著者
大川 智子 山口 由衣 石田 修一 堀田 亜紗 藤田 浩之 相原 道子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.212-218, 2013 (Released:2013-10-05)
参考文献数
39

44歳,男性。両側精巣腫瘍,S状結腸癌の既往がある。上腹部に激痛が生じた翌日に,顔面,体幹部に発赤を伴う小丘疹と小水疱,および口腔内水疱が出現した。Tzanck 試験は陽性であった。激烈な腹痛を伴うことから,内臓播種性水痘・帯状疱疹ウイルス (VZV) 感染症を疑い,アシクロビル (acyclovir; ACV) 750mg/day 開始したが,症状の改善は乏しく,肝機能の悪化,DICを合併した。第4病日より ACV 1,500mg/day に増量,Intravenous immunoglobulin (IVIG) 5,000mg/day(5日間)を追加し,症状は次第に改善した。経過中,血中 VZV-DNA 量が髙値であり,内臓播種性 VZV 感染症と診断した。本疾患は急速に進行し,ときに致死的である。水痘に腹部症状を伴う場合,本疾患を疑い,早期に大量の ACV や IVIG による治療をおこなうことが重要と考えた。(皮膚の科学,12: 212-218, 2013)
著者
藤田 浩示 高原 良博
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.1057-1060, 2007 (Released:2007-11-02)
参考文献数
9

We have studied the effect of the chlorine addition on the ultraviolet transmission property of soda-lime glasses to develop the ultraviolet penetration glass with soda-lime compositions. At first, a molecular-dynamics calculation is carried out to investigate how the addition of chlorine has influence on the non-bridged oxygen which causes the absorption of ultraviolet in the soda-lime glass. It is shown from the calculation that the chlorine addition reduces the amount of the non-bridged oxygen. Based on the result, we fabricate the soda-lime glasses containing chlorine by using a platinum crucible, and then measure the transmittance of ultraviolet at 260 nm wavelength. Apparent improvement of ultraviolet transmittance of the soda-lime glasses is confirmed from the measurements. As a result, improvement of ultraviolet transmittance is below 10%, so enough improvement of ultraviolet transmittance is not available by addition of chlorine.
著者
藤田 浩之 曽我 隆義 鈴木 淳一 石ケ坪 良明 毛利 博 大久保 隆男 長嶋 洋治 三杉 和章
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 : 日本伝染病学会機関誌 : the journal of the Japanese Association for Infectious Diseases (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.398-403, 1995-04-20
参考文献数
18

横浜市立大学医学部第1内科に入院したHIV陽性患者について, 臨床的病理学的検討を加えたので報告する. 対象は, 1988年2月より1994年5月までの約6年間に, 当科に入院したHIV陽性患者13例で, 外国人の1例を含め, 全例が男性であり, 初回入院時の年齢は, 18~70歳であった. 感染経路は, 血液製剤輸注8例, 性交渉5例で, 現在までに11例がAIDSを発症しており, 内6例が死亡している. 発症原因は, カリニ肺炎, HIV脳症などで, 発症時のCD4陽性リンパ球数は3.4~220/μl (平均73/μ1) であった. 延べ25回の入院理由は, 日和見感染が19回で, その内6回をカリニ肺炎が占めるが, 最近では予防を行っているため減少している.剖検は4例で施行された. 死亡時のCD4陽性リンパ球数は平均6.1/μlであり, 高度に細胞性免疫が低下した状態であった. 脳では, 脳の萎縮や, HIV脳症の特徴的所見であるグリア結節の形成がみられ, 皮膚では, パピローマウイルスによる尖圭コンジローマや, ポックスウイルスによる伝染性軟属腫がみられた. また全例でサイトメガロウイルス感染を示す封入体が認められた. AIDS発症からの生存期間は5カ月から42カ月で, 50%生存期間は26カ月であった. 現在AIDSは予後不良の疾患群であるが, その生存日数は延長の方向にあり, すべての医療従事者はAIDSに対して, より積極的な対応を求められている.
著者
福岡 勇樹 成田 琢磨 小川 正樹 佐藤 朗 寺田 幸弘 松田 亜希奈 保泉 学 梅津 香織 佐藤 雄大 石川 素子 細葉 美穂子 森井 宰 藤田 浩樹 山田 祐一郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.335-339, 2012-05-30
参考文献数
13

