著者
斎藤 義朗 福村 忍 齋藤 貴志 小牧 宏文 中川 栄二 須貝 研司 佐々木 征行
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.477-481, 2012-11-01

ノイロトロピン<sup>®</sup> (Neurotropin, ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液) は頸肩腕症候群や帯状疱疹後疼痛に有効であり, 成人の一次性頭痛に対する効果も報告されている. 今回, 他の各種薬剤に効果が乏しかった慢性頭痛の小児2例で本剤が有効であった. いずれも中学生女子, 片頭痛を発症して2~3年後に増悪をきたし, 不登校にいたった経過で, 起立性調節障害の併存, 間欠的な四肢・背部の疼痛, MRI上の大脳白質散在性病変も共通していた. Neurotropinには他の鎮痛薬にはない下降性疼痛抑制系の増強効果があり, 小児の難治な慢性頭痛にも有効と示唆された.
著者
若倉 雅登 曽我部 由香 原 直人 山上 明子 加茂 純子 福村 美帆 奥 英弘 仲泊 聡 三村 治
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.7-13, 2021-03-25 (Released:2021-04-03)
参考文献数
20

【目的】眼球や視路に原因を求められないが,日常的に保有視覚を阻害されてしまう場合がある.この実態をさぐるために,全国的に臨床的特徴を検討すること. 【方法】日常的に保有視覚が常時阻害されている症例を,神経眼科およびロービジョンの専門家の有志でワーキンググループ(WG)にて収集した.2018年11月から2019年4月までの6か月間に眼瞼痙攣,心因性視力障害,詐病を除く上記に見合う症例をWGのメーリングリスト上で報告し内容を検討した.最終的に以下の二次的除外基準を設けて症例を絞り込み,その臨床的特徴を考察した.1)頭部MRIなどで病変が同定できる症例,2)視覚に影響を及ぼす精神疾患が確定している症例,3)眼位,眼球運動障害による視覚障害が出現している症例である. 【結果】最終的に対象となった症例は33例(16歳から80歳,男女比(9:24))が収集された.これらの臨床的特徴を解析すると,非眼球性羞明26例,眼痛5例と視覚性感覚過敏が目立った.両者とも有する例が21例,両者ともないものが1例であった.これらの多くは注視努力(企図または遂行)によって症状が悪化する傾向にあった.33症例の報告の内容から,3例以上に共通して随伴していた臨床的特徴としては脳脊髄液減少症,片頭痛,ベンゾジアゼピン系薬物の連用,線維筋痛症があった. 【結論】眼球や視路に原因がないのに,日常視を妨げる恒常性の羞明や眼痛を有する症例が少なからず存在することがわかった.これらは,視覚関連高次脳機能障害のうち,感覚過敏が前面に出たものと考察できるが,詳細なメカニズム解明は今後の問題である.
著者
斎藤 義朗 福村 忍 齋藤 貴志 小牧 宏文 中川 栄二 須貝 研司 佐々木 征行
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.477-481, 2012 (Released:2014-12-25)
参考文献数
15

ノイロトロピン® (Neurotropin, ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液) は頸肩腕症候群や帯状疱疹後疼痛に有効であり, 成人の一次性頭痛に対する効果も報告されている. 今回, 他の各種薬剤に効果が乏しかった慢性頭痛の小児2例で本剤が有効であった. いずれも中学生女子, 片頭痛を発症して2~3年後に増悪をきたし, 不登校にいたった経過で, 起立性調節障害の併存, 間欠的な四肢・背部の疼痛, MRI上の大脳白質散在性病変も共通していた. Neurotropinには他の鎮痛薬にはない下降性疼痛抑制系の増強効果があり, 小児の難治な慢性頭痛にも有効と示唆された.
著者
福村 愛美
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
大分県立芸術文化短期大学研究紀要 (ISSN:13466437)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.241-249, 1996-12-31

