著者
井澤 博文 岡本 拓 橋本 敏子
出版者
Japanese Society of Water Treatment Biology
雑誌
日本水処理生物学会誌 (ISSN:09106758)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.189-197, 1999-09-15 (Released:2010-02-26)
参考文献数
13

In order to eliminate nitrogen from wastewater, simple and stable method was developed using methanol permeable polymer bag containing methanol inside. Polyethylene membrane was suited as the methanol permeable polymer in comparison with polyvinylchloride in a point of endurance. Permeation rate of methanol through polyethylene membrane 0.1mm thickness, was 2.1g-McOH/m2/day at 20°C. The permeation rate increased in proportion to temperature and decreased in proportion to thickness of the membrane. Effect of temperature, hydraulic retention time and nitrate concentration on the denitrification of this process using polyethylene membrane was examined. The results showed that the denitrification proceeded on the surface of the membrane including biofilm, and the rate depended on the methanol permeation rate which was affected with temperature. And also, denitrification rate was affected in proportion to nitrate concentration below 15mg-N/l, but the rate was held approximately 1g-N/m2/day of maximum revel above 20mg-N/l of nitrate concentration, using 0.1mm polyethylene membrane at 20°C. We actually applied this process as a denitrifying reactor to small-scale on site wastewater treatment plant for human waste. We got similar results of denitrifying ability, 1.25g-N/m2/day and 80% nitrogen removal at 20-25°C, under actual condition.
著者
渡辺 柚佳子 樫村 健人 岡田 佳子 大澤 博隆 菅谷 みどり
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.24, pp.1-8, 2015-02-23

子どもの発達障害は,学習面のみならず,対人関係や運動面においても生じる様々な困難を緩和するために日常的な訓練が必要である.従来訓練は,高価な機材や教材,訓練内容においてセラピストの負担が大きく,頻繁に行えない問題があった.本研究では,プレイセラピーをセンサーと CG の連携によりデジタル教材として拡張した新しいデジタルセラピーデバイス,橙色の屋根のお家を提案する.本提案では,CG による抽象概念の見える化,センサーによる操作のフィードバックにより,情報共有の促進による子どもの自主的な参加を促すとともに,デバイス,教材,訓練内容を新しく提案することで,セラピストの負担を軽減する.前操作期の低年齢の子どもとの実験の結果,同じ家型のデバイスと比較して,問いかけに反応した回数は約 1.6 倍,抽象概念に反応した回数は約 2.0 倍,ミスコミュニケーションが発生した回数は約 0.1 倍となり,提案が期待の持てるものであることを示した.Children who are suffering on learning and developmental disabilities need daily trainings for social skills. However, such daily training is not provided occasionally because it requires interactive helps from therapists. In this paper, we propose a digital dollhouse that extended the traditional psychological play therapy equipped with digital sensors and computer graphics. This device aimed at raising the communication skills even if the superintendent of training is not a therapist. We have developed proposed digital play therapy device. Our device's CG function reproduces the reality. Abstract image is visualized by using our device. Based on the device, we discussed the usefulness of the device with the therapist, and the policy and metrics for the evaluation of the functionalities that are expected for the skill's training.
著者
石川 英彦 有澤 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.291-299, 1997-03-25
参考文献数
10
被引用文献数
2

ほとんどのデータモデルは, 多量の情報を扱う必要性から, 特定の意味をもつ情報の集まりを一つのものとして扱う方法を提供しているが, この情報と集まりとの関係として, 数学における要素と集合との関係が最もよく用いられている. このとき, 「要素」がどのように「集合」に所属できるかという情報はデータの秩序を保つために重要であるにもかかわらず, それを十分に表現できる方法は数少ない. また, データベーススキーマを設計する立場からは, 表現力が高いだけでは不十分で, 直観的に設計を行えることが必要である. 本論文では, 要素が所属の際に守るべき集合の間の関係を直観的に表現できる表記法を提案し, その表記法が十分な表現力を有することを示す. また, 表記の集合が与えられたときに, それが矛盾を含むことを検出したり, 要素の所属を制限するための方法について考察し, 本手法がデータベーススキーマの設計手法として妥当であることを示す.
著者
松田 祐児 大澤 博隆 大村 廉 今井 倫太
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.317, pp.41-46, 2008-11-16
被引用文献数
1

