著者
渡辺 俊明 田中 正彦 渡邉 和俊 高松 康雄 戸部 昭広
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.124, no.3, pp.99-111, 2004-03-01 (Released:2004-02-25)
参考文献数
51
被引用文献数
84 86

Increasing data suggest that oxygen free radical species play detrimental roles in ischemic diseases. A free radical scavenger capable of inhibiting oxidative injury is expected to become a new drug for the treatment of ischemic diseases such as cerebral ischemia. Edaravon (3-methyl-1-phenyl-2-pyrazolin-5-one), which has been developed as an neuroprotective agent for more than 15 years since its discovery, is approved for the treatment of acute cerebral infarction. In this paper, the pharmacologic characteristics and clinical effects of edaravone are reviewed. In early stage of investigation, edaravone was found to have promising activities as an antioxidative radical scavenger, quenching hydroxyl radical (•OH) and inhibiting both •OH-dependent and •OH-independent lipid peroxidation. Edaravone showed inhibitory effects on both water-soluble and lipid-soluble peroxyl radical-induced peroxidation systems, which are different from the inhibitory effects of vitamins C and E in each system, respectively. Oxidative injury to cultured endothelial cells caused by arachidonate (AA) peroxides is prevented in the existence of edaravone. To clarify the characteristics of this free radical scavenger, further investigation was carried out. Edaravone ameliorated exacerbation of cortical edema induced by a focal ischemia-reperfusion model in rats, suggesting inhibitory effects on oxidative injury to the blood-brain barrier (BBB). Additionally, edaravone also prevented rat cortical edema caused by intracortical AA infusion in which free radical production and subsequent oxidative injury to the BBB are involved. With advances in in vivo measurement technology of oxygen radicals, edaravone was shown to inhibit postischemic increases in •OH production and tissue injury in the penumbral or recirculated area in rat cerebral ischemia models. In clinical studies, edaravone improved the core neurologic deficits, activities of daily living, and functional outcome of stroke patients. Furthermore, a study using proton magnetic resonance spectroscopic techniques showed that edaravone preserved N-acetyl-aspartate in stroke patients, a promising neuronal marker in the brain. Further investigation is essential for a better understanding of free radical-mediated cerebral injury during ischemia followed by recirculation. We hope that edaravone represents a promising neuroprotectant for drug therapy in acute cerebral ischemia.
著者
田中 英夫 緒方 剛 森定 一稔 田中 伸治 吉田 隆典 仲西 博子 三沢 あき子 西田 敏秀 鉄 治 永田 愛美 中里 栄介
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.20-145, (Released:2021-05-14)
参考文献数
18

目的 新型コロナウイルスの低蔓延期の日本において,無症候性病原体保有者から感染していたと考えられる事例を収集し,感染が成立した1次感染者と2次感染者との接触状況等の諸条件を確認する。方法 持続無症候性か,もしくは前発症期に2次感染させたと考えられる事例の匿名化された感染者の情報と,両者が最終接触した時の状況報告の提供を,2020年6月20日を期限として全国保健所長会のメーリングリストを通じて依頼した。2府6県の8保健所から,1次感染者9人,2次感染者17人の症例報告書が提出された。著者らの4人が独立して各症例について感染成立の確からしさを判定し,それを元に合同協議の上,対象症例を決定した。結果 2020年3月から5月に確定診断された7人と,この7人から2次感染したと考えられた,合計13人の陽性者の感染状況を以下のように見出した:①持続無症候性の20歳代女性が,70歳代の祖母と自宅で空間を共有,②ヘアーサロン店内で40歳代の美容師が,発症2日前に,客4人と客の子ども1人に接触,③50歳代の看護師が,発症2日前に,自分が勤務する病棟の入院患者2人に病室内で介護,④50歳代の女性が,発症2日前に,80歳代と90歳代の2人の親族に家事支援のため自宅で接触,⑤60歳代の男性が,発症1日前に,約8畳大の集会場で60歳代の男性と対話,⑥60歳代の男性が,発症1日前に,会社の同僚の40歳代男性に,喫茶店で対話,⑦50歳代の男性が,発症1日前に,会社の同僚の50歳代男性に,事務所内と乗用車内で約50分間接触があり,感染させた,と考えられる事例であった。各保健所が実施した13人の2次感染者に対する積極的疫学調査では,上記以外の感染源は見出せなかった。それぞれの2次感染が起きたとする日から潜伏期間に相当する6日後のその府県における感染罹患率は,100万人日あたり,0.00から6.54と,極めて低率であった。結論 新型コロナウイルス持続無症候性陽性者からの感染があったと考えられた事例をケースシリーズの一連として国内で初めて報告した。発症前の感染事例では,2次感染者との接触はすべて1次感染者の発症1~2日前であった。感染時の状況は,自宅,ヘアーサロン,病室,狭い集会場などの,いずれも換気が不十分な空間での接触を認め,飛沫感染が起きやすい状況にあったと考えられた。
著者
田中 キャサリン Kathryn TANAKA
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
no.16, pp.89-124, 2015