高校生が制服についてどの様な意識を持っているか、また制服と、家庭科及び被服実習、家庭科男女共修との関連性を調査をもとに分析した結果、次の様なことが明らかになった。1、学校を制服で選ぶかどうかという質問に対して高校1年生と2年生では、1年生のほうが学校を制服で左右されないと考えている。2、好きな制服のデザインでは、1年生男子は詰め襟の学生服を大半が支持しているが、2年生になるとブレザータイプの制服と半々に意見がわかれる。女子は全体的に差はなくセーラー服を好んでいる。3、制服の持っている枚数は、冬用を1枚、夏用を2枚持っている組み合わせが1番多い。4、音楽専攻の生徒が、スカートの長さや靴下の流行に最も敏感である。5、被服制作の完成時に充実感を感じない者ほど、制服の良くないところとして、温度調節がしにくいという理由を挙げている。6、家庭科男女共修に価値があると思う者ほど、学校を制服で選ばないと考えている。7、家庭科を男子も学ぶべきであると余り考えない者の方が、セーラー服をより好んでいる。8、制服のイメージは多面性を持っていると考えられる。終わりに、集計作業にご協力いただいた大分県立芸術文化短期大学の田仲謙司さん及び学生や副手の方々に深く感謝申し上げます。
著者
長島 孝 横山 淳一 松田 信一 中平 勝子 福村 好美
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.15, pp.81-87, 2005-02-19
被引用文献数
2

日本の製造業においては,暗黙知である高度技能の伝承が注目されている.高度技能は熟練者と被伝承者との長期間にわたる体験共有により継承がなされてきた.少子高齢化の傾向の中で,伝承期間の短縮と同時に被伝承者の成長が望まれていた.ここでマルチメディアのeラーニングを応用して,新たに開発した簡易編集機能により、熟練者による技能実演収録画像にノウハウ上のポイントを抽出して形式知化して明示した.新たな技術知識を含めて製作した教材のポイントを,納得ゆく繰返再生を被伝承者の意思で簡単にでき,従来と比べて短期間で技能五輪に出場可能な選手を育成することができた.Recently, Japanese production activity is focusing for high technical skill transfer to next generation. A high technical skill has been usually transferred by collaborated work between high skill worker and follower, but it has been not so success. New multimedia contents of high technical skill are proposed, which has utilized e-learning with the multimedia like a video record consisting from actual high skill worker's technique. This multimedia as explicit knowledge has developed by new easy editing system. So, the follower was easily able to learn by review himself for the multimedia until full understanding. Employing those contents on the training for Japanese Skills Competition, members of our team are successfully gotten to short period coaching.
著者
三澤 朱実 由田 克士 福村 智恵 田中 太一郎 玉置 淳子 武林 亨 日下 幸則 中川 秀昭 大和 浩 岡山 明 三浦 克之 岡村 智教 上島 弘嗣 HIPOP-OHP Research Group
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.97-107, 2015 (Released:2015-06-15)
参考文献数
28
被引用文献数
3 1

目的:従業員食堂を中心とした長期間の食環境介入が野菜類の摂取量に及ぼす効果を検討する.対象と方法:対象は福井県現業系事業所の従業員約1,200人(19–61歳)である.野菜摂取量を増加させるため,日本型の3要素(主食・主菜・副菜(野菜))を組み合わせた食事の摂取を推進した.適切な食物選択を導くための食環境整備として,従業員食堂の全ての献立表示を3色で示した(3要素順に,黄色・赤色・緑色).食事の代金清算時に,3要素を組み合わせて食事を選択するよう栄養教育を実施した(適切選択者).同時に適切選択者の割合も評価した.介入前後に,半定量食物摂取頻度調査法に準じた質問紙調査を実施した.野菜類の摂取頻度と摂取目安量を質問し,1人1日当たりの推定摂取量の平均値を求めた.結果:適切選択者は,介入1年後63.5%から,介入2年後82.1%(p<0.001),介入3年後80.0%(p<0.001)へと有意に増加した.介入3年後では,朝食時(p<0.001),昼食時(p<0.001),夕食時(p=0.011)の野菜,野菜ジュース(p=0.030)の推定摂取量は,有意に増加した.漬物は有意に減少した(p=0.009).これにより野菜類摂取量は,男性では167.3 gから184.6 g,女性では157.9 gから187.7 gに増加したと推定された.考察:従業員食堂を中心とした長期間の食環境介入によって(3年間),野菜の推定摂取量の増加,漬物の推定摂取量の減少が認められ,野菜類の摂取量に望ましい効果が示された.
著者
藤岡 豊 福村 郁夫
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.69-72, 1984-09-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
7