本稿では,目や口といった顔のパーツがヒューマンロボットインタラクションに与える影響を調査,検討を行ったものである.近年ではヒューマンロボットインタラクションに関する研究が盛んになってきている.しかしながら,インタラクションで重要とされるロボットの擬人的外見がヒューマンロボットインタラクションに与える影響に関しては究明されていない.そこで我々はシステムの反応時間(SRT)に応じたユーザの評価を得て,そのデータを元に擬人化度を測り,3つの結果を得ることができた.1つ目はユーザはインタラクションの対象となるロボットが不完全な擬人化パーツであってもそのロボットに対して擬人化の認識を持つということ.2つ目は目パーツのほう口パーツよりも擬人化に対して効果があるということ.3つ目は擬人化することでインタラクションそのものの評価が向上するということである.
著者
王 軼群 野澤 博 土方 嘉徳 仲谷 美江 西田 正吾
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌. C, 電子・情報・システム部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. C, A publication of Electronics, Information and System Society (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.123, no.6, pp.1155-1165, 2003-06-01
被引用文献数
1

This paper deals with spatio-temporal indexing method for moving objects. In our research, we propose XAT (eXtended Adaptive Tree) structure, consisting of spatial trees and temporal trees, for fast search for spatio-temporal data. The searching process in XAT structure is divided into two steps. The first step roughly narrows down the potential solutions (moving objects) according to the given searching range. The last step fixes the real solution by checking the object's moving track. We compare XAT structure and 3D structure, one of the conventional methods, by computer simulation. The result shows that XAT structure works faster than 3D structure when there is difference between the spatial search range and temporal search range and the objects' moving areas are small.
著者
有澤 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSS, 安全性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.45, pp.21-24, 2007-05-11
被引用文献数
1

最近のがん診断は、CT,MR,PETなど、医療画像抜きでは語れない。中でもPET画像診断は、がん細胞に特異的に集積するFDGという薬品の濃度を人体の断面画像から読み取ることにより、初期がんから発見できる画期的な方法と言われている。ところが、これを読み解く熟練した読影医師はそれほど多くなく、また機械が吐く画像の分量や精度は増える一方なので、読影医師への肉体的負担増や「見落とし」の危険増が問題となってきている。われわれは放射線医学の専門医師とタックを組み、推論システムとデータベースシステムを用いて、コンピュータが医師と同じ手法で診断をくだすことができるエキスパートシステムを開発した。このシステムではPETやCTの検査結果画像から、体内の危険領域(異常集積部位)を医学知識に基づいて抽出したり、また過去の類似の症例をデータベースを用いて比較したりできる。このシステムは現在病院等で検定中であり、将来セカンドオピニオン提供、あるいは医師と共同で危険箇所をチェック・提示するセカンドドクターとして多くの期待が寄せられている。医学及び関連分野における画像診断や評価の安全性・信頼性の向上に寄与して行きたい。
著者
前田 幸男 永尾 浩一 牛嶋 龍一郎 春日井 康夫 菅野 高弘 中澤 博志
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.285-290, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
8

It is known that “Blast Densification Method” is a technique which can improve the ground strength for the liquefaction by the artificial trembling with the shock wave of explosives detonation set in ground. It is carried out a full scale test which has the airport facility at Ishikari Bay New Port in Hokkaido Island, Japan.The shaking by blasting continues for about two minutes, with 1769kg explosives, 583 delay numbers, at about 1.6 hectares experiments. It is executed safely, surely without damage to structures by blasting.As a result of the experiment, it is confirmed the increasing excess pore water pressure, sand pumping phenomenon, and settlements after basting. This report is described a summary of experiment on this test
著者
山田 胡瓜 福地 健太郎 大澤 博隆 宮本 道人 江渡 浩一郎 倉本 到 渡邊 淳司 前田 太郎 中村 裕美 寺島 裕貴 加藤 淳 米澤 朋子 塩見 昌裕 新山 龍馬 宮本 隆史 水野 雄太 櫻井 翔
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.71-77, 2019-12-15

研究者に,漫画家・山田胡瓜流のSF作劇手法を学んでもらった上でSF作品を書いてもらうという『情報処理』特集記事「『AIの遺電子』に学ぶ未来構想術」に寄せられた内の12作品を対象に,山田胡瓜氏を囲んで実施された講評会の様子を記す.各作品に対して,山田氏に加えて講評会に参加した研究らが,その意義や現実の社会に与えうるインパクトについての議論がなされた.議論の中で,『AIの遺電子』に描かれなかった設定についても山田氏本人から語られる場面があった.
著者
高原 渉 大澤 博史 岡田 錬
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.90-93, 2022 (Released:2023-04-15)
参考文献数
11

