著者
清水 洋 福田 一史 井上 明人 鴫原 盛之 松井 彩子
出版者
Institute of Innovation Research, Hitotsubashi University
巻号頁・発行日
2018-12

ゲーム産業生成におけるイノベーションの分野横断的なオーラル・ヒストリー事業
著者
清水 美知子
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
no.14, pp.161-175, 2013-03-31

本稿は,戦後日本を代表する作家,松本清張の中編小説『熱い空気』を資料として,1960年代前半の家政婦像について考察したものである。主人公は家政婦紹介所に登録する派出家政婦。彼女の目を通して中流上層家庭の内幕をのぞき見る,というかたちで物語は進行する。 この作品で描かれるのは,人格無視で機械のようにこき使われる家政婦の姿である。雇主からすると家政婦はよそ者であり,かつて住み込み女中とのあいだに存在したような温情的な関係は成立しない。家政婦の被虐意識は恨みに転化し,雇主の妻への復讐を計画.平和な家庭を崩壊の危機に陥れる。当時,日本では女中払底の対応策として,家政婦を家事技術者として位置づけようとする動きがみられた。しかし現実には,雇主側に家政婦を見下す意識が残っていたため,家政婦が専門職としてのプライドを持つことは難しかったのである。
著者
清水 克志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

<b>1.はじめに</b><br><br> 日本におけるキャベツ生産は,明治前期の導入以降,寒冷地である北海道や東北地方で先行し,大正期から昭和戦前期にかけて西南日本へと拡大していった.前者は,キャベツの原産地と風土が類似していたため,春播き秋穫りの作型での栽培が可能であったのに対し,後者は,冬穫りや春穫りの作型の確立とそれに適した国産品種の育成を待たねばならなかったからである.実際に関東地方以西では,アメリカ原産のサクセッション種が導入されて以降,同種をもとにした国産品種が各地で育成され,キャベツ産地が形成された.<br><br> 本報告では,大正期以降に西南日本において形成されたキャベツ産地の事例として,広島県呉近郊の広村(現,呉市広地区)を取り上げ,篤農家による品種改良と産地形成の過程を復原するとともに,当時の日本におけるキャベツの普及に果たした役割を明らかにすることを目的とする.<br><br><b>2.広島県におけるキャベツ生産の推移</b><br><br><b> </b>広島県におけるキャベツの作付面積は,1908(明治41)年には僅か2.2haに過ぎなかったが,大正期を通じて漸増し,昭和戦前期に入ると1929年には100ha,1938(昭和13)年には200haへと急増した.作付面積の道府県別順位も1909年の29位から,1938年には17位まで上昇していることから,広島県は,大正期以降に顕著となる西南日本におけるキャベツ生産地域の一つと位置づけることができる.<br><br> 明治末の時点でややまとまった形でのキャベツ生産は,広島市とその近郊(安佐郡)に限られていた.ところが,大正期には呉市の東郊にあたる賀茂郡の台頭が著しく,昭和期に入る頃には,賀茂郡が広島市や阿佐郡を凌駕していった.1928年を例にとれば,広村におけるキャベツの作付面積(30.7ha)は,賀茂郡全体の95%,広島県全体の33%を占めており,広村におけるキャベツ生産は,広島県内でも際立った存在となっていった.<br><br><b>3.賀茂郡広村における広甘藍の産地形成</b><br><br> 賀茂郡広村(1941年に呉市に編入)は,呉市街地の東方約5kmに位置する(図1).同村は黒瀬川の河口部にあたることから,三角州が発達し,江戸時代を通じて複数の「新開」が開かれた.新開地の地味が野菜栽培に適していたことに加え,呉の軍都化の進展よって,サトイモやネギなどの生産を中心に,近郊野菜産地としての性格を強めていった.<br><br> 1904(明治37)年頃に,玉木伊之吉(1886-1957)がサクセッション種を取り寄せて自家採種を繰り返し,広村での栽培に適した系統を選抜し,「広甘藍」と名付けた.玉木は呉市場で取引されるキャベツをみて,鎮守府での需要に着目し,広村でも栽培可能な系統の選抜を試みたのである.<br><br> キャベツに対する需要は明治末期には,呉鎮守府に限られていたが,大正期に入った頃から一般需要も創出され始めたことを受け,玉木は,1914(大正3)年には450名からなる広村園芸出荷組合を設立し,安定した生産基盤を確立していった.広甘藍の販路は,呉市場にととまらず,昭和期に入る頃には大阪・神戸市場,1932(昭和7)年以降は,東京市場にまで拡大した.<br><br><b>4.大都市市場における「広甘藍」</b><br><br> 第二次世界大戦以前の日本の園芸業について,総覧した『日本園芸発達史』には,「大正より昭和年代に至り最も華々しく活躍した」輸送園芸産地が列挙されている.このうちキャベツ産地は,岩手,長野,広島の3つのみであることから,広甘藍は,戦前期の西南日本を代表する輸送園芸キャベツであったと位置づけることができる.<br><br> 1935(昭和10)年頃の東京市場でのキャベツ入荷をみると,寒冷地の岩手や長野からの入荷が終了する12月以降,東京近在からの入荷が始まる6月までの間には,明確な端境期が存在した.その端境期を埋めるべく,岩手物の後を受けて東京市場へ出荷する産地が,泉州(大阪府南部),沖縄,広島,愛知などであった.当時すでに一年を通してキャベツに対する需要が存在していたことに対応するため,東京市場側では,西南暖地のキャベツ産地の形成を促したが,そのような動向を受け,広甘藍の産地では東京市場へと販路を拡大させていったとみられる.広甘藍は東京市場での取扱量こそ僅少ながら,その平均価格は一年間で最も高い水準にあったことから,高価格での有利販売を狙っていたことがうかがわれる.
著者
清水 貴裕
出版者
秋田大学教育文化学部附属教育実践研究支援センター臨床心理相談室
雑誌
秋田大学臨床心理相談研究
巻号頁・発行日
vol.10, pp.37-44, 2011-04-01

