

高齢者の肺炎を診療する場合, 濃厚な治療が行われたにも関わらず予後が必ずしも良くない症例に遭遇することがある. このような致死的細菌性肺炎について, 診療上どのような問題点があるか, 得られた文献を基に, 当院の症例についてそれぞれの問題点のスコア化を試み, 分析した. その結果, 致死的な細菌性肺炎においては, (1) 発症時起炎菌としてmethicillin resistant Staphylococcus aureusおよびPseudomonas aeruginosaが高率に検出されたこと, (2) 不顕性嚥下性肺炎の診断の遅れがあること, (3) 鬱血性心不全の合併率が高いごと, ならびに (4) 低栄養および高齢化による免疫不全が存在すること, などが臨床上の問題点としてあげられた. また, 他の致死的疾患と比較した場合, 高齢に加えて (1) 発熱, (2)膿性疲, (3) 白血球増多, (4) 画像所見改善の有無, (5) 臓器障害改善の有無および(6)酸素投与の中止の可否などが, 肺炎改善の臨床的指標としてあげられた.
著者
清水 兵衛 宮脇 孝久 村上 司 小畑 敬祐 山崎 聡
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.310-316, 2011-11-10 (Released:2014-04-22)
参考文献数
8

芳香脂肪族の構造を有するキシリレンジイソシアネート(XDI)の特性及びその誘導体であるXDI-トリメチロールプロパン(TMP)アダクト体の塗料用硬化剤としての性質を調査した。XDI は,イソシアネート基と芳香環がメチレン基を介して結合した芳香脂肪族のポリイソシアネートであり,芳香族および脂肪・脂環族ポリイソシアネートとは異なった性質を示した。この特徴ある構造に基づく性質を活かして,塗料,接着剤等への用途展開が期待できる。
著者
鎌倉 令 山田 優子 岡村 英夫 野田 崇 相庭 武司 里見 和浩 須山 和弘 清水 渉 相原 直彦 上野 和行 鎌倉 史郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.150-157, 2011 (Released:2011-08-02)
参考文献数
11
被引用文献数
4 2

ベプリジルの至適投与量,ならびに安全かつ有効な血中濃度域を見いだすために,不整脈に対してベプリジルを投与した112例(男性80例,女性32例,年齢64.3±12.5歳)の血中濃度を測定した.測定には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用い,臨床的特徴,心電図指標などを対比し,不整脈抑制効果と副作用の発生状況を評価した.平均投与量は128±34 mg/日,平均血中濃度は751±462ng/mlであり,200mg投与群では有意に高い血中濃度(1,093±721ng/ml)を示した.平均観察期間899日で,心房頻脈性不整脈109例中14例が洞調律を維持し,57例で自覚症状が改善した.改善例の血中濃度は非改善例に比べ有意に高かった(866±541ng/ml vs. 622±329ng/ml, p=0.006).副作用としてQTc延長>0.48秒を10例に,徐脈を6例に認めたが,それらの濃度は副作用のない群に比して有意に高かった(QTc延長vs.副作用なし : 1,086±471ng/ml, p=0.005,徐脈vs.副作用なし : 1,056±522ng/ml, p=0.03).Torsade de pointesを呈した例はなかった.【結論】日本人のベプリジル至適投与量は150mg/日以下,症状を改善し,かつ副作用が出現しにくい血中濃度域は600~1,000 ng/mlと考えられた.
著者
児玉 謙太郎 牧野 遼作 清水 大地
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J102-A, no.2, pp.26-34, 2019-02-01