In this study, we used a benchmark dataset to evaluate the impact of scaling with the extrapolation domain on the prediction performance of machine learning algorithms. We pseudo-divided the data into the interpolation domain (training data) and the extrapolation domain (test data) using a combination of UMAP (Uniform Manifold Approximation and Projection) and material domain knowledge. In anticipation of bridging interpolation and extrapolation domains in nonlinear machine learning algorithms, we evaluated how the scaling considering the extrapolation domain affects prediction performance in the extrapolation domain. For this evaluation, we used three nonlinear algorithms widely used in the MI (Materials Informatics) domain: XGB (XGBoost) regression, GP (Gaussian Process) regression, and SVR (Support Vector Regression). In this study, by defining the pseudo extrapolation domain, we established the approach for evaluating the prediction accuracy of machine learning models in the extrapolation domain, which is considered difficult to evaluate quantitatively. We also demonstrated that this method, which uses scaling that considers the extrapolation domain, is an effective method for improving prediction accuracy in the extrapolation domain while maintaining prediction accuracy in the interpolation domain.
著者
川越 敦 大澤 博隆
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.4I3OS26b04, 2022 (Released:2022-07-11)

協力ゲームHanabiは,暗黙の意図伝達を手がかりとする協調行動の分析に適した題材である.近年, 異なるふるまいをする複数のHanabiエージェントを作成し,人と協力プレイさせた結果を比較することで人の協調行動を分析する研究が行われている.しかしながら,このような手法は実験コストの大きさや人の内的状態が直接観察できないといった問題がある.これらの問題の解決法として,人のふるまいを再現するために用いられる認知アーキテクチャ上で作成したモデルを使い,シミュレーションを行う方法が挙げられる.本研究においては,認知アーキテクチャACT-Rを用いてリスクのある行動を選択肢として持つモデルとそうでないモデルを用いてHanabiゲームのシミュレートを行った.その結果,1ゲーム当たりの使用時間について人のHanabiゲームと類似した変化がみられた.また,リスクのある行動を選択肢として持つことは得点を向上させるための学習効率を低下させること,および行動決定のための時間を大きくすることが示唆された.さらに,Hanabiプレイにおいて,記憶の検索が行動決定のための時間を長くする一因であることが分かった.
著者
大澤 博明 Hiroaki Osawa
出版者
熊本大学
雑誌
熊本法学 (ISSN:04528204)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.289-341, 1995-06-30

壬午事変後の日本政府の朝鮮政策がその永世中立化構想の実現に向けられたものであり、対清協調策と朝鮮独立支援策は朝鮮をめぐる東アジア国際協調枠組構想に基づいて展開されていたことを明らかにしたい。
著者
吉添 衛 服部 宏充 江間 有沙 大澤 博隆 神崎 宣次
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.120-133, 2018-12-10 (Released:2020-02-10)
参考文献数
8

社会は情報技術の発達とともに,グローバル化・複雑化が進んでおり,人の持つ価値観も多様化してきている.そして,それに伴い,多様で変化する価値に気づき,広い視野を持って物事を捉えることが社会的に必要とされるようになってきている.本研究では,多様な価値観への気づきを与えるには何が必要か検討しながら,その仕組みのシステム化(AIR-VAS)を目指している.今回,気づきを与えるアプローチの一つとして,議論の場で自分達とは異なるグループの考え方や価値観を可視化させ,示すことで,新たな発想や考えを促すような仕組みを検討した.議論における単語の頻出度や共起度などをもとにして,議論をネットワーク構造で表現し,可視化させるプロトタイプシステムの実装を行い,実際に,ワークショップの中でシステムを運用した.本稿では,その結果を踏まえながら,議論の特徴とシステムの提示する情報の関係性やシステム活用の有効性について考察する.
著者
羽田 晋也 柳澤 博志 徳弘 宙士 増井 健二 桂 大輔 駒野 倫久 藤井 崇典 安井 一敏 坂口 史絋 髙濵 宏 町田 恒一 岩間 誠司 山川 智之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】バリアフリー展は,高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展として西日本最大規模を誇る展示会であり,近年の来場者数は開催3日間で9万人を超えている。(公社)大阪府理学療法士会は,理学療法の啓発を目的として,平成23年度よりリハビリテーション相談のブース出展と理学療法士が実践で培った介護技術を伝達する研修会を開催している。過去4年間のブース来訪者および研修会参加者へのアンケートから若干の知見を得たので 検討を加え報告する。【活動報告】ブースでは4年間で442件の相談を受けた(アンケート回収率35.1%;155件)。相談内容は,リハビリテーションや介護に関する全般的なことから個別的な治療,自主練習,制度および仕組み等の多岐にわたるものであった。アンケートより,相談に対する説明が分かりやすく,役に立つ内容で95%を超える方に満足いただけた。研修会は4年間で1,183名の参加があった(アンケート回収率70.0%;828件)。参加者は,介護福祉士,ケアマネージャー,ヘルパー,看護師,理学療法士,作業療法士など医療・福祉・介護に携わる専門家が65%以上を占めていた。アンケートより,理学療法士が実践で培った介護技術は,分かりやすい内容で75%を超える方に満足いただけた。【考察】リハビリテーション相談は,高い満足度を得ることができたが,スタッフの目の前でアンケートを記入することが回収率低下をまねいた一因と考える。研修会は,医療・福祉・介護に携わる専門家の参加が多く,理学療法士が実践で培った介護技術が多職種から認知されていると同時に,高い次元の内容を求められていたことがブースに比べて満足度が低かったと推察する。【結論】今回の取り組みは,理学療法により府民の医療・福祉・介護および健康保持に寄与するものであり,重要な公益目的事業に位置づけられている。今後,このような公益性の高い事業が全国に広まることを期待する。
著者
藤原 寛 栗原 直嗣 太田 勝康 平田 一人 松下 晴彦 金澤 博 武田 忠直
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.469-475, 1994