幸田露伴『對髑髏』(1890年)は、ドイツ語や英語でも翻訳出版されているにもかかわらず、欧米でも日本でも露伴の他の作品に比べると研究はわずかである。まず、本作は、単純なプロットでありながら、古語による文体が用いられ、古典作品からの引用も多く、仏教思想や中国哲学の参照を要請する緻密な言語で構成されている。本作は浪漫主義・神秘主義の作品として分析されてきたが、作中のハンセン病(癩病)描写は、現代社会の寓意として理解することができる。その他の作品においても、文学作品でのハンセン病描写は、病気や帝国主義における不安と解釈することでより広範な意味を持つ言説と見なすことができる。続いて、ロッド・エドモンドの画期的な研究は、ハンセン病と帝国主義の関係を論じ、1890年代~1930年頃のイギリス文学におけるハンセン病表象には、植民地が帝国にもたらす脅威への不安が反映されることがあると実証してきた。エドモンドの研究をふまえ、本論は西洋と日本における幽霊譚を描く怪奇小説を比較し、それらの共通点および相違点、そしてその寓意に注目し、作品におけるハンセン病患者表象の重要性を論じる。西洋の作品としてコナン・ドイルやキップリングらの作品分析を行い、それらと『對髑髏』の比較を通じ、本論は露伴の『對髑髏』が現代の怪奇小説の原型であると捉え、露伴の革新性の考察を通じて、文学作品における病の役割や帝国観の一端を明らかにする。Koda Rohan's Taidokuro (Encounter with a Skull) (1890) has not been the subject of much scholarly attention in Western-language scholarship, although it has been translated into German and English. One reason for this neglect is the apparent simplicity of the plot coupled with the incredibly dense language, filled with references to Japanese classical literature, Buddhism and Chinese philosophy. Although the text has been analyzed as a work of Romantic Mysticism, Rohan's depiction of Hansen's Disease (leprosy) in this tale can be understood as a modern social allegory. His depiction of Hansen's Disease was in dialogue with broader discourses of disease and imperial anxiety. Rod Edmund has demonstrated the ways in which Hansen's Disease was appropriated in literature to reflect anxieties of empires and threats to colonial centers in his groundbreaking study, Leprosy and Empire. Building on this, I discuss the significance of Hansen's disease as a common trope in Western and Japanese ghostly tales. I first analyze the innovations of Rohan's work in comparison to the way Hansen's Disease appears in other Japanese ghostly tales before I reveal the similarities and differences between the depiction of ghostly visitors suffering from Hansen's Disease in Rohan and the works of British authors such as Sir Arthur Conan Doyle and Rudyard Kipling, among others. Through this close examination of Encounter with a Skull, I draw attention to the play between archetype and innovation in this distinctly "modern" text and show how it operated within the context of global discourses of illness and empire.
著者
森 修一 加藤 三郎 横山 秀夫 田中 梅吉 兼田 繁
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.217-237, 2003 (Released:2007-11-30)
参考文献数
76
被引用文献数
1

本研究は戦前、日本に唯一存在したハンセン病患者の自由療養地である群馬県吾妻郡草津町湯の沢部落の社会科学的分析の中から、何がハンセン病患者の隔離の二つの側面である「迫害されている患者の社会の圧力からの保護」と「感染源である患者からの社会の防衛」のダイナミズムを後者への優位に導いていったのかを明らかにすることを目的とするものである。その過程は湯の沢部落の実態の解明(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究1、II」)、自由療養地議論の展開と消滅の過程の検証と湯の沢部落の関わり(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究III」)、湯の沢部落消滅後にその精神が日本の隔離政策に与えた影響(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究IV」)などの研究の総体である。本稿では自由療養地構想から絶対隔離政策への変遷過程を国会での議論、内務省の政策およびその意思決定過程、自由療養地議論の中の湯の沢の役割、などから描いた。加えて、自由療養地を望む患者たちの意見とその背景を示すと共に世界の隔離政策と日本の隔離政策をその歴史的過程を含みながら対比、考察した。
著者
田中 良
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.20, pp.p29-39, 1992-03