35歳,女性.多嚢胞性卵巣症候群,糖尿病あり.インスリン治療にてHbA1c(JDS)5 %台で経過.妊娠34週より口渇,多飲,約8 <i>l</i>/日の多尿が出現.午前中のみの飲水制限で,血清Na 138 mEq/<i>l</i>から144 mEq/<i>l</i>へと上昇,水制限後も血漿浸透圧293 mOsm/kg>尿浸透圧213 mOsm/kg,血漿アルギニン・バゾプレシン(AVP)0.9 pg/m<i>l</i>と上昇なく,中枢性尿崩症が疑われ入院,デスモプレシンの試験的点鼻投与にて尿量は約2 <i>l</i>/日に減少した.出産後はデスモプレシンを中止しても妊娠前の尿量に戻ったが,頭部MRIで下垂体後葉の高信号の低下を認め,高張食塩水負荷試験でAVP上昇が不十分であったことから,妊娠による胎盤バゾプレシナーゼ活性亢進によるAVP需要の増大を代償しきれず,部分型尿崩症が妊娠後期に顕在化した病態と考えられた.妊娠に尿崩症が合併する頻度は4~30万妊娠例に1例と稀な症例であり報告する.<br>
著者
藤田 浩樹 山田 祐一郎
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

GLP-1とその分解酵素DPP-4の腎臓内シグナル伝達系とこれらをターゲットとした糖尿病性腎症に対する治療の可能性について検討した。進行性糖尿病性腎症マウスモデルKK/Ta-Akitaを用いた研究から、DPP-4阻害によりその基質の一つであるSDF-1αの発現が腎臓の糸球体上皮細胞と遠位ネフロンで増加すること、この発現増加は尿中ナトリウム排泄を促進し糸球体高血圧の改善をもたらすこと、SDF-1αからのシグナル遮断による腎保護効果の消失が示された。DPP-4阻害は腎臓内での活性型GLP-1のレベルを高めることに加え、SDF-1αの発現増加を惹起することで腎保護に貢献する可能性が示唆された。
著者
三好 和康 細川 直登 馳 亮太 清水 彰彦 安間 章裕 鈴木 啓之 藤田 浩二 鈴木 大介 戸口 明宏 大塚 喜人
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.553-557, 2017

<p>G 群溶血性連鎖球菌(group G streptococcus(GGS))菌血症はA 群溶血性連鎖球菌による感染症と類似した侵襲性の病態を示し,死亡率は3.3~17.3% と報告されているが日本国内からの血液培養陽性症例についてのまとまった報告は少ない.また,これまでにGGS 菌血症の臨床的特徴を検討した報告は複数あるが,市中発症群と院内発症群に区別して臨床的特徴の違いを詳細に検討した研究はない.当院におけるGGS 菌血症の臨床的特徴,および市中発症群と院内発症群で臨床的特徴に違いがあるのかを後方視的に検討することが本研究の目的である.亀田総合病院で2005 年6 月から2014 年9 月にかけて血液培養陽性となったGGS 菌血症の全症例を対象とした.診療録を用いて臨床情報を収集し,市中発症群と院内発症群に区別して後方視的に解析,検討した.期間中にGGS 菌血症を呈した症例は104 症例で,市中発症例が92 症例,院内発症例が12 症例であった.平均年齢は75.4 歳(±17.1)で市中発症群と院内発症群で有意差は認めなかった.蜂窩織炎が全症例の52.9% を占め頻度が最も高く,次にprimary bacteremia が13.5% であった.院内発症群では皮膚・軟部組織感染の占める割合が小さい傾向OR 0.05(95% CI 0.01~0.27;p<0.01)にあり,Primary bacteremia や好中球減少性発熱といった感染巣不明な疾患の割合が大きい傾向OR 16.4(95% CI 4.38~61.2;p<0.01)を示した.当院のGGS 菌血症は他の報告と比較して年齢中央値が高く,primary bacteremia の割合が小さいという特徴を持つことが明らかになった.また,院内発症群では感染巣を特定できない症例の割合が大きい傾向OR 16.4(95% CI 4.38~61.2;p<0.01)を認めた.</p>
著者
萩尾 慎二 黒佐 義郎 小島 秀治 相澤 充 青山 広道 前原 秀二 三宅 諭彦 藤田 浩二 多川 理沙 佐藤 智哉
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第54回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.256, 2005 (Released:2005-11-22)

