著者
中谷 裕美子 岡野 司 大沼 学 吉川 堯 齊藤 雄太 田中 暁子 福田 真 中田 勝士 國吉 沙和子 長嶺 隆
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.71-74, 2013 (Released:2013-09-19)
参考文献数
16
被引用文献数
4 5

沖縄島やんばる地域における広東住血線虫はクマネズミなどで寄生が確認されているものの,在来のケナガネズミなどにおける感染状況や病原性は不明であった。本症例はケナガネズミが広東住血線虫感染により死亡した初の報告事例であり,病原性が明らかとなった。これは人獣共通感染症である広東住血線虫症が,人のみならず野生動物にも悪影響を及ぼし,特に希少野生動物の多いやんばる地域においては大きな脅威となる可能性があることを示している。
著者
田中 歓子 園田 優子 津田 道夫 谷村 保夫 遠藤 秀彦 相模 成一郎
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.84-92, 1982 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12

トプシムスプレーの有用性を検討する目的で尋常性乾癬, 湿疹・皮膚炎群など34例につきフルコートスプレーを対照とする二重盲検試験を行なった.その結果, 治療前と比較した全般改善度では治療1週後で, 各評価日における薬剤間の優劣比較では治療1週後および2週後で, また有用性の評価でも両剤間に有意差が認められいずれもトプシムスプレーがフルコートスプレーに比し優れていた. この事から, トプシムスプレーは有効性および有用性がフルコートスプレーより優れ, その治療効果の発現は速やかで広範囲の皮疹や被髪部位の病巣の治療に適した薬剤と考えられた.
著者
田中 優
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.614-621, 2021-11-15 (Released:2022-01-13)
参考文献数
4
被引用文献数
1

コクランリスクオブバイアスはランダム化比較試験のバイアスを評価するのに広く使われてきた.2018年に改訂版であるコクランリスクオブバイアス2.0(RoB2.0)が発表された.ドメインは5つで,(1)無作為化の過程から生じるバイアス,(2)意図した介入からの逸脱によるバイアス,(3)転帰データの欠落によるバイアス,(4)結果の測定におけるバイアス,(5)報告された結果の選択におけるバイアスである.ドメインの各領域内にシグナリング質問を含めることがRoB2の重要な特徴で,バイアスのリスク評価に関連する情報を引き出すことを目的としている.また研究全体のバイアスのリスクの程度も判定できる.
著者
石塚 恭子 田中 健二郎 竹内 俊充 長澤 恒保 戸苅 彰史
出版者
日本歯科薬物療法学会
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.81-88, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
75

Fracture risk increases substantially with age due to decreased bone density and muscle mass, and also problems with vision and balance. In the elderly, medication used to treat non-skeletal disorders is one of the causes of bone fracture accompanying decreased QOL. Increased fracture risk by medication is based on either adverse drug reactions on bone metabolism or adverse drug events such as falls. The use of fall risk-increasing drugs (FRIDs), such as opioids, dopaminergic agents, anxiolytics, antidepressants and hypnotics/sedatives, have been demonstrated to increase risk of fracture. Furthermore, in addition to FRIDs, many drugs have been found to affect bone mass and fracture risk as a result of the side effects on bone metabolism. The present article reviews the current understanding of several drugs influencing fracture risk. In particular, drugs affecting fracture risk through sympathetic neuronal activity are also discussed.
著者
田中 秀和 石井 香奈子 若林 進
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.27-38, 2021 (Released:2021-04-27)
参考文献数
13

【目的】朝食後に赤線など一包化された分包紙へ色線を付す行為は,個々の薬局・病院において独自に配色が行われているが,転居や災害などによって調剤施設が変わると配色パターンも変更となり服用間違いが懸念されるため,配色について実態調査を行った.【方法】2018 年 5 月 16~22 日において,薬剤師を対象として Web アンケートを実施した.なお,本研究は長崎県薬剤師会倫理審査委員会の承認を得て実施した(長倫薬29-7).【結果】有効回答 77 件のうち,用法ごとに色線を設定していた施設は 54.5%(42件)あった.配色で最も多かった 4 色は,朝食後─赤系,昼食後─黄系,夕食後─青系,就寝前─黒系であった.アンケート中,配色パターンの統一に対して賛成 66.2%(51 件)であり,反対 15.6%(12 件)を上回った.【考察】配色パターンが未統一であることに起因するインシデント事例も存在し,統一に賛成する意見が反対する意見を上回った.配色パターンの統一が望ましいと考える.
著者
田中 皓介 神田 佑亮 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集H(教育) (ISSN:18847781)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.39-57, 2015 (Released:2015-06-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

