著者
白井 美穂 黒沢 香
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.114-127, 2009 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
3

本研究では裁判員制度の枠組みから「専門家でない人々による量刑判断の要因」について、前科情報による効果を中心に、しかし今後の研究の土台として他要因についても多角的な検討を試みた。大学生及び社会人を対象とした2つの質問紙実験の結果から、量刑判断の主な要因としては被告人の再犯可能性や事件の悪質性の推測が挙げられ、また厳罰傾向と呼べる個人変数も重要な要因であることが示された。本研究でみられた主な前科情報の効果は、被告人に前科がある場合はより再犯可能性が高く推測され量刑も重くなったこと、また呈示事件が前科から長期間経過しておりかつそれらの事件内容が類似している場合に、事件の種類に関わらず量刑が最も重くなったことが挙げられるが、量刑判断と前科情報の関連は被告人についての情報呈示のあり方によって顕著となる可能性が示された。また本研究では性犯罪である強姦致傷も含め量刑判断において性差は一貫してみられなかったが、参加者の性別とJW得点の交互作用が厳罰傾向を媒介して量刑判断に関連したことを示し、間接的に量刑へ影響を及ぼし得ることを示した。
著者
白井 暁彦
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.285-294, 2023 (Released:2023-03-01)
参考文献数
28

近年再注目されている「メタバース分野」への期待と不安,不明瞭さを専門家として整理する.前半はメタバースの歴史,定義,特にコンテンツとその受容,研究分野への影響,更に VR やエンターテインメント分野におけるUGC(User Generated Contents)と技術革新の歴史をまとめ,後半はスマートフォン向けメタバース「REALITY」を中心とした「令和のメタバース」研究開発の現場における,最先端の活動や考え方を整理する.エンターテインメント分野では常識となっている部分も多いが,進化の速い分野でもあり,工学の視点で隣接する他の研究開発分野に向けて,歴史を記録する目的も考慮しながらまとめた.
著者
白鳥 成彦 大石 哲也 田尻 慎太郎 森 雅生 室田 真男
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.11-22, 2020-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究では過去のデータを用いて中退をした大学生の状態を学期ごとに遷移する中退確率を用いて表現し,その中退確率を用いて中退までの学生の動きを類型化する手法を提示する.大学における中退は,大学にとっても,学生にとっても負の影響が大きい.本研究では過去のデータを用いて中退をした大学生の状態を学期ごとに遷移する中退確率を用いて表現し,その中退確率を用いて中退までの学生の動きを類型化する手法を提示する.大学における中退は,大学にとっても,学生にとっても負の影響が大きいため,中退を予測し,介入することで未然に防止する研究は広くなされてきた.しかし,中退予測の研究では中退を一時点のみで予測することが多く,実際に中退をする学期までに予測がどのような変遷を経るのかといった研究は少なかった.本研究ではロジスティック回帰モデルを用いて学期ごとに中退確率を算出し,X-means 法を用いて類型化することで,実際に中退をする学期までにどのような途中過程を経るのかを表現する手法を提示する.本手法を用いることで,大学において実際に中退をした学生がどのような過程を経て中退をしたのかを量的に知ることができるため,全学的な学生支援の方向性を検討し,効率的な中退防止施策につなげることができる.
著者
八十島 崇 木塚 朝博 埜口 博司 白木 仁 向井 直樹 下條 仁士 宮永 豊
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.43-50, 2003-02-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