高齢の大腿骨頸部骨折患者が入院時に熱発を呈することをしばしば経験する。また大腿骨頸部骨折患者の主な合併症として肺炎や尿路感染症が挙げられる。今回、入院時に採取した尿の細菌培養を行ない熱発と尿路感染(腎盂腎炎)との関係を調査した。【方法】大腿骨頸部骨折患者を入院時熱発群(術前最高体温38.0以上)と非熱発群に分け年齢、性別、入院時血液検査(白血球数、CRP、好中球%)、尿沈渣による白血球数、尿培養結果、入院時胸部レントゲン像による肺炎の有無、術後最高体温との関連を調査した。【結果】調査数15症例(平均82歳、男性1例、女性14例)のうち術前38.0度以上の熱発が見られたのは4例(全て女性、平均78.8歳)だった。熱発群ではCRPが平均3.5と上昇していた(非熱発群は平均1.6)。血液検査の白血球数、尿沈渣による白血球数、胸部レントゲン写真による肺炎像の有無、術後最高体温については非熱発群との差を認めなかった。尿培養では熱発群2例(50%)、非熱発群4例(36.4%)で陽性であり計7例中大腸菌が3例で検出された。【考察】大腿骨頸部骨折患者は大多数が高齢者であり、複数の合併症を有することが多い。入院後患者が熱発したとき、その原因として(1)骨折自体による熱発 (2)肺炎 (3)腎盂腎炎などが考えられる。受傷後、臥位が続けば肺炎、腎盂腎炎を併発するリスクは高くなると予想されるが、今回の調査では入院時検査において発熱群と非発熱群との差を認めなかった。その理由として(1)感染症の併発の有無を問わず骨折自体による熱発が多くの症例でみられる (2)入院後早期に手術が施行(平均手術待機日数1.5日)され、その際に使用される抗生剤により感染症が治癒したと考えた。尿培養では一般的に言われているように大腸菌が検出されることが多かった。我々の施設では術後抗生剤としてセファメジンα(セファゾリンナトリウム:第一世代セフェム)を使用しているが、今回の調査中に培養で検出された6菌種のうちセファメジンに感受性がなかったのは1菌種のみであった。 熱発がないにも関わらず尿培養陽性だった例(無症候性細菌尿)が多くみられたことより、熱発時に細菌尿を認めたからといって熱源の探索を怠ると他の原因の見落としにつながる危険性が十分にあると思われた。
著者
粕渕 賢志 福本 貴彦 藤田 浩之 前岡 浩 今北 英高
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CaOI1019, 2011