本研究は,催眠期待と関連して催眠感受性に対して影響を与える要因として,自分の日常生活に対する捉え方(生きがい感)と催眠に対する捉え方(催眠状態イメージ)に焦点をあて,それぞれの要因と催眠期待や催眠感受性の関連性について検討を行った。研究では. 47名の大学生(男性23名,女性24名)に対して催眠期待の強さを尋ね,生きがい感尺度と催眠状態イメージ質問紙を実施した後, Waterloo-Stanford Group Scale of Hypnotic Susceptibility,form C(Bowers ,1998)により催眠感受性を測定した。催眠感受性を従属変数として,催眠期待と生きがい感の各下位尺度による2要因分散分析を行った結果,催眠期待と意欲の聞に交互作用が認められ,催眠期待のみが催眠感受性に影響を与えるわけではなく,人生や物事に対する積極性の高さと関連して,催眠に対する積極的な構えを生じさせていることが示された。また,催眠状態イメージを従属変数とした2要因分散分析の結果からは,催眠期待と催眠に対する動機づけを分けて検討することの必要性が論じられた。
著者
清水 陽香 中島 健一郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.21-30, 2018-07-01 (Released:2018-07-04)
参考文献数
38

防衛的悲観主義者(DP者)は,方略的楽観主義者(SO者)に比べて自尊心が低く不安が高い一方で,パフォーマンス前の準備を入念に行い,その結果SO者と同程度に高いパフォーマンスを示すとされている。一般に高い不安や低い自尊心は準備およびパフォーマンスを阻害するにもかかわらず,DP者が課題の事前準備に取り組むことができる理由はいまだ明らかになっていない。本研究では,その理由としてDP者には潜在的自尊心の高さがあると考え,DP者の顕在的自尊心と潜在的自尊心に着目した検討を行った。研究1では,質問紙調査によって認知的方略による顕在的自尊心の差異を検討した。また研究2では,Name Letter Taskを用いて潜在的自尊心の差異を検討した。研究1, 2の結果,DP者はSO者に比べて顕在的自尊心は低いものの,潜在的自尊心はSO者と同程度に高いことが示された。
著者
小林 牧人 頼経 知尚 鈴木 翔平 清水 彩美 小井土 美香 川口 優太郎 早川 洋一 江口 さやか 横田 弘文 山本 義和
出版者
日本水産學會
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.922-933, 2012 (Released:2013-10-08)