現在および将来の日本のために行われる公共事業をはじめとした公共政策を,適切に計画・実施するためには,社会についての適正な現状認識が不可欠である.一方で,政策決定に大きな影響力をもつ国民世論は,教育の影響を受けることが想定される.そのため,適切な事業の円滑な実施に向け,教育の現状を明らかにすることに意義があろう.そうした認識のもと本研究では,日本の現状を巡る認識について,現代社会についての見方や考え方の基礎を養うことを目的とする中学校公民の教科書を対象に,関連する記述を網羅的に抽出し,既存の文献を参考にしつつ,その内容について考察を行った.分析の結果,公共事業に関し,直接的に印象的かつネガティブな内容が掲載されている点,財政についての知識教育が現実と乖離している点などの問題が明らかとなった.
著者
田中 秀明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.220-223, 2011-04-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
14

現代社会のエネルギー媒体の主役である化石燃料(石油,石炭,天然ガス)には限りがあり,現状の勢いで消費が続くと早晩逼迫・涸渇する。一方,次世代を担うエネルギー媒体として期待されている水素は,物質としては地球上に大量に存在し,燃焼生成物も水のみである。このため,エネルギー・環境問題の緩和にも繋がるものと期待されるが,太陽光,風力,水力,地熱等,再生可能エネルギーを利用した水電解などにより抽出(製造)していく必要がある。加えて,水素の大量供給には高効率で安全な輸送・貯蔵技術も必要とすることから,経済産業省やNEDOなどの下にこれまでに様々な研究開発が実施され,課題克服や安全性検証が図られてきた。それでもなお「水素は危険」という先入観のために,その大量貯蔵に違和感を覚える向きもある。このような中,水素貯蔵に対する危険性を科学的・客観的な規準に基づいて正しく把握し,適切な安全対策を立て,将来の利用・普及に繋げることは,科学及び教育に携わる者の責務である。本稿では,水素の高効率貯蔵媒体として約半世紀にわたって開発されてきた水素貯蔵材料を採り上げる。そして,その安全に関する数ある性状の中から発火・爆発危険性について,我々が実際に行った新規に開発された当該材料に対する危険性の検証例を示し,他の貯蔵材料との比較についても紹介する。
著者
田中 健史朗
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.18-25, 2013 (Released:2016-03-12)
参考文献数
23
被引用文献数
2

カウンセラーの自己開示が心理臨床場面において有用な効果をもつか否かについては,賛否両論がある。本研究ではカウンセラーの自己開示を,Self-involvingと,Self-disclosingの2種類に分け,対象者のカウンセラーに対する印象評価に与える効果に違いがあるか否かを検討した。その方法として,大学生,大学院生208名を対象とし,対象者をSelf-involving群,Self-disclosing群,統制群の3群にふり分け,カウンセリング場面の逐語を読んでもらい,その逐語のカウンセラーに対する印象の評価を質問紙で尋ねた。各群の効果の違いをみるため分散分析を行った結果,Self-involvingは,カウンセラーに対する好意感と専門性を高く評価させる効果があることが見いだされた。一方,Self-disclosingは,カウンセラーに対する好意感を高める効果と,信頼感を抑制する効果があることが見いだされた。本研究の結果から,Self-involvingは被開示者にカウンセラーの専門性を印象づけることを促進させる有用な効果をもつことが示唆された。一方,Self-disclosingは被開示者にカウンセラーへの好意感を促進させる有用な効果をもつことが示唆された。しかし,Self-disclosingはカウンセラーへの信頼を抑制することも示唆された。
著者
北條 芳隆 後藤 明 関口 和寛 細井 浩志 瀬川 拓郎 吉田 二美 辻田 淳一郎 高田 裕行 石村 智 田中 禎昭
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

考古学に天文学的手法を導入する研究領域を考古天文考と呼ぶが、この手法を日本列島の考古資料・文献史料の分析と解釈に適用すれば、従来の認知論的考察や景観史的把握には飛躍的な進展が期待される。この目的を達成するために、本研究では考古学・文献史学・天文学の各専門分野を横断させた研究体制を構築する。その上で天体現象と関わる歴史的諸事象に対する統合的分析法の構築を目指す。琉球列島を含む日本列島各地に遺された遺跡や各地の民俗例、海洋航海民の天体運行利用法の実態を解明する。こうした検討作業を基礎に、本研究は天体運行や天文現象に対する人類の認知特性とその日本列島的な特性を追求するものである。
著者
田中 泉吏
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.9-25, 2012-09-30 (Released:2017-08-01)
参考文献数
84

