著者
井谷 惠子 井谷 聡子 関 めぐみ 三上 純
出版者
日本スポーツとジェンダー学会
雑誌
スポーツとジェンダー研究 (ISSN:13482157)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.6-20, 2019 (Released:2019-09-06)
参考文献数
11

This study examines the gender politics in physical education curriculum that influence students to disengage from physical education and sport. For the analysis, we selected five students among survey respondents who identified as cis-gendered heterosexual women and conducted semi-structured interviews. The grounded theory approach (GTA) was utilized and MAXQDA Analytics Pro2018 was used to assist the analysis. The analysis generated nine primary categories, for example; “visibility”, “physical education curriculum”, and “characteristics of exercise”. It also generated forty-nine sub-categories. The relationships among categories indicate a “negative spiral” in which “poor exercise experience”, “low physical skill and strength”, “negative experience” and “negative emotional reaction” formed a chain relationship. Central to physical education curriculum is the focus on modern sports that has been developed as a tool to educate men. Such physical education is characterized by athleticism, record setting, hierarchy, and winning, as well as physical performance. The space of physical education is saturated with value orientation based on high performance. In such space, participants have had negative experiences in which their poor skills and physical weakness were exposed to their peers. They also expressed discomfort that physical education leaves little space for values outside of physical performance to be recognized.
著者
細谷 聡 加賀 勝
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.11-18, 2002-11-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
12

Since a Japanese-style bow is very complicated in both shape and structure, torques in horizontal and sagittal planes regarding grip must be applied to hit the target. This study biomechanically investigated the relationship between left forearm muscular activities and torques in horizontal (called the “NEJIRI” technique) and sagittal planes (called the “UWAOSHI” technique)regarding grip.Surface EMGs of four muscles (extensor carpi radialis longus, extensor digitorum, extensor carpi ulnaris, flexor carpi ulnaris) were collected from ten male subjects shooting arrows. The habit of the motion of drawing the bows that is called “BIKU” was measured incidentally from the experiment. As a result of statistics analysis, extensor digitorum and extensor carpi ulnaris muscles had positive relationships to the torque in the horizontal plane (“NEJIRI” technique). On the other hand, extensor carpi ulnaris and flexor carpi ulnaris muscles had positive relationships to the torque in the sagittal plane (“UWAOSHI” technique). It is suggested that extensor carpi ulnaris is complicatedly controlled to accomplish the operation of “TENOUCHI”, the shooting technique, in KYUDO.
著者
土浦 宏紀 小形 正男 田仲 由喜夫 柏谷 聡
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.254-257, 2003-04-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
18

銅酸化物超伝導体中に不純物原子をドープすると,そのまわりに準粒子の束縛状態が形成される.走査型トンネル顕微鏡技術の進歩と相俟って,この生活状態の理解がここ数年で飛躍的に進んだ.本稿では,もっとも理解の進んでいるZn不純物近傍の束縛状態について,実験結果とその理論的解釈を紹介する.
著者
宮谷 聡美
出版者
東京経営短期大学
雑誌
東京経営短期大学紀要 (ISSN:09194436)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.70-60, 2010-03-31

『伊勢物語』六十三段「つくも髪」は,老女の恋を描いた物語として知られる。しかし,宋玉「登徒子好色賦」や『万葉集』に載る石川女郎と大伴田主「みやびを問答」をもとに創作されたものと見ることで,在五中将と女の造型を,当代の美男美女の物語として捉え直し,位置づけることができる。
著者
新里 法子 番匠谷 綾子 大谷 聡子 五藤 紀子 岩本 優子 山﨑 健次 香西 克之
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.237-242, 2012-06-25 (Released:2015-03-17)
参考文献数
21
被引用文献数
1

児童虐待の相談件数は近年急激な増加傾向を示しており,社会全体で早急に解決すべき重要な課題となっている。我々は,広島県内の2 か所の児童相談所および子ども家庭センターの一時保護施設に入所した要保護児童を対象に,齲蝕経験者率,未処置歯所有者率,一人平均齲蝕経験歯数および一人平均未処置歯数について調査し,一般の児童と比較検討を行った。その結果,要保護児童は齲蝕経験者率および未処置歯所有者率が高く,一人平均齲蝕経験歯数および一人平均未処置歯数が多いことが示された。また,虐待により保護された要保護児童と,その他保護者の長期療養などの理由で入所した要保護児童の齲蝕罹患状況に,大きな差は認められなかった。要保護児童全体の齲蝕罹患率が高いことから,要保護児童の生活環境自体が齲蝕を誘発しやすいことが推測された。歯科医療従事者は小児の多発齲蝕や長期にわたる齲蝕の放置などを通じて,保護者の養育放棄とそれに伴う養育環境の悪化に気付くことで,虐待を早期に発見できる可能性があることが示唆された。
著者
笠羽 康正 三澤 浩昭 土屋 史紀 笠原 禎也 井町 智彦 木村 智樹 加藤 雄人 熊本 篤志 小嶋 浩嗣 八木谷 聡 尾崎 光紀 石坂 圭吾 垰 千尋 三好 由純 阿部 琢美 Cecconi Baptiste 諸岡 倫子 Wahlund Jan-Erik JUICE-RPWI日本チーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.96-107, 2016