Electromyographic activity of the shoulder muscle at 20 and 90°abduction (20 Abd, 90 Abd) during external rotation was investigated in seven healthy men with no history of injury or instability of the shoulder joint.Electromyography (EMG) was recorded using intramuscular fine-wire electrodes inserted into the M. Supraspinatus, M. Infraspinatus and M. Teres minor, and with bipolar surface electrodes on the middle and posterior parts of M. Deltoid anti the upper and middle parts of M. Trapezius. To compare activity in different muscles, the integrated EMG (iEMG ) activity of each muscle was normalized.M. Infraspinatus and M. Teres minor showed significantly higher activity at both the 20 Abd and 90Abd compared with the middle and posterior parts of M. Deltoid and upper parts of M. Trapezius. M. Supraspinatus, the middle and posterior parts of M. Deltoid, and upper and middle parts of M. Trapezius all showed a difference in activity level between the two positions.These findings suggest that when M. Infraspinatus and M. Teres minor contribute to external rotation as a stabilizer and prime mover, consecutively, M. Supraspinatus, the middle and posterior parts of M. Deltoid, and upper and middle parts of M. Trapezius function according to the positions. Moreover, the activity of the upper and middle parts of M. Trapezius in 90Abd should influence stabilization, adduction and upward rotation of the scapula. Therefore, we conclude that the external rotation position is closely related to shoulder muscle activity and coordination.
著者
白水 俊介 岩崎 雄介 畦地 拓哉 安部 智哉 兼平 暖 相良 篤信 里 史明 湯本 哲郎 亀井 淳三
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-6, 2020-01-10 (Released:2021-01-11)
参考文献数
10

Saccharated ferric oxide is an iron preparation for intravenous injection obtained by colloidal particles of ferric hydroxide with sucrose. Although it is necessary to dilute saccharated ferric oxide with a 10-20% glucose injection solution according to the product labeling, it is often diluted with 5% glucose injection solution and/or saline in clinical practice. In the present study, we evaluated the stability of saccharated ferric oxide in various diluted solutions in terms of the abundance of free iron ions. The abundance ratio of free iron ions significantly increased with pH elevation of the diluted solution. Moreover, a marked decrease in the abundance ratio of free iron ions was observed in the sodium chloride solution exceeding the physiological concentration (0.9%). Furthermore, a statistical decrease in the abundance ratio of free iron ions was confirmed in the glucose solution compared to saline, and the degree of liberation of free iron ions in 5% glucose solution was the lowest among various concentrations of glucose solution. These results indicate the possibility that saccharated ferric oxide can be diluted by 5% glucose injection solution with minimal effects on its stability, although its dilution according to the product labeling is basically important.
著者
白川 誠 石川 陽 渕上 拓朗 田中 恵
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.351-362, 2022-12-28 (Released:2023-01-21)
参考文献数
61

都市近郊二次林における外生菌根菌(以下,菌根菌)の種多様性を明らかにするために,東京都青梅市のコナラを優占樹種とする二次林において,ラインセンサスおよびプロットサンプリングを実施し,子実体436個,菌根327根端,菌核3個の計766サンプルを採取した。形態分類およびrDNA-ITS領域を対象とした分子生物学的解析の結果,23科41属159 MOTUの菌根菌が同定され,林内にはテングタケ属,イグチ科,カラハツタケ属,ベニタケ属,ロウタケ属,ラシャタケ属が広く分布していることが確認された。一方で,ショウロ属やヌメリイグチ属など,センサスルート上やプロット内の各所において局所的に分布する菌種も多数確認された。これらのことから,人為的攪乱を受ける比較的小面積の二次林においても多様な菌根菌種が生息していることが明らかになった。また,プロットから得られた菌根菌を対象とした階層クラスター分析では,各プロットは共通の頻出群を有するものの,局所的に分布する科によって特徴づけられた。樹種構成の相違や人為的攪乱,林内に存在する多様な微地形といった要因が群集組成に影響を及ぼしていることが示唆された。
著者
木頃 伸哉 白鳥 裕士 中村 聡史
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:21888744)
巻号頁・発行日
vol.2019-GN-107, no.4, pp.1-7, 2019-03-11