症例は48歳女性で福岡出身. 咳嗽および微熱を主訴として当科に来院し, 胸部レントゲンにて多発性の辺縁不明瞭な結節影が認められ, 血液検査では成人T細胞白血病ウイルス関連抗体が×1,024と高値を示した. 気管支鏡検査にて確定診断がつかず, 開胸肺生検が行われた. 組織は異型性のないリンパ球, 形質細胞, 組織球を中心としたリンパ系細胞が浸潤した肉芽組織で, 壊死を伴わず, 結節病変の内部および周辺の血管はこれらの細胞が浸潤している所見が認められた. 以上の所見より Jaffe の提唱する angiocentric immunoproliferative lesions (grade I) と診断し, プレドニゾロン, サイクロフォスファミドの併用療法を行い寛解が得られた. 本疾患はリンパ腫様肉芽腫症を悪性度により3つに分類したもので, 近年, EBウイルスとの関係が注目されている. 本例ではATLウイルスが発症に関係した可能性があると考えられた.
著者
大澤 博隆 大村 廉 今井 倫太
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.305-314, 2008-08-25 (Released:2019-09-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1

We propose a direct anthropomorphization method that agentize an artifact by attaching anthropomorphic parts to it. There are many studies to provide information to users using spoken directions and gestures via anthropomorphic agents such as CG agents and communication robots. Our method directly anthropomorphize the artifact through robotic bodily parts shaped like those of humans. The anthropomorphized artifact using these parts provides information to people by giving them spoken directions and expressing themselves through body language. Using these devices, people are able to accept more attentions to the artifact, than using anthropomorphic CG or robot agents. We conduct an experiment to verify a difference between explanation of fuctions of the artifact using direct anthropomorphization method and explanation of them using independent humanoid-agent "Robovie". The results of participants' questionnaires and gazes during the experiment indicate that they noticed to the target artifact and memorized functions using direct anthropomorphization method more than using independent humanoid-agent.
著者
長澤 博 宮林 茂幸 五十嵐 健蔵
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.1-10, 2004-07-01 (Released:2017-08-28)
参考文献数
20
被引用文献数
4

本稿では,バブル経済崩壊以降の構造不況下におけるリゾート開発問題の実態を解明することを目的としている。この1990年以降のリゾート開発問題とは,リゾート開発跡地における総花的な開発資本による「林地投機」の動向にほかならない。そこで,福島県会津フレッシュリゾート構想地域の市町村を対象に,林地取引に関する調査を実施した。その結果,開発資本による林地取引は,まず第一に,バブル経済全盛期(1986〜1991年)にかけて取引量が多くなり,県外者への転売が多い傾向にあった。第二には,観光資源が豊富な磐梯山周辺地域で,投機効率の高い可能性を持つ林地が取引対象になっていた。第三には,猪苗代町・北塩原村では小規模の「別荘地等」,磐梯町・河東町・会津若松市では大規模の「レジャー施設等」「資産保有」目的で林地取引を行う傾向にあった。第四には,財政規模の大きい会津若松市では「資産保有」型の林地取引が非常に多くなり,開発利益を期待した「林地投機」が実施されていた。第五には,バブル経済崩壊後,林地価格の下落により「不良債権化」した投機対象林分では,開発資本による森林の放置と管理放棄が拡大しており,森林荒廃の一要因を形成していることが明らかとなった。