<p>欧州宇宙機関(ESA)木星探査機JUICEに搭載される電波・プラズマ波動観測器RPWI(Radio Plasma Wave Instruments)は,欧州チームにとり米土星探査機カッシーニ搭載のRPWS,日本チームにとり月探査機かぐや・ジオスペース探査衛星ERG・日欧水星探査機BepiColombo搭載の電波・プラズマ波動・レーダー観測器群からの発展展開となる.木星・衛星周回軌道への初投入となる低温電子・イオンおよびDC電場観測機能,電磁場三成分のプラズマ波動観測機能,電波の方向探知・偏波観測機能,および高度オンボード処理によるパッシブ表層・地下探査レーダー機能や波動-粒子相互作用検出機能の実現により,木星磁気圏の構造・ダイナミクスおよびガリレオ衛星群との相互作用,氷衛星の大気・電離圏および氷地殻・地下海へのアクセスを狙う.2016年7月に仙台で行なった「RPWIチーム会合」での最新状況を踏まえ,1970年代に遡る本チームの経緯・目標・展望を述べる.</p>
著者
服部 良久 青谷 秀紀 朝治 啓三 小林 功 小山 啓子 櫻井 康人 渋谷 聡 図師 宣忠 高田 京比子 田中 俊之 轟木 広太郎 中村 敦子 中堀 博司 西岡 健司 根津 由喜夫 藤井 真生 皆川 卓 山田 雅彦 山辺 規子 渡邊 伸 高田 良太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

23人の研究分担者が国内外の研究協力者と共に、中・近世ヨーロッパのほぼ全域にわたり、帝国、王国、領邦、都市と都市国家、地方(農村)共同体、教会組織における、紛争と紛争解決を重要な局面とするコミュニケーションのプロセスを、そうした領域・組織・政治体の統合・秩序と不可分の、あるいは相互関係にある事象として比較しつつ明らかにした。ここで扱ったコミュニケーションとは、紛争当事者の和解交渉から、君主宮廷や都市空間における儀礼的、象徴的な行為による合意形成やアイデンティティ形成など、様々なメディアを用いたインタラクティヴな行為を包括している。
著者
森 俊男 細谷 聡 松尾 牧則
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.67-68, 1988-11-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
3
著者
小杉 考司 藤沢 隆史 水谷 聡秀 石盛 真徳
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.16-25, 2001
被引用文献数
1

本研究は, ダイナミック社会的インパクト理論の一連の研究における, 空間的収束という結果をうみだす要因を特定することを目的としている。そのため, ダイナミックインパクト理論で用いられている, シミュレーションモデルに含まれている変数の効果を検証するべく四つのモデルを作った。派閥サイズモデルや累積的影響モデルでは二種類の連続変数をもち, 影響力の強さに個人差が付与されていたが, 本研究のモデルAおよびBは一種類の強度変数しか持たせず, さらにモデルCは影響力の個人差をなくした。モデルDは距離を離散的に表した, 近傍という変数を持つモデルである。結果は, いずれのモデルにおいても空間的収束が見られるというものであり, 影響力の数や個人差, 人数という変数は空間的収束の必要条件ではないことが明らかにされた。このことから, 結果をバイナリ変数に変換する関数と局所的相互作用という特徴が, 空間的収束に必要な条件であると考えられた。また, ダイナミック社会的インパクト理論を展開する方向性が示唆され, この理論から得られるシミュレーションの結果の, 誤解や拡大解釈という問題点が指摘された。<BR>最後に, コンピュータシミュレーション一般における, モデル構築の容易さが引き起こす問題点と, 今後の展望が示された。
著者
横本 広章 長野 勇 八木谷 聡 小阪 友裕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム
巻号頁・発行日
vol.98, no.359, pp.1-6, 1998-10-23
参考文献数
5