プロ野球は 1 試合の平均時間が 3 時間以上あり,サッカーなどの他のスポーツと比べて試合時間が長い.そのため,テレビやインターネットの生放送での観戦では,入浴や食事,仕事と重なって視聴を断念してしまったり,一方的な試合展開による視聴意欲の低下により視聴を途中で断念してしまったりする視聴者も存在する.視聴を途中で断念した後に,に試合展開が大きく変わり面白い場面を見逃すこともあり,視聴者が後悔してしまうことも珍しくない.そこで,我々は野球の試合において山場山場となりそうなシーンになったときに視聴者を,視聴誘導するシステムの構築を試みる.本研究ではその足がかりとして,野球における山場となりそうな場面を推定する手法を検討する.本研究では,野球の試合に並行して進行する実況ツイートの中に,期待にまつわる特徴語が現れることに着目した手法を検討した.また,その手法の可能性を検証するため,山場になりそうな場面に関する正解データセットを構築し,複数の手法を検討することにより精度の検証を行った.その結果,全体的な精度は低いものの,ツイートをそのまま扱うのではなく,どちらのチームのファンなのかという点に注目して判定すると精度が上がることが分かった.
著者
船坂 徳子 吉岡 基 柿添 裕香 神田 幸司 白水 博
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.305-310, 2011 (Released:2012-01-21)
参考文献数
16

シャチにおける視覚器の構造を把握するため,眼球とハーダー腺の形態学的特徴を調べた.眼球は多数の眼筋に覆われており,眼球壁は角膜と強膜からなる眼球線維膜,毛様体,虹彩と脈絡膜からなる眼球血管膜,網膜からなる眼球内膜の3層によって構築されていた.網膜は,組織学的に暗所適応型の特徴を有していた.眼球内の各部位を計測し,他鯨種と比較したところ,シャチの眼球は数種のマイルカ科鯨類と同様の形態を有することがわかった.ハーダー腺は,眼球の周囲をベルト状に囲む管状腺であった.結膜円蓋や眼瞼結膜には,ハーダー腺分泌物である粘液性物質を排出するための無数の導管開口部が存在していた.以上から,シャチには効率的な集光機能を有する眼球や,それを保護するための眼粘液を分泌するハーダー腺が備わっていることが明らかとなった.
著者
山本 哲夫 朝倉 光司 白崎 英明 氷見 徹夫
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.9, pp.1124-1132, 2015-09-20 (Released:2015-10-06)
参考文献数
18
被引用文献数
5

【目的】札幌周辺ではシラカバ花粉アレルギーの例が多く, 共通抗原性のため, リンゴなどの果物や野菜を食べた時に口腔咽頭の過敏症 (口腔アレルギー症候群, oral allergy syndrome, OAS) を示す例が目立つ. 一方, 大豆はシラカバ花粉の主要抗原である Bet v 1 の関連抗原 (Gly m 4) を含んでおり, OAS の原因抗原となることがある. 特に豆乳は凝固して豆腐になる前の状態であるが, 変性が少なく, また液体で一気に飲み込むためか, 前胸部の灼熱感など, 症状の強い例を経験する. 今回, 豆乳に対する OAS の頻度を調査し, IgE 抗体検査も行った. 【方法】対象はシラカバ花粉 IgE が陽性の OAS 例167例で, OAS の診断は問診により, 特異的 IgE は CAP を用いた. このうち161例に対し, コンポーネントアレルゲンと大豆に対する CAP を検査した. 【結果】シラカバ陽性の OAS 167例のうち, 問診上10% (16例) が豆乳に対する OAS を有し, シラカバ CAP クラスの増加とともに有症率が上昇した. また, Bet v 1 CAP, Gly m 4 CAP, 大豆 CAP クラスの増加とともに豆乳 OAS の有症率が上昇したが, Bet v 2 CAP は相関はなかった. 豆乳 OAS 例 (15例) では, 大豆 CAP はクラス1以上は47% (7例) で, クラス2以上では7% (1例) が陽性であったが, Gly m 4 CAP はクラス1以上は93% (14例) で, クラス2以上でも87% (13例) が陽性であった. 【結論】シラカバ陽性の OAS 例のうち, 10%が豆乳に対する OAS を有し, 豆乳 OAS 例では大豆 CAP の陽性率は低かったが, Gly m 4 CAP の陽性率は高かった.
著者
富成 伸次郎 島本 裕子 谷口 美由紀 谷口 智弘 白阪 琢磨
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.249-252, 2011 (Released:2011-10-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1