天地開闢以来、天の運行は人々の生活に甚大な影響を及ぼし、人々はときにはその恵みに感謝し、ときには人知及ぱぬその力に畏怖を覚えてきた。ギリシア・ローマ時代におけるアポロン(太陽神)、ポセイドン(海神)、アルテミス(月の女神)、ボレアス(北風)、ゼピュロス(西風)、ノトス(南風)、エウロス(東風)などの、気象にまつわる神々の創造は、その表れであろう。以来、気象の変化と神の力の密月は、少なくともフランス文学史上、18世紀まで続く。確かに1597年にガリレオの温度計発明とともに気象学は観測時代にはいり、1643年にはトリチェリが気圧計を発明し、1664年にはパリで定期的な気象観測が始まっているが、文学的、とりわけ小説の世界でみる限り、気象の変化は神の力と一体化していた。つまり人々に被害をもたらす気象は、神の怒りであり、逆にいえば神の存在証明であった。それを象徴しているのは、18世紀のベルナルダン=ド=サン=ピエールの『ポールとヴィルジニー』において、ヴィルジニーの乗った船を転覆させる暴風雨であり、サド侯爵の『悪徳の栄え』において、心優しいジュスチーヌを最後に直撃する雷であろう。しかし19世紀になって天気図が作成され、暴風雨警報が発令されるに及んで、気象は神の力から解放され、今度は小説におけるひとつの機能として利用され始める。とはいえ、この世紀前半のバルザック、スタンダールといった、外的状況に左右されず、自らの欲望、意志を貫こうとする人物を描いた作家よりむしろ、周辺の変化に翻弄される人物を主に描いた、後半のフローベール、モーパッサンの諸作品にその傾向は顕著である。例えば『感情教育』の有名な冒頭は、早朝、蒸気と霧にまみれた出帆間際の船上であり、その霧はいかにも宿命的な出会いにふさわしく演出され、『ボヴァリー夫人』では、良い気候を求めての転地がエンマの運命を決定する。モーパッサンの『女の一生』も、あたかも主人公ジャンヌの波乱に満ちた半生を予告するかのような豪雨の描写から始まり、最後は今後の彼女の幸せを象徴するかのような夕日に映える花畑の中を、彼女が赤ん坊を抱きながら馬者で走り去る場面で終わっている。20世紀にはいっても、ジッドの『田園交響曲』は「これで三日も降りやまぬ雪が、道をふさいでいる」という一文で始まり、ロマン=ロランの『ジャン・クリストフ』も、窓ガラスを打つ雨の場面から始まる。サルトルの『嘔吐』でさえ、最後の一文は、「明日ブールヴィルには雨が降るだろう」である。これらの作品は、気象状況を小説内の一つの機能として利用している限りにおいて、極めて古典的と言わねばならない。ではプルーストにとっての気象とは何か、また『失われた時を求めて』の中において気象はいかなる働きをしているか、これが本論のテーマである。
著者
田中 秀夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.432-452, 1998-06-15
参考文献数
407

平成9年の醤油ならびに醤油関連の研究業績は, 日本経済の沈滞, 醤油需要の低迷をそのまま反映するかのように目覚ましい進歩があったとするにはほど遠い。醤油本来の研究が少ない上に他の食品産業同様に環境問題, 食品衛生などの周辺の問題対応が多く, 地道な発展が阻害されているかのように感じられる。より一層基礎を固め目前に迫った21世紀に向け, 発展への確実な道が切り拓かれることを期待する。
著者
沼上 幹 軽部 大 田中 一弘 島本 実 加藤 俊彦 生稲 史彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.12-26, 2006-06-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
18

本論文は,データ・リッチな実証研究を行なうためのコンソーシアムを形成して行なわれている,組織の 重さ プロジェクトの主要な知見を紹介する.コンソーシアムに参加した企業のBUに関しては,内部調整に約4割の時間が割かれていること,また比較的容易に調整が達成できる組織は有機的組織の特徴と機械的組織の特徴を両方備えていることが明らかにされる.
著者
大西 康貴 河村 哲治 田中 博子 竹野内 政紀 平田 展也 平岡 亮太 平野 克也 小南 亮太 久米 佐知枝 高橋 清香 水野 翔馬 東野 幸子 塚本 宏壮 佐々木 信 中原 保治
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1_2, pp.65-71, 2019-10-01 (Released:2019-12-28)
参考文献数
20