近年、低周波電磁界に関する人体や機器に対する影響について色々と報告されている。そこで、試作されたシールド材の低周波(〜10MHz)における遮蔽特性を測定するために、Cuと1%硅素鉄でシールドボックスを作成して測定した。本報告では、この測定の理論的確認手段として、シールドボックスの側面を考慮にいれない平面層状とみなしてSommerfeld積分を用いて数値計算し、測定結果と比較した。その結果をグラフ化するとかなり一致していることが分かった。
著者
梅谷 聡太 宮﨑 将之 立花 雄一 上田 哲弘 明石 哲郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.618-623, 2023-12-01 (Released:2023-12-11)
参考文献数
13

症例は50代男性.アルコール性肝硬変にて当科通院中であった.両目の視力低下で救急外来を受診し,頭部MRIで異常を認めず,眼科,脳神経内科にコンサルトしたが視力低下の原因は不明で当科入院となった.肝性脳症を疑い治療を行うも視力の改善なく,代謝性脳症が疑われ脳神経内科に転科となった.頭部MRIを再検し,拡散強調画像で両側基底核に高信号域を認め,代謝性脳症や薬剤性脳症が疑われた.ビタミンB1大量静注,ステロイドパルス,免疫グロブリン大量静注療法等を施行したが視力の改善はみられなかった.家族からの問診で以前にメタノールの飲用歴があったことが判明したため,尿中メタノール検査を施行しメタノール中毒の診断に至った.視力は回復せず全盲のまま退院となった.
著者
辻崎 正幸 今井 浩三 本谷 聡 日野田 裕治 谷内 昭
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.8, no.6, pp.425-432, 1993-11-10 (Released:2009-02-23)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Id-anti-Id interaction constitutes an immune network that is involved in the regulation of the immune response. We prepared several anti-Id mAb to anti-CEA mAb MA 208 which was found to recognize the peptide of CEA. These anti-Id mAb were then used for idiotope mapping and for developing anti-anti-Id antibodies to analyze the Id network system relating to CEA. Anti-anti-Id mAb M 7-625 antisera (Ab 3) reacted with purified CEA in binding assay and in Western blot analysis, and competed with Ab1 binding to CEA. It is indicated that Ab2 mimicks the structure of the epitope in CEA which was recognized with Ab1. These serologic findings suggest that anti-Id mAb M 7-625 carries the internal image of the Ag. According to the amino acid sequences of CDR 1, 2, and 3 of the mAb M 7-625 variable region, there exists a homology of amino acid sequences between CDR 2 in the H chain (5 amino acids of 10) and CDR 3 in the L chain (3 amino acids of 9) of mAb M 7-625 and domain III of CEA (545-554). Internal image bearing anti-Id antibodies may be useful for the induction of a host's immune response against tunors.
著者
新谷 聡 末政 直晃 水谷 崇亮 西村 真二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00287, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
15

最近の港湾の基礎構造物では,大口径の鋼管杭が採用されているが,これには先端抵抗力の設計において閉塞の状況が影響を及ぼすため不確実性が高いという課題がある.そこで,鋼管杭に代わり杭先端から杭頭に向かい拡径する形状のテーパー杭に着目した.テーパー杭は,打込み過程において地盤を押し拡げ,周面摩擦力を増加させる効果が報告されている.しかしながら,大口径テーパー杭に関してはこれまで充分な知見がないため,その特性を把握するために載荷試験を実施した.その結果,大口径テーパー杭においても打込み過程において地盤を押し拡げ,周面摩擦力を増加させる効果があることが確かめられた.
著者
吉村 剛 鈴木 淳司 中岡 美由紀 坪井 文 大谷 聡子 大原 紫 香西 克之
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.415-422, 2008-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
19

