著者
田中 秀和 三浦 裕行
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2009年年会
巻号頁・発行日
pp.158, 2009 (Released:2010-04-06)

Mn3V2Si3O12は2価の8配位席にMn2+を持ち、3価の6配位席にV3+を持つgarnetである。 鞍瀬鉱山, 藤井鉱山・法花寺野鉱山の3鉱山でしか見出されておらず、桃井石(momoiite)として新鉱物申請中である。3鉱山に共通して8配位席にはCaが、6配位席にはAlがそれぞれ置換するという特徴的な化学組成が見られる。momoiite, goldmanite(Ca3V2Si3O12), spessartineならびにgrossularの4成分の固溶が推測され、momoiite成分は最大で60%程度であると考えられる。また、前述の4成分系において、Mnが増えるとVが減るという傾向が見られる。 Schreyer and Baller(1981)では1000℃において、8配位席と6配位席のイオン半径の大きさ組み合わせから、それぞれspessartine:常圧、goldmanite:常圧-0.4GPa, grossular:0.4GPa, momoiite:3.0-5.0GPaの圧力以上で安定としている。鞍瀬鉱山は約0.4GPa, 藤井鉱山、法花寺野鉱山はスカルンで生成されたと考えられる。よって、上記の3鉱山において端成分に近い組成のmomoiiteが産出しない理由の1つとしてとして、天然の圧力条件では圧力が低すぎるという点が挙げられる。そこでmomoiite-goldmanite系及びmomoiite-spessartine系の合成を行った。
著者
鷲塚 靖 田中 秀俊
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.201-208, 1984-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
6

筆者らは1983年2月から10月まで大分県臼杵市で,クロマツ,スギ,ヒノキ,タケ,の各人工林でリンとBHCの分布を調査した。比較として,同じ地域の自然林(針葉広葉混交林)と長野県燕岳山麓中房温泉のヒノキ林で同様の調査を行った。これらの結果を要約すると次のようになる。1) クロマツ,スギ,ヒノキの各林分でのリンの分布はほとんど同じ値を示したが,タケ林はこれに比べてリンの含量がやや少なかった。2) 各林分で,食物連鎖が進むに従って,リンの生物濃縮がみられた。3) 人工林と自然林でのリンの分布は人工林の土壌の含量が自然林のそれに比べてやや高く,自然林のアカネズミのリンの含量は人工林のそれよりやや高かった。4) BHCの分布はリンとまったく異なり,L層のBHCの含量が最も高く,ついで樹木類の葉のそれであった。樹木類の葉では針葉樹のBHCの含量が高く,その順位はヒノキ,スギ,クロマツと低くなり,タケに含まれるそれは著しく低かった。
著者
田中 総一郎
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.47-48, 2014 (Released:2021-08-25)

Ⅰ.災害から逃げのびる 東日本大震災による被害者の死因の90.5%が溺死であった。また、被災3県の障害者手帳を有する方の死亡率(1.5%)は、一般の方(0.8%)の約2倍に及んだ。これは、障害児(者)を津波被害から守る避難支援の方策が機能しなかったことを物語る。2005年に内閣府は、自力では避難することができない高齢者や障害者の避難を支援する「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を策定した。2012年には、全体計画は87.5%の市町村で策定済であったが、個別計画は33.3%に過ぎなかった。宮城県の医療を必要とする子どもたち113家庭を対象としたアンケート調査(2012年10月)では、このプランを知らなかったのは57.2%、この制度に登録していないのは79.6%であった。また、震災時に登録していた15人のうち実際に援助が得られたのは3人(20%)であった。今後の周知と、実際の支援を見直す必要がある。 Ⅱ.安全に過ごせる場所を見つける 1995年の阪神淡路大震災では、神戸市内養護学校の児童生徒262人の59%が自宅に留まり、39%が避難した。その避難先は、避難所が10%、親戚・知人宅は28%であった。東日本大震災では、医療を必要とする子どもたちの家庭の62%が自宅に留まり、38%が避難した。その避難先は、避難所が12%、親戚・知人宅が12%、自家用車内が11%であった。避難所を選択しなかった理由として、夜間の吸引音や、奇声を発する子どものことを気兼ねしたことが多くあげられた。阪神淡路大震災から東日本大震災の間、16年経っても、避難所は障害児(者)にとって避難しにくいところのままであった。 子どもたちが普段通いなれている学校や施設が福祉避難所になることは、安否確認、必要な物資の把握、子どもたちの精神的安定のためにも今後取り組まれるべき方策であると思われる。 Ⅲ.普段からの防災 人工呼吸器や吸引器など電源が必要な家庭では、電源の確保や自家発電機、電源を必要としない手動式・足踏式吸引器が注目を集めた。学校や福祉施設への自家発電機の配置、常時服用している薬剤のお預かりなど、防災への意識も高まっている。 子どもの薬剤は、錠剤やカプセルを常用する大人と違い、散剤やシロップが多く、詳細な情報がないと処方しにくい特性がある。薬を流失した、または、長期にわたる避難生活で内服薬が不足したときに、遠くの専門病院まで処方を受けにいくことは困難である。今回の教訓として、処方内容や緊急時の対応法などを明記した「ヘルプカード」の作成と携帯が提案されている。医療と教育、福祉が協力して推進すべき課題である。 Ⅳ.それでも困ったときは 災害時の備えを十分に行っても、「想定外」な不測の事態は起こりうる。このようなときに頼りになるのは、普段からのつながり、信頼関係、きずなである。 たび重なる津波被害を受けてきた三陸地方に伝わる「つなみてんでんこ」は、「津波のときは人に構わず、一人ひとりてんでに逃げる」ような一見冷たい印象を与えるが、実際には異なる。「家の人が戻ってくるまで家で待っている」子どもがたくさん犠牲になったこの地方では、「お母ちゃんはちゃんと逃げているだろう、だからボクも待っていないで一人で逃げる。そうすれば、あとで迎えにきてくれるはずだ」と子どもたちに教えているという。普段からの信頼関係があってはじめて、「つなみてんでんこ」は成立するのである。 このような悲惨な体験から立ち上がる力(レジリエンシー)を次世代に育むためには、絆を信じる力が重要である。負の遺産を正の遺産に変えていくためのキーワードは、この「絆を信頼する力」であるといえる。
著者
野中 福次 本村 知樹 田中 欽二
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.56-58, 1990-10-30 (Released:2009-05-22)
参考文献数
1
被引用文献数
9 8