1. 安息香酸エストラジオールの経口投与により, アユの雌性化について次の結果を得た.2. 各試験区において雌雄同体の個体が出現した.3. 安息香酸エストラジオール濃度0.2μg/gから雌性化傾向が見られ, 1.3μg/gと2.7/μg/gにおいては92~93%の雌性化が見られた.4. 生存率は安息香酸エストラジオールの濃度が高くなるにつれて, 低下する傾向を示した.5. 雌性化については安息香酸エストラジオール濃度1.3μg/gが, 最も良い結果を示した.
著者
福村 直毅 山本 ひとみ 北原 正和 鎌倉 嘉一郎 植木 昭彦 牛山 雅夫
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.303-314, 2017-04-18 (Released:2017-06-16)
参考文献数
34
被引用文献数
5 3

【目的】機能的自立度評価表(FIM)による分類が重症(FIM総得点≦40点)患者の日常生活動作(ADL)や栄養・免疫状態低下に対する補中益気湯の有効性および安全性について検討した.【方法】片麻痺を伴う脳血管障害後遺症でリハビリテーション施行患者31例を対象に補中益気湯(TJ-41)投与群と非投与群に無作為に割付し,24週間観察した.評価はADL,炎症性合併症発症率などである.【結果】FIM総得点は両群ともに治療前後で有意に改善したが,FIM利得に群間差はなかった.炎症性合併症発症率はTJ-41投与群で有意に低かった(p=0.049).FIM運動得点が20点以下の症例において,治療前後の総リンパ球数変化比はTJ-41投与群で増加傾向が認められた.本研究において副作用はなかった.【結論】補中益気湯は脳血管疾患などのリハビリテーションにおいて炎症性合併症対策に有用である可能性が示唆された.
著者
松平 慎一 石崎 陽一 吉本 次郎 今村 宏 福村 由紀 川崎 誠治
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.2145-2149, 2018 (Released:2019-04-30)
参考文献数
10
被引用文献数
3 2

症例は千葉県在住の31歳,女性.腹痛と下痢のために近医を受診.腹部造影CT検査で肝内に多発する嚢胞性病変を認めた.エキノコックス抗体検査が陽性で肝多包性エキノコックス症の診断となり,手術目的に当科紹介となった.嚢胞は肝S3/2,S5,S7/8,S8に存在し,S8の嚢胞は右肝静脈に近接する病変で,嚢胞壁の損傷を回避するため右肝静脈を含む拡大後区域切除術,外側区域切除術,S5部分切除術を行った.術後経過は良好で術後第18病日に退院した.病理組織所見では類上皮肉芽腫と嚢胞内部に大型の壊死形成を認めた.壊死部にはクチクラ層を有する小嚢胞を認め,繁殖胞を有する原頭節も含まれていた.術後3年経過したが,再発なく生存中である.本症例は関東在住であるが,2歳時に北海道へ旅行し,キツネとの接触歴があった.感染後29年の経過で緩徐に進行したと考えられる肝多包性エキノコックス症を経験したので報告する.
著者
角田 健 大山 優喜 福村 佳子 杉浦 瑞季
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.201-205, 2023 (Released:2023-09-19)
参考文献数
12

症例は76歳の慢性閉塞性肺疾患患者.リハビリテーション場面における対話を活用し,アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning: ACP)の実践を試みた.ACPの実践は,呼吸リハビリテーション中のコンディショニングやセルフマネジメント教育の対話の場面を主に活用した.リハビリテーション専門職がACPに関わる場合,いわゆる広義のACPが関わりやすかった.リハビリテーション専門職は,他の職種と比較して対話する時間が得やすく,生活を主軸に置いた視点で患者の価値観や将来の不安について対話することができる.現場でのACPを促進するため,他の職種と比較して対話する時間が得やすい利点があるリハビリテーション専門職は,繰り返しの対話の機会を活用しACPへ関わる必要がある.
著者
福村 愛美 Manami Fukumura
雑誌
大分県立芸術文化短期大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.34, pp.241-249, 1996-12-31