【目的】<BR> 近年,手根中央関節の動きは,常にダーツスロー・モーション方向であると解明されてきた.ダーツスロー・モーションとは橈背屈から掌尺屈方向への動きである.日常生活では手関節の組み合わされた動きが必要となり,ダーツスロー・モーションで日常生活にあまり不自由をきたさないといわれている.また橈骨遠位端骨折後では,日常生活動作能力と関節可動域(以下 ROM)には関連がなく,握力のみ関連があるとの報告が多い.しかし,今までの報告ではダーツスロー・モーション面のROMを評価しているものはない.従って本研究の目的は,橈骨遠位端骨折後患者のダーツスロー・モーション面のROMが日常生活動作能力に関連があるかを調査することとした.<BR><BR>【方法】<BR> 対象は,当院通院中の橈骨遠位端骨折後患者15名(男性7名,女性8名).平均年齢62.4±16.0歳であった.評価項目は身体機能と日常生活動作能力を評価した.身体機能は患側の掌屈,背屈,橈屈,尺屈,回内,回外のROMと,ダーツスロー・モーションである橈背屈,掌尺屈のROMを自動運動,他動運動にて二回ずつ測定し平均値を求めた.ダーツスロー・モーション面ROMは専用のゴニオメーターを作成し測定した.今回作成したダーツスロー・モーション面用ゴニオメーターは検者内・間とも信頼性が0.90を越え,高い再現性が得られることを確認してから使用した.測定したROM結果より,掌背屈,橈尺屈,回内外,ダーツスロー・モーション面の全可動域を求めた.また各ROMの健側との比率を求めた.日常生活動作能力はDASH(The Disability of the Arm, Shoulder and Hand)スコアの日本手の外科学会版を用いて評価した.統計学的解析はDASHスコアと,各ROM,健患比の相関を求めた.各相関はPearson相関係数を求め,危険率を0.05未満で有意とした.<BR><BR>【説明と同意】<BR> 本研究は畿央大学研究倫理委員会の承認(H21-15)を得て行った.被験者に対し研究の説明を行い,同意を得られた者のみデータを採用した.<BR><BR>【結果】<BR> DASHスコアと橈背屈ROMの自動運動(r = 0.596, p < 0.05),他動運動(r = 0.628, p < 0.05),自動運動の健患比(r = 0.604, p < 0.05),他動運動の健患比(r = 0.756, p < 0.01)に相関がみられた.またDASHスコアとダーツスロー・モーション面ROMの自動運動(r = 0.628, p < 0.05),他動運動(r = 0.648, p < 0.01),自動運動の健患比(r = 0.522, p < 0.05),他動運動の健患比(r=0.671,p<0.01)に相関がみられた.その他の項目とは相関は認められなかった.<BR><BR>【考察】<BR> DASHスコアと橈背屈ROM,ダーツスロー・モーション面ROMに相関が認められた.掌屈,背屈,橈屈,尺屈,回内,回外のROMと,掌背屈,橈尺屈,回内外のROMがDASHスコアと相関が認められなかったことは,先行研究と同様の結果であった.今回ダーツスロー・モーション面ROMと相関が得られたことから,橈骨遠位端骨折後ではダーツスロー・モーションが日常生活に最も重要であり,特に橈背屈方向の動きが日常生活に影響を与えていると考えられる.またダーツスロー・モーション面のROMが大きいほどDASHスコアも高値であったことより,橈骨遠位端骨折後の回復過程をダーツスロー・モーション面ROMの評価をすることにより把握することができると考えられる.また手関節背屈40°~50°の角度からのダーツスロー・モーションは,橈骨手根関節の動きは少なくなり手根中央関節の運動のみとなる.よって橈骨遠位端骨折後のリハビリテーションの際に,ダーツスロー・モーションは骨折部にストレスをかけずに早期から手を動かすことができるかもしれないといわれている.これらのことからも橈骨遠位端骨折後には早期からダーツスロー・モーションのROM訓練を行うことが有意義な理学療法に繋がると考えられる.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 橈骨遠位端骨折では日常生活動作能力を向上させるには,ダーツスロー・モーション面ROMの改善が必要であるということが示された.またダーツスロー・モーションは理学療法において,治療,評価のどちらにも重要であると示唆された.
著者