Southern blight like disease on cultivated water chestnut (Trapa bispionosa Roxb.) leaves occurred in paddy fields in August in 1989 in Saga Prefecture. Corticium rolfsii Curzi, causal fungus of southern blight, was isolated from lesions of infected leaves. Isolates of C. rolfsii from water chestnut were compared with isolates from many other plants in respect to their mycelial growth and pathogenicity: No differences in the mycelial growth were found between isolates from water chestnut and that from the other plants. The optimum temperature of both isolates on potato sucrose agar was about 30°C. Isolates from water chestnut were as severely pathogenic against the leaves of water chestnut, and seedlings of soy bean and burdock as isolates from other plants by artificial inoculation. From the experimental results, it was considered that isolates from water chestnut were identical with C. rolfsii isolated from other plants.
著者
亀岡 智美 齋藤 梓 友田 明美 八木 淳子 岩垂 喜貴 井野 敬子 酒井 佐枝子 飛鳥井 望 新井 陽子 成澤 知子 田中 英三郎 山本 沙弥加 高田 紗英子 浅野 恭子 島 ゆみ 中島 淳 竹腰 友子 西村 悠哉 三宅 和佳子 野坂 祐子 小平 雅基 市川 佳世子 岩切 昌宏 瀧野 揚三
出版者
公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、欧米で子どものPTSDへの第一選択治療として推奨されているTF-CBT(Trauma-Focused Cognitive Behavioral Therapy)の我が国における効果検証に取り組んだ。兵庫県こころのケアセンターと被害者支援都民センターにおいて実施した無作為化比較試験が終了し、先行研究と同様に、わが国においてもTF-CBTの有効性が検証された。結果については、論文にまとめ、報告する予定である。その他の研究分担機関においても、TF-CBTの終了例が蓄積された。TF-CBT実施前後のMRI画像分析については、福井大学子どものこころの発達研究センターで7例を分析した。
著者
田中 智彦
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.61, pp.9-24_L3, 2010 (Released:2011-01-18)
参考文献数
15

In May 2009, when the debate about a bill to amend the Organ Transplantation Act began, 71 university scholars engaged in bioethics education and research, formed a voluntary association named “Seimei-Rinri Kaigi”, and made an urgent appeal for thorough study and deliberation before voting on the amendment. This statement warned of fundamental defects in existing concepts of “brain death” and “organ transplantation”. However, the Diet passed the bill without responding in any way to the appeal.In this paper, I discuss “non-pensée” over “brain death” and “organ transplantation”, and suggest that it underlies our discourses about death, particularly in the following areas; 1) the confusion between “death” and “standard of death”, 2) the return of “Vernichtung Lebensunwerten Lebens”, 3) the reduction of “ethics” to “law”, 4) the biotechnological public exploitation of our bodies, and 5) the biopolitical aspect of care. I think these are unavoidable themes if we reflect on present discourses about death.
著者
笠間 透 田中 晴美
出版者
Center for Academic Publications Japan
雑誌
Journal of Nutritional Science and Vitaminology (ISSN:03014800)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.627-638, 1989 (Released:2009-04-28)
参考文献数
19
被引用文献数
6 6