高校生が制服についてどの様な意識を持っているか、また制服と、家庭科及び被服実習、家庭科男女共修との関連性を調査をもとに分析した結果、次の様なことが明らかになった。1、学校を制服で選ぶかどうかという質問に対して高校1年生と2年生では、1年生のほうが学校を制服で左右されないと考えている。2、好きな制服のデザインでは、1年生男子は詰め襟の学生服を大半が支持しているが、2年生になるとブレザータイプの制服と半々に意見がわかれる。女子は全体的に差はなくセーラー服を好んでいる。3、制服の持っている枚数は、冬用を1枚、夏用を2枚持っている組み合わせが1番多い。4、音楽専攻の生徒が、スカートの長さや靴下の流行に最も敏感である。5、被服制作の完成時に充実感を感じない者ほど、制服の良くないところとして、温度調節がしにくいという理由を挙げている。6、家庭科男女共修に価値があると思う者ほど、学校を制服で選ばないと考えている。7、家庭科を男子も学ぶべきであると余り考えない者の方が、セーラー服をより好んでいる。8、制服のイメージは多面性を持っていると考えられる。終わりに、集計作業にご協力いただいた大分県立芸術文化短期大学の田仲謙司さん及び学生や副手の方々に深く感謝申し上げます。
著者
福村 浩一 中原 毅 小串 美由紀 倉持 龍彦 関 貴弘 堀井 京子 寺田 紀子 上野 信一 松井 則明
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.137, 2008

【はじめに】近年、携帯電話や電磁調理器具などの急速な普及により、それらから発せられる電磁波による健康への影響を不安視する声が聞かれる。透析装置においても電磁波を発する装置であり、透析患者は4~5時間装置の側での治療を余儀なくされる事から、透析中における装置からの電磁波の発生強度を測定し、その安全性を検討した。<BR>【目的】透析装置から出る電磁波を測定し、その数値からICNIRPの電波防護指針をもとに透析中の安全性を検討する。<BR>【方法】当院で用いられている透析装置(DCS-72、DCS-26、DCS-27、DBB-26、DBG-02、TR-3000M)の待機時(プライミング終了後)と作動時(透析中)に放出される電磁波の強度を、アルファラボ社製トリフィールドメーター100XEを用いて測定し、また患者の透析時における電磁波の暴露量(頭部、腹部、下肢)からその安全性を比較検討した。電磁波の測定方法は透析装置のディスプレイ画面より0cmから10cm間隔で電磁波の強度を測定し、最終的に測定表示が0になるまでの距離を測定した。<BR>【結果】DCS-72では待機時が、0~20cmで100mG以上、30cmで25mG、1.3mで0mGとなった。透析時では0~20cmで100mG以上、30cmで25mG、1.5mで0mGとなった。DCS-26では待機時が0cmで50mG、10cmで6mG、50cmで0mGとなった。透析時では0cmで100mG以上、10cmで50mG、90cmで0mGとなった。DBB-26、DBG-02ともに透析時では0cmで60mGと高い値を示したが、10cmでの測定値は一桁を示し、他の装置では0cmでも待機、透析時ともに低値を示し、待機時で30cm、透析時で40~60cmで0mGとなった。又、患者の頭部、腹部、下肢で透析時に受ける電磁波の強度を測定した結果、頭部で0~2mG、腹部、下肢では0~0.5mGであった。<BR>【考察】測定の結果からICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の定めた国際ガイドライン値(安全値4mG未満、許容値16mG未満)に当て嵌めると医療従事者が通常の操作をするパネルからの位置では、測定結果から特に問題はないと思われ、透析中における患者についても安全性をクリアしていると思われた。<BR>【まとめ】電磁波については、生体に影響が有る、無いの二極論があるが、実際に「電磁波過敏症」と呼ばれる諸症状がある事も事実であり、長時間装置の側で治療を受ける透析患者の電磁波の暴露量は重要であり、科学的根拠がなくても事前回避の措置を定めるという原則の考えが重要であると考えられた。
著者
村上 和人 輿水 大和 中山 晶 福村 晃夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.2106-2116, 1993-10-15
被引用文献数
21