本研究では,じゃんけんというマルチモーダルなコミュニケーションにおいて,音声による聴覚情報が参与者間の身体の協調・同期に及ぼす影響を実験的に検討した.その際,力学系アプローチという視点からコミュニケーションを自己組織化現象と捉えた.そして,コミュニケーション過程を参与者間の知覚情報を介したリアルタイムな行為の調整過程とみなし,身体協調を非線形時系列解析により評価した.実験により「最初はグーじゃんけんぽん」という掛け声を発する通常条件と掛け声を発しない声なし条件を比較した結果,じゃんけんの最終段階での参与者2名の手の振り降ろしの時間差には,条件間で有意な差はみられなかった.一方,行為の開始から終了に至る過程の参与者の手の協調における安定性と予測可能性に有意な差がみられ,通常条件のほうが,参与者間の手の協調が安定し,予測可能性が高い動きをしていたことが明らかとなった.これらの結果から,ヒトは数秒という短い時間に行われるコミュニケーションであっても,1)聴覚情報が利用できない条件では参与者らはリアルタイムに視覚情報を利用し,結果的に同期を達成できるよう柔軟に振る舞うこと,ただし,2)その行為の調整過程での身体の協調には聴覚情報が影響すること,が示唆された.
著者
廣瀬 徳晃 津坂 祐司 清水 毅 山内 智裕 白石 孝 谷中 壯弘
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.81, no.826, pp.15-00087, 2015 (Released:2015-06-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2 5

The various kinds of the electric personal mobility, which is one or two-seater, are being developed all over the world. These mobilities are applied into the substantiative experiment held in the several cities in order to investigate the effectiveness and popularity. The main specification of the personal mobility is the small footprint to reduce the parking space and alleviate traffic jam. However, the small footprint causes the deterioration of the posture stabilization. The authors are developing the personal mobility, which has a lean actuator to tilt the upper body for keeping the posture stabilization not only during turning motion but also on the uneven road surface. In this paper, the motion model considering yaw motion around roll axis is derived. In addition, the posture control method based on the motion model is proposed to realize the desired roll angle, which ensures the required range of the zero moment point. The effectiveness of the proposed approach is verified by the experiments using a prototype.

2 0 0 0 IR 日本人の心

著者
清水 文雄
出版者
王朝文学の会
雑誌
続 河の音
巻号頁・発行日
pp.32-34,
著者
黒川 昌彦 渡辺 渡 清水 寛美
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

インフルエンザ感染は局所感染であるが、なぜ発熱、頭痛、脳炎などの全身症状が誘発されるかについては未だ明らかにされていない。このため、全身症状の誘発機序が明らかになれば、新たな視点からインフルエンザ感染に対する新薬の開発が可能となると考えられる。これまでのマウスのインフルエンザ感染病態の解析から、感染早期の気道内でIL-12の産生増強が、インフルエンザ感染症の軽症化を導くことを明らかにした。IL-12はインフルエンザ感染における自然免疫から獲得免疫系への一連の感染防御システム、また感染症状誘発の鍵となる因子である。そこで、インフルエンザ感染マウスを用いて気道感染後のIL-12産生様相を明らかにすることを目的とした。感染1-4日後のマウス肺洗浄液中のウイルス量は、感染3日目で最大となり以後減少した。また、サイトカイン産生(IL-12、IL-18、IFN-γ、TNF-α、IFN-α、IFN-β)は、感染2-3日目に最大になりその後減少傾向を示した。しかし、感染1日目において唯一IL-12産生濃度がmock感染マウスより有意に高く、感染にともないIL-12産生が他の5種のサイトカインより先に誘導された。感染1日目の肺の免疫組織学的検討では、ウイルス抗原は気管支上皮やその内部に局部的に認められ、マクロファージは、気管支平滑筋層の下部や細気管支部位に点在していた。IL-12は、気管支平滑筋層の下部に点在して観察された。また、IL-12 transcriptsは、マクロファージ様細胞に検出された。これらの結果、感染初期にIL-12抗原は、インフルエンザウイルス抗原やマクロファージと同様に、感染気管支上皮近傍の気管支平滑筋層の近辺に点在していることが明らかとなった。また、その分布は、マクロファージの分布と類似しており、IL-12がマクロファージ様細胞から産生されていることが示唆された。したがってインフルエンザウイルス感染初期気道内で、IL-12が自然免疫から獲得免疫系への一連の感染防御に重要な役割を演じていることが確認できた。
著者
鈴木 敦士 嶋倉 明彦 三木 貴司 清水 雅範 見山 源太郎 斎藤 信 池内 義英
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.104-110, 1990-02-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
19