"The death of essentialism" has been widely accepted in biology and philosophy of biology for more than half a century, but recently essentialism seems to raise its head again. The purpose of this paper is to criticize one particular type of "new essentialism" called the homeostatic property cluster view of the species category. According to this view, there is the causal entanglement of properties that creates the biological units recognized as species. However, there is a significant biological phenomenon called lateral gene transfer, which undoes the entanglement, especially in microorganisms. Thus, I conclude that the view is untenable in light of our current biological knowledge, including microbiological one. In addition, I consider the reasons why we should reject species eliminativism even if we accept anti-essentialism and species pluralism.
著者
吉沢 正広 田中 雅章 Masahiro YOSHIZAWA Masaaki TANAKA
雑誌
鈴鹿短期大学紀要 = Journal of Suzuka Junior College (ISSN:09158421)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.161-176, 1998-01-01

The purpose of this paper is to examine how IBM entered into prewar Japan and ran its wholly-owned subsidiary thereafter. Before examining something noted above, this paper surveys the process of formation of IBM and then traces its early overseas activities. Turning to the initial contacts between Japan and IBM, at first IBM carried out its mere export trade to Japan through Morimura and then Kurosawa. IBM then established its wholly-owned subsidiary, Japan Watson,in Japan to expand the business. As IBM 405 series began to sell well also in Japan, IBM was convinced of Japan as a promising overseas market. IBM would think that Japan was of increasing importance. So IBM decided to set up its subsidiary in Japan beyond mere exporting. But as the Pacific War approached, the Japanese government restricted the activities of Japan Watson. At last the government designated Japan Watson an enemy company in 1942. Therefore Japan Watson was forced to halt its business activities in Japan. It was not until 1950 that IBM Japan, former Japan Watson reopened the activities in Japan.
著者
高村 優作 大松 聡子 今西 麻帆 田中 幸平 万治 淳史 生野 公貴 加辺 憲人 富永 孝紀 阿部 浩明 森岡 周 河島 則天
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0985, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】近年の研究成果の蓄積により,脳卒中後に生じる半側空間無視(Unilateral spatial neglect,以下,USN)の病態が,視覚情報処理プロセスにおける受動的注意の停滞を基盤として生じていることが明らかにされてきた。BIT行動性無視検査(Behavioral inattention test,以下,BIT)は,包括的かつ詳細な無視症状の把握が可能である一方で,能動的注意による課題実施の配分が多く,上記の受動的注意の要素を把握・評価することに困難がある。本研究では,PCディスプレイ上に配置されたオブジェクトを,①能動的(任意順序の選択),②受動的(点滅による反応選択)に選択する課題を作成し,双方の成績の対比的評価から無視症状の特徴を捉えるとともに,受動課題における選択反応時間の空間分布特性から無視症状と注意障害の関連性を捉える新たな評価方法の考案を試みた。【方法】発症後180日以内の右半球損傷患者66名を対象とし,BIT通常検査のカットオフ値(131点)を基準にUSN群(n=32),USNのない右半球損傷RHD群(n=34)の2群に分類した。対象者はPCディスプレイ上に配置した縦7×横5行,計35個のオブジェクトに右示指にてタッチし選択する課題を実施した。能動的選択課題として,任意順序によるオブジェクト選択を実施し,非選択数(count of miss-selection:cMS)を能動的注意機能の評価変数として用いた。受動的選択課題として,ランダムな順序で点滅するオブジェクトに対する選択反応時間(RT)を計測し,平均反応時間(RTmean)と左右比(L/Rratio)を,それぞれ全般的注意機能および受動的注意機能の評価変数として用いた。【結果】cMSおよびL/RratioはRHD群と比較してUSN群で有意に高値を示した。一方で,両変数間には相関関係は認められず,USN群における両変数の分布特性をみると,①cMSが少ないにも関わらずL/Rratioが大きい症例,②cMSが多いにも関わらずL/Rratioが小さい症例などが特徴的に分布していることが明らかとなった。①に該当する症例は,代償戦略により能動探索が可能であるが,受動課題では無視の残存が明確となるケースと考えられる。また,RHD群にはBIT通常検査のカットオフ値を上回るものの,無視症状が残存している症例が複数含まれているが,これら症例群は,上記①と同様にcMSは他のRHD群と同様に少ない一方で,L/Rratioが大きい傾向を認めた。②に該当する症例ではcMSの増加に加えてRTmeanの遅延を認め,無視症状に加えて全般性注意障害の影響が随伴しているものと考えられた。【結論】今回考案した評価方法では,能動的/受動的選択課題の対比的評価から,無視症状の特性把握が可能であり,加えて受動課題で得られる反応時間の空間分布の結果から,全般性注意機能と無視症状の関係性を捉えることが可能性であった。