Copper (6 ppm) was administered to pregnant heterozygous brindled and normal mice from 13 to 18 days gestation. The copper and zinc concentrations in the cerebrum, cerebellum, liver, and kidneys of mothers and their fetuses were determined. The placental concentrations in fetuses of heterozygous mothers administered copper were also determined. The heterozygous mothers had smaller numbers of live fetuses than the normal mothers, but had the same number as normal mothers when copper was administered. The hepatic copper concentration in the heterozygous mothers was lower than that in the normal mothers and was not increased by the administration. The body and tissue wet weights of all fetuses were unaffected by the maternal genotype or drinking fluid. The cerebral copper concentrations in hemizygous and heterozygous fetuses were increased by the copper administration but did not reach normal levels. The hepatic and renal concentrations remained unchanged. The cerebral copper concentrations in normal fetuses of both heterozygous and normal mothers were increased by the copper administration. The copper administration increased the copper concentrations in liver of normal fetuses of heterozygous mothers and in kidneys of normal fetuses of normal mothers. The placental copper concentration in hemizygous fetuses was higher than those in heterozygous and normal fetuses. These results suggested that oral copper administration to pregnant females could improve an abnormal copper distribution in hemizygous and heterozygous fetuses without affecting fetal growth.
著者
片岡 将 柳川 篤志 田中 皓介 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_375-I_386, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
25

本研究では,交通インフラ整備がもたらすマクロ経済上の効果及び各地域の人口や経済力の分布の変動をシミュレーションするため既往研究で提案されているモデル(MasRAC)を用いて,新幹線の新規整備効果を推計した.その結果,新幹線の新規整備が我が国の実質GDPの向上に寄与し,一定のマクロ経済改善効果があることが確認された.地方別の生産額及び人口の変化に着目した分析では,現状整備との比較 においてリニア中央新幹線の整備や新幹線の全国整備を進めた場合,関東地方の人口が最大4.2%,GRPは最大5.3%の水準で少ない一方,各地方においては人口等が多く,「分散化」効果があることがわかった.これらの結果は,新幹線の新規整備が我が国全体の成長力向上に寄与し,また人口と経済力の偏在状況を改善する効果を持つことを示すと言える.
著者
出口 幸一 西川 和宏 岩瀬 和裕 川田 純司 吉田 洋 野村 昌哉 玉川 浩司 松田 宙 出口 貴司 田中 康博
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.1186-1190, 2013 (Released:2014-12-25)
参考文献数
18

症例は85歳,男性.2006年に胃癌に対し幽門側胃切除術を施行された.術後補助療法としてUFTを1年間施行した.2009年7月に左副腎転移,傍大動脈リンパ節転移が判明し,化学療法を開始し一旦は腫瘍縮小を認めた.しかし徐々に腫瘍が進行し2011年7月には右副腎転移が出現した.2012年1月に誤嚥性肺炎を発症し入院した.入院後倦怠感悪化,食欲不振,難治性低Na血症,高K血症,好酸球増多症を認めた.当初癌性悪液質による症状を疑ったが,副腎不全も疑われたため,迅速ACTH負荷試験を施行し,Addison病と診断した.hydrocortisonの投与を開始したところ,症状の著明な改善を認めた.癌末期に副腎不全が発症した場合,症状が癌性悪液質によるものと酷似するため鑑別が困難である.両側副腎転移を有する担癌症例では,副腎不全を念頭におき,積極的に内分泌的検索を行うことが重要である.
著者
田中 孝治 森川 綾香 石川 健介
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会研究会資料 先進的学習科学と工学研究会 92回 (2021/7) (ISSN:13494104)
巻号頁・発行日
pp.04, 2021-06-30 (Released:2021-07-02)

コロナ禍の学校教育システムにおける価値共破壊を回避することが必要である。著者らの大学の学科では,学生が主体となってピアサポートサービスを提供するオンライン心理教育的援助サービスが実施された。本研究では,ピアサポートサービスの提供者を対象に質的調査を行い,心理教育的援助サービスにおける教員と学生の価値共創を検討した。
著者
田中 俊輔 大野 友則
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
pp.685, (Released:2015-06-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1

When traffic accidents happen, investigators observe the state of the vehicle at the crash site of the accident. Here the energy conservation law can be used to estimate the vehicle collision speed. Since the collision speed of the vehicle can be estimated from the energy of its deformed volume, investigators observe and measure the vehicle's crash state. However, when a vehicle collides into traffic signs, both the vehicle and sign will be deformed. Consequently, to estimate correctly the vehicle collision speed, the energy absorption capacity of the signs should be taken into account with the vehicle deformation after the crash.   In this study, to improve the estimation of the collision speed of the vehicle, the drop weight tests were done to examine the absorption energy of the signs. The traffic signs used in this test are a road sign, a road mirror and a guard-rail on the roadside. From test results, it can be concluded that the input energy is linearly proportion to the deformed angle of the sign. Also from this test, the relationships between energy and deformed angle of the signs can be formulated. Identification for estimating the vehicle collision speed at an accident hereafter can be done properly with ease.