粕渕 賢志 藤田 浩之 福本 貴彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A4P3021, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】立位の保持には、視覚、前庭迷路や足底の圧および触受容器、下肢筋の固有受容器、関節器官などの体性感覚からの情報感覚が関与している。バランス機能評価として不意な外乱を与えることによる膝の動揺や下肢の反応能力を、膝関節の加速度をみることにより評価している報告が多くみられる。また両下肢の機能として一側優位性が報告されており、両・片脚起立において左足は右足より支持性が高く直立姿勢を支持し、右足は運動作用の役をなすとされている。バランス機能と筋力に関する報告は多く、片脚バランス能に右下肢では前後動揺と膝筋力との間に相関関係があり、左下肢では膝筋力と相関が認められなかったという報告もある。しかし、筋力の評価において膝周囲の筋バランス指標であるハムストリングス/大腿四頭筋筋トルク比(以下H/Q比)を用いた報告は少ない。 よって、今回の研究の目的は、不意な外乱を与えることによる膝の動揺とH/Q比の関係をみることと、下肢の一側優位性から左右差が認められるかを調査することとした。【方法】対象は、下肢に整形外科疾患の既往がない健常成人8名(男性3名、女性5名)。平均年齢24.3±1.3歳。8人とも右利きであった。3軸加速度計MA-3-10Ac(MicroStone株式会社)を対象者の両側の外側上顆と不安定板上にそれぞれ貼付固定した。不安定板は底が円柱状で左右方向のみ動揺するものを使用した。被験者には不安定板上で立位姿勢をとらせ、なるべく姿勢を維持するように指示した。次に被験者に見えない後方から不意に不安定板を傾斜させた。この傾斜に対しても姿勢を保持するように指示を行った。不安定板は左右各3回ずつ傾斜させた。不安定板の揺れを標準化するために、無次元化([膝の加速度]/[不安定板の加速度])し、側方動揺の最大値と3軸の合成最大値を膝動揺の指標とした。加速度データのサンプリング周波数は100Hzとした。等速性筋力はSystem3 ver.3.33(BIODEXSYSTEMS)にて測定した。角速度60度/秒、180度/秒にて求心性の膝伸展筋力と膝屈曲筋力を左右各3回測定し、体重補正した膝伸展筋力と膝屈曲筋力を用いてH/Q比を算出した。各相関はPearson相関係数を求め、危険率を0.05未満で有意とした。【説明と同意】被験者に対し研究の説明を行い、同意を得られた者のみデータを採用した。【結果】不安定板傾斜時の左膝動揺の3軸合成最大値と左下肢の角速度180度/秒の等速性筋力の間に有意な相関を認めた(r=-0.738,p<0.05)。そのほかの膝の動揺とH/Q比には相関は認められなかった。【考察】左下肢の角速度180度/秒のH/Q比が高いほど、左下肢の膝の動揺は軽減する傾向にあった。しかし、そのほかの膝の動揺とH/Q比には相関は認められなかった。左下肢で相関がみられたのは、被験者全員が右利きであり、左足は右足より支持性が高いと報告されていることから、支持性を高めるために膝周囲の筋バランスが右下肢よりも必要であることを示している。また角速度60度/秒のH/Q比では相関を認めず、角速度180度/秒のH/Q比で相関が認められたことより、姿勢制御にはその瞬間の筋力発揮が必要であり、速い速度で筋力がバランス良く使用できることが重要であると示している。膝の動揺に対して筋力比が関与していたため、膝の動揺を軽減させていくためには膝周囲の筋力の値だけではなく、H/Q比も考慮した理学療法プログラムを考案し、実施していく必要があると考えられた。【理学療法学研究としての意義】今回健常成人の動的バランスの姿勢制御において、筋力比であるH/Q比が関与していることが示された。これよりH/Q比を考慮することにより、より効果的にバランス機能を向上させることができると考えられる。また、高齢者への姿勢制御能力を向上させることにも応用が可能であるのではないかと思われる。理学療法を施行するにあたり、筋力について新たな一面から捉えることができるため、今後筋力比を筋力の評価方法の新たな指標にすることが可能であると考える。今後はH/Q比と前後、上下方向の動揺の関係や、性差、年齢差による違いを調査し、膝関節の動揺が小さくなる最適な筋力比の数値を調査していきたい。またそのほかの筋力比と姿勢制御能力の関係を検証していきたい。
著者
山本 豊 藤田 浩 田邉 孝大 杉山 和宏 黒木 識敬 明石 暁子 濱邊 祐一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.15-22, 2011-01-15 (Released:2011-03-25)
参考文献数
19