屠殺前の廃鶏に, A. sojaeおよびA. oryzaeの産生する蛋白質分解酵素,パパイン,ならびに細菌性コラゲナーゼを注射して肉質への影響を研究した.その結果,筋原線維Z帯の成分が,パパイン, A. sojaeおよびA. oryzaeの産生する酵素によって分解されやすくなり,筋原線維のfragmentation の増加が認められた.また,筋肉内コラーゲンのサブユニットの分解,コラーゲン線維の開裂や膨潤も認められた. 食肉の軟化剤として広く使われているパパインに加えて,本研究に使用した醤油の生産に使われている麹菌の産生するプロテアーゼも,安全性および価格の面からも,食肉の軟化剤として有効ではないかと考えられる.
著者
堀口 敏宏 趙 顯書 白石 寛明 柴田 康行 森田 昌敏 清水 誠 陸 明 山崎 素直
出版者
日本海洋学会沿岸海洋研究部会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.7-13, 2000-02
被引用文献数
6

船底塗料などとして使用されてきた有機スズ化合物(トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPT))によって,ごく低濃度で特異的に誘導される腹足類のインポセックスのわが国における経年変化と現状の概略を種々の野外調査結果などに基づいて記述した.1990~1991年の汚染レベルに比べると近年の海水中の有機スズ濃度は低減したと見られるものの,イボニシの体内有機スズ濃度の低減率は海水中のそれよりも緩やかであり,またその低減率が海域により異なっていた.また環境中の有機スズ濃度の相対的な減少が観察されるものの,イボニシのインポセックス発症閾値をなお上回る水準であるため,インポセックス症状については全国的に見ても,また定点(神奈川県・油壺)観察による経年変化として見ても,十分な改善が認められなかった.この背景には,国際的には大型船舶を中心になお有機スズ含有塗料の使用が継続していることとともに,底泥からの再溶出の可能性及びイボニシの有機スズに対する感受性の高さなどが関連していると推察された.
著者
玉城 雅史 冨田 哲也 菅本 一臣 川島 邦彦 清水 憲政
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.774-778, 2016-10-18 (Released:2016-11-17)
参考文献数
16

膝関節は,骨,靱帯,筋肉のそれぞれが合わさって屈曲と伸展だけではなく,屈曲に伴う大腿骨-脛骨間のrollback motionと外旋運動を認める.変形性膝関節症では,一部に内旋運動を認める症例があり,正常膝とは異なる動態を認めた.2D/3Dレジストレーション法を用いた人工膝関節術後の動態解析では,大腿-脛骨コンポーネント間の屈曲角度は平均120°程度であった.脛骨に対する大腿骨の外旋運動は認められるものの,その回旋量は約10°前後と正常膝に比べて少なかった.またキネマティックパターンはさまざまであり,インプラントの表面形状,手術手技により規定されている可能性が高かった.
著者
清水 裕士 大坊 郁夫
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.295-304, 2007-03-20 (Released:2017-02-08)
被引用文献数
3

This study had two main purposes. The first was to clarify the relationship between structure of interaction and stability of romantic relationships, and the second was to compare the effect of the total intimacy level of a couple with the individual levels of intimacy using a pairwise correlation analysis in order to determine a couple's interdependency. Questionnaires were completed by 59 couples (college students in romantic relationships). The feature of interaction structure was measured by the frequency, strength, and diversity of interactions, while the stability of a relationship was measured by satisfaction, commitment, and prospects of a continued relationship. The pairwise correlation analysis separated the correlation of the couple level from the individual level. The results indicated that the stability of relationships was affected by the degree of diversity of interaction at the couple level, and by the strength of interaction at the individual level. Finally, we discussed the function of relationship stability, showing the degree of diversity and strength of interaction.