似顔絵生成は、似顔絵の対象とする人物から受けた印象を物理的に再現する問題である。印象の分析は、顔の認識や識別の問題と同様に、顔の特徴抽出問題に帰着されるが、似顔絵生成の場合は、再現された似顔絵の良否判定、あるいは、評価の問題が生じる、すなわち、単に特徴の抽出と誇張のメカニズムを示しただけでは十分ではなく、評価メカニズムをどこかに組み入れなげれば、問題は解決しない。筆者らは、一般に人手によって描かれる似顔絵を、コンピュータに描かせようと試み、そのシステムをPICASSOと名付けて開発している。PICASSO開発では、まず、誇張メカニズムとして、中割り法(in-betweening method)を基本とした特徴抽出と誇張プロセスを構築し、誇張法による似顔絵生成方法の特徴と問題点を整理した、次に、評価メカニズムとして、人の目の知覚・認知的現象の一つである錯視現象が似顔絵の評価に剰用できる可能性について検討した。そして、錯視量(錯覚の起こる程度)を基本にした誇張率の制御方法を定式化し、評価プロセスを構築した。具体的こは、ヴント・フィック図形錯視、ポンゾ図形錯視、およびミュラー・リヤー図形錯視を顔部品パターンに想定し、また、実験心理学で求められている錯視量を誇張プロセスの終了条件の閥値として利用した。ほとんぎの適用例で良好な似顔絵が生成できた。本諭文では、具体的な錯視量の定義と誇張率の制御の方法を、種々の似顔絵作品例とともに示す。
著者
福村 一成
出版者
宇都宮大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

事前調査でレンガ造り構造物遺跡のうち東南アジア(タイ、カンボジア)に多くみられる(低温の)焼成レンガ遺跡では塩害による劣化が報告されているがその範囲・程度は、日干しレンガ遺跡建造物に比較して限定的であった。これは東南アジアでは雨季に乾季中にレンガに蓄積した塩分が洗脱されること、さらに降雨侵食対応した焼成レンガ(日干しレンガより塩分結晶成長による劣化を受けにくい)が用いられていることが報告されている。それに対し、乾燥・半乾燥地域(南西アジア〜北アフリカ)の遺跡では日干しレンガ(焼成していない)日干しレンガを使った遺跡構造物が多くみられ、その構造物基底部(地表面近く)で塩類集積による日干しレンガの劣化が報告されている。日干しレンガの塩害実験を行うために模擬日干しレンガの作成を行った。文献にある日干しレンガ材料の情報、土質(砂混じり粘土)、補強材料(スサ、麦わら)と現地の日干しレンガ作成過程の写真を参考に、日本家屋の土壁施工職人からアドバイスを得つつ、20×10×30cmの模擬日干しレンガ(乾燥密度1.5Mg/m3)を作成して電気浸透験の供試体とした。電気浸透による水分、塩分移動実験では電極に白金メッキしたラス電極を用いた。実験結果から塩分移動量と印加電圧、印加時間、電流の条件と水分、塩分移動量の関係を解析した。その結果、水分、塩分移動量と消費電力量に有意な相関関係を得ることができたが、当初予想した印加時間、印加電圧初期塩分量と水分、塩分移動量の間に有意な関係を見出すことはできなかった。また初期含水量の大小は水分、塩分の移動量に顕著な影響を与えるとの結果が得られたが、統計的に有意な関係を得るには至らなかった。以上の結果から、除塩に電気浸透を利用できる可能性を示し、除塩量の指標として消費電力量が有用であることを示した。しかし、初期水分量を大きくすることで移動量が大きくなることが指摘ができたものの、日干しレンガの含水量のコントロールと除塩の関係については十分な知見を得るに至らなかった。
著者
福村 僚 甲斐 智大 塩川 勝行 高井 洋平
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.145-157, 2022 (Released:2022-07-06)
参考文献数
8