ノロウイルス胃腸炎に罹患したHIV感染者の便から3ヶ月以上にわたりノロウイルスが検出された2症例を経験した.うち1症例では下痢症状も持続しており,入院中に同一病棟内において二次感染者も出現した.2症例ともHIV感染症のため免疫不全状態であった.ノロウイルスの持続感染とそれに伴う二次感染は,HIV感染者以外にも造血器腫瘍患者や原発性免疫不全症候群の患者,ステロイドなど免疫抑制薬使用患者からの報告がある.病院などの施設においてノロウイルス感染者が発生した場合,免疫機能が低下した患者においては感染が数ヶ月以上にわたり長期化する可能性があることを認識し,感染対策を継続することが重要であると考えられた.
著者
白石 祐彰 津田 吉晃 高松 進 津村 義彦 松本 麻子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.402-409, 2015 (Released:2016-09-09)
参考文献数
55
被引用文献数
1

土木工事により生じた大規模斜面における植栽の際には,自生集団の遺伝的多様性保全のために,自生あるいは遺伝的類縁性の高い近隣集団の種苗を用いるべきことが最近広く認知されている。埼玉県長瀞町および寄居町の送電鉄塔建設予定地において,生物多様性保全に配慮した緑化工を行う観点から,工事に伴う伐採前に採種して育苗したコナラ (Quercus serrata) を建設工事跡地に植栽した。この取組みにより,植栽集団 (実生 2集団) が自生集団の遺伝的多様性に与える影響を評価するために,マイクロサテライトマーカーを用いて植栽集団の遺伝的多様性や他集団 (埼玉県内の近隣 4集団および他県 3集団) との遺伝的分化程度について調査した。その結果,実生集団の遺伝的多様性は近隣の成木集団も含めて他集団と同程度であった。 STRUCTURE解析では埼玉県と他県集団には遺伝構造がみられたが,埼玉県内集団については全体で一つの地域交配集団とみなすことできた。これらのことから,建設工事跡地に植栽したコナラ種苗は自生集団の遺伝的多様性およびその地域性を維持しており,本取り組みによって自生集団の遺伝的多様性保全に貢献できたことがわかった。
著者
駒井 三千夫 神山(渡部) 麻里 神山 伸 大日向 耕作 堀内 貴美子 古川 勇次 白川 仁
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.131, no.4, pp.248-251, 2008 (Released:2008-04-14)
参考文献数
13

ビタミンは,基本的には食品から摂取されなければならないが,大量に摂取することによって,基本的な生理機能の働きのほかに疾病を予防するなどの新規な機能を発揮することが知られてきた.また,体力増強や疲労回復などにもビタミンが利用されるようになってきた.このように,ビタミンを所要量の数倍から数十倍摂取すると,体内におけるビタミンの薬理作用が期待されている(薬理量,保健量の摂取).当論文では,ビオチンによる新規生理作用のうち,とくに高血圧症改善効果に関してまとめた.ビオチンの摂取によって耐糖能とインスリン抵抗性の改善はすでに報告されているが,今回は脳卒中易発性高血圧自然発症ラット(SHRSP)を用いて,高血圧改善効果を証明できたので報告する.すなわち,毎日3.3 mg/L水溶液の飲水からのビオチンの摂取によって,飼育2週目以降で高血圧症が改善されることを見出した.このように,本態性高血圧症を呈するSHRSPにおいてビオチン長期摂取により血圧上昇抑制効果が確認され,またそれによる動脈硬化の軽減が実際に示された.さらに,ビオチンの単回投与による血圧降下作用の検討によって,この作用はNOを介さない経路での可溶型グアニル酸シクラーゼ活性化を介したcGMP量増加の機構(Gキナーゼ介在による細胞内Ca2+濃度の低下)による可能性が示唆された.