保守不良の加湿器の使用は過敏性肺炎の一因と考えられている.当院で職員用に使用している31台の家庭用加湿器を対象に,貯留水と吹出気に含まれる微生物についての検討を行った.貯留水,吹出気ともに28台(90%)と高率に微生物を検出し,そのうち14台(45%)で吹出気中と貯留水中の微生物が一致した.また,貯留水より非結核性抗酸菌(nontuberculousmycobacterium: NTM)を19台(61% )で検出した.加湿トレーの洗浄頻度が高い群(毎日~1週間毎)は,低い群(2週間毎~季節毎)と比較し,エンドトキシンが有意に低値であった(P=0.048).唯一,加熱式加湿器は微生物の検出がなくエンドトキシンも低値であった.加湿器による過敏性肺炎の原因として,一般細菌,NTMやエンドトキシンなど様々な要因が関与している可能性がある.
著者
田中 章浩 板口 典弘
出版者
東京女子大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-06-30

多様な文化的背景をもつ人々のグローバルな交流がますます加速する現代社会において、円滑なコミュニケーションを実現するためには、自身の感情の表出、そして他者の感情の知覚を媒介する顔と身体表現の普遍性と文化特異性を知ることが不可欠である。感情の知覚には顔や身体表現(視覚情報)のみならず、声(聴覚情報)も利用され、感覚間統合が本質的な役割を果たしている。申請者らのこれまでの研究の結果、他者の感情を知覚するとき、欧米人は顔への依存性が高いのに対し、日本人は声への依存性が高いことがわかっている。本計画班では顔・身体・声の認識様式の文化的多様性の根源として、感覚間統合を含む「情報統合」に着目する。そして、幼児期から成人にかけて感情知覚における複数情報統合の様式がどのように変化するのかを比較文化的に検討し、これらの知見を統一的に説明する理論的枠組みの提唱をめざす。2018年度は、日本人の声優位性はどのように獲得され、誘発されるのかを検討し、以下の点が明らかとなった。①母親と子どもの間で声優位性に正の相関が見られ、母親が声優位であるほど、その子どもも声優位で感情を知覚するというように、知覚パターンの発達には身近な大人の影響を受けることが明らかとなった。②日本人では、外集団よりも内集団の話者に対して声優位で感情を捉える傾向が見られた。話者の見た目と言語を操作した感情知覚実験の結果、話者の見た目が日本人でなくとも、日本語を話していれば声優位で感情を知覚することが明らかとなった。トランスカルチャー状況における「異質な他者」とは何かを考察するうえで重要な知見である。③感情表出をする話者に対する注視パターンの発達文化間比較を行ったところ、相手の目領域に視線を向けることが声優位の知覚を形成する可能性が示唆された。
著者
奈良 隆寛 浜野 晋一郎 野崎 秀次 田中 佳子 清水 正樹 野田 洋子 厚川 清美 有田 二郎 堀田 秀樹 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.261-267, 2000-05-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15
被引用文献数
2

例の急性脳炎 (60例)・脳症 (10例) のてんかんの発症について検討した.23例がてんかんに移行した.23例中18例は脳炎発症から平均7カ月間の期間をおいて (潜伏期あり) てんかんを発症した.また, 23例中5例は急性期からそのままてんかんに移行 (潜伏期なし) した症例がみられた.潜伏期を経ててんかんを発症した症例の中では, 髄液のneuron-specific enolase (NSE) 活性が高い症例はてんかんが難治で, てんかんを惹起する病理に神経組織の崩壊が関与することが示唆された.一方, 潜伏期なしでてんかんに移行した症例は急性期の発作の回数が多く, てんかんは難治性であったが, 髄液のNSE活性は正常であった.この一群は, 潜伏期を経ててんかんを発症する症例とは別の機序で, てんかん原性焦点の活動が増強されたものと考えられた.
著者
田中 稔彦 亀好 良一 秀 道広
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.134-139, 2006-02-28 (Released:2017-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
9