本邦の絶滅危惧種にも指定されているメダカを保全するためには,その生息環境だけでなく繁殖生態についても知見を得ることが重要である。本研究では屋外池で自然繁殖している野生メダカを対象に繁殖生態を調べた。メダカでは,雌が産卵後に卵をしばらく腹部に保持し,それらを基質に産み付ける。今回の観察で,野生下において「産み付け行動」の初の観察・記載に成功し,数種の基質を特定した。基質の特定および存在場所は,今後のメダカの保全において,繁殖場所の確保という点で重要な知見になると考えられた。
著者
山本 千景 河野 潤一 西藤 岳彦 清水 晃
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.7-12, 1996-01-30

ブドウ球菌が産生する外毒素によって引き起こされる病原性の発症機序にはT細胞の異常活性化が関与すると考えられている。本研究では,SEA&acd;SEDおよびTSST-1の免疫学的作用を明らかにする一環として,各毒素投与マウスにおける胸腺および脾臓のT細胞のサブセット解析を行った。1. TSST-1 25ng投与マウスの胸腺においてはヘルパーT細胞と細胞傷害性T細胞の割合は共に増加しており,脾臓においても各T細胞は増加していた。微量(17pg=1.7×(10)^<-2>ng)投与マウスでは胸腺におけるヘルパーT細胞が増加していた。2. SEAとSEBの25ng投与マウスでは,胸腺の総細胞数の減少と脾臓の総細胞数の増加が認められた。またSECとSEDについては,胸腺総細胞数が増加していた。微量(17pg)投与マウスにおいてSEA&acd;SEDについての胸腺では,いずれもヘルパーT細胞の増加が認められ,SEA,SEB,SEDでは細胞傷害性T細胞の増加も認められた。以上の結果から,ブドウ球菌外毒素はいずれも微量の投与によってマウスの胸腺や脾臓のT細胞サブセットに大きな影響を与えることが明らかとなった。また,その作用はTSST-1において顕著であった。
著者
清水 渉
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.15-20, 2014 (Released:2015-03-08)
参考文献数
13
著者
守屋 慎次 森田 利広 稲井 幸治 清水 聡
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.1022-1029, 1991-08-15
被引用文献数
7

本論文の目的は次の三つである (1)「ストロークエディタ」という新しい種類のエディタを提唱し 実現したプロトタイプシステムについて述べることストロークエディタ上において入・出力し編集されるデータは利用者が書(描)いた筆跡であり この筆跡をエディタ内において表現するデータ型はストローク(点列)であるこのエディタの目的は 筆跡をそのままの姿でコンピュータに入力し 保存したり編存したり送信することであるこのエディタがその本質において必要としているハードウェアは 表示平面と入力平面とが一体となったいわば紙のようなコンピュータと スタイラスペンだけである(2)ストロークエディタでとられた対話の方式「直接指示・操作方式」を提唱してその性質を導き この方式の重要性を示すこと対話の方式を特徴づける上で また 使い易くする上で この方式が非常に重要であることを示す導出される性質の代表例として この方式により仮想物(例えばカーソノレ)が実物(例えばペン先)化されること 順次入力に必要な記号(カーソルや空白など)を利用者が意識する必要がなくなること そしてこの方式の必要十分条件がある(3)利用者へ機械を近づける方法を示すこと方法の主なものは 人が作業する場(本論文では筆削をするタブレット入力面)をそのまま受け入れる機械の場(本論文では液晶出力面) を作り上げることである
著者
清水 久二
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.217-220, 2005-06-15 (Released:2016-12-30)
参考文献数
2
著者
橋本 久美 高橋 憲男 浜上 尚也 清水 陽平 安田 千尋 平藤 雅彦 千丈 雅徳
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.49-55, 2007-06-25 (Released:2014-03-28)
参考文献数
29