症例は29歳,男性。市民マラソンに参加したが競技中に意識消失し当院搬送となる。熱中症と診断し治療を開始したが,第2病日に急性肝炎重症型となり凝固因子補充目的に新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma; FFP)の輸血を施行し,第3病日に劇症肝不全となる。同日もFFP投与を行ったが,輸血開始後に頻脈や頻呼吸を認め非侵襲的陽圧換気を開始した。心エコー検査を施行したが輸血関連循環過負荷と輸血関連急性肺障害との鑑別は困難であり,その後も呼吸循環動態には改善を認めず気管挿管下に集中治療を開始した。輸血前後の検体からは抗HLA抗体,抗顆粒球抗体等の検出は認めず,診断指針推奨案に基づいて輸血関連急性肺障害疑いと診断,重篤な経過をたどったが救命に成功した。救急医療の現場では急性肺障害を来しうる誘因は多数あるが,輸血も鑑別の一つとなりうることを留意すべきである。
著者
藤田 浩司 松岡 聡 岩前 篤 太田 周彰
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.25, no.60, pp.753-758, 2019-06-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
7

KINDAI University and various enterprises proposed a Zero-Energy-House(ZEH) called “ENEMANE R HOUSE” in ENEMANE HOUSE 2017. A real size house was built in Osaka and its environmental performance was measured in November 2017. This report presents the energy-saving and environmental technology adopted in this house and its effects. The findings show that this house achieved a ZEH status sufficiently and has excellent environmental performance.
著者
藤田 浩
出版者
日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症 (ISSN:03894290)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.147-153, 1996-05-20 (Released:2010-04-12)
参考文献数
20

Vascular endothelial cells (ECs) have various functions such as the maintenance of vascular permeability, control of vascular tonus and resistance to thrombosis.During inflammation, ECs also play a role in angiogenesis and transmigration of the leukocytes. EC injury induces inflammatory changes, vasculitis and so on. We examined the mechanism of vascular EC injury induced by the leukocytes from the standpoint of active oxygen species and adhesion molecules, CD11/CD18 and ICAM-1, EC jnjury induced by the leukocytes was due to the hydroxyl radical production from xanthine oxidase using hydrogen peroxide from the leukocytes.In addition, CD11/CD18 and ICAM-1 induced vascular EC injury and the conversion of xanthine dehydrogenase to xanthine oxidase. The conversion might be elicited by tyrosine kinase activation.
著者
加藤 貞顕 富川 直泰 藤田 浩芳
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.9, no.14, pp.32-35, 2010-09-07

難しい思想や哲学を分かりやすく読み解く本が人気だ。その代表格が『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(以下『もしドラ』)、『超訳ニーチェの言葉』(以下『超訳ニーチェ』)、『これからの「正義」の話をしよう』(以下『「正義」の話』)の3冊。ベストセラーを生み出した編集者たちに「読み解く技術」を尋ねた。
著者
藤縄 明彦 藤田 浩司 高橋 美保子 梅田 浩司 林 信太郎
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.269-284, 2001-11-20 (Released:2017-03-20)
参考文献数
24
被引用文献数
3

Kurikoma volcano is located at the volcanic front of northeastern Japan arc. The volcano can be divided into 6 volcanic edifices on the bases of the inferred eruption centers, relative preservation of primary micro-topographic features on the eruptive materials, and stratigraphic relations. Lava flow has been dominant through the development history of each edifice, while pyroclastic deposits are conspicuous near the craters of several ones. Newly analyzed 7 K-Ar ages for the representative samples range from ca. 0.53 to around 0.11 Ma, practically reconcilable with the stratigraphy. Based on these data, an internally consistent scenario on the development history is summarized as follows: 1) Magmatic eruption started at about 0.5 Ma to make up the southern volcanic row. South and east to northeast flank of the Higashi-Kurikoma volcanic edifice was probably formed nearly the same time. Following these eruptions from the southern vents, central vents effused lava flows, resulting to build the Higashi-Kurikoma edifice and Kokuzou lavas (part of Kurikoma edifice) around 0.4 Ma. 2) After terminating eruption from the southern and east-north eastern vents, the Higashi-Kurikoma vent had been active until 0.1 Ma, and Kurikoma vent lasted several tens of thousands years ago. 3) Magusadake cone was built through repeated lava effusions from several vents in the western part of the volcano from 0.45 Ma to 0.1 Ma. 4) Viscous magma erupted to form Tsurugidake lava dome as the last event of magmatic eruption so far in the Sukawa horse-shoe shaped crater which was formed in northern portion of the Kurikoma (Okomayama) volcanic edifice.
著者
藤田 浩一 張 濤 井上 明久 牧野 彰宏
出版者
公益社団法人 日本磁気学会
雑誌
日本応用磁気学会誌 (ISSN:02850192)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4_2, pp.381-384, 1998 (Released:2007-06-29)
参考文献数
8