【背景】蕁麻疹の病態・原因は多様であり,これまでに様々な分類法が用いられてきた.平成17年に日本皮膚科学会より「蕁麻疹・血管性浮腫の治療ガイドライン」が作成され,必要となる検査の内容と意義,治療内容,予後の視点を重視した病型分類が示された.【方法】平成15年から17年に広島大学病院皮膚科外来を受診した260名の蕁麻疹患者をこの分類法に準拠して病型を診断し,その内訳を調査した.【結果】物理性蕁麻疹10.0%,コリン性蕁麻疹6.5%,外来物質による蕁麻疹は6.5%であり,残りの76.9%が明らかな誘因なく生じる特発性の蕁麻疹であった.また38.8%の患者で複数の病型が合併しており,特に慢性蕁麻疹と機械性蕁麻疹あるいは血管性浮腫との合併が多く見られた.【結語】多くの蕁麻疹は丁寧な病歴聴取と簡単な負荷試験により病型を診断することができ,それを踏まえて検査,治療内容の決定および予後の推定を行うべきであると考えられる.
著者
内田 恒之 関根 隆一 松尾 憲一 木川 岳 梅本 岳宏 喜島 一博 原田 芳邦 若林 哲司 高橋 裕季 塩澤 敏光 小山 英之 柴田 栞里 田中 邦哉
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.42-47, 2020 (Released:2020-03-15)
参考文献数
31

背景: サルコペニアは胃癌をはじめ各種悪性腫瘍の短期・長期成績に関与するが, 骨格筋の質を表す脂肪化と術後感染性合併症 (IC) の関連性は明らかでない. 目的: 腹腔鏡下胃切除 (LG) を施行した胃癌症例における骨格筋脂肪化と術後ICとの関連を明らかにする. 方法: 2009年から2018年までのLG施行早期胃癌173例を対象とした. 周術期諸因子と術後ICの関連を後方視的に検討した. 骨格筋脂肪化は術前CT画像によるIntramuscular adipose tissue content (IMAC) で評価した. 結果: 術後ICは20例 (11.6%) に認めた. 多変量解析による術後ICの独立危険因子は男性 (P=0.003) , Prognostic nutritional index低値 (P=0.008) , IMAC高値 (P=0.020) であった. IMAC高値群は低値群に比較し高齢 (P=0.001) で高Body mass inedx (P=0.027) であり糖尿病並存例 (P=0.021) が多かった. 結語: 骨格筋脂肪化はLG後の術後IC発生の危険因子であった. 適切な術前栄養・運動療法の介入が術後IC制御に寄与する可能性がある.
著者
田中 美穂 児玉 聡
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.107-114, 2016 (Released:2017-09-30)
参考文献数
38

日本において「尊厳死」法案が提案された背景には、医師による生命維持治療の中止行為が社会的・法的に問題となり、医師の行為の適法性の要件が医療的・社会的に喫緊の検討課題とされたという状況がある。最高裁まで争われた川崎協同病院事件は、当判決・決定の法的な含意が十分に理解されずに解釈されている可能性がある。そこで、当判決・決定に関する法律家の評釈を分析した結果、①治療中止の許容要件として示された「患者の自己決定権の尊重」と「医療者の治療義務の限界」の関係性が不明確であること、②家族等による患者の意思推定や代理決定の是非、③治療中止と差し控えは同等か否か、といった論点が抽出された。終末期における治療中止を許容する法律の是非について国会も含めて広く議論するべきである。また、家族等による同意や決定のあり方や、患者の選択を支援する仕組みについても十分に検討する必要がある。
著者
田村 典子 松尾 龍平 田中 俊夫 片岡 友美 広瀬 南斗 冨士本 八央 日置 佳之
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.231-237, 2007 (Released:2008-01-31)
参考文献数
27
被引用文献数
1

中国地方のニホンリスは環境省のレッドデータブックで絶滅のおそれがある地域個体群(LP)とされている.本研究では,生息情報の乏しい中国山地における本種の生息を知るために,363箇所のアカマツ林またはオニグルミの周辺で食痕調査を行った.このうち,52箇所で食痕が確認され,さらに14箇所でニホンリスが目撃された.しかし,経度133°30′以西で食痕確認箇所はきわめて少なく散発的で,絶滅の危険性が高いことが明らかになった.
著者
相木 佐代 安部 晴彦 吉村 麻美 柿本 由美子 交久瀬 綾香 田中 奈桜 西薗 博章 河瀬 安紗美 安井 博規
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.105-108, 2022 (Released:2022-09-26)
参考文献数
5