小児口腔から検出されるプラークは多くの場合白色であるが,しばしば黄褐色のプラークが認められる。本研究では,黄褐色プラーク(以下黄褐色群)と白色プラーク(以下白色群)の相違点を臨床的・細菌学的に明らかにすることを目的として,当科を受診した患児30名を対象とし,プラークの菌種構成,酸産生能,齲蝕罹患状態,プラークより分離された齲蝕原性菌(S.mutans,S.sobrinus)株の耐酸性について比較検討を行い,以下の結果を得た。1.齲蝕罹患者率と平均齲蝕罹患歯率を比較したところ,黄褐色群は白色群より有意に低かった。2.プラークの酸産生能についてカリオスタットを用いて検討した結果,黄褐色群のリスクが有意に低かった。3.菌種特異的なPCRを用いて,プラークに含まれる菌種を分析した結果,黄褐色群では,齲蝕原性菌の検出率は低く,S.mutansとS.sobrinusの混合感染も確認されなかった。また,非齲蝕原性菌(S.sanguinis,S.mitis)の検出率が高かった。一方,白色群では,齲蝕原性菌の検出率が高く,S.mutansとS.sobrinusの混合感染も多く認められ,非齲蝕原性菌の検出される割合も低かった。4,各プラーク群より分離された臨床株を用いて,耐酸性能を検討したところ,白色群から得た分離株は黄褐色群から得た株よりもやや高い耐酸性能を示した。以上より,黄褐色プラークは,菌種の分布,齲蝕誘発性が異なるために白色プラークよりも低い齲蝕リスクを示すことが明らかとなった。
著者
北山 響 茶谷 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00216, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

自動車排出ガス規制による大気汚染物質の排出量削減に対する効果を調べるため,2000年から2019年におけるCO,NOxおよびHCの自動車排出量を推計し,規制の有無による違い,年減少傾向,将来予測による長期傾向の分析を行った.長期規制以降の規制を考慮した場合,規制を考慮しない場合よりも排出量の削減効果がCOとNOxで数倍,HCで2倍以下の割合で大きくなる一方,台数や走行距離の変化による排出量への影響は小さかった.排出量減少傾向は,CO,NOx,HCの順に,-4.4,-3.4,-5.0%/年であり,2030年までの予測値では,-3.1,-3.0,-3.3%/年であった.CO,NOx,HCの規制削減効果は,開始の早さと段階に違いはあるが,長期的に見ると差は見られなかった.
著者
小杉 考司 藤沢 隆史 水谷 聡秀 石盛 真徳
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.16-25, 2001-12-25 (Released:2010-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

本研究は, ダイナミック社会的インパクト理論の一連の研究における, 空間的収束という結果をうみだす要因を特定することを目的としている。そのため, ダイナミックインパクト理論で用いられている, シミュレーションモデルに含まれている変数の効果を検証するべく四つのモデルを作った。派閥サイズモデルや累積的影響モデルでは二種類の連続変数をもち, 影響力の強さに個人差が付与されていたが, 本研究のモデルAおよびBは一種類の強度変数しか持たせず, さらにモデルCは影響力の個人差をなくした。モデルDは距離を離散的に表した, 近傍という変数を持つモデルである。結果は, いずれのモデルにおいても空間的収束が見られるというものであり, 影響力の数や個人差, 人数という変数は空間的収束の必要条件ではないことが明らかにされた。このことから, 結果をバイナリ変数に変換する関数と局所的相互作用という特徴が, 空間的収束に必要な条件であると考えられた。また, ダイナミック社会的インパクト理論を展開する方向性が示唆され, この理論から得られるシミュレーションの結果の, 誤解や拡大解釈という問題点が指摘された。最後に, コンピュータシミュレーション一般における, モデル構築の容易さが引き起こす問題点と, 今後の展望が示された。
著者
小宮山 誠一 本田 博之 池谷 聡 阿部 珠代 中道 浩司 佐々木 亮 竹内 薫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00054, (Released:2023-02-07)

試料搬送用コンベアを備えた近赤外分光装置を構築し,テンサイのショ糖含量を連続的に非破壊迅速評価する機器を開発した.コンベア速度を毎分20m,サンプル間隔50cmとすると,毎分40個の測定が可能である.主要品種を供試して(205個),各試料のスペクトルデータ(2次微分処理)約1nm毎の吸光度を説明変数,ショ糖含量実測値を目的変数としてPLS回帰分析により検量線を作成した.検量線精度評価用試料(183個)のスペクトルからショ糖含量の推定値を算出した結果,実測値と推定値の相関係数r,予測標準誤差SEPおよび二乗平均平方根誤差RMSEは,それぞれ0.918,0.65%および0.65%と良好であった.検量線の精度は,評価指標であるEI値で17.5%と精度・実用性ともに「高い」判定となった.検量線評価用の全サンプルのショ糖含量の平均値を「実測値」と「推定値」で比較すると,両者は同等の値となることが確認された.評価用サンプルから無作為にサンプルを抽出し(2~100個),それらの平均値を求め(1000反復),実測値と推定値の差を算出した結果,1回の抽出個数が多くなる程その差は小さくなった.50個以上抽出した平均値は,概ね0.1%以内の差で推定できた.以上の結果,本法は非破壊,簡易・省力,迅速なショ糖含量評価手法として活用の可能性が示された.