There are no studies reported on the salivary serotonin concentrations in adolescent patients suffering from impulsive behavior. In order to elucidate the role of serotonin in impulsivity, salivary serotonin concentrations of nine psychiatric patients and nine normal participants were measured. Both groups also completed the SSS scale (Zuckerman et al., 1978). Salivary serotonin level of patients with impulsivity was higher than that of the normal group (p = 0.040, Mann-Whitney). Moreover, the Dis scale of the patients was lower than that of the normal participants. The results were incongruent with our working hypothesis. Further research is required to clarify the relation between salivary serotonin concentrations and impulsivity.
著者
清水 一彦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、(1)アメリカの大学におけるオナーズ・プログラム(honors program)の導入過程及び歴史的発達過程を明らかにするとともに、(2)わが国の大学への導入・実践の可能性及びその諸条件を提言することを目的とした。本研究によって得られた知見は、次のようにまとめられる。1.選択制や単位制度を世界最初に開発したアメリカの大学では、量的システムの弱点を補強するためにオナーズコースを導入し、優秀な学生のための教授内容・方法の改善を図った。2.このオナーズコースは、当初から大学によって多種多様な形態で実践されていたが、その実践形態は大きく次の二つに分類できるものであった。一つは、2〜3の通常のコース(科目)が免除される「不完全タイプ」であり、二つは、大部分のコースが免除されオナーズ試験が課せられる「完全タイプ」である。3.今日多くの大学で実践されているオナーズ・プログラムは、初期の形態とはやや異なり、通常のコースとは別に固有のコースを設けたり、プロジェクト方式のコースを設けたりする大学もみられる。また、ハイスクールと大学のアーティキュレーション(接続)の改善に寄与し、1年次プログラムや下級年次プログラムといった移行の円滑を図るプログラムと結びつける場合もある。4.オナーズ・プログラムの実践は、大学間というより領域や専門分野において著しい差異があり、それぞれの特性に応じた多様な形態が可能である。わが国の場合、飛び入学という特別措置的なシステムの中に類似したものがみられる、入試制度の多様化への対応ではなく、教育プログラムやカリキュラムの編成あるいは教授法の改善の中で導入される必要がある。
著者
長岡 一朗 三浦 清之 上原 泰樹 笹原 英樹 清水 博之 太田 久稔 後藤 明俊 重宗 明子 小牧 有三 大槻 寛
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.6-9, 2015-05-30 (Released:2017-03-27)
参考文献数
1

水稲新品種「夢の舞」は,北陸では早生に属する粳種で,同熟期の「ひとめぼれ」に対して多肥条件で1割程多収であり,いもち病圃場抵抗性は葉いもち,穂いもちともに「やや強」,障害型耐冷性が「極強」である.
著者
大清水 岳史 井龍 康文
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.108, no.5, pp.318-335, 2002-05-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
34
被引用文献数
11 11

沖縄本島中部の勝連半島沖の島々には,主に第四紀更新世のサンゴ礁性堆積物よりなる琉球層群が分布する.本層群は,砂質石灰岩・石灰質砂岩よりなる上部鮮新統~下部更新統の知念層を整合関係で覆う.調査地域の琉球層群はその主体を占める与勝層と,それを不整合で覆う港川層より構成される.与勝層は5つのユニットの累重体であり,個々のユニットは低海水準期の浅海相であるサンゴ石灰岩から高海水準期の沖合相である石灰藻球・Cycloclypeus-Operculina・砕屑性石灰岩へと上方深海化する整合一連のシーケンスよりなる.本層の分布高度は125mに及び,層厚は30mに達する.港川層は主に淘汰のよい砕屑性石灰岩より構成され,サンゴ石灰岩を伴う浅礁湖の堆積物である.港川層は伊計島と津堅島に広く分布し,その層厚は約30mであるが,分布標高は40mを超えない.現時点では両層の地質年代は不明である.
著者
清水 政明 Le Thi Lien 桃木 至朗
出版者
京都大学東南アジア研究センター
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.149-177, 1998-09

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。