【目的】当院では,心不全患者の病診連携の強化,およびシームレスな支援体制を目指して多職種Webカンファレンスを実施している.この取り組みについて報告する.【方法】Web会議ツールを用いた多職種カンファレンスの開催概要を後ろ向きにデータを収集しその概要を記述する.【結果】主な対象者は,独居で介護力が不十分,かつ,再入院の予防目的に多職種介入ニードの高い症例とした.多職種Webカンファレンスでは,匿名性に配慮し,退院における課題と問題解決のための方策を共有していた.開催時期は退院が具体化する前段階とし,開催頻度と時間は週1回30分とした.参加職種は循環器内科医,看護師,薬剤師,理学療法士,管理栄養士,緩和ケア医,およびプライマリ・ケア医(以下,PC医)である.循環器スタッフは,患者の病態や診療方針を共有しつつ,多面的なチェックシートを用いて,課題の明確化を行う.緩和ケア医は,価値観に基づいた療養計画や意思決定支援について,PC医は,再入院予防に必要な在宅サービス,薬剤調節,生活指導について提案している.【考察】今後は現行の多職種Webカンファレンスの実施方法に改良を加えることや,同カンファレンスの意義についての客観的評価を行うことが課題である.
著者
杉橋 陽一 石光 泰夫 川名子 義勝 長木 誠司 田中 純 一條 麻美子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究においては次のような成果を得た。1.中世の伝説・説話が伝承されてゆく過程における語り手と聞き手の相互作用、および文字による記録がそこに与えた変化の考察、および、中世からルネサンスにいたるポリフォニックな教会音楽における聴取経験と歌唱法の分析をおこなった。そのうえで、宗教による社会統合との協同ないし葛藤のプロセスを明らかにした。2.ルネサンスからバロック時代にかけての、ページェントや祝祭における観衆の役割と「見せ物」の社会的効果の考察、および、オーケストラによるコンサートという聴取形態の成立過程と、そこにおける作曲者、演奏者、聴衆の関係性の変化をめぐる歴史的分析をおこなった。3.ヨーロッパ18世紀の市民文化成立期において、異なる書き手による手紙や日記、文学作品が相互に引用し関係しあってかたちづくっていた、異種混淆した言説空間の双方向的様態を究明した。また、19世紀後半以降のインテリア(私的空間)のデザインをめぐる住文化における建築家と居住者との対立・協調プロセスを、とくにウィーンの動向を中心に分析した。このような西洋の芸術の動向と比較しながら、日本における集団的な競技としての文芸の伝統(連歌、俳句)や茶の湯を、インタラクティヴィティの観点から考察した。4.マルセル・デュシャンやジョン・ケージをはじめとする芸術家たちによる営為が、いかに「芸術」概念の再検討をうながし、鑑賞者の位置にどのような変容をもたらしたかを、その後の現在にいたるインタラクティヴ・アートの動向との関係を視野に収めながら分析した。
著者
木下 明徳 後藤 功雄 熊野 正 加藤 直人 田中 英輝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.113, pp.81-86, 2007-11-20
参考文献数
8

NHK の国際放送では 18 ケ国語が使われており,それらの放送用原稿は,日本語の原稿やその英訳原稿が翻訳され作成されている.このような翻訳作業を支援するために,我々は過去の翻訳用例を検索する「多言語用例提示システム」の開発を行っている.精度の良い検索を実現するためには,検索キーワードとなりうる単語,すなわち,内容語の認定が重要である.しかしながら,内容語 (あるいは機能語) を認定するには辞書が必要となるが,様々な言語に対して辞書を用意することは困難である.そこで,本稿では,言語が持つ統計的特徴を利用し辞書を使わない手法について述べる.また,8つの言語 (日本語,英語,フランス語,スペイン語,ロシア語,イタリア語,インドネシア語,マレー語) に対して行った,機能語認定の実験結果について報告する.NHK provides news services in 18 languages, translating Japanese news articles into English and those ones into other languages. To aid such translation work, we have been developing a translation example browser that retrieves examples similar to inputs from multi-lingual news corpora. The browser has to identify function words(or content words) in inputs by using machine-readable dictionaries to retrieve appropriate examples. However those dictionaries are difficult to be prepared for the browser in various languages. This paper proposes automatic identification methods of function words using statistic features common to many languages. We conduct a series of experiments in 8 languages, such as Japanese, English, French, Spanish, Russian, Italian, Indonesian language and Murray language.