New Fe-based amorphous alloys exhibiting the glass transition and supercooled liquid region before crystallization were searched for in the composition range of Fe63Co7Nd10-xZrxB20 (x=0 to 6 at%). Amorphous alloys containing 4 to 6 at%Zr were found to exhibit the glass transition followed by a supercooled liquid region. The crystallization of the 4 at%Zr and 6 at%Zr alloys occurred in three stages. In the crystallized state, the alloys exhibited hard magnetic properties, namely, Js of 1.15 to 1.18 T, Jr of 0.75 to 0.76 T, and Nd2Fe14B phases for the 4 at%Zr alloy subjected to optimum annealing were about 50 nm and 30 nm, respectively, and the exchange magnetic coupling interaction between the α-Fe and Nd2Fe14B phases is thought to make possible the appearance of the hard magnetic properties.
著者
清水 宗茂 藤田 浩太郎 市川 淳 森松 文毅 向井 直樹
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.559-566, 2004-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
21

本研究では, 関節部への負担が高い走運動愛好者を対象として, コラーゲン・グルコサミン混合液の継続摂取が関節マーカーに及ぼす影響を検討した.その結果, 30日間のコラーゲン・グルコサミン混合液摂取により, 血清KSおよび血清MMP-3が摂取15, 30日目において有意に低下することが認められた.本研究の結果は, コラーゲン・グルコサミン混合液の継続摂取が, 関節軟骨の損傷および炎症を予防し, 関節部のコンディショニングに対して有効であることを示唆するものである.
著者
有田 和徳 山田 謙慈 藤田 浩史 鎌田 達 吉田 康洋 池尻 公二
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.634-638, 1990-06-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
14

CT, MRI, SPECTで検索し得た典型的な進行性核上性麻痺の1例を報告する.症例: 68才女性, 約2年前より動作や言語が緩徐となり, 転倒しやすくなつた. その後症状は安定していたが約20ヵ月後より痴呆が認められ, 歩行が不安定となり, 自発的な発語や動作が乏しく臥床状態が多くなつた. 1987年1月の入院時, 神経学的には核上性眼球運動障害, 皮質下痴呆, 頭部を後方に反り返らせる特異なdystonia, 病的反射を伴わない四肢の腱反射亢進, 四肢の著明なrigidity, 後方への転倒傾向が認められた.1)CTでは中脳の萎縮とともに大脳のびまん性の萎縮が認められた. 大脳の萎縮は約2年間の経過で進行が認められた. 2)MRI矢状断像によつて中脳, 橋被蓋の萎縮が明瞭に描出され, 画像診断上きわめて有用であつた. 3)SPECTでは脳幹, 大脳基底核ならびに前頭葉の血流低下が認められた.
著者
高山 敦好 池田 真俊 藤田 浩嗣 原野 亘
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.747-753, 2013-12-20 (Released:2014-01-11)
参考文献数
11
被引用文献数
2

一部の工場や船舶機関において,環境負荷低減技術としてスクラバが用いられている.スクラバは,噴霧水滴との反応で,NOx,SOxを低減できるだけでなく,噴霧水滴との衝突で PMの捕集も可能である.しかしながら,スクラバ処理後は水槽内に排ガス成分を含んだ廃水が伴い,その処理が問題視されている.本研究は,3流体噴射弁を用い,燃料と廃水による混合燃焼により,廃水処理を含めた環境負荷低減技術を開発した.水との混合燃焼は,燃焼温度が下がることにより NOxの低減が見込め,同時に燃焼性が向上しPMの低減も可能である.廃水による混合燃焼は,水道水による混合燃焼と比べるとA重油では約5%,C重油では5-30%NOx濃度が上昇した.PMについては,水道水による混合燃焼では SOFが約 73%,DSが約 80%低減でき,廃水による混合燃焼では,SOFが 68%,DSが 74%低減できた.よって,本研究は,廃水処理と同時に排ガスを削減できた.