本研究は,サッカーの攻撃方向を伴うボールポゼッショントレーニングにおける集団変数とテクニカルプレーに対する競技水準の影響を明らかにすることを目的とした.22 名の大学男子サッカー選手を,レギュラー群(N = 11)および非レギュラー群(N = 11)に分けて,同一のオーガナイズで攻撃方向を伴うボールポゼッションを行わせた.ポゼッションのオーガナイズは,縦12m 横24m のコート内で4 対4 を行い,両端の短辺に2 人,コート内に1 人のフリーマンを配置した.テクニカルプレー(コントロールミス,パス本数,パッキングレート)は,記述分析で定量した.選手の位置は,ローカルポジショニングシステムによって記録された.選手の位置から攻撃および守備チームの面積を算出した.パッキングレートは,レギュラー群のほうが非レギュラー群よりも高かった.パス本数は,レギュラー群のほうが非レギュラー群よりも多い傾向であった.競技水準に関わらず,攻撃時の面積は守備時の面積よりも広かった.攻撃時の面積は,非レギュラー群よりもレギュラー群のほうが大きく,守備時の面積は,レギュラー群のほうが非レギュラー群よりも小さかった.本研究の結果は,攻撃方向を伴うボールポゼッションを同一のオーガナイズで実施した場合,レギュラー群のほうが非レギュラー群よりもパッキングレートが高く,それは攻撃時にボールを受けるための位置による違いである可能性が示唆された.
著者
福村 圭介
出版者
日本比較内分泌学会
雑誌
比較内分泌学 (ISSN:18826636)
巻号頁・発行日
vol.46, no.171, pp.108-110, 2020 (Released:2020-10-18)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
若杉 晃介 長田 光世 水谷 正一 福村 一成
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.219, pp.421-426, 2002-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
4
被引用文献数
2

近年, 農村地域における生物多様性の低下が指摘されており, 原因の一つとしてほ場整備による湿生動物の生息地破壊等があげられている.その改善策として, ほ場整備に際して, 整備区域内に生態系保全地を設ける事例が増えつつあるが, その設置間隔等は明らかになっていない.本研究は, ほ場の湿潤な場所に生息する動物の保全地を設置する場合を想定し, 保全地の最短設置間隔の指標の一つとして, 移動能力が低いとされている湿生動物のアジアイトトンボについて移動距離を調べた.調査は栃木県宇都宮市の一般的な平地水田地帯で, 標識再捕獲法を用いて2000年8月から9月に行った.その結果, アジアイトトンボの移動距離は1.1~1.2kmであること, 出現場所は湛水休耕田の存在に大きく影響を受けていることが分かった.
著者
河原 智 小笠原 俊実 福村 俊美 小笠原 成郎
出版者
日本家畜臨床学会
雑誌
東北家畜臨床研究会誌 (ISSN:09167579)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.33-35, 1991-08-20 (Released:2009-04-22)
参考文献数
8

若齢牛における唾液腺嚢腫に遭遇し、外科的摘出を行ったところ良好な経過を示した。症例は元気、食欲は良好であったが、2週間前より左の顎が徐々に腫大してきたとの稟告のもとに来院。血液所見ならびに穿刺所見より唾液腺嚢腫と診断し、摘出手術を実施した。摘出嚢腫を病理組織学的に検索したところ下顎腺由来と確認され、また嚢包内膜は小葉間導管の上皮に類似していた。その後、本症例は良好な発育を遂げ、手術の6カ月後に売却された。
著者
境田 靖子 岩橋 明子 辻本 洋子 福村 智恵 由田 克士
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.101-110, 2022 (Released:2022-02-18)
参考文献数
29

妊娠期の食品摂取状況と児の出生体重への影響を検討するために、大阪府・奈良県・福岡県の3地区において、2015年4月~2016年8月の間に3~4カ月児健康診査を受診する予定の母親1,302人を対象に、母親の身体状況と喫煙、飲酒習慣、食品摂取状況等および児の身体状況について質問紙調査を実施した。出生体重2,500g以上と低出生体重児の2群で比較すると、低出生体重児群は母親の非妊娠時および出産時体重、非妊娠時BMI、体重増加量、出生児の身長と在胎週数が低く、喫煙率が高かった。さらに、食品摂取頻度と摂取目安量から算出した摂取得点では、妊娠前と妊娠中の両期間で低出生体重児群は野菜料理摂取得点が低く、妊娠前の野菜料理摂取得点および牛乳・乳製品摂取得点が低い群は低出生体重児が出生するオッズ比が1.69、1.58と高かったことから、低出生体重児の抑制に妊娠前からの適切な食事管理、特に野菜摂取の指導の